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立て直し
努力の果てに:②
ピザを2枚食べたところで私もスープを食べようかなって思って、せっかくだからアダムにも盛ってあげた。
アダムはとても嬉しそうに「アリガト、カエデチョン。」って言った。
ビリーは笑って「アダム、もう忘れた?カエデチャンだよ!」って言った。
みんなは爆笑して、フィンは「アダムス先生の奥さんは日本人って事だよね?」って言った。
「うん、そうなの。」私は頷いた。
「日本生まれの?」フィンは聞いた。
私は「そうだよ!メルボルンに来てもうすぐ3年半くらいかな?」って言った。
「いや、昨日ハルと二人になってから、英語圏で生まれた人なんじゃないかって話になって。英語が上手すぎて。ハルも詳しくは知らないっていうから。」フィンが言った。
「ああ、そうだよね?この間下痢で病院に来た時に俺も思った。すごい才能だよね。」ジェンセンが言った。
「食事中にーー下痢とか言うな!しかも、本人がいる前で。」ってネイトは咳き込みながら怒って、「カエ、スープが最高に美味しい。野菜がトロトロで。」って言った。
アダムも「うん、超うまい。」って言って、私は「ああ、そう?良かった。」って微笑んだ。
ビリーはそれを聞いて「俺も盛ってくる。」って言ってキッチンに行くと「ジェイも?」って言った。
ジェイは「ああ、食べる。誰かが行くの待ってた。」って笑った。
アダムは「ジェイの悪いところは、自発的に動かない所だよね。あと、腰が重い。「あの書類持ってきて。」「ああ、ちょっと待って。」みたいな?」って笑った。
ジェイは「はいはい、分かってるって。エリンにも言われる。「哺乳瓶持ってきてって言ってるのに、私が行った方が早いじゃない!」って。直そうとはしてるけどね、性格で。」って苦笑いした。
ジェンセンは「バーンズ先生の奥さんって小児科の看護師っていうのは本当ですか?」って聞いた。
ジェイは「うん、今は育休中だけどね。10月から復帰予定。」って言った。
ビリーはスープを二人分持ってくると「研修医組も遠慮なく食べてね。3日くらい食べさせられそうな量があるから。」って言った。
フィンは「せっかくだから俺が3人分盛ってくるよ。食べるでしょ?」って残りの二人に聞いた。
ジェンセンとジェニングスは頷いて、ネイトは「ジェンセンは正直どうだった?今日の検査は。」って聞いた。
ジェンセンはちょっと考えて「昨日は不安で仕方がなくて一睡もできなくて。この前失敗した時のストラウス先生の姿が脳裏に焼きついてる感じで。あの後、病院中の噂にもなってすごく落ち込んでいたけど、今日、検査前にストラウス先生が俺の手が震えてるって言って両手でしばらく俺の手を挟んでいてくれたじゃないですか?そして「自分を信じろ。他のことは頭から追い出せ。」って言ってくれて。もう、最悪は経験したんだからって思って全力を尽くした。で、今日は、最高の1日だった。患者さんも「全然痛くなかったよ。」って笑顔で帰ってくれたし。本当にストラウス先生とコール先生のおかげだなって。俺、これからいくつかの研修で不在にしたりするけれど、絶対消化器内科医になろうって思って。」って言った。
フィンが全員分盛り終わって戻ってくるとネイトは笑顔で「ジェンセン、実は仮の新体制が始まる10月からジェンセンを研修医リーダーにしようって話になってる。どう思う?」って聞いた。
ジェンセンはスプーンを手に持ったままネイトの青い目をじっと見つめて「リ、リーダーですか?」ってやっとの事で声を絞り出した。
ネイトは微笑むと「うん。外科に研修に行くのは分かってる。でも研修中も日誌を書きに毎日来てもらうし、困ったことがあればアダム達に指導だってしてもらう。そして、フレイザーとジェニングスとハンナと10月から来る女性研修医のちょっとした相談とかに乗る役割も果たしてもらいたいなって思って。」って言った。
「ーーすごいじゃん。」ってジェニングスはジェンセンの肩に手を乗せた。
フィンも「良かったね。大活躍だよ!」って言った。
ジェンセンは頷いて「何て言ったらいいか。あんなミスまでしたのに。」って言った。
ネイトは何かを言おうとして咳き込んで、ビリーは「ジェンセン?あのミスはもう終わった事なんだよ。今日の成功でもう過去の事になったんだよ。もちろん、何があったかは忘れてはいけない。でも、あの大失敗がなければ今日の成功もなかったかもしれない。だから、そうだな、成功した自分を誇ろう。」って微笑んだ。
やっと咳が止まったネイトはビリーを指さして「俺が言いたかった事を全部言ってくれた。」って笑った。
ジェンセンも笑って「うん、あの、喜んで引き受けます。」って頷いた。
ネイトとビリーは顔を見合わせて嬉しそうに笑って、私はパッタイを食べながらふとアダムの寂しそうな顔を見た。
アダムは私と目が合うと立ち上がって「もう一杯食べるよ。」って言ってキッチンに行って、フィンは「とっても美味しい。」って私に言ってくれた。
私は「普段は?自炊してるの?っていうかマットレスがあったけど、ずっと一人暮らし?」って聞いた。
フィンは「結構自炊してる。どうしても忙しい時はテイクアウトとかデリバリーとか使うけど、ほら、心臓の持病もあるし気をつけてて。あのマットレスは5月まであそこに住んでた韓国人のルームメイトが置いて行ったやつで。彼がいた時は食事は別って言ってもいろいろ作ってくれてラクで良かったんだけどね。調理師志望とかで。」って言った。
アダムは「心臓?何の病気?あれ、もしかしてそれでビール飲まない?」って聞いた。きっと不整脈の件はビリーとネイトしか知らなくて、もしかしたらこの夕食会の本当の目的もビリーとネイトしか知らないんじゃないかと私はこの時初めて思った。何か二人の目標があってこそのあの笑顔だったんじゃないかな、って思って。
フィンは全然気にする様子もなく頷いて「あの、WPW症候群で。高校生の時に不整脈の悪化で初めて診断されて、その時の主治医が実はグロスマン先生で。元々医者志望ではなかったんだけど、グロスマン先生に憧れて目指したんです。」って言った。
アダムは「あれ、それでピザも食べない?もしかして。」って言った。
フィンは「ああ、まあ。でも、大丈夫。タイ料理大好きだし、スープもおかわりするから。」って笑った。
ビリーは何かを見極めるかのようにじっとフィンを見ていた。もしかしたらボビーに憧れた自分を思い出しているのか、喘息持ちの自分と重ね合わせているのか私には分からなかったけれど。
ジェイは「へえ。じゃあ、グロスマン先生と仕事できて良かったね。そのまま循環器に残るんでしょ?」って言った。
フィンは「もちろん。」って頷いた。
そこでビリーは突然「フレイザーって毛虫好き?」って聞いた。
アダムはスープでグフッって言って、ネイトはジェンセンと大笑いして、ジェイも笑って、私はジェニングスと目が合って呆れた顔で首を振った。
意外にもフィンは真面目に「実は、女性には気持ち悪いって言われそうだけど子供の時から虫とか鳥の観察が結構好きで。不整脈で激しい運動はしない方がいいって言われていたせいもあって、インドアな生活をしてきたので。今でも騒がしいパーティーとかに行くよりは、家で映画を見たり音楽を聴いてる方が好きで。あの、ナースステーションで毛虫が出た騒ぎが合った時?あの時、俺は不在で駆除に協力できなかったけれど、もう不在だったのが悔しくって!」って言って笑った。
ビリーは嬉しそうに「じゃあさ、10月から俺とネイトの秘書にならない?まあ、表向きは俺の秘書ね。」って言った。
ジェイは「ーーマジか。」って言って、アダムは「ビリー、秘書なら俺がーー。」って言った。
でもビリーは無視して「あの、診察手伝えとかそういう話ではなくて、俺たちが手が回らない分の書類とか作ったり、会議のプレゼン作る手伝いをしたり、そういう事務的な仕事の補助の意味で。今、工事してる俺のオフィスの隅にフレイザー用のデスクも置くから。主任秘書として自由に俺のオフィスに出入りしていいし、ネイトのオフィスも隣だから何かあればそっちの補助もお願いしたいなって。俺たちも今改めて勉強中だけど循環器の知らない部分もあるからそういう知識の面でも力になってくれると嬉しい。」って言った。
私が「ショックを受けた顔をしろ」って言ったのにフィンは「絶対やります!」ってあっさり承諾して、ビリーは眉間に皺を寄せると私を見て「まさかーー昨日話した?」って言った。
私が「あれ?どうだったかな?」って惚けると、アダム達は爆笑して、ネイトは咳をしながら「この夫婦!ーー同じこと言ってる!」って笑った。
ビリーは笑うと「だめだな、カエにも守秘義務研修を受講させたい。ーー俺が教える。でも、承諾してくれてありがとう。フィンって呼ぶよ?」って言った。
フィンは頷いて「うわっ、すごい嬉しいな。ちなみにその話と毛虫と何の関係が?」って言った。
ビリーはちょっと赤くなって「それはーー後日のお楽しみ。それにしても、すごいな。秘書の話を知ってたならそれを今日の検査の視察の時にプレッシャーに感じてもおかしくなかったのに、全然そんな感じじゃなかったよね?」って言った。
フィンは笑って「なるべく考えないようにしてました。」って言った。
ビリーは微笑んで「グロスマン先生からは「大事にしてあげて。」って言われてるから、無理はさせないから。身体を第一にしてね。」って優しく言って、フィンは嬉しそうに頷いた。
ネイトは咳き込んでから「じゃあ、後はジェニングスか。何か不満とかある?」って優しく聞いた。
アダムは「指導医の前で言わせるなって。気まずいじゃん。でも、いいよ、何でも言って。」って赤くなった。
ジェニングスはビールを一口飲んだ後で「ラーソン先生にはとてもよくしてもらってます。でも、まだ本当に看護師みたいな基礎的な事しかさせてもらえなくて。点滴の針刺したり、抜いたりとか。診察の見学とかもしたいなって。」って言った。
ビリーは「ああ、なるほどね。アダムはその辺もうちょっと考えてもいいんじゃない?俺がテッドに指導されてた時は1ヶ月目から診察見学させてくれた。その方が、自分で診察することになった時に診断がしやすいだろうからって。いろんな症例を見ることが。」って言った。
アダムは「ああ、マジで?俺がジェイミーについてたときは、ジェイミーは3ヶ月目くらいからだったんだよね。だからそれで待たせてたんだけど。」って言った。
ネイトは「うん、その辺は個人の判断だけどコール先生も俺を初日から診察室に連れて行ってくれた。マナーから叩き込まれてね。俺もジェンセンに同じことしたし、いずれ他の科に研修に行かせる時も診察経験あった方がいいと思うんだよね。考えてみて。」って言った。
アダムはジェニングスに「じゃあ、明日からデビューしてみる?」って言った。
ジェニングスは嬉しそうに「はい。」って言って、ちょっと言いにくそうに「あと、モーガン先生とドノヴァン先生厳しいですよね?気分屋っていうか。」って言った。
ジェイとアダムとビリーは笑って、ジェイは「やっぱりそう思う?俺もそう思う。」って言った。
ジェニングスは「さっきストラウス先生がジェンセンに言わせたルール。あれを聞いて思ったけど、ドノヴァン先生達は自分の感情を持ち込みすぎているような気がしません?患者さんには丁寧な感じだけど、ラーソン先生が不在の日に一緒に動いていると、結構な割合で怒鳴られて。ちょっと滅入るっていうか。」って言った。
ビリーは「うーん、なるほどね。本人達に言ってもらわないと。そういうのって自覚がなくてやってたりするから。それは研修医指導係のラーンズの仕事だな。」ってアダムを見た。
アダムは「はあ?そうなの?だってまだ8月だよ?ふん、早まったな。俺がその係のリーダーになるのは10月だから、今回は聞き出したアトラウスが報告するべきだよね、ジェイ?」って笑った。
ジェイは美味しそうにピザを齧りながら「うん、俺もそう思う。今言ったって、所詮下っ端な俺たちの話なんて聞いてくれないと思うし。ビリー達が2人でジェイミーに言ったら?ああ、ビリー達も下っ端だから聞いてもらえないか!」ってわざとらしく言った。
ビリーは「なっーーネイト、どうにかして!」って言って、フィン達が笑う中、ネイトは「そうだな、ジェンセン、あと1ヶ月我慢して。10月1日にアダムに言ってもらうから。研修医指導係トップの初仕事として。」って言った。
ジェンセンは笑って「了解です。」って頷いて、アダムは「はあ!?何それ。酷いな、ネイト。」って言った。
ジェイは笑って「っていうか、副主任の方が主導してる感じだし。アダム、主任って誰だっけ?」って言った。
アダムは赤くなったビリーとネイトを睨むと「ーーアトラウスの目的は果たした?ここからは2人に大恥をかかせるために質問ゲームタイムだな。ジェニングスとフレイザーとジェンセンも遠慮なくどんどん質問して。下ネタ系も全然OKだから。この人たちーー特にビリーは叩けば叩くほどホコリが出てくるから。」って言った。
ビリーは春巻きを齧りながら「はっ!どうかな?ジェイはともかく、アダムは相当だと思うけど。見てろ、俺の副主任に秘密を暴かせるから。」って笑って、咳き込むネイトの背中をさすってあげながら私は立ち上がると「ちょっと待ってて。アップルパイ切ってくるから。」って言った。
アダムはとても嬉しそうに「アリガト、カエデチョン。」って言った。
ビリーは笑って「アダム、もう忘れた?カエデチャンだよ!」って言った。
みんなは爆笑して、フィンは「アダムス先生の奥さんは日本人って事だよね?」って言った。
「うん、そうなの。」私は頷いた。
「日本生まれの?」フィンは聞いた。
私は「そうだよ!メルボルンに来てもうすぐ3年半くらいかな?」って言った。
「いや、昨日ハルと二人になってから、英語圏で生まれた人なんじゃないかって話になって。英語が上手すぎて。ハルも詳しくは知らないっていうから。」フィンが言った。
「ああ、そうだよね?この間下痢で病院に来た時に俺も思った。すごい才能だよね。」ジェンセンが言った。
「食事中にーー下痢とか言うな!しかも、本人がいる前で。」ってネイトは咳き込みながら怒って、「カエ、スープが最高に美味しい。野菜がトロトロで。」って言った。
アダムも「うん、超うまい。」って言って、私は「ああ、そう?良かった。」って微笑んだ。
ビリーはそれを聞いて「俺も盛ってくる。」って言ってキッチンに行くと「ジェイも?」って言った。
ジェイは「ああ、食べる。誰かが行くの待ってた。」って笑った。
アダムは「ジェイの悪いところは、自発的に動かない所だよね。あと、腰が重い。「あの書類持ってきて。」「ああ、ちょっと待って。」みたいな?」って笑った。
ジェイは「はいはい、分かってるって。エリンにも言われる。「哺乳瓶持ってきてって言ってるのに、私が行った方が早いじゃない!」って。直そうとはしてるけどね、性格で。」って苦笑いした。
ジェンセンは「バーンズ先生の奥さんって小児科の看護師っていうのは本当ですか?」って聞いた。
ジェイは「うん、今は育休中だけどね。10月から復帰予定。」って言った。
ビリーはスープを二人分持ってくると「研修医組も遠慮なく食べてね。3日くらい食べさせられそうな量があるから。」って言った。
フィンは「せっかくだから俺が3人分盛ってくるよ。食べるでしょ?」って残りの二人に聞いた。
ジェンセンとジェニングスは頷いて、ネイトは「ジェンセンは正直どうだった?今日の検査は。」って聞いた。
ジェンセンはちょっと考えて「昨日は不安で仕方がなくて一睡もできなくて。この前失敗した時のストラウス先生の姿が脳裏に焼きついてる感じで。あの後、病院中の噂にもなってすごく落ち込んでいたけど、今日、検査前にストラウス先生が俺の手が震えてるって言って両手でしばらく俺の手を挟んでいてくれたじゃないですか?そして「自分を信じろ。他のことは頭から追い出せ。」って言ってくれて。もう、最悪は経験したんだからって思って全力を尽くした。で、今日は、最高の1日だった。患者さんも「全然痛くなかったよ。」って笑顔で帰ってくれたし。本当にストラウス先生とコール先生のおかげだなって。俺、これからいくつかの研修で不在にしたりするけれど、絶対消化器内科医になろうって思って。」って言った。
フィンが全員分盛り終わって戻ってくるとネイトは笑顔で「ジェンセン、実は仮の新体制が始まる10月からジェンセンを研修医リーダーにしようって話になってる。どう思う?」って聞いた。
ジェンセンはスプーンを手に持ったままネイトの青い目をじっと見つめて「リ、リーダーですか?」ってやっとの事で声を絞り出した。
ネイトは微笑むと「うん。外科に研修に行くのは分かってる。でも研修中も日誌を書きに毎日来てもらうし、困ったことがあればアダム達に指導だってしてもらう。そして、フレイザーとジェニングスとハンナと10月から来る女性研修医のちょっとした相談とかに乗る役割も果たしてもらいたいなって思って。」って言った。
「ーーすごいじゃん。」ってジェニングスはジェンセンの肩に手を乗せた。
フィンも「良かったね。大活躍だよ!」って言った。
ジェンセンは頷いて「何て言ったらいいか。あんなミスまでしたのに。」って言った。
ネイトは何かを言おうとして咳き込んで、ビリーは「ジェンセン?あのミスはもう終わった事なんだよ。今日の成功でもう過去の事になったんだよ。もちろん、何があったかは忘れてはいけない。でも、あの大失敗がなければ今日の成功もなかったかもしれない。だから、そうだな、成功した自分を誇ろう。」って微笑んだ。
やっと咳が止まったネイトはビリーを指さして「俺が言いたかった事を全部言ってくれた。」って笑った。
ジェンセンも笑って「うん、あの、喜んで引き受けます。」って頷いた。
ネイトとビリーは顔を見合わせて嬉しそうに笑って、私はパッタイを食べながらふとアダムの寂しそうな顔を見た。
アダムは私と目が合うと立ち上がって「もう一杯食べるよ。」って言ってキッチンに行って、フィンは「とっても美味しい。」って私に言ってくれた。
私は「普段は?自炊してるの?っていうかマットレスがあったけど、ずっと一人暮らし?」って聞いた。
フィンは「結構自炊してる。どうしても忙しい時はテイクアウトとかデリバリーとか使うけど、ほら、心臓の持病もあるし気をつけてて。あのマットレスは5月まであそこに住んでた韓国人のルームメイトが置いて行ったやつで。彼がいた時は食事は別って言ってもいろいろ作ってくれてラクで良かったんだけどね。調理師志望とかで。」って言った。
アダムは「心臓?何の病気?あれ、もしかしてそれでビール飲まない?」って聞いた。きっと不整脈の件はビリーとネイトしか知らなくて、もしかしたらこの夕食会の本当の目的もビリーとネイトしか知らないんじゃないかと私はこの時初めて思った。何か二人の目標があってこそのあの笑顔だったんじゃないかな、って思って。
フィンは全然気にする様子もなく頷いて「あの、WPW症候群で。高校生の時に不整脈の悪化で初めて診断されて、その時の主治医が実はグロスマン先生で。元々医者志望ではなかったんだけど、グロスマン先生に憧れて目指したんです。」って言った。
アダムは「あれ、それでピザも食べない?もしかして。」って言った。
フィンは「ああ、まあ。でも、大丈夫。タイ料理大好きだし、スープもおかわりするから。」って笑った。
ビリーは何かを見極めるかのようにじっとフィンを見ていた。もしかしたらボビーに憧れた自分を思い出しているのか、喘息持ちの自分と重ね合わせているのか私には分からなかったけれど。
ジェイは「へえ。じゃあ、グロスマン先生と仕事できて良かったね。そのまま循環器に残るんでしょ?」って言った。
フィンは「もちろん。」って頷いた。
そこでビリーは突然「フレイザーって毛虫好き?」って聞いた。
アダムはスープでグフッって言って、ネイトはジェンセンと大笑いして、ジェイも笑って、私はジェニングスと目が合って呆れた顔で首を振った。
意外にもフィンは真面目に「実は、女性には気持ち悪いって言われそうだけど子供の時から虫とか鳥の観察が結構好きで。不整脈で激しい運動はしない方がいいって言われていたせいもあって、インドアな生活をしてきたので。今でも騒がしいパーティーとかに行くよりは、家で映画を見たり音楽を聴いてる方が好きで。あの、ナースステーションで毛虫が出た騒ぎが合った時?あの時、俺は不在で駆除に協力できなかったけれど、もう不在だったのが悔しくって!」って言って笑った。
ビリーは嬉しそうに「じゃあさ、10月から俺とネイトの秘書にならない?まあ、表向きは俺の秘書ね。」って言った。
ジェイは「ーーマジか。」って言って、アダムは「ビリー、秘書なら俺がーー。」って言った。
でもビリーは無視して「あの、診察手伝えとかそういう話ではなくて、俺たちが手が回らない分の書類とか作ったり、会議のプレゼン作る手伝いをしたり、そういう事務的な仕事の補助の意味で。今、工事してる俺のオフィスの隅にフレイザー用のデスクも置くから。主任秘書として自由に俺のオフィスに出入りしていいし、ネイトのオフィスも隣だから何かあればそっちの補助もお願いしたいなって。俺たちも今改めて勉強中だけど循環器の知らない部分もあるからそういう知識の面でも力になってくれると嬉しい。」って言った。
私が「ショックを受けた顔をしろ」って言ったのにフィンは「絶対やります!」ってあっさり承諾して、ビリーは眉間に皺を寄せると私を見て「まさかーー昨日話した?」って言った。
私が「あれ?どうだったかな?」って惚けると、アダム達は爆笑して、ネイトは咳をしながら「この夫婦!ーー同じこと言ってる!」って笑った。
ビリーは笑うと「だめだな、カエにも守秘義務研修を受講させたい。ーー俺が教える。でも、承諾してくれてありがとう。フィンって呼ぶよ?」って言った。
フィンは頷いて「うわっ、すごい嬉しいな。ちなみにその話と毛虫と何の関係が?」って言った。
ビリーはちょっと赤くなって「それはーー後日のお楽しみ。それにしても、すごいな。秘書の話を知ってたならそれを今日の検査の視察の時にプレッシャーに感じてもおかしくなかったのに、全然そんな感じじゃなかったよね?」って言った。
フィンは笑って「なるべく考えないようにしてました。」って言った。
ビリーは微笑んで「グロスマン先生からは「大事にしてあげて。」って言われてるから、無理はさせないから。身体を第一にしてね。」って優しく言って、フィンは嬉しそうに頷いた。
ネイトは咳き込んでから「じゃあ、後はジェニングスか。何か不満とかある?」って優しく聞いた。
アダムは「指導医の前で言わせるなって。気まずいじゃん。でも、いいよ、何でも言って。」って赤くなった。
ジェニングスはビールを一口飲んだ後で「ラーソン先生にはとてもよくしてもらってます。でも、まだ本当に看護師みたいな基礎的な事しかさせてもらえなくて。点滴の針刺したり、抜いたりとか。診察の見学とかもしたいなって。」って言った。
ビリーは「ああ、なるほどね。アダムはその辺もうちょっと考えてもいいんじゃない?俺がテッドに指導されてた時は1ヶ月目から診察見学させてくれた。その方が、自分で診察することになった時に診断がしやすいだろうからって。いろんな症例を見ることが。」って言った。
アダムは「ああ、マジで?俺がジェイミーについてたときは、ジェイミーは3ヶ月目くらいからだったんだよね。だからそれで待たせてたんだけど。」って言った。
ネイトは「うん、その辺は個人の判断だけどコール先生も俺を初日から診察室に連れて行ってくれた。マナーから叩き込まれてね。俺もジェンセンに同じことしたし、いずれ他の科に研修に行かせる時も診察経験あった方がいいと思うんだよね。考えてみて。」って言った。
アダムはジェニングスに「じゃあ、明日からデビューしてみる?」って言った。
ジェニングスは嬉しそうに「はい。」って言って、ちょっと言いにくそうに「あと、モーガン先生とドノヴァン先生厳しいですよね?気分屋っていうか。」って言った。
ジェイとアダムとビリーは笑って、ジェイは「やっぱりそう思う?俺もそう思う。」って言った。
ジェニングスは「さっきストラウス先生がジェンセンに言わせたルール。あれを聞いて思ったけど、ドノヴァン先生達は自分の感情を持ち込みすぎているような気がしません?患者さんには丁寧な感じだけど、ラーソン先生が不在の日に一緒に動いていると、結構な割合で怒鳴られて。ちょっと滅入るっていうか。」って言った。
ビリーは「うーん、なるほどね。本人達に言ってもらわないと。そういうのって自覚がなくてやってたりするから。それは研修医指導係のラーンズの仕事だな。」ってアダムを見た。
アダムは「はあ?そうなの?だってまだ8月だよ?ふん、早まったな。俺がその係のリーダーになるのは10月だから、今回は聞き出したアトラウスが報告するべきだよね、ジェイ?」って笑った。
ジェイは美味しそうにピザを齧りながら「うん、俺もそう思う。今言ったって、所詮下っ端な俺たちの話なんて聞いてくれないと思うし。ビリー達が2人でジェイミーに言ったら?ああ、ビリー達も下っ端だから聞いてもらえないか!」ってわざとらしく言った。
ビリーは「なっーーネイト、どうにかして!」って言って、フィン達が笑う中、ネイトは「そうだな、ジェンセン、あと1ヶ月我慢して。10月1日にアダムに言ってもらうから。研修医指導係トップの初仕事として。」って言った。
ジェンセンは笑って「了解です。」って頷いて、アダムは「はあ!?何それ。酷いな、ネイト。」って言った。
ジェイは笑って「っていうか、副主任の方が主導してる感じだし。アダム、主任って誰だっけ?」って言った。
アダムは赤くなったビリーとネイトを睨むと「ーーアトラウスの目的は果たした?ここからは2人に大恥をかかせるために質問ゲームタイムだな。ジェニングスとフレイザーとジェンセンも遠慮なくどんどん質問して。下ネタ系も全然OKだから。この人たちーー特にビリーは叩けば叩くほどホコリが出てくるから。」って言った。
ビリーは春巻きを齧りながら「はっ!どうかな?ジェイはともかく、アダムは相当だと思うけど。見てろ、俺の副主任に秘密を暴かせるから。」って笑って、咳き込むネイトの背中をさすってあげながら私は立ち上がると「ちょっと待ってて。アップルパイ切ってくるから。」って言った。
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