ビリーと私のオーストラリアDiary

Kaede

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引っ越し準備と仲間

どん底

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結局、次の日の朝ビリーはアダムに連れられて病院に行って入院した。夜中からまた止まらない咳が出始めて、朝になっても熱が39度以上あってグッタリしていてーー私でもって分かった。
最初は「点滴させたら帰らせる」って言ってたけど、私が学校で授業を受けている時にアダムからメールが来て「カエ、心配はしなくて良いけど、今日は入院させるよ。熱も下がらないし、食事も摂れないし、酸素吸入も必要な状態だから。話もしてるし、フラフラ歩いてはいるから大丈夫!熱が下がって肺炎にならない事を確認するまで、かな。怖がらないで授業をしっかりやっておいで。カエならやれるよ!後でビリーの荷物取りに行くために一回アパート入るから。ごめん。」って書いてあった。
私はーーその場で泣いてしまいそうになって目を閉じた。なんでこんな事になっちゃうんだろうって思って。ビリーばかりが苦しんでかわいそうでたまらなかった。
私が語学学校へ行くと私の表情が固い事にみんなはすぐ気がついた。そのくらい分かりやすいんだと思う。
「カエ、緊張してる顔だよ。授業にドキドキしてる?」ケビンが聞いた。
「それもあるけど、ビリーがインフルエンザになって解熱剤飲んでも熱も下がらなくて、喘息も出始めてーーアダムが病院に連れて行ってそのまま入院させるっていうから。」
「マジで?大丈夫?」ジェイミーが言った。
「うん、多分。みんなは大丈夫?なんか内科で流行ってたらしくて多分そっちから感染したんじゃないかな。」私は言った。
「カエ、大変だな、本当に。ハグしてあげるよ。」スティーブンは私を軽くハグしてくれた。
「ビリーの側にいてあげたいだろうけど、生徒達も待ってるから。ほら、いつもの笑顔で頑張れ。」ジェイミーが私の背中をポンってしてくれて私はこの日初めて少し微笑んで頷いた。
その日はテキストを使っての授業で、無難にこなしたと自分では思った。なるべく生徒達に喋らせて、ロールプレイングとかもさせて。みんな楽しそうで、終わった後に日本人の生徒達に「ターニャの授業に負けないくらい楽しかった。」って言ってもらえた。
その後スティーブンが「お見舞い行く?病院まで乗せて行くよ。」って言ってくれてーー私はスティーブンの言葉に甘えた。
「引っ越し準備は大丈夫なの?あと三週間くらいしかないんじゃない?」スティーブンは言った。
「うんーー本当に時期が悪すぎて、もう、何も言えない感じ?喘息が早く治まってくれればいいけど、体調悪いまま引越しとかかわいそうすぎて。最近風邪から喘息になって悪化してる気がするし。」私はまた少し涙が込み上げるのを感じて目を閉じた。
「カエ、俺が箱詰めとか手伝いに行くよ。大丈夫だから。」ってスティーブンは笑いかけてくれて、私は頷いた。
スティーブンは一緒に病室まで来てくれて、私達が行った時ナースステーションにいたジュリアは「うつされないようにマスクして距離とってね。アダムス先生、咳してるから。」って言ってくれて、確かにーー病室に入る前からビリーが咳き込んでいるのが聞こえた。
私達が病室に入るとビリーは喉の奥から変な音が出るくらい咳き込んでいて、私達を見ると辛そうな顔で少し微笑んでくれた。また点滴と酸素マスクをつけられて顔には汗をかいていてーー見るからに具合が悪そうだった。
「ああーーカエ、スティーブン。ごめん、わざわざ来てくれたんだ?うつらないように気をつけて。」ビリーはやっとのことでそう言ってまた咳き込み始めた。背中をさすってあげたかったけど、私まで感染したら大変だから我慢した。
「どう?大丈夫?」私は聞いた。
ビリーは頷いて「咳がーー」また咳き込んでーー「出てきて、これが最高にキツい。ただでさえ具合悪いのに消耗するっていうか。トイレ行く時に足首と指にも響いて、さっきトイレのドアの前で座り込んで助けてもらった。あー、ヤバいな。」ビリーはまた咳き込んで、今度は止まらなくてーーまた胸から変な音を出し始めて涙目になってーーそこにジェイがビリーの背中をさすってあげてちょっと体勢を横向きにしてあげてーーようやく止まったころにはビリーも疲れ果てて何も喋れない感じだった。目が虚ろで朦朧とした感じで。
「俺、先週インフルエンザで休んでて。それで、アダムが「免疫持ってる人が診ろ」って言うから担当してる。」ってジェイは笑って「熱も朝よりは少し下がったし大丈夫だよ。だとすると熱が下がり始めれば早いはずだから。」って言ってくれた。
「うん、ありがとう。」私は少し笑った。
ジェイは頷いて「ビリー、もう少ししたらアダムがを連れて来るって言ってた。頑張って。」って言った。
ビリーは頷いて「。」って苦笑いした。
「一口でも食べないと。休みのスタッフも多いから早く復帰してもらわないと困るし、食べられないと退院させられないし。」ジェイが言った。
ビリーはまた咳き込み始めてーー苦しいのかベッドの端を右手で握りしめていてーー私は見ていられなかった。かわいそうで。スティーブンも同じ事を思ったのか、そっと私の背中に手を当ててくれてーー私はスティーブンを見た。スティーブンもちょっと目が潤んでいたけど、私の視線に気がつくと頷いてくれた。
そこにアダムとジュリアも来た。食事を持って。
アダムは私達に「来てたんだ?良かった。うつされないでね。」って言って「どう?」ってジェイに聞いた。
「点滴の効果がイマイチかな。熱は38度くらい。」ジェイは言った。
アダムは頷いてビリーの顔を見て、「ビリー、ジュースだけでもいいから飲んで。」って言った。
「ーーいらない。絶対吐く。」ビリーは言った。
ジュリアはーーそんなビリーにみたいに優しく微笑むと「アダムス先生、ばかりに構ってる時間はないのよ。」ってドスの聞いた声でさらっと言ってーーみんな笑った。
ビリーも咳き込みながら笑って「ーー分かったよ。」って言った。
ジュリアは酸素マスクを外して、ビリーにりんごジュースをあげていて、ビリーが途中また咳き込んで呼吸困難気味になるとマスクを戻してあげていてーービリーは「なんなんだ、この咳は。」って言った。「今までで一番くらいにキツい。」って。
「胸は苦しい?」アダムが聞いた。
「苦しさはーー前の時の方が強いけど、咳が続くと息が出来なくてーーー」ビリーはまたベッドの端を掴みながら咳き込んでーーその後はしばらく喋れなかった。また目が虚ろになっていて、ハアハア言って。
そんな感じがしばらく続いて、アダムは珍しく諦めたように首を振ると「シモンズ、いいよ。後は俺が片付ける。ありがとう。」って言った。そして、ジュリアが病室を出ていくと、「今日はジェイが当直でいるから、俺たちも帰ろう。ビリー、辛いだろうけど頑張れ。また明日。」って言ってドアに向かった。
私も「ビリー、また明日来るから。ーー愛してる。」って言ってーービリーは私を見て頷いてくれた。
病室を出ると、それまで我慢していた涙が自然に溢れ出てきてーー私はちょっと泣いた。
アダムは「辛かったね。」って私をハグしてくれてーー「一日中あんな感じ。まだ喋れるだけマシって感じかな。インフルエンザも喘息も入り混じってもう何がなんだかって感じで。カエ、不安だろうから今日は俺が泊まろうか?ビリーに代わって箱詰めでもしようかな。あの調子だとしばらく何もできそうないから。」って言った。
「見てるのが辛いな、あれじゃあ。俺も泣きそうになった。」スティーブンが言った。
「俺でも辛い。苦しそうなのもかわいそうだけど、呼吸困難になってあの喉の奥が詰まったような音が出るのがーー。」
アダムはため息をつくと、「まあ、仕方がないな。スティーブン、マスクは捨ててしっかり消毒していって。帰ったらすぐにシャワー浴びた方がいい。気をつけて帰って。」って言った。
その後私たちは帰って、アダムは「先にシャワーを浴びよう。」って言ってーー先にシャワーを浴びた後にサンドイッチを作ってくれていて、私たちは一緒に夕食を食べた。
アダムは疲れたのか口数が少なかったけど、表情は穏やかで、「授業はうまくいった?」って聞いてきた。
「うんーーまあまあかな。今日はテキストに沿った授業だったんだけど、終わった後に「楽しかった」って言ってもらえて、嬉しかった。」私は言った。
「すごいな、頑張ったね。明日ビリーに言っておくよ。喜ぶと思う。今日、午前中にテッドが「入院しろ」って言った時もすごい嫌がってーーあんななのに。で、「カエが忙しい時に心配かけたくないから。」って言ってた。だから、普通通りにしていてあげることが多分ビリーも一番嬉しいと思う。」アダムはそう言って立ち上がって、「ビリーのクローゼットを片付けてくる。今日ちょっと聞いてきたから。何を整理して欲しいか。」ってビリーの部屋に向かった。
私は何もする気が起こらなくて、また本を読んだり、テレビを見たりしていた。
一時間くらい経った時にアダムが大きなゴミ袋と一緒に冊子を何冊か持ってきた。
「ビリーの高校の文集。俺にクローゼットの中の箱の中は大抵ゴミだから捨てていいって言ってたけど、こんなの入ってるの忘れてたんじゃない?明日からかってやろう。」って言って。
「やだ、見たい!」私はそう言って、私たちは一緒に高校生の頃のビリーを探した。
しばらく探して「これだ!」ってアダムが指さした写真には、ビリーが写っていた。この前ジェイミーの家に行った時にアダムが言っていた通り、少年っぽくてかわいい笑顔を見せたビリーが。
私はちょっと笑った。「やだ、かわいい。」って。
「全然ヒゲが生えてる感がないよね?今はうっすら生やしたりしてるのに。」私は言った。
「大学出てからかな、しっかり剃らなくなったのは。なんか、酒買いに行ったら未成年と間違われたとか言ってショック受けてた時があった気がする。」アダムは笑った。
「へえ、そうなんだ?」
「あ、ほら、ここにも写ってるよ。」ってアダムは全部の冊子を見て、いろんな写真に写っているビリーを見つけてくれてーー二人で笑った。
どの写真のビリーも今と同じような素敵な笑顔で写っていてーーお父さんが病気だったり、辛かった時期もあったはずなのにーー、私はなぜかその笑顔を見て涙が出た。
そして、アダムは大きなため息をついて「俺も今日は心が折れかけた。もっと酷い姿も見てきたのに。でもーーこの笑顔をまた見るために頑張らなきゃ。カエも、「地獄にいるならそのまま突き進め」だよ。知ってる?」って私に笑いかけた。
「ううん、知らない。」私は言った。
「チャーチルだよ。どんな地獄だって、どこかに出口が必ずあるから。とにかく前進していかないと。」アダムは自分に言い聞かせるように言った。
「ーーありがとう、アダム。傍にいてくれて。」私は言った。
「いいよ。俺はもうちょっと片付けるから、寝てもいいよ。疲れただろうから。」
私は頷いて、その後寝室に行ってビリーにメールした。
ビリーがスマホを見れる状態かも分からなったけど、「今、アダムがクローゼットを片付けてくれていて、ビリーの文集見ちゃった。早くあの笑顔を見せて。世界一愛してるから。」って。
意外にも5分くらい経って返事がきて「マジで?そんなの見られるはずじゃなかったのにーー。カエに会いたくてたまらない。今日は辛い思いさせたかもしれないけど、また明日も会いに来てくれたら嬉しいな。おやすみ。」って書いてあった。私はその返信に微笑んで、そのままベッドに入った。
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