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囚われの親子編
第18話 第六席(四)
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「相変わらずお前はレティに頭が上がらないな」
「そりゃ先輩がいなければ今の私は存在しないからね」
今のミハエルがあるのはレティのお陰と言っても過言ではない。
二人の間には切っても切れない関係性がある。
「先輩に散々扱かれたのも今となってはいい思い出だよ。卒業してからも扱かれたけどね」
「私の後釜として情けない姿を晒されたら困るもの」
ミハエルは学生時代にレティに散々扱かれた過去がある。
彼は元々優秀な生徒だった。優秀故にレティに期待されていたのだ。
現在ではレティの期待に応えるように彼女の後釜として素晴らしい活躍をしている。
「そんなに情けなかったかな……」
「そんなことはなかったと思うぞ」
自分の過去を振り返って自嘲するミハエルをジルヴェスターがフォローする。
二人の付き合いもわりと長い。
今よりも若かったミハエルのことはジルヴェスターも知っている。
「二人が本気で戦ったらどちらに軍配が上がるかわからんだろ?」
「それはどうだろうね。私としては散々扱かれた記憶が鮮明に残っているから戦いづらさがあるし」
ミハエルはレティに扱かれた過去の記憶の影響で、レティに対して苦手意識がある。
もちろん日常生活では苦手意識を抱くことはないが、扱かれていた頃は一方的に打ちのめされていたので、魔法師として相対した場合は苦手意識を抱いてしまう。
「今の私には荷が重いわ。私は一線を退いているのよ」
レティは一線を退き特級魔法師第六席の地位を返上してから既に数年経つ。
現在は準特級魔法師の地位にいるが、そもそも準特級魔法師は特級魔法師と同列に扱われている。なので、彼女の現在の実力は特級魔法師相当だ。
だが、一線を退いているのでブランクがある。腕が鈍っていてもおかしくはない。現役バリバリのミハエルと相対するのは確かに荷が重いかもしれない。
「先輩なら今でも特級魔法師に交ざっても遜色ないどころか、上位陣とも渡り合えると思いますよ」
「それは間違いないな」
「だよね?」
ミハエルの見立てでは、現在のレティでも特級魔法師に相応しい実力を有していると踏んでいる。むしろ特級魔法師の中でも上位の序列に君臨する者たちとも渡り合えると思っていた。
それに関しては特級魔法師第一席の座に君臨するジルヴェスターもお墨付きを与えるほどだ。
「ふふ。まあ、私もそんな簡単にやられる気はないわよ」
持ち上げられたレティは微笑みを浮かべる。
なんだかんだ言いつつも彼女は自分の実力に確固たる自信を持っていた。
「そもそも荷が重いのは私の方ですよ」
「あら? 第六席ともあろう者が情けないことを言うわね」
ミハエルが溜息を吐いて愚痴ると、レティが揶揄うような口調で言葉を掛けた。
「特級魔法師第六席として暴れ回っていた先輩の後釜に据えられたんですよ? 私には荷が重いです」
「お前は真面目だもんな」
特級魔法師第六席として好き放題暴れ回っていたレティに対し、ミハエルは真面目で責任感が強い。必要以上に重圧を感じてしまうこともあるだろう。
ジルヴェスターの指摘は的を射ている。
「私が真面目ではないみたいな言い方ね」
「ミハエルと比較したら真面目ではないだろう?」
「ミハエルが生真面目すぎるだけで私も真面目よ」
自分は真面目ではないと言われているような気がしたレティが苦言を呈するが、確かにミハエルと比較すると真面目ではないと言われても仕方がないのかもしれない。
決してレティが不真面目だったわけではなく、ミハエルが生真面目すぎるのだ。
「私が席次を返上した後に第六席にあったのだから立派に務め上げてほしいわ」
「……善処します」
レティが第六席だった頃、ミハエルも既に特級魔法師だった。
レティが席次を返上したことでミハエルが第六席の座に繰り上げられ、引き継ぐ形で第六席の座に就いた。それが後釜と言われている所以だ。
――『貴公子』の異名で親しまれているミハエル・シュバインシュタイガーは、特級魔法師第六席の地位を与えられた国内でもトップクラスの魔法師で、第六席の地位を汚すことのないように懸命に務め上げている好青年だ。
白い肌をしており、ショートとミディアムの中間くらいの長さの金髪を清潔感のあるヘアスタイルに整え、前髪から覗く碧眼がより彼の整った顔を魅力的に演出している。
貴公子然とした立ち振る舞いと雰囲気、そして真面目な性格から男女問わず尊敬されている。
特に女性からの人気は絶大だ。特級魔法師の中で最も女性人気が高い。特級魔法師に限らず、全ての魔法師を含めて女性人気ナンバーワンの魔法師であり、常に黄色い眼差しを向けられている人気者だ。
女性の影が全くないことで更に女性人気に拍車を掛けているのだが、そのことに本人は全く気づいていない。
ミハエルがランチェスター学園の一年生だった頃、レティは大学一年生だった。
当時から教師を志していたレティは魔法師として活動しながら大学に通っていた。教師になる為には大学で勉強して教員免許を取得しなければならないからだ。
勉学でも優秀だったレティは早々に単位を取得し、在学中に見事教員免許を取得した。
魔法師としても活動していたので多忙だった彼女は、当時のランチェスター学園の学園長の計らいで、大学に在学しながら非常勤講師として勤務していた。
当時の学園長がレティのことを放っておかなかったのだ。それも当然だろう。特級魔法師になれるほどの実力を持つ人間を教師に招くチャンスをみすみす逃すわけがない。高校時代から飛び抜けて優秀だった教え子なので尚更だ。
当時のレティは魔法師、大学生、非常勤講師と三足の草鞋を履いている状態だった。
そのようにとても多忙な日々を送っていた頃にレティとミハエルは出会った。
ミハエルの才能に目を付けたレティは彼をしこたま扱いた。――日々のストレスを解消する為に多少過激になっていたのはレティだけの秘密である。
故にミハエルにとってレティは逆らえない先輩であり恩師でもあった。
「そりゃ先輩がいなければ今の私は存在しないからね」
今のミハエルがあるのはレティのお陰と言っても過言ではない。
二人の間には切っても切れない関係性がある。
「先輩に散々扱かれたのも今となってはいい思い出だよ。卒業してからも扱かれたけどね」
「私の後釜として情けない姿を晒されたら困るもの」
ミハエルは学生時代にレティに散々扱かれた過去がある。
彼は元々優秀な生徒だった。優秀故にレティに期待されていたのだ。
現在ではレティの期待に応えるように彼女の後釜として素晴らしい活躍をしている。
「そんなに情けなかったかな……」
「そんなことはなかったと思うぞ」
自分の過去を振り返って自嘲するミハエルをジルヴェスターがフォローする。
二人の付き合いもわりと長い。
今よりも若かったミハエルのことはジルヴェスターも知っている。
「二人が本気で戦ったらどちらに軍配が上がるかわからんだろ?」
「それはどうだろうね。私としては散々扱かれた記憶が鮮明に残っているから戦いづらさがあるし」
ミハエルはレティに扱かれた過去の記憶の影響で、レティに対して苦手意識がある。
もちろん日常生活では苦手意識を抱くことはないが、扱かれていた頃は一方的に打ちのめされていたので、魔法師として相対した場合は苦手意識を抱いてしまう。
「今の私には荷が重いわ。私は一線を退いているのよ」
レティは一線を退き特級魔法師第六席の地位を返上してから既に数年経つ。
現在は準特級魔法師の地位にいるが、そもそも準特級魔法師は特級魔法師と同列に扱われている。なので、彼女の現在の実力は特級魔法師相当だ。
だが、一線を退いているのでブランクがある。腕が鈍っていてもおかしくはない。現役バリバリのミハエルと相対するのは確かに荷が重いかもしれない。
「先輩なら今でも特級魔法師に交ざっても遜色ないどころか、上位陣とも渡り合えると思いますよ」
「それは間違いないな」
「だよね?」
ミハエルの見立てでは、現在のレティでも特級魔法師に相応しい実力を有していると踏んでいる。むしろ特級魔法師の中でも上位の序列に君臨する者たちとも渡り合えると思っていた。
それに関しては特級魔法師第一席の座に君臨するジルヴェスターもお墨付きを与えるほどだ。
「ふふ。まあ、私もそんな簡単にやられる気はないわよ」
持ち上げられたレティは微笑みを浮かべる。
なんだかんだ言いつつも彼女は自分の実力に確固たる自信を持っていた。
「そもそも荷が重いのは私の方ですよ」
「あら? 第六席ともあろう者が情けないことを言うわね」
ミハエルが溜息を吐いて愚痴ると、レティが揶揄うような口調で言葉を掛けた。
「特級魔法師第六席として暴れ回っていた先輩の後釜に据えられたんですよ? 私には荷が重いです」
「お前は真面目だもんな」
特級魔法師第六席として好き放題暴れ回っていたレティに対し、ミハエルは真面目で責任感が強い。必要以上に重圧を感じてしまうこともあるだろう。
ジルヴェスターの指摘は的を射ている。
「私が真面目ではないみたいな言い方ね」
「ミハエルと比較したら真面目ではないだろう?」
「ミハエルが生真面目すぎるだけで私も真面目よ」
自分は真面目ではないと言われているような気がしたレティが苦言を呈するが、確かにミハエルと比較すると真面目ではないと言われても仕方がないのかもしれない。
決してレティが不真面目だったわけではなく、ミハエルが生真面目すぎるのだ。
「私が席次を返上した後に第六席にあったのだから立派に務め上げてほしいわ」
「……善処します」
レティが第六席だった頃、ミハエルも既に特級魔法師だった。
レティが席次を返上したことでミハエルが第六席の座に繰り上げられ、引き継ぐ形で第六席の座に就いた。それが後釜と言われている所以だ。
――『貴公子』の異名で親しまれているミハエル・シュバインシュタイガーは、特級魔法師第六席の地位を与えられた国内でもトップクラスの魔法師で、第六席の地位を汚すことのないように懸命に務め上げている好青年だ。
白い肌をしており、ショートとミディアムの中間くらいの長さの金髪を清潔感のあるヘアスタイルに整え、前髪から覗く碧眼がより彼の整った顔を魅力的に演出している。
貴公子然とした立ち振る舞いと雰囲気、そして真面目な性格から男女問わず尊敬されている。
特に女性からの人気は絶大だ。特級魔法師の中で最も女性人気が高い。特級魔法師に限らず、全ての魔法師を含めて女性人気ナンバーワンの魔法師であり、常に黄色い眼差しを向けられている人気者だ。
女性の影が全くないことで更に女性人気に拍車を掛けているのだが、そのことに本人は全く気づいていない。
ミハエルがランチェスター学園の一年生だった頃、レティは大学一年生だった。
当時から教師を志していたレティは魔法師として活動しながら大学に通っていた。教師になる為には大学で勉強して教員免許を取得しなければならないからだ。
勉学でも優秀だったレティは早々に単位を取得し、在学中に見事教員免許を取得した。
魔法師としても活動していたので多忙だった彼女は、当時のランチェスター学園の学園長の計らいで、大学に在学しながら非常勤講師として勤務していた。
当時の学園長がレティのことを放っておかなかったのだ。それも当然だろう。特級魔法師になれるほどの実力を持つ人間を教師に招くチャンスをみすみす逃すわけがない。高校時代から飛び抜けて優秀だった教え子なので尚更だ。
当時のレティは魔法師、大学生、非常勤講師と三足の草鞋を履いている状態だった。
そのようにとても多忙な日々を送っていた頃にレティとミハエルは出会った。
ミハエルの才能に目を付けたレティは彼をしこたま扱いた。――日々のストレスを解消する為に多少過激になっていたのはレティだけの秘密である。
故にミハエルにとってレティは逆らえない先輩であり恩師でもあった。
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