11 / 32
第一章 都合のいい女と憧れの女性
第11話 告白
しおりを挟む
◆ ◆ ◆
「――ごめん。こんなこと言われても困るよね……」
悠くんが申し訳なさそうに私の耳元で呟く。
その声には覇気がなくて弱々しさがあるけれど、しっかりと気持ちを伝えようとしてくれているのはひしひしと感じる。
正直、今の私は頭が混乱していて思考力を欠いている。悠くんに動揺を悟られないようにするだけで精一杯。息子のように想っている男の子に突然告白されたら誰だって驚くと思う。
普通なら揶揄われていると思うよね?
でも悠くんは冗談でこんなことをする子じゃない。だから本気なのだろう。
それでも揶揄われている可能性を探ってしまうのは、今の状況を受け入れきれていない証拠なのかもしれない。
彼が勇気を振り絞って想いを告げてくれたのだから、私もちゃんと向き合わないといけない。
そのためには、まず確認しておかないといけないことがある。
「その、確認なんだけど……」
「うん」
「悠くんが言う好きっていうのは、恋愛対象としてで合ってる?」
「うん。合ってる」
悠くんは私の質問に頷くと、先程までより強く抱き締めてきた。
男の人にこんなに強く抱きしめられるのが久しぶりすぎて、少しだけドキッとしてしまった。
悠くんにバレていなければいいけど……。
正直言うと、私も女なので男性に好意を寄せられることに悪い気はしない。夫との関係が冷めきっているから尚更。
でも悠くんは私にとって息子同然の男の子だから複雑な心境だ。
息子のように想っている子に好かれているのは素直に嬉しい。だけれど、それはあくまでも親子愛のような好意だったらの話だ。
そもそも彼は親友の息子だし、私とは親子ほど年が離れている。申し訳ないけど彼のことは息子のようにしか思えない。
それに親バカかもしれないけれど、悠くんは見た目がいいし、優しくて気遣いができる子だ。
だから彼ならもっと若くてかわいい女の子を虜にできるはず。
私のようなおばさんが相手だと悠くんは幸せになれないもの。
だって私はもういい年だからすぐに今よりも老けてしまうし、彼よりもだいぶ早く死んでしまう。
第一、親友の息子に手を出すなんて麗子に顔向けできない。
悠くんには幸せになってほしいけれど、私は彼の気持ちに応えてあげることができない。
きっと彼を幸せにしてくれる素敵なお嫁さんが現れてくれるわ。
「今まで自分の気持ちを抑え込んでいたんだけど、舞さんが孝二さんと上手くいってないと知って我慢できなくなってしまったんだ」
「そっか……」
苦しそうに言葉を絞り出す悠くんの様子に、私の胸が締めつけられる。
好きな気持ちを封じ込めることがどれだけ辛いことか。しかも物心ついた頃からずっとだ。
私も夫との関係で押し殺している感情はあるけれど、悠くんほど長い期間ではないし、それなりに人生経験を積んでいる大人だから気持ちに折り合いをつけられる。
今の悠くんと同じような年齢の時にそんな長い期間、自分の気持ちを押し殺したことなんて私には経験がないから彼の心情は想像することしかできない。
好意を寄せる相手と距離があるならともかく、私と悠くんは頻繁に顔を会わせている。もしかしたら悠くんは私と会う度に自分の気持ちを抑え込んでいたのかもしれない。
私が彼のお母さんの親友であることと、既婚者であるという望みのない事実。それが悠くんの心を相当苦しめていたはず。
自分の想いが報われることはないとわかっているのに、好きになってしなった以上はそう簡単に気持ちを捨てられないだろう。
やるせない気持ちを抱えたまま想い人と接し続けなければならなかったことが、どれだけ辛いことかは想像にかたくない。
そこまで考えが行きつくと、私の心は罪悪感に苛まれる。
もし私が悠くんの好意にもっと早く気づいてあげることができていたのなら、彼はこんなに苦しまずに済んだのかもしれない。
「気づいてあげられなくてごめんね」
私が謝ったところで慰めにもならないだろう。
それでも彼の心が少しでも軽くなる可能性があるのなら私はなんだってする。
「舞さんはなにも悪くないよ」
頭上で悠くんが首を左右に振っているのが感触でわかる。
「正直、悠くんみたいな若くてかっこいい子に好きになってもらえたのはとても嬉しい。でもごめんね。悠くんの気持ちには応えてあげられないの……」
「うん……わかってる……」
悠くんの寂しそうな声が鋭利な刃物となって私の胸を突き刺す。
「舞さんが既婚者なのも、俺が息子のようにしか思われていないのも全部わかってる」
絞り出すように言葉を紡ぐ悠くんの様子に物凄く罪悪感が押し寄せてくるけれど、逃げるわけにはいかない。彼とはしっかり向き合わないといけないから。
「だけど、どうしようもないくらい舞さんのことが好きなんだ。この気持ちはどう足掻いても抑えきれない」
「悠くんにそんなに想ってもらえて私は本当に嬉しいよ。ありがとう」
こんなに直球で愛情を向けられるのが久しぶりだからか、年甲斐もなく私の渇いた心が潤されていく。
もし相手が悠くんじゃなくて、もっと年齢が近くて交流のある男性だったら絆されていたかもしれない。
そう思ってしまうほど、私は夫との関係に参っているのかも……。
だからって悠くんに慰めてもらうわけにはいかない。彼の好意につけ込んで甘えるのは間違っている。私は彼にそんな卑怯なことをしたくはないし、そこまで恥知らずでもない。
そもそも結婚している以上、不貞を働く気は毛頭ない。どんなに夫に愛想を尽かしていても、関係が冷めきっていてもだ。
「――ごめん。こんなこと言われても困るよね……」
悠くんが申し訳なさそうに私の耳元で呟く。
その声には覇気がなくて弱々しさがあるけれど、しっかりと気持ちを伝えようとしてくれているのはひしひしと感じる。
正直、今の私は頭が混乱していて思考力を欠いている。悠くんに動揺を悟られないようにするだけで精一杯。息子のように想っている男の子に突然告白されたら誰だって驚くと思う。
普通なら揶揄われていると思うよね?
でも悠くんは冗談でこんなことをする子じゃない。だから本気なのだろう。
それでも揶揄われている可能性を探ってしまうのは、今の状況を受け入れきれていない証拠なのかもしれない。
彼が勇気を振り絞って想いを告げてくれたのだから、私もちゃんと向き合わないといけない。
そのためには、まず確認しておかないといけないことがある。
「その、確認なんだけど……」
「うん」
「悠くんが言う好きっていうのは、恋愛対象としてで合ってる?」
「うん。合ってる」
悠くんは私の質問に頷くと、先程までより強く抱き締めてきた。
男の人にこんなに強く抱きしめられるのが久しぶりすぎて、少しだけドキッとしてしまった。
悠くんにバレていなければいいけど……。
正直言うと、私も女なので男性に好意を寄せられることに悪い気はしない。夫との関係が冷めきっているから尚更。
でも悠くんは私にとって息子同然の男の子だから複雑な心境だ。
息子のように想っている子に好かれているのは素直に嬉しい。だけれど、それはあくまでも親子愛のような好意だったらの話だ。
そもそも彼は親友の息子だし、私とは親子ほど年が離れている。申し訳ないけど彼のことは息子のようにしか思えない。
それに親バカかもしれないけれど、悠くんは見た目がいいし、優しくて気遣いができる子だ。
だから彼ならもっと若くてかわいい女の子を虜にできるはず。
私のようなおばさんが相手だと悠くんは幸せになれないもの。
だって私はもういい年だからすぐに今よりも老けてしまうし、彼よりもだいぶ早く死んでしまう。
第一、親友の息子に手を出すなんて麗子に顔向けできない。
悠くんには幸せになってほしいけれど、私は彼の気持ちに応えてあげることができない。
きっと彼を幸せにしてくれる素敵なお嫁さんが現れてくれるわ。
「今まで自分の気持ちを抑え込んでいたんだけど、舞さんが孝二さんと上手くいってないと知って我慢できなくなってしまったんだ」
「そっか……」
苦しそうに言葉を絞り出す悠くんの様子に、私の胸が締めつけられる。
好きな気持ちを封じ込めることがどれだけ辛いことか。しかも物心ついた頃からずっとだ。
私も夫との関係で押し殺している感情はあるけれど、悠くんほど長い期間ではないし、それなりに人生経験を積んでいる大人だから気持ちに折り合いをつけられる。
今の悠くんと同じような年齢の時にそんな長い期間、自分の気持ちを押し殺したことなんて私には経験がないから彼の心情は想像することしかできない。
好意を寄せる相手と距離があるならともかく、私と悠くんは頻繁に顔を会わせている。もしかしたら悠くんは私と会う度に自分の気持ちを抑え込んでいたのかもしれない。
私が彼のお母さんの親友であることと、既婚者であるという望みのない事実。それが悠くんの心を相当苦しめていたはず。
自分の想いが報われることはないとわかっているのに、好きになってしなった以上はそう簡単に気持ちを捨てられないだろう。
やるせない気持ちを抱えたまま想い人と接し続けなければならなかったことが、どれだけ辛いことかは想像にかたくない。
そこまで考えが行きつくと、私の心は罪悪感に苛まれる。
もし私が悠くんの好意にもっと早く気づいてあげることができていたのなら、彼はこんなに苦しまずに済んだのかもしれない。
「気づいてあげられなくてごめんね」
私が謝ったところで慰めにもならないだろう。
それでも彼の心が少しでも軽くなる可能性があるのなら私はなんだってする。
「舞さんはなにも悪くないよ」
頭上で悠くんが首を左右に振っているのが感触でわかる。
「正直、悠くんみたいな若くてかっこいい子に好きになってもらえたのはとても嬉しい。でもごめんね。悠くんの気持ちには応えてあげられないの……」
「うん……わかってる……」
悠くんの寂しそうな声が鋭利な刃物となって私の胸を突き刺す。
「舞さんが既婚者なのも、俺が息子のようにしか思われていないのも全部わかってる」
絞り出すように言葉を紡ぐ悠くんの様子に物凄く罪悪感が押し寄せてくるけれど、逃げるわけにはいかない。彼とはしっかり向き合わないといけないから。
「だけど、どうしようもないくらい舞さんのことが好きなんだ。この気持ちはどう足掻いても抑えきれない」
「悠くんにそんなに想ってもらえて私は本当に嬉しいよ。ありがとう」
こんなに直球で愛情を向けられるのが久しぶりだからか、年甲斐もなく私の渇いた心が潤されていく。
もし相手が悠くんじゃなくて、もっと年齢が近くて交流のある男性だったら絆されていたかもしれない。
そう思ってしまうほど、私は夫との関係に参っているのかも……。
だからって悠くんに慰めてもらうわけにはいかない。彼の好意につけ込んで甘えるのは間違っている。私は彼にそんな卑怯なことをしたくはないし、そこまで恥知らずでもない。
そもそも結婚している以上、不貞を働く気は毛頭ない。どんなに夫に愛想を尽かしていても、関係が冷めきっていてもだ。
1
あなたにおすすめの小説
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる