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囚われの親子編
第19話 第六席(五)
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「――それで本題はなんだ? わざわざミハエルが来たのには何か理由があるんだろう?」
ミハエルがなんの理由もなしにランチェスター学園を訪れるわけがないと思ったジルヴェスターが尋ねる。まさか談笑する為だけにやってきたわけではあるまい。
「もちろんだよ」
ミハエルは先程までの和やかな雰囲気を払拭するかのように居住まいを正して表情を引き締める。
「実はジルに頼みがあって来たんだ」
「俺に頼みか?」
「ジルはここ最近、謎の不審死が続いていることは知っているかい?」
「ああ」
「それは話が早くて助かるよ」
手間が省けて少しだけ表情が緩んだミハエルに、ジルヴェスターは続きを促すように視線で合図を送る。
「その不審死した人の中に私の友人がいてね。昨日、自宅を訪ねて現場を調査してきたんだ」
調査してわかった現場の状況を、ミハエルは推測を交えながらジルヴェスターに説明していく。
「――なるほど。争った形跡はないが、生前の被害者の様子を見るに、なんの理由もなく突如亡くなるのは不自然だということだな」
ミハエルの説明を聞いたジルヴェスターは脳内で情報を整理する。
「他の被害者が亡くなった現場もいくつか見て回ったけど、拭い切れない違和感があった」
「そうか」
最近頻発している不審死した者が亡くなった現場を事前に調べに行っていた。その結果、やはり確たる証拠は得られなかったが、不自然な点があるのは共通していた。
「情けないことに私では力及ばないようでね。そこでジルに頼みに来たんだ」
「俺の眼で視て来いということだな?」
「単刀直入に言うとそういうことだね。頼まれてくれるとありがたいかな……」
「いいぞ」
「本当かい!?」
「ああ」
ジルヴェスターは話の流れからミハエルが自分に何を求めているのかを察した。
「ちょうど爺にも頼まれていたからな」
「そうだったんだ」
ジルヴェスターは一昨日にフェルディナンドから頼みごとをされたばかりだ。
今回ミハエルから頼まれたことと同じことだったので、彼からの頼みを断る理由はなかった。
「助かるよ」
「大したことではないから気にするな」
ミハエルが誠意を込めて感謝を告げる。
「――それにしても、わざわざ学園にまで足を運ばなくても良かったんじゃないのか?」
「直接家の方に行こうかと思ったんだけど不在かもしれないし、ここに来てしまえば確実に会えると思ってね」
「確かに擦れ違いになっていたかもしれないな」
ランチェスター学園が登校日である以上、ジルヴェスターは当然登校するだろう。
なので、ミハエルは確実に会えると踏んでいた。そしてその通りになったというわけだ。
「念話で訪ねることを伝えておけば良かったと思うけれど」
レティが当然の疑問を口にする。
事前に念話で予定を尋ねて約束を交わしてしていれば問題なかったはすだ。
だが、ミハエルは念話を使わなかった。
「いや~、それだとジルが何かしら理由をつけて逃げるかもしれないと思ってね……」
ミハエルはジルヴェスターのことなので、忙しいのなんのと色々理由をつけて逃げるかもしれないと思った。故に、逃げる選択肢を潰す為に事前情報なしで直接会いに来たのだ。
「それは確かにあり得るわね」
「おい」
納得して深く頷くレティにジルヴェスターはもの言いたげな目を向けるが、自分でも可能性があると思ったので何も言い返せなかった。
MACと新魔法の開発、術式や歴史の研究などやりたいことが多々あり、厄介事は御免被りたいのが本音だ。とはいえ、友人や世話になっている人の頼みを無下に断るほど薄情ではない。
「――それじゃ私はこれで失礼するよ」
話が纏まったところでミハエルが席を立つ。
「講演の件は忘れずにね」
「……もちろんです」
レティに釘を刺されたミハエルは重々しく頷く。
彼の胸中は絶対に忘れてはいけないと深刻な心境だった。
「俺も失礼する」
ジルヴェスターもミハエルの後に続くように立ち上がる。
そして二人は共にレティに見送られながら学園長室を後にした。
ミハエルがなんの理由もなしにランチェスター学園を訪れるわけがないと思ったジルヴェスターが尋ねる。まさか談笑する為だけにやってきたわけではあるまい。
「もちろんだよ」
ミハエルは先程までの和やかな雰囲気を払拭するかのように居住まいを正して表情を引き締める。
「実はジルに頼みがあって来たんだ」
「俺に頼みか?」
「ジルはここ最近、謎の不審死が続いていることは知っているかい?」
「ああ」
「それは話が早くて助かるよ」
手間が省けて少しだけ表情が緩んだミハエルに、ジルヴェスターは続きを促すように視線で合図を送る。
「その不審死した人の中に私の友人がいてね。昨日、自宅を訪ねて現場を調査してきたんだ」
調査してわかった現場の状況を、ミハエルは推測を交えながらジルヴェスターに説明していく。
「――なるほど。争った形跡はないが、生前の被害者の様子を見るに、なんの理由もなく突如亡くなるのは不自然だということだな」
ミハエルの説明を聞いたジルヴェスターは脳内で情報を整理する。
「他の被害者が亡くなった現場もいくつか見て回ったけど、拭い切れない違和感があった」
「そうか」
最近頻発している不審死した者が亡くなった現場を事前に調べに行っていた。その結果、やはり確たる証拠は得られなかったが、不自然な点があるのは共通していた。
「情けないことに私では力及ばないようでね。そこでジルに頼みに来たんだ」
「俺の眼で視て来いということだな?」
「単刀直入に言うとそういうことだね。頼まれてくれるとありがたいかな……」
「いいぞ」
「本当かい!?」
「ああ」
ジルヴェスターは話の流れからミハエルが自分に何を求めているのかを察した。
「ちょうど爺にも頼まれていたからな」
「そうだったんだ」
ジルヴェスターは一昨日にフェルディナンドから頼みごとをされたばかりだ。
今回ミハエルから頼まれたことと同じことだったので、彼からの頼みを断る理由はなかった。
「助かるよ」
「大したことではないから気にするな」
ミハエルが誠意を込めて感謝を告げる。
「――それにしても、わざわざ学園にまで足を運ばなくても良かったんじゃないのか?」
「直接家の方に行こうかと思ったんだけど不在かもしれないし、ここに来てしまえば確実に会えると思ってね」
「確かに擦れ違いになっていたかもしれないな」
ランチェスター学園が登校日である以上、ジルヴェスターは当然登校するだろう。
なので、ミハエルは確実に会えると踏んでいた。そしてその通りになったというわけだ。
「念話で訪ねることを伝えておけば良かったと思うけれど」
レティが当然の疑問を口にする。
事前に念話で予定を尋ねて約束を交わしてしていれば問題なかったはすだ。
だが、ミハエルは念話を使わなかった。
「いや~、それだとジルが何かしら理由をつけて逃げるかもしれないと思ってね……」
ミハエルはジルヴェスターのことなので、忙しいのなんのと色々理由をつけて逃げるかもしれないと思った。故に、逃げる選択肢を潰す為に事前情報なしで直接会いに来たのだ。
「それは確かにあり得るわね」
「おい」
納得して深く頷くレティにジルヴェスターはもの言いたげな目を向けるが、自分でも可能性があると思ったので何も言い返せなかった。
MACと新魔法の開発、術式や歴史の研究などやりたいことが多々あり、厄介事は御免被りたいのが本音だ。とはいえ、友人や世話になっている人の頼みを無下に断るほど薄情ではない。
「――それじゃ私はこれで失礼するよ」
話が纏まったところでミハエルが席を立つ。
「講演の件は忘れずにね」
「……もちろんです」
レティに釘を刺されたミハエルは重々しく頷く。
彼の胸中は絶対に忘れてはいけないと深刻な心境だった。
「俺も失礼する」
ジルヴェスターもミハエルの後に続くように立ち上がる。
そして二人は共にレティに見送られながら学園長室を後にした。
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