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囚われの親子編
第45話 侵入(三)
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◇ ◇ ◇
夜が更けた頃、ジルヴェスターはプリム区のティシャンに赴いていた。
現在は一際豪奢な屋敷の前にいる。ビリー・トーマスの屋敷だ。
「趣味が悪いな」
屋敷を見回した第一印象がそれだった。如何にも金をふんだんに費やしたと思われる外観に目を逸らしたくなったほどだ。
時間的に人気がないので、隠密行動には適している。
その上、ジルヴェスターは光学迷彩、消音の包容、無臭を同時に行使し、万全の態勢を整えていた。
――『無臭』は無属性の第二位階魔法で、対象の臭いを消す生活魔法だ。
魔法の効果で誰もジルヴェスターの存在には気づかない。
趣味の悪い外観に辟易しながらも、目的を果たす為に足を踏み出す。
身体強化も行使して屋敷を囲っている塀を飛び越える。
敷地内に入ると、屋敷に侵入できそうな場所がないか見て回る。
完全に不法侵入だが、ジルヴェスターは気にした様子もなく平然としていた。
(ん……?)
明かりが漏れている窓を見上げると、カーテンが揺らめいていた。
暗くて判別しにくいが、千里眼を行使して確認する。
すると僅かに窓が開いており、風でカーテンが揺れていたのだ。
――『千里眼』は無属性魔法の第六位階魔法で、遠くを視ることができる支援魔法だ。より遠くを視るほど魔力を消費する。
窓の場所は三階であり、普通は侵入口に使えない。だが、魔法師には関係ないことだ。
魔法を行使できれば簡単に三階へ飛び移れる。
ジルヴェスターは難なく窓がある外壁へ飛び移ると、窓の隙間から手を伸ばしてカーテンを捲り、室内の様子を窺う。
窓の先は廊下だった。幸いなことに人の姿は見当たらない。
室内の様子を確認したジルヴェスターは、窓を開けて侵入した。
廊下に出ると、不法侵入しているにも拘わらず堂々と歩いていく。
光学迷彩と消音の包容で姿と音を消し、更に無臭で匂いも消しているが、歩いた際に生じる空気の流れまでは消せない。なので、人とすれ違う際はさすがに足を止めている。
目指す場所はビリーの執務室だ。
どこが執務室なのかわからないので、手当たり次第部屋を確認していく。
その最中、途中でビリーが複数の女性と乱交している場面を目撃してしまう。
乗り気な女性もいれば、諦念して表情が抜け落ちている女性もおり、様々な境遇の人がいることを物語っていた。
堂々としながらも気づかれないように細心の注意を払い、いくつもの部屋に入って行くと、遂に目的の場所へと辿り着く。
(ここか)
その場所はビリーの執務室だった。
部屋に侵入すると、目当ての物がないか見て回る。
今回ビリーの屋敷に侵入したのは、後ろ暗いことに手を染めている証拠を探る為だ。
もちろん悪事を働いていない可能性もあるが、それは調べれば判明する。
デスクの引き出しや、棚などを一通り探っていく。
(目ぼしい物はないか……)
悪事の証拠になりかねない物を残しておくほど浅慮ではないのか、成果は芳しくなかった。
(仕方ない……できればこの手は使いたくなかったが……)
証拠を見つけられなくても、取れる手段は他にもある。ただ、少々強引な手になってしまうので、可能なら避けたかったのが本音だ。
強硬策に出るとしても、ビリーが一人の時を狙わなくてはならない。
(一先ず今日のところは退散すべきだな)
乱交がいつ終わるのかわからない。
いつまでも待ってなどいられないし、他人の行為を観察する趣味もないので、大人しく日を改めることにした。
夜が更けた頃、ジルヴェスターはプリム区のティシャンに赴いていた。
現在は一際豪奢な屋敷の前にいる。ビリー・トーマスの屋敷だ。
「趣味が悪いな」
屋敷を見回した第一印象がそれだった。如何にも金をふんだんに費やしたと思われる外観に目を逸らしたくなったほどだ。
時間的に人気がないので、隠密行動には適している。
その上、ジルヴェスターは光学迷彩、消音の包容、無臭を同時に行使し、万全の態勢を整えていた。
――『無臭』は無属性の第二位階魔法で、対象の臭いを消す生活魔法だ。
魔法の効果で誰もジルヴェスターの存在には気づかない。
趣味の悪い外観に辟易しながらも、目的を果たす為に足を踏み出す。
身体強化も行使して屋敷を囲っている塀を飛び越える。
敷地内に入ると、屋敷に侵入できそうな場所がないか見て回る。
完全に不法侵入だが、ジルヴェスターは気にした様子もなく平然としていた。
(ん……?)
明かりが漏れている窓を見上げると、カーテンが揺らめいていた。
暗くて判別しにくいが、千里眼を行使して確認する。
すると僅かに窓が開いており、風でカーテンが揺れていたのだ。
――『千里眼』は無属性魔法の第六位階魔法で、遠くを視ることができる支援魔法だ。より遠くを視るほど魔力を消費する。
窓の場所は三階であり、普通は侵入口に使えない。だが、魔法師には関係ないことだ。
魔法を行使できれば簡単に三階へ飛び移れる。
ジルヴェスターは難なく窓がある外壁へ飛び移ると、窓の隙間から手を伸ばしてカーテンを捲り、室内の様子を窺う。
窓の先は廊下だった。幸いなことに人の姿は見当たらない。
室内の様子を確認したジルヴェスターは、窓を開けて侵入した。
廊下に出ると、不法侵入しているにも拘わらず堂々と歩いていく。
光学迷彩と消音の包容で姿と音を消し、更に無臭で匂いも消しているが、歩いた際に生じる空気の流れまでは消せない。なので、人とすれ違う際はさすがに足を止めている。
目指す場所はビリーの執務室だ。
どこが執務室なのかわからないので、手当たり次第部屋を確認していく。
その最中、途中でビリーが複数の女性と乱交している場面を目撃してしまう。
乗り気な女性もいれば、諦念して表情が抜け落ちている女性もおり、様々な境遇の人がいることを物語っていた。
堂々としながらも気づかれないように細心の注意を払い、いくつもの部屋に入って行くと、遂に目的の場所へと辿り着く。
(ここか)
その場所はビリーの執務室だった。
部屋に侵入すると、目当ての物がないか見て回る。
今回ビリーの屋敷に侵入したのは、後ろ暗いことに手を染めている証拠を探る為だ。
もちろん悪事を働いていない可能性もあるが、それは調べれば判明する。
デスクの引き出しや、棚などを一通り探っていく。
(目ぼしい物はないか……)
悪事の証拠になりかねない物を残しておくほど浅慮ではないのか、成果は芳しくなかった。
(仕方ない……できればこの手は使いたくなかったが……)
証拠を見つけられなくても、取れる手段は他にもある。ただ、少々強引な手になってしまうので、可能なら避けたかったのが本音だ。
強硬策に出るとしても、ビリーが一人の時を狙わなくてはならない。
(一先ず今日のところは退散すべきだな)
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