16 / 66
16 雨の日は勉強しよう。キムラン、異世界の小さな教室に入門。
しおりを挟む
朝起きたら雨音で目が覚めた。屋根を叩き地面に落ちる雨特有の音。布団をかぶったまま窓を見ていると、ミミが背中に飛び乗ってきた。
「キムランおきて」
「おきた。めっちゃ目ぇ覚めたからおりてくれ。今日は雨なんだな」
「うん、あめだ」
日本と違うことがたくさん起こる世界だけど、雨が降るのは同じらしい。起きて窓から手を伸ばしてみる。この世界も雨は冷たい。
「雨の日は畑の水やりはしなくていいとして、仕事ってどうなるんだ? 傘さしてオーパーツ収拾やモンスター狩るのか?」
「あめがふったら狩りはおやすみ。ドロシーばあちゃんのとこでべんきょ」
「勉強?」
「ドロシーばあちゃん、このむらのせんせい。くにのこととか、もじをおしえてくれる」
嵐でオズの国に飛ばされそうな名前だな。と思ったがミミに言ってもわかるはずがない。
「オレも行っていいかな。この世界の文字教わりたい」
「わたしはきめられない。せんせにきいて」
「おー!」
レクサスの皮で作られた雨よけのマントを頭からすっぽりかぶって、ドロシーばあさんの家に向かう。
ミミはレインブーツで水たまりを踏んで楽しそうにスキップしている。
手を繋いでドロシーばあさんの家に行くと、近所の子どもたちがすでに来ていた。
教室になっている部屋にはミミ含めて全員で5人。
ミミが一番年下で、上は12才くらいの子までいる。
デカイ長机、机を挟んで両側に丸太の椅子。
「おやおや、ミミ。よくきたね。今日はキムランも一緒かね」
「おはようございます。オレも一緒に勉強していいかな。ここの字を習ってなくて」
「かまわんよ。五人も六人もさして変わらん」
「ありがとうございます」
ナルシェもいたからその隣に、ミミと二人で着席する。
「キムランさんも勉強するんですか?」
「ああ。習っておけばいつか絶対役立つだろうからな」
オレはこの世界の言葉を喋れないし言語翻訳のスキルがないから、村の外の人間と言葉が通じない。だが、文字を覚えれば筆談が可能になる。
検証と学習はオレの十八番だ。
「キムランにはまず、自分の名前を書けるようになってもらおうかねぇ」
「はい! よろしくお願いします!」
ドロシーばあさんは壁掛けの大きな板に細長い石で文字を書いていく。
オレのいた世界で言うところの、黒板とチョークの役割を果たすものだな。
ひらがなでもなく、漢字でもローマ字でもない。オレが見たことのあるどこの文字とも系統が違って、面白いな。
オレも子どもたちが使っているノートサイズの板を借りて、文字の練習をする。
「よしできた! 上手いか?」
「まあまあ」
「わー、ミミ辛辣。キムラン泣いちゃうよ?」
異世界で文字を習って自分の名前を書くユーチューバーなんて、オレが史上初じゃないか。いや、たまに異界からこの世界に流されてくる人がいるってんだから、初めてでもないのか。2番目、3番目?
まあ初にしろそうでないにしろ、楽しいからOK!
「おれの名前はこう書くんだぜ!」
「アタシはこう!」
「おお~、すげーな! じゃあ雨ってどう書くんだ。教えてくれよ」
「こうだぞ、そう!」
他の子たちが、名前を書いた板を自慢気に見せびらかしてくる。賑やかで和やかで、小学校に戻ったかのように錯覚してしまう。
「騒ぐんじゃないよお前たち」
「「「はーい!」」」
ドロシーばあさんに怒られながらも、充実した授業が終わった。使った板はそれぞれが掃除して返却する。
濡れ布巾で拭くと、文字がきれいサッパリ消えて元の板に戻る。ミラクルだ。魔法のチョーク(ぽい石)すごい。
外に出ると雨が小康状態になっていた。雲間から光がさしている。家に入る前に、畑の様子を見てみる。
「キムラン、みろ! めがでた」
「マジ!? やったーーー! いつ食えるようになる?」
「にじゅうにちくらい。このやさい、そだつのはやい」
オレがナルシェに教わりながら耕した畑、ついに芽が出ていた。なんの野菜かわからないけど、いくつか緑の葉っぱが土の中からこんにちは。
ふっふっふ。初めてでここまでできたオレ、農家の才能あるんじゃないか?
何はともあれ異世界でまいた初の野菜、収穫が楽しみだ。
「キムランおきて」
「おきた。めっちゃ目ぇ覚めたからおりてくれ。今日は雨なんだな」
「うん、あめだ」
日本と違うことがたくさん起こる世界だけど、雨が降るのは同じらしい。起きて窓から手を伸ばしてみる。この世界も雨は冷たい。
「雨の日は畑の水やりはしなくていいとして、仕事ってどうなるんだ? 傘さしてオーパーツ収拾やモンスター狩るのか?」
「あめがふったら狩りはおやすみ。ドロシーばあちゃんのとこでべんきょ」
「勉強?」
「ドロシーばあちゃん、このむらのせんせい。くにのこととか、もじをおしえてくれる」
嵐でオズの国に飛ばされそうな名前だな。と思ったがミミに言ってもわかるはずがない。
「オレも行っていいかな。この世界の文字教わりたい」
「わたしはきめられない。せんせにきいて」
「おー!」
レクサスの皮で作られた雨よけのマントを頭からすっぽりかぶって、ドロシーばあさんの家に向かう。
ミミはレインブーツで水たまりを踏んで楽しそうにスキップしている。
手を繋いでドロシーばあさんの家に行くと、近所の子どもたちがすでに来ていた。
教室になっている部屋にはミミ含めて全員で5人。
ミミが一番年下で、上は12才くらいの子までいる。
デカイ長机、机を挟んで両側に丸太の椅子。
「おやおや、ミミ。よくきたね。今日はキムランも一緒かね」
「おはようございます。オレも一緒に勉強していいかな。ここの字を習ってなくて」
「かまわんよ。五人も六人もさして変わらん」
「ありがとうございます」
ナルシェもいたからその隣に、ミミと二人で着席する。
「キムランさんも勉強するんですか?」
「ああ。習っておけばいつか絶対役立つだろうからな」
オレはこの世界の言葉を喋れないし言語翻訳のスキルがないから、村の外の人間と言葉が通じない。だが、文字を覚えれば筆談が可能になる。
検証と学習はオレの十八番だ。
「キムランにはまず、自分の名前を書けるようになってもらおうかねぇ」
「はい! よろしくお願いします!」
ドロシーばあさんは壁掛けの大きな板に細長い石で文字を書いていく。
オレのいた世界で言うところの、黒板とチョークの役割を果たすものだな。
ひらがなでもなく、漢字でもローマ字でもない。オレが見たことのあるどこの文字とも系統が違って、面白いな。
オレも子どもたちが使っているノートサイズの板を借りて、文字の練習をする。
「よしできた! 上手いか?」
「まあまあ」
「わー、ミミ辛辣。キムラン泣いちゃうよ?」
異世界で文字を習って自分の名前を書くユーチューバーなんて、オレが史上初じゃないか。いや、たまに異界からこの世界に流されてくる人がいるってんだから、初めてでもないのか。2番目、3番目?
まあ初にしろそうでないにしろ、楽しいからOK!
「おれの名前はこう書くんだぜ!」
「アタシはこう!」
「おお~、すげーな! じゃあ雨ってどう書くんだ。教えてくれよ」
「こうだぞ、そう!」
他の子たちが、名前を書いた板を自慢気に見せびらかしてくる。賑やかで和やかで、小学校に戻ったかのように錯覚してしまう。
「騒ぐんじゃないよお前たち」
「「「はーい!」」」
ドロシーばあさんに怒られながらも、充実した授業が終わった。使った板はそれぞれが掃除して返却する。
濡れ布巾で拭くと、文字がきれいサッパリ消えて元の板に戻る。ミラクルだ。魔法のチョーク(ぽい石)すごい。
外に出ると雨が小康状態になっていた。雲間から光がさしている。家に入る前に、畑の様子を見てみる。
「キムラン、みろ! めがでた」
「マジ!? やったーーー! いつ食えるようになる?」
「にじゅうにちくらい。このやさい、そだつのはやい」
オレがナルシェに教わりながら耕した畑、ついに芽が出ていた。なんの野菜かわからないけど、いくつか緑の葉っぱが土の中からこんにちは。
ふっふっふ。初めてでここまでできたオレ、農家の才能あるんじゃないか?
何はともあれ異世界でまいた初の野菜、収穫が楽しみだ。
0
あなたにおすすめの小説
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~
アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】
普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます)
【まじめなあらすじ】
主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、
「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」
転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。
魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。
友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、
「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」
「「「違う、そうじゃない!!」」」
これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。
※他サイトにも投稿中
※旧タイトル
病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~
あけちともあき
ファンタジー
冒険者ナザルは油使い。
魔力を油に変換し、滑らせたり燃やしたりできるユニークスキル持ちだ。
その特殊な能力ゆえ、冒険者パーティのメインメンバーとはならず、様々な状況のピンチヒッターをやって暮らしている。
実は、ナザルは転生者。
とある企業の中間管理職として、人間関係を良好に保つために組織の潤滑油として暗躍していた。
ひょんなことから死んだ彼は、異世界パルメディアに転生し、油使いナザルとなった。
冒険者の街、アーランには様々な事件が舞い込む。
それに伴って、たくさんの人々がやってくる。
もちろん、それだけの数のトラブルも来るし、いざこざだってある。
ナザルはその能力で事件解決の手伝いをし、生前の潤滑油スキルで人間関係改善のお手伝いをする。
冒険者に、街の皆さん、あるいはギルドの隅にいつもいる、安楽椅子冒険者のハーフエルフ。
ナザルと様々なキャラクターたちが織りなす、楽しいファンタジー日常劇。
スローライフ 転生したら竜騎士に?
梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
