82 / 141
囚われの親子編
第19話 第六席(五)
しおりを挟む
「――それで本題はなんだ? わざわざミハエルが来たのには何か理由があるんだろう?」
ミハエルがなんの理由もなしにランチェスター学園を訪れるわけがないと思ったジルヴェスターが尋ねる。まさか談笑する為だけにやってきたわけではあるまい。
「もちろんだよ」
ミハエルは先程までの和やかな雰囲気を払拭するかのように居住まいを正して表情を引き締める。
「実はジルに頼みがあって来たんだ」
「俺に頼みか?」
「ジルはここ最近、謎の不審死が続いていることは知っているかい?」
「ああ」
「それは話が早くて助かるよ」
手間が省けて少しだけ表情が緩んだミハエルに、ジルヴェスターは続きを促すように視線で合図を送る。
「その不審死した人の中に私の友人がいてね。昨日、自宅を訪ねて現場を調査してきたんだ」
調査してわかった現場の状況を、ミハエルは推測を交えながらジルヴェスターに説明していく。
「――なるほど。争った形跡はないが、生前の被害者の様子を見るに、なんの理由もなく突如亡くなるのは不自然だということだな」
ミハエルの説明を聞いたジルヴェスターは脳内で情報を整理する。
「他の被害者が亡くなった現場もいくつか見て回ったけど、拭い切れない違和感があった」
「そうか」
最近頻発している不審死した者が亡くなった現場を事前に調べに行っていた。その結果、やはり確たる証拠は得られなかったが、不自然な点があるのは共通していた。
「情けないことに私では力及ばないようでね。そこでジルに頼みに来たんだ」
「俺の眼で視て来いということだな?」
「単刀直入に言うとそういうことだね。頼まれてくれるとありがたいかな……」
「いいぞ」
「本当かい!?」
「ああ」
ジルヴェスターは話の流れからミハエルが自分に何を求めているのかを察した。
「ちょうど爺にも頼まれていたからな」
「そうだったんだ」
ジルヴェスターは一昨日にフェルディナンドから頼みごとをされたばかりだ。
今回ミハエルから頼まれたことと同じことだったので、彼からの頼みを断る理由はなかった。
「助かるよ」
「大したことではないから気にするな」
ミハエルが誠意を込めて感謝を告げる。
「――それにしても、わざわざ学園にまで足を運ばなくても良かったんじゃないのか?」
「直接家の方に行こうかと思ったんだけど不在かもしれないし、ここに来てしまえば確実に会えると思ってね」
「確かに擦れ違いになっていたかもしれないな」
ランチェスター学園が登校日である以上、ジルヴェスターは当然登校するだろう。
なので、ミハエルは確実に会えると踏んでいた。そしてその通りになったというわけだ。
「念話で訪ねることを伝えておけば良かったと思うけれど」
レティが当然の疑問を口にする。
事前に念話で予定を尋ねて約束を交わしてしていれば問題なかったはすだ。
だが、ミハエルは念話を使わなかった。
「いや~、それだとジルが何かしら理由をつけて逃げるかもしれないと思ってね……」
ミハエルはジルヴェスターのことなので、忙しいのなんのと色々理由をつけて逃げるかもしれないと思った。故に、逃げる選択肢を潰す為に事前情報なしで直接会いに来たのだ。
「それは確かにあり得るわね」
「おい」
納得して深く頷くレティにジルヴェスターはもの言いたげな目を向けるが、自分でも可能性があると思ったので何も言い返せなかった。
MACと新魔法の開発、術式や歴史の研究などやりたいことが多々あり、厄介事は御免被りたいのが本音だ。とはいえ、友人や世話になっている人の頼みを無下に断るほど薄情ではない。
「――それじゃ私はこれで失礼するよ」
話が纏まったところでミハエルが席を立つ。
「講演の件は忘れずにね」
「……もちろんです」
レティに釘を刺されたミハエルは重々しく頷く。
彼の胸中は絶対に忘れてはいけないと深刻な心境だった。
「俺も失礼する」
ジルヴェスターもミハエルの後に続くように立ち上がる。
そして二人は共にレティに見送られながら学園長室を後にした。
ミハエルがなんの理由もなしにランチェスター学園を訪れるわけがないと思ったジルヴェスターが尋ねる。まさか談笑する為だけにやってきたわけではあるまい。
「もちろんだよ」
ミハエルは先程までの和やかな雰囲気を払拭するかのように居住まいを正して表情を引き締める。
「実はジルに頼みがあって来たんだ」
「俺に頼みか?」
「ジルはここ最近、謎の不審死が続いていることは知っているかい?」
「ああ」
「それは話が早くて助かるよ」
手間が省けて少しだけ表情が緩んだミハエルに、ジルヴェスターは続きを促すように視線で合図を送る。
「その不審死した人の中に私の友人がいてね。昨日、自宅を訪ねて現場を調査してきたんだ」
調査してわかった現場の状況を、ミハエルは推測を交えながらジルヴェスターに説明していく。
「――なるほど。争った形跡はないが、生前の被害者の様子を見るに、なんの理由もなく突如亡くなるのは不自然だということだな」
ミハエルの説明を聞いたジルヴェスターは脳内で情報を整理する。
「他の被害者が亡くなった現場もいくつか見て回ったけど、拭い切れない違和感があった」
「そうか」
最近頻発している不審死した者が亡くなった現場を事前に調べに行っていた。その結果、やはり確たる証拠は得られなかったが、不自然な点があるのは共通していた。
「情けないことに私では力及ばないようでね。そこでジルに頼みに来たんだ」
「俺の眼で視て来いということだな?」
「単刀直入に言うとそういうことだね。頼まれてくれるとありがたいかな……」
「いいぞ」
「本当かい!?」
「ああ」
ジルヴェスターは話の流れからミハエルが自分に何を求めているのかを察した。
「ちょうど爺にも頼まれていたからな」
「そうだったんだ」
ジルヴェスターは一昨日にフェルディナンドから頼みごとをされたばかりだ。
今回ミハエルから頼まれたことと同じことだったので、彼からの頼みを断る理由はなかった。
「助かるよ」
「大したことではないから気にするな」
ミハエルが誠意を込めて感謝を告げる。
「――それにしても、わざわざ学園にまで足を運ばなくても良かったんじゃないのか?」
「直接家の方に行こうかと思ったんだけど不在かもしれないし、ここに来てしまえば確実に会えると思ってね」
「確かに擦れ違いになっていたかもしれないな」
ランチェスター学園が登校日である以上、ジルヴェスターは当然登校するだろう。
なので、ミハエルは確実に会えると踏んでいた。そしてその通りになったというわけだ。
「念話で訪ねることを伝えておけば良かったと思うけれど」
レティが当然の疑問を口にする。
事前に念話で予定を尋ねて約束を交わしてしていれば問題なかったはすだ。
だが、ミハエルは念話を使わなかった。
「いや~、それだとジルが何かしら理由をつけて逃げるかもしれないと思ってね……」
ミハエルはジルヴェスターのことなので、忙しいのなんのと色々理由をつけて逃げるかもしれないと思った。故に、逃げる選択肢を潰す為に事前情報なしで直接会いに来たのだ。
「それは確かにあり得るわね」
「おい」
納得して深く頷くレティにジルヴェスターはもの言いたげな目を向けるが、自分でも可能性があると思ったので何も言い返せなかった。
MACと新魔法の開発、術式や歴史の研究などやりたいことが多々あり、厄介事は御免被りたいのが本音だ。とはいえ、友人や世話になっている人の頼みを無下に断るほど薄情ではない。
「――それじゃ私はこれで失礼するよ」
話が纏まったところでミハエルが席を立つ。
「講演の件は忘れずにね」
「……もちろんです」
レティに釘を刺されたミハエルは重々しく頷く。
彼の胸中は絶対に忘れてはいけないと深刻な心境だった。
「俺も失礼する」
ジルヴェスターもミハエルの後に続くように立ち上がる。
そして二人は共にレティに見送られながら学園長室を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います
リヒト
ファンタジー
不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?
「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」
ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。
何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。
生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。
果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!?
「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」
そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?
自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる