幼い頃から憧れている女性は母の親友

雅鳳飛恋

文字の大きさ
18 / 32
第二章 条件彼女

第5話 デート

しおりを挟む
◇ ◇ ◇

 カラオケを後にした俺と有坂は、隣の駅の近くにあるショッピングモールに訪れていた。

 このショッピングモールは俺たちが通う高校の最寄り駅から一駅しか離れていないので、放課後に足を運ぶ生徒が多い。友達と遊んだり、学校帰りのついでに買い物をしたりなど用件は様々だが、非常に重宝されている。

 そして俺たちは今、衣服やアクセサリー、キャラクター商品やリラクゼーション用品などの雑貨を取り扱う店にいた。

「これとこれ、どっちがいいと思う?」

 二種類のイヤリングを手に持つ有坂がそう尋ねてくる。
 右手にあるのはシンプルなリングのイヤリングで、左手にあるのは花柄をモチーフした物だ。

「そうだな……」

 そう呟いた俺は花柄のイヤリングを手に取ると、有坂の艶がある綺麗な髪を優しく掻き分けて左耳にあてがう。

 直感で有坂には花柄のイヤリングのほうが似合うと思ったが、やはり俺の見立てに間違いはなかった。

 リングよりも花柄のイヤリングのほうがより一層、清楚でお淑やか印象がある彼女の魅力を引き立てている。リングのイヤリングを耳にあてがって確かめてみる必要がないほど、明らかだった。制服姿でも似合っているが、私服だったらもっと映えていただろう。

 もちろん彼女ならリングも似合うので、あくまでもどちらかと言えばの話だ。

「こっちじゃないか?」
「ならそれにしよ」

 俺の手から花柄のイヤリングを受け取った有坂は、笑みを零しながらレジへ足を向けた。

 もしかしたら、彼女は花柄のイヤリングのほうが気に入っていたのかもしれない。だが、リングのほうも気になっていたから、俺に意見を求めたのだと思う。

 自分で言うのは烏滸おこがましいかもしれないが、好きな男に選んでもらった物なら迷わず買えるということなのだろう。

 というか、有坂には世話になっているし、迷惑もかけているから、イヤリングくらいなら俺が買っても良かったんだけどな……。――まあ、本人は間違いなく遠慮するだろうし、押し問答する羽目になるのが目に見えているから無理強いするつもりはないが。

 いずれにしろ、有坂が満足しているならとやかく言うつもりはない。今日は一日、彼女に付き合うつもりだからな。

 それに有坂が喜んでいる姿を見るのは俺も純粋に嬉しい。
 美少女が喜ぶ姿を見てネガティブな気持ちになる男など存在しないだろうが、それとは別に彼女に特別な情が湧いている身としては感慨深いものがある。

 なんて一人で物思いに耽っていると、会計を済ませた有坂が戻ってきた。

「お待たせ」

 満足そうに頬を緩めている有坂の様子に釣られて、俺も自然と口元の筋肉が柔らかくなる。

「次はどうする?」
「う~ん」

 有坂は小首を傾げながら考え込むが――

「適当に見て回るかな」

 と数秒後には答えを出した。

「そうするか」
「うん」

 まあ、そもそもなにか目的があってショッピングモールに来たわけではないから、気軽にウィンドウショッピングするくらいがちょうどいいのかもしれない。

 むしろ普通のデートっぽくないか?
 俺は舞さんに対する想いを拗らせてしまったのが原因で、今まで誰とも付き合ったことがない。なので、恋人同士がする一般的なデートがいったいどのようなものなのか良くわかっていない。

 マンガやアニメ、ラノベやドラマなどでたまに目にするから、それを参考になんとなく想像することはできる。だが、マンガとかはあくまでもフィクションだから鵜呑みにはできない。

 有坂はもちろん、他のセフレや女友達とも今みたいに買い物をしたり、遊びに行ったりもするので、デートらしいことは普段からしている。

 とはいえ、果たしてそれは世間一般的な価値観に照らし合わせると、普通のデートになるのだろうか……?

 デートの形や意味は人それぞれだから気にする必要はないのかもしれないが、女友達やセフレ以外とまともにデートらしいことをした経験がなく、恋愛を拗らせていろいろと感覚が麻痺してしまっている俺には、なにが普通で、なにがいびつなのか全く判断がつかない。

 いくら考えても答えは出ないけど、とりあえず有坂が楽しそうにしているならそれで充分だろう。今日は彼女のために時間を使うと決めているから、むしろこれが正解ではないだろうか?

 有坂が楽しそうにしていると悪い気はしないし、いくら見ても飽きることがない光景だ。
 俺も彼女といると楽しいから時間を忘れてしまうことが度々ある。

 だから、これが普通のデートというやつなのではないだろうか?
 仮に違ったとしても、俺たちのデートの形としては正解だと思う。

 気を紛らわすという俺の本来の目的を果たせているし、有坂にとっても好きな男と過ごせる貴重な時間のはずだ。――都合良く利用している立場の俺が言うのは本当に烏滸おこがましいが。

「どうかしたの?」

 思考の海に潜っていると、有坂が不思議そうに俺の顔を下から覗き込んできた。

 絹のような艶がある黒い瞳が俺の目に突き刺さる。
 見慣れているはずなのに思わず見惚れてしまうのは、それだけ俺が彼女の魅力にりつかれている証拠なのかもしれない――と思いつつも、そんなことはおくびにも出さずに質問に答える。

「いや、少し考えごとをしていただけだ」
「ふうん。もう解決した?」
「ああ。ちょうど今さっきな」
「そっか」

 気にした素振りを見せない有坂は深く追及せずに歩き出し――

「なら行こっか」

 と含みのない軽やかな声色で微笑みながら口にする。

 思いのほか興味を示さなかったことに、俺は少しだけ呆気に取られてしまい、後を追うのが一拍ほど遅れてしまった。
 なぜなら、いつもの有坂ならどんなに些細なことでも、俺に関することは大なり小なり興味を示すからだ。

 だが、ついさっきの反応はいつもの彼女とは違った。
 どうしていつもと違う態度になったのかはわからないが、俺は心なしか寂しさを感じてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯
青春
 雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。  彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。  しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。 彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...