13 / 30
ねこまたの章
12 ねこまた 小町が望む思い出のごはん
しおりを挟む
夏のアツい日、雪路にかんゆうされてやってきたのは、ネコのあやかし、ねこまただった。
ようかい系アニメやようかい大辞典なんかに必ずのっている、ねこまた。
「いやぁ、わがはいたちあやかしものの声を聞くことができるニンゲンがまだこの時代にもいるなんて、うれしいものですな。さすがは草凪の子孫」
見た目はかわいいミケネコなのに、おとしよりみたいなはなし方をする。
「ふつうは話せないの? 雪路も私たちと話してるのに何も言わなかったよ」
「だれもが話せるわけではない。そなたと父君は草凪の血すじであろう? 草凪の血は、ヒトの中でもとくにあやかしと話す才能にめぐまれておる。母君も、おそらく何代か前にどこかのあやかしはらいの血が入っているのだろう」
「そうなんだ」
ようは、私たちが雪路や小町に話しかけていても、ほかのだれもこの声を聞きとれないってことらしい。
おんみょうじなんかの、あやかしと縁のある血じゃないと声が聞きとれないなんて、マンガみたいだ。
父さんと母さんは店の仕込みがあるから、とりあえず私だけで小町の話をきくことにした。
小町は居間のざぶとんの上で前足を折りたたんでまるまった。
タタミとネコとざぶとんってすごくなじむ組み合わせなんだな。何年も前からここにいるかのように見える。
「お茶でも出したほうがいいのかな?」
「いんや。わがはい、あついものは好まん」
「へぇ。ねこまたってネコ舌なんだ。じゃあ冷たいむぎ茶にするね。外あつかったでしょ」
うちはこの時期、冷ぞう庫にむぎ茶を作ってある。
小皿にむぎ茶を入れて出すと、小町は前足をむぎ茶につけてひとくちなめる。
「ほほう。ひんやりしてうまいのう」
お気に召したようで、むぎ茶はあっという間に空っぽになった。
「それで、小町はなにを食べたいの? その食べものの見た目、味、おぼえているかぎり教えてほしい」
ヒントをたくさんあつめておくのは大事。
わからないままだと、雪路みたいにじょうほう不足すぎて迷走しちゃうからね。
「わがはいが食べたいのは、甘いものだ。冷たくて、白くて、甘い。さいこうのゼイタクだと、分けてくれた人は言っていた。近ごろあついひがつづくから、またあれを食べたくなったのだ」
冷たい・白い・甘い
牛乳プリン? バニラアイス? それとも白あん系のヨウカン? フルーツポンチのナタデココ?
だめだ、ヒントが大ざっぱすぎて当てはまるものが多すぎる。
メモをとる手が止まってしまった。
「…………も、もっと、他にない?」
「ない。なやむほどのことなのか?」
「いや、こんなヒントだけで探せって言うの???」
「わしのカレーを作ってくれたではないか」
「今回のは無茶ぶりがすぎるよ!」
「わがはい時間はあるからな。できるまでこのやしきで待つことにしよう。良きにはからえ」
なんであやかしはみんな、ドラマのおとのさまみたいなはなし方をするかな。
そんなわけで、小町が求める冷たくて白くて甘いもの探しがはじまった。
ようかい系アニメやようかい大辞典なんかに必ずのっている、ねこまた。
「いやぁ、わがはいたちあやかしものの声を聞くことができるニンゲンがまだこの時代にもいるなんて、うれしいものですな。さすがは草凪の子孫」
見た目はかわいいミケネコなのに、おとしよりみたいなはなし方をする。
「ふつうは話せないの? 雪路も私たちと話してるのに何も言わなかったよ」
「だれもが話せるわけではない。そなたと父君は草凪の血すじであろう? 草凪の血は、ヒトの中でもとくにあやかしと話す才能にめぐまれておる。母君も、おそらく何代か前にどこかのあやかしはらいの血が入っているのだろう」
「そうなんだ」
ようは、私たちが雪路や小町に話しかけていても、ほかのだれもこの声を聞きとれないってことらしい。
おんみょうじなんかの、あやかしと縁のある血じゃないと声が聞きとれないなんて、マンガみたいだ。
父さんと母さんは店の仕込みがあるから、とりあえず私だけで小町の話をきくことにした。
小町は居間のざぶとんの上で前足を折りたたんでまるまった。
タタミとネコとざぶとんってすごくなじむ組み合わせなんだな。何年も前からここにいるかのように見える。
「お茶でも出したほうがいいのかな?」
「いんや。わがはい、あついものは好まん」
「へぇ。ねこまたってネコ舌なんだ。じゃあ冷たいむぎ茶にするね。外あつかったでしょ」
うちはこの時期、冷ぞう庫にむぎ茶を作ってある。
小皿にむぎ茶を入れて出すと、小町は前足をむぎ茶につけてひとくちなめる。
「ほほう。ひんやりしてうまいのう」
お気に召したようで、むぎ茶はあっという間に空っぽになった。
「それで、小町はなにを食べたいの? その食べものの見た目、味、おぼえているかぎり教えてほしい」
ヒントをたくさんあつめておくのは大事。
わからないままだと、雪路みたいにじょうほう不足すぎて迷走しちゃうからね。
「わがはいが食べたいのは、甘いものだ。冷たくて、白くて、甘い。さいこうのゼイタクだと、分けてくれた人は言っていた。近ごろあついひがつづくから、またあれを食べたくなったのだ」
冷たい・白い・甘い
牛乳プリン? バニラアイス? それとも白あん系のヨウカン? フルーツポンチのナタデココ?
だめだ、ヒントが大ざっぱすぎて当てはまるものが多すぎる。
メモをとる手が止まってしまった。
「…………も、もっと、他にない?」
「ない。なやむほどのことなのか?」
「いや、こんなヒントだけで探せって言うの???」
「わしのカレーを作ってくれたではないか」
「今回のは無茶ぶりがすぎるよ!」
「わがはい時間はあるからな。できるまでこのやしきで待つことにしよう。良きにはからえ」
なんであやかしはみんな、ドラマのおとのさまみたいなはなし方をするかな。
そんなわけで、小町が求める冷たくて白くて甘いもの探しがはじまった。
2
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
