ビリーと私のオーストラリアDiary

Kaede

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過去の記憶

ジュリア①

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ジュリア・シモンズ。それがシモンズ看護師のフルネーム。正直、こんなにオーストラリア人には初めて会ったと思うくらい最初は不機嫌そうだった。

また、あっという間の一週間だった。
ビリーは高熱が出たせいかまた「ダルいダルい」って言いながらもギプスが取れて取り外しが出来る固定具になって「シャワーが楽に浴びられる」って喜んでいたし、私はライルからの新しい翻訳の依頼を受けて今度は京都の観光案内の翻訳をしていた。ライルからは「新しいクライアントでカエに会いたいっていう人がいるから、いつでもいいから連絡ちょうだい!」っていう連絡も来ていて、私はタイミングを計っていた。そんな中で訪れた金曜日。
ビリーの快気祝いは5時30分から、メルボルン市内中心部のオーストラリア料理ーーまあ、結局はミートパイとかフィッシュ&チップスとかそんな感じなんだけどーーレストランで開かれた。
私はその日は語学学校でのバイトがあって、一回家に帰って着替えてお化粧をし直して行ったら、危なく遅刻するところだった。
「ああ、来た来た。カエ、こっち!」っていうビリーの声がした方を見るともうみんなが来ていて、一瞬でシモンズさんーージュリアーーが、どの人かも分かっちゃった。みんなが口元に笑みを浮かべて私を見る中で、一人だけ口角が下がっていたから。
「ごめん、ギリギリになっちゃって。」私はビリーに言った。ちらっと見回すと見た事がある顔もいたーーモーガン先生とかアダムとビリーが一緒にシャワー浴びに行ったって教えてくれた実習生の女の子とか。
「俺とビリーはみんなを知ってるけど、一応紹介しておくよ。左から、看護師のエイミー、シャノン、レベッカ、ジュリアと実習生のエリー、それから同じ内科の医者のジェイミーとイアン。みんな、ビリーの婚約者の楓だよ、みんなカエって呼んでる。」アダムは紹介してくれて、私たちは「こんにちは。」って挨拶をした。
テーブルは丸テーブルで、ビリーとアダムは気を遣って私を2人の間の席にしてくれていて、ジェイミーっていうのがモーガン先生で医師は二人とも30代くらい。モーガン先生もあの時はちょっと厳しそうに見えたけど、この時は優しそうにニコニコしていて、とても感じが良かった。
「一応、今日はーーこの前俺が入院した時に看護をしてくれた人たちに少しでも恩返しができたらって思ったんだ。ジェイミーとイアンには本当にお世話になったし、もちろんアダムにもーーみんなには本当に感謝してる。もっとお互いを知り合ういい機会かなって思った。去年から、何回か入院したけど今回は特にケガもあったから、動けなくなったり、吐いたり、汚いところもいっぱい見せて迷惑かけたと思うけど、どんな時でも優しくしてもらってうちの病院の入院患者さんたちにもきっといいケアができているんだって、思った。いつもありがとう。今日ここにいる人もいない人も、本当にいい仲間に恵まれて幸せだと思ってる。日頃の感謝を込めてーー乾杯。」ビリーは言った。
この日のビリーは、目の色に合わせた薄いブルーのワイシャツがブラウンがかったブロンドの髪の色ととても似合っていて、私の目から見ても素敵だった。周りを見ると結婚指輪をしている人もしていない人も、みんなが何かに心酔しているような顔でビリーを見つめていてーービリー本人は多分嫌がるだろうけど、ビリーには何か人を惹きつける魅力があることを私は確信した。
エリーとジュリア、ビリー以外はみんなビールを飲んでいて、最初はみんなで喋りながら食事をした。
「アダムス先生達の馴れ初めは?」シャノンーー明るそうな私たちと同年代くらい女性ーーは聞いた。
ビリーは、簡単に私たちの出会いを話した。ふとジュリアを見ると、ビリーを見つめながら真剣に話を聞いていた。
「そんな事になってたなんて知らなかったな。」モーガン先生が言った。
「まあね、内科ではアダムくらいしか知らなかったかも。」ビリーが言った。
「でも、前からちょこちょこ病院に来てたよね?アダムス先生の日本人の彼女って内科の看護師ではみんなが知ってるくらい有名で、ほら、アダムス先生はだから。やだ、本人の前で言っちゃった!」レベッカーー30代くらいの笑顔がかわいい女性ーーが笑った。私の横でアダムは笑いでビールを詰まらせかけるような音を出して、みんなが笑った。
「うんーー体調を崩した時とかにちょっとお世話になっていたかもーー。」私は遠慮がちに言った。
「ラーソン先生とも仲が良くてすごく可愛がってる感じだったって、今日は来ていないけどアンが言ってたの。だから、どんな人かなって思ってたけど笑顔が可愛らしくて、納得しちゃう。やっぱり笑顔が素敵な女の子ってモテるよね。」シャノンが言った。
「生まれはオーストラリア?」イアンが聞いた。
「ううん、こっちに来たのは二年ちょっと前で。」私は言った。
「英語も上手そうだし、優しそうでかわいいとなればそりゃあモテるかな。」イアンが頷きながら言った。
「ビリーのどんな所が憧れなの?今後の俺とイアンの恋愛の参考にしたいから聞いておきたいな。」アダムが面白そうに言った。多分「恋愛の参考」なんていうのは完全な嘘で、笑いたかっただけなんだと思う。アダムも絶対モテるはずだから。
ビリーも、それを分かっていて、私の横でアダムを見ながら「ったく、アダムはーー」って軽く舌打ちをした。
「まあ、顔と体型は誰が見ても言う事なしだと思うけど、やっぱり一番は笑顔と性格かな。アダムス先生、ごめんね、怒らないで聞いて。アダムス先生の笑顔は本当にみんなを魅了してる。暗い事が多い病院の中で、先生の笑顔はいつも輝いていて、私たちの心を少しでも明るくしてくれているんだと思う。他の科の看護師達もいつも噂してるの。先生のキュートな笑顔を見てるだけで幸せになるって。ファンクラブができそうなくらいみんな知り合いになりたがってる。」レベッカが言った。
アダムはファンクラブっていう言葉に反応して笑ってた。私がまた、ふとジュリアを見るとニコニコして頷いていてビックリした。
「あとはやっぱり優しいし、気が利くし、人の気持ちに敏感っていうかーーいつも共感して励ましてくれるし、自信があるように見えるし、全然威張らないし。私は今は実習生だけど、威張る先生達もいる中でーーここにいる4人は全然そんなことないけどーーアダムス先生は、一緒に働きやすいっていうか、緊張しないっていうか。分かりやすい指示も与えてくれるし、失敗しても「次があるよ」って言ってくれる。でも、それって大事なことだと思わない?」エリーが言った。
「そうだよね!最初はみんなが不安だから。注射が上手くできるかな、とか患者さんに痛い思いをさせないで処置できるかな、とか。でも、アダムス先生はそういう不安を感じさせない。失敗したら助けてくれるって信じる事ができる。フォローしてくれるって思えるから落ち着いて仕事をする事ができる。私はそういうところも人気の秘密なんだと思うけど。」シャノンは言った。シャノンの発言はビリーもアダムも他の2人もみんな真剣に聞いていた。
その後みんなは趣味の話とかをし始めてーー私は思い切って聞いてみた。一人だけ、ずっと静かだったから気になって。
「ジュリアの趣味は何?」って。
アダムとビリーが私を見るのを感じた。
アダムが言われたみたいに「あんたに何の関係があるのよ。」とでも言われるかと思った。でも、ジュリアはちょっと恥ずかしそうに「海外旅行が好きなの。」って言った。
「うわ、そうだったのか。今までどんな国に行ってるの?」イアンが聞いた。
「アジアとヨーロッパが好きで、まあ、シンガポール、台湾、日本、タイ、フランス、ドイツ、イタリアとか、まあそんな感じで。」ってジュリアは言った。
「ーーすごいな。休暇毎に行ってる感じ?」ビリーが聞くとジュリアはちょっと赤くなって「ええ。」って言った。そして、みんなは旅行の話を始めた。アダムも、ジュリアも、楽しそうに。
ジュリアはちょっと恥ずかしがり屋なだけで悪い人じゃない、って私は直感で思った。私と同じだって。本当はみんなの輪に入りたくて誘われるのを待っているんだって。そして単に男の人に慣れてないから、アダムにも冷たい態度をとっただけなんじゃないかって。オーストラリア人には珍しいけど、あまり感情を表に出す事ができないだけなんだ、って。そう思ったら急に親近感湧いて、みんなが立って話をし始めた頃、私はジュリアに近寄った。
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