ビリーと私のオーストラリアDiary

Kaede

文字の大きさ
184 / 550
深まる秋

チョコレートの真実②

しおりを挟む
「ーーうん。なんで知ってるの?」私は言った。
クラリッサは笑って「やっぱりね!」って言った。ライルはきょとんとした顔をしていて、ビリーは「ああ、もしかして・・・」って言った。
クラリッサは頷いて、「私があの時アダムス先生へのチョコレートを受け取った看護師なのよ。」って言った。
ビリーは「クラリッサ、ビリーでいいよ。」って優しく言った。
「ええええ!!」私は間抜けな大声を出して、二人に大笑いされた。
「何?どういうこと?」ライルが聞いた。
「私がビリーに出会った時ーーほら、外で具合悪くして救急車呼んでもらって、その後で回復してから、ビリーにお礼のチョコレートを渡したくて病院に行ったんだけど、どこに行ったらいいか分からなくてーー見かけた看護師さんに渡して来たの。「ビリーっていう名前の濃いめのブロンドで、青い目の医者に渡して欲しい。」って。」私は言った。
「それを受け取ったのがクラリッサだったっていうこと?すごいな。」ライルは言った。
クラリッサは頷いて嬉しそうに「私がビリーっていう名前で思い浮かんだのは、ビリーしかいなかったから、知り合いの内科の看護師にチョコレートを託したの。「人違いかもしれないけど。」って言って。」って言った。
「ああ、それを俺が受け取ったんだ。ーーすごい偶然だね。信じられない。あの時、クラリッサがチョコレートをーー例えば、捨てたりしていたらーー俺とカエは出会う事がなかったんだよ。カエが、あの箱の中に電話番号を忍ばせていてーーそれで俺たちは会ったから。」ビリーは言った。
「ーーーそしてビリーとカエが出会うことがなければ今日のこの夕食は実現しなかった。ーーすごい話だね。」ライルは言った。そして、少しして「今日は「おまかせコース」を頼んである。何飲む?」ってメニューを見せてくれた。結局、私はシャルドネで、ビリーはシラーズをグラスで注文した。
ビリーは「ライル達の奢りって言ってたけど、飲み物代くらいは出すよ。」って言ったけど、クラリッサは全力で拒否した。
「いいからーー今日はライルがお父さんとの関係を少し前進できた感謝の気持ちを伝えたかっただけだから、気を使わないで。」って言ってくれた。
お料理はキノコのポタージュスープから前菜・ヒレステーキまで。どれも美味しかった。
「後でクラリッサが頼んでくれた誕生日ケーキも出るから、その分空けておいて。」ってライルは言った。
「本当にビリーのおかげなのよ。私たち、交際し始めてから何年も経つけれど、ライルのお父さんの件は一回話したきりーーなんていうか、ケンカしてーータブーな話題みたいになってた。私も気になりながらも、なかなか触れることが出来なくてーーだから、あの日、ライルが「父さんとの話すためにシドニーに行く」って言った時、本当に信じられなかった。そして、話を聞いたら「最近会ったビリーって人がーー」って言うから。」クラリッサはここで微笑んで話を続けた。「それにーーライルもあなた達に出会ったあたりから少し変わった気がする。前は、昔のトラウマのせいか、人と深く関わるのを怖がってこんなーー夕食に誘うような友人もいなかったのにーー」ライルはクラリッサの横で恥ずかしそうに笑った。「最近前より楽しそうで、私も嬉しいの。ありがとう。ビリーのおかげよ。」
私は微笑んで頷いた。
ビリーはワインを一口飲んでから、言った。「そんなことないよ。あの時、たまたまライルの心を動かしたのが俺だったっていうだけで、それはクラリッサであっても誰か他の人であったかもしれなかった。ライルにきっとそのがもう出来ていたんだよ。それをたまたま俺が一押しした、っていうか。それに、愛し合っていればタブーなんてないと思う。」ここでビリーはちらっと私を見て笑った。「普段からライルはクラリッサの言葉を聞いて、心を動かされているはずだから。俺もカエの笑顔や言葉に日々勇気づけられているから分かる。何でも話し合ってみればいいよーーそれで心が通じ合うんだから。」
ライルとクラリッサは頷いて、ライルは「ビリー達を見て、最近、俺たちも一緒に住み始めようかって言ってる。今までは、クラリッサが勤務時間が不規則な事でお互い遠慮してたけど、ほら、ビリーが言う通り、短い人生の中で一秒でも長くクラリッサと過ごしたくなって、何を待ってるんだって思って。」ライルは言った。
「いいんじゃない?最高だよ。一緒に住むのは。カエはだけど、クラリッサはーー優しそうだし、大人な感じだし。」ビリーは言った。
って何、酷い!」私はビリーの右足をうっかり蹴った。
「痛っーー」ビリーは顔を一瞬しかめて、ため息をついたあと私を指差して「これだから。」ってクラリッサに言った。ライルもクラリッサも笑って、私は顔が赤くなるのを感じた。
「カエはどう?ビリーと暮らすのは。」ライルが聞いた。
「私もーー最高だと思ってる。なんだかんだ言いながらすごく頼りにしてるしーーなんて言うんだろう?今までは少しでも逆風が吹けば倒れてしまいそうだったのが、ビリーといるとーー後ろから支えられている感じ?私が海外に来ているからそう感じるのかもしれないけど、毎日顔を見るだけで強くなれる気がする。」私は言った。
「ーーその割には家出とかするんだよ。」ってビリーはクラリッサに言って、クラリッサとライルはまた笑った。
「もう、ビリー、何なの!」私は笑ってビリーの肩を叩いた。
「あーあ、本当に面白いな、ビリー達は。」ライルは笑ってワインを飲みながら言った。そして「おかわりは?」って言って、今度は4人分のビールを注文してくれた。
「クラリッサは、ラストネームからするとヒスパニック系?あまり多くないから気になって。」ビリーが言った。
「うんーー父がスペイン系のアメリカ人で、仕事で来ていてーー住みついたのよ、メルボルンが気に入って。」クラリッサは言った。
「へえ?そうなんだ。ライル達はクリケットはまだやってるの?」ビリーが聞いた。
「俺は一応サークルみたいなのに入って週末に時々やってるけど、クラリッサはもうやってない。」ライルが言った。
「忙しくて。」クラリッサが言った。
「ビリーは?その体型なら何かやってるよね?」ライルが聞いた。
ビリーは笑って「やってない。まあ、ジムに行ったりはしてる。ジョギングもしてるけど、今はケガしててやれないし、本当に身体がガタガタしてる。足首のケガも実は何回も繰り返していてーーヤバいな。」って言った。
「治ったらやればいいんだよ。それまでは無理しない方がいい。」ライルが言って、クラリッサが頷いた。
食事が終わるとウエイターさんがケーキを持ってきてくれた。イチジクのジャムを挟んだラミントンで、とても美味しかった。
「ライル、これ。誕生日プレゼントのワインなんだけど、良かったらクラリッサと飲んで。あと、チョコレートと。」私は袋をライルに渡した。
ライルは笑顔で「嬉しいな、ありがとう!」って喜んでくれた。
「28歳の抱負は?」ビリーが聞いた。
「ーーなんだろう?もっと自分にも仕事にも自信を持ちたいと思ってる。毎日を大事に生きたい。今までは、投げやりに過ごしていた時もあったけど、ビリーと会ってーーほら、病院での姿を見た時、自分はバカだったって思った。もっと自分の人生を大切に生きなきゃって。だから、それかな。」ライルは言った。
「ああ、いいね。」ビリーは頷いた。
「ビリーは何月生まれ?」ライルが聞いた。
「11月。」
「ああ、じゃあ、それもお祝いしなきゃね。」ライルが言った。
「その前にカエだよ。9月。今までは大きなお祝いはいらないって強く言われて遠慮してたけど、今年はーーまあ、考える。」ビリーはそう言って私の肩を抱いた。
「いいってば、ビリー。あまり大きなお祝いとか好きじゃないし。」私は言った。
「でも、また機会を作ってぜひ4人で食事しない?」クラリッサが言った。
ビリーは笑顔で頷いて、「ぜひ。」って言った。

その日はライル達も電車で来ていて、私達は一緒に帰った。二人ともビリーのペースに合わせてゆっくり歩いてくれて、階段ではライルが心配そうにビリーに手を貸して支えてくれてーー「転んだら可哀想だから」ってーー本当にいい人だな、って思った。クラリッサもそんなライルを優しい目で見ていて。
「クラリッサはどこに住んでるの?」私は聞いた、
「セント・キルダ。ライルはリッチモンドだからーー今度一緒に住む時はその辺で探そうって言ってたの!」クラリッサは言った。
「やだ、ご近所さんになっちゃうかも。」私は言った。
「そうなったらいいよね。また、会おうね!」クラリッサはそう言ってくれた。
家に帰ってから私達は少し持ち帰ったラミントンをテレビの前の絨毯に座って一緒に食べた。
「クラリッサは優しい目をしてるよね。あんな人と出会えたからライルは自滅しないでなんとかやってきたんだよね、きっと。」私はつぶやいた。
「いや、例え一人でもライルはちゃんとやっていけるよ。読書好きの人ってメンタルが安定してるんだよ、知ってる?アダムもだし。」
「それ本当?ビリーの自説でしょ!」私は笑った。
「彼らは、ちゃんと辛い時はどこに逃げればいいかを分かってる。俺もそうなれたらいいなとは思うけどーーどうかな。」ビリーはため息をついて、私を見つめた。
「ビリーは十分強いよ。」私は言った。
ビリーは、少し笑って「どうかな。」って言った。「思ったように歩けなくてかなりメンタルに来てる。あと二ヶ月ちょっとで本当に治るかなって。リアムにも痛みがしばらく残るかもしれないって言われたし、今日カエとライルに階段で介助された時にちょっと不安になった。こんなにリハビリ頑張ってるのにこれかって思うと弱音を吐きたくなって。ーーごめん。」
私はビリーを黙って抱きしめた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!

奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。 ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。 ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

ヘンタイ好きシリーズ・女子高校生ミコ

hosimure
恋愛
わたしには友達にも親にも言えない秘密があります…。 それは彼氏のこと。 3年前から付き合っている彼氏は実は、ヘンタイなんです!

処理中です...