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帝都ノーヴェポーチカ、神の見捨てし理想郷編
9.好きな人と一緒に居るんだから※
しおりを挟む「じゃあ、おやすみ」
「お、おう」
サイドチェストのランプを消されて、部屋の中が真っ暗になる。
添い寝なんて前もやった事だし平気だろうと思っていたのだが、本来なら自分一人だけになる狭い空間に、もう一人の気配が存在すると言うのは思った以上に生々しい。馬車の中でも三人川の字で寝ていたが、あの時は自分だけの空間が有ったから気にならなかったんだよな。
だけど今は、すぐ近くにブラックが居る。
俺より大きなブラックの体が掛布団を持ち上げていて、そのせいで隙間が有って少し寒い。なにより暗く狭い場所で相手の息が間近に感じられるのが何だかたまらなくて、俺は添い寝と言いつつブラックに背を向けてしまった。
「ツカサくーん……」
「べ、別に抱き着いて寝るのが添い寝って訳じゃないだろ」
「そりゃそうだけど……ま、いっか」
このまま言い合っても仕方がないと思ったのか、ブラックはあっさり引く。
多分不法侵入した事への良心の呵責が在るんだろう。そうじゃなかったら、俺に「シアンさんに言い付ける」って言われるのが怖いとか。
何にせよ安堵しつつ、俺は目を閉じた。
「…………」
でも、だめだ。眠れない。
相手の呼吸でベッドが軽く浮き沈みする。隙間が有って寒いはずの背中に、自分以外の熱を感じる。なにより、ブラックがわずかに動いてシーツをずらす感覚が伝わって来てしまい、俺はなんだか顔が熱で痛くなってしまった。
う、うう、やばい。何でこんなに意識しちまうんだろう。
添い寝なんて何度かやったじゃないか。なのに今になって何でこんな事に。
距離を取りたくても俺の陣地はほとんどない。これ以上ブラックと離れようとしたら掛布団から追い出されてしまう。っていうか床に落ちる。
何で今日に限ってこんなに緊張するんだろ。ずっと一緒に寝てなかったから?
考えて、俺は今の自分の服装があまりよろしくない事に気付いた。
……そうだ……俺、今ガウン一枚しか羽織ってない……。
っていうか、パンツすらはいてない……。
……い、いや、でも仕方がないよな?
だ、だってブラックが来るとは思わなかったし、俺だってたまには開放感を感じながら寝たいわけだし、パンツ洗っちゃったし……。
うわ。うわあああなんか凄く心許なくなってきた、どうしようこれ。
熱いせいなのか緊張のせいなのか汗をダラダラ掻いてしまい、俺は思わず手で顔の汗をぬぐう。こんな格好なのがバレたら、ブラックに何をされるか……。
いや待て、落ちつけ俺。知られなきゃいいだけじゃないか。
というか「何かされる」だなんて俺はちょっと自意識過剰じゃないのか? そうだよ俺ったら変に構えちゃってさ。ハハハ、こ、これはただの添い寝なんだし、現にブラックも背後でスヤスヤ寝息立ててるじゃないか。
緊張してる俺の方が変だって。なに期待してるみたいな感じになってるんだよ、俺ったらバカだな~、いや期待とか全然してませんけど!!
つーか俺がなんでブラックに触られそうだとか期待しなきゃいけないんだよ。
バカか、それじゃ俺の方が変態みたいじゃないか!!
「うぅ……」
何だか異様に恥ずかしくなって、無意識に股間に意識が行く。
わずかに動かした太腿にあたった俺のモノは……何でこういう時も素直なのか、少し変な事を考えただけだと言うのに妙に熱くなってしまっていた。
や……やばい……なんでこんな時に……。
さっきまで変に触れ合ってたからか? それとも、俺が勝手に期待して……いや違う断じてそんな事は無い。これは、あれだ。あの、緊張して色々考えたから、体がそれを敏感に感じ取ってしまってこんな事に!
落ちつけ、落ちつけ俺。こういうのは萎える事を考えた方が良い。
えーっと俺ってナニで萎えたっけ、ああそうだ、壁画だ。あの壁画のようなエロ本を思い出すんだ。古代の秘儀みたいなエロシーンなんて萌える訳がねえ。
そう思って考えようとすると。
「…………」
背後で、ぎしりと音が鳴る。
掛布団が動いて、冷たい空気がいきなり暖かくなるのを感じた。
「……?」
首筋に、湿り気を帯びた生温い息がかかる。
これって……。
「はぁ……」
息を漏らす音が、み、耳のすぐそばで聞こえる。
反射的に身を固くした俺に構わず、ブラックはそっと背中に手を触れた。
「っ……」
反応しそうになったが、息を大きく吐く動きで誤魔化す。
だけど、背後から耳に掛かる潜めた深い息は、さっきから嫌と言うほど首筋や耳に掛かって来て、体が震えそうになる。
今の状態じゃ、触れられたら……。
そう思って微かに息を吸う俺に、ブラックは笑ったような気配を見せた。
ち、畜生……こっちが起きてるの解ってやがったのかこいつ。
俺が肩に力を入れたのを見取ったのか、ブラックは遠慮なく俺の背中にひたりと張り付いて、俺を抱き締めて来た。
「ツカサ君……」
腰を囚われて、そのまま引き寄せられる。
尻に足ではないまた別の何かが当たったのを感じて、反射的に腰がビクついた。これって、多分……いや、考えまい。勃ってないんだし……。
相手は本当に添い寝がしたいだけなのだと思って、俺は息を整えながら目を閉じた。もう、寝よう。寝た方が良い。寝れば全部忘れる。
そうは思うが、でも。
「んん……」
低く呻くような声が、うなじをなぞってゾクゾクする。
ブラックが少し動くだけで尻の割れ目に名状しがたきモノが当たって来て、折角忘れようとしていた熱を思い出してしまい、俺は耐え切れずに太腿を擦り合わせてしまった。
――その動きを、ブラックが見逃すはずもなく。
「っ……!?」
手が、ガウン越しに俺の腰に触れる。
そこからゆっくりと臍の辺りに移動して、下腹部へと向かって行く。
指はガウンの合わせ目からゆっくりと中に侵入して、そのまま……。
「っ、や……だ、だめ……!」
そこはまだ萎えてないんだってばと慌てて手を阻止しようとしたが……大きな手に急所をぐっと握り込まれて、俺は背を逸らして思いきり反応してしまった。
「なんだ……ツカサ君も僕の事気にしてくれてたんだね……嬉しいよ……」
「ひっ、ぁあ……! ば、バカ……変なことしないって、約束しただろ……!」
「それ、ツカサ君が言える事? 僕は勃起してないのに、ツカサ君たら僕と一緒に寝てるだけでおちんちんを熱くして、僕にこうされるのを期待してたじゃないか。ツカサ君の方が先にやらしい考えてたんだから、約束なんて反故だよ」
そう言いながら手の内で俺のまだ柔らかいモノを双球ごと揉みしだくブラックに、俺は耐え切れずに声を漏らしながら首を振る。
「んぅうっ……! ひ、ぁ、違う……こ、これは、ぁあ、ぅあぁあ! や、やだ、これ、違うって、あったまっひゃ、だけ、だからっ、や、も、だめ……!」
「駄目? どこが……ほら、ツカサ君のおちんちん、すぐ固くなってきたよ……」
「ぅあぁあっ、や、あ、ぁああ……!」
ぴったりと後ろに張り付かれて、立ち上がったモノを扱かれながら、うなじを唇で食まれる。ねとりと舌を擦りつけられてしまえば、もう言い訳も出来ないくらいに俺のモノは立ち上がってしまった。
「ツカサ君……下着も付けないで添い寝して、僕より先に勃起しちゃうなんて……いつからそんなに淫乱な子になっちゃったのかな?」
そう言われて、濡れ始めた先端を指の腹でぴとぴとと弄ばれる。
いつの間にかブラックのモノも俺の尻の割れ目に割り込んでくるかのように勃ち上がっていて、強く押し付けられるとそれだけで声が出てしまった。
だ、駄目だ……もう寝たいのに、体が言う事を聞いてくれない。
ブラックの大きな手が俺のモノを覆って扱くたびに、背後で「挿れたい」と意思表示をする熱塊が突いて来るたびに、体が熱くなっていく。
ぴちゃぴちゃと水音を立てて首筋を舐められるのすら、気持ち悪いと突っぱねられない。胸に手が這って来て、勝手に立ち上がってしまった乳首を摘ままれると、どうしようもなく下腹部がきゅうっとなる。
もう、こんなんじゃ、ブラックに嫌って言えない……。
「は、はは……っ。ツカサ君……可愛いよ……っ。正直こんなに期待してくれてるだなんて、思ってもみなかった……!」
嬉しそうな声を出して、ブラックは一度俺から離れると、掛布団を剥いで俺を仰向けにした。そうしてガウンの前を完全に解くと、俺の足の間に侵入してくる。
開かれた俺の足の間には、もう完全に勃ち上がって先走りを垂らす情けない分身があって、どうしようもなく恥ずかしくなった。
思わず顔を背けようとしたが、ブラックは俺の顎を取って自分の方を向くように俺の顔を誘導してしまう。自分の体すら薄らとしか見えない暗がりの中で、ブラックの声だけが聞こえた。
「そんなに恥ずかしがらないで……ほら、僕だってツカサ君が可愛い声でこんなになっちゃったんだよ」
辛うじてわかる相手の輪郭が、下を向く。
まだ目が慣れていない俺はブラックの顔にならって下を見たが、ブラックの逞しい体の輪郭が分かるだけで、どうなっているのか視えなかった。
その事が何故か急に不安になって、俺はブラックの顔を見上げる。
「わ……わかん、ない……暗くてアンタの事見えないよ、ブラック……」
「ああ、そうか……ツカサ君は夜目が利かなかったんだっけ。これなら判る?」
そう言ってブラックは体を近付けて来ると、俺を抱き締めて立ち上がったモノに大きくて硬い熱を擦りつけて来た。
「うぁあ……っ!? あ、や……こ、これ……」
「ね、ガチガチになってるだろう? 我慢してたのに、ツカサ君が僕とのセックスを期待してる素振りをみせるから、こんな風になっちゃったんだよ」
「はぅ、んぅう……」
「負担にならないように、一回だけにするから……だから、いいよね?」
そう言いながら、ブラックが俺の腰を両手で少し上げる。
腰の下に枕を押し入れられて、尻の谷間に指を突っ込まれてしまっては、もはや抵抗したって虚しいだけだ。俺が嫌だと言おうが抵抗しようが、ブラックは事を続けるだろう。こうなってはもうヤるしか選択肢は残されていないのだ。
それが、俺にとって「嫌な事」なら、まだ良かったんだけど……。
「…………」
「ツカサ君?」
俺の股の間で、きょとんとして首を傾げる、大人げない顔。
今じゃはっきり見えてしまうほど近い相手との距離に、俺はまた顔に痛いくらいの熱が上がって来て、俺は目を逸らしながら小さく呟いた。
「は、はめ……はずすなよ」
そう言って、ブラックをじりじりと見やる。
相手の顔が見えた刹那、俺はブラックを許容した事を心底後悔した。
だって、ブラックの、顔ったら。
「……ツカサ君…………は、はは……わ、わかっ……分かったよ……!」
なんでこのオッサン、興奮が最高点に達したらこんな魔王みたいな顔になるんだろう……冷める、百年の恋も冷める……。
と言いたいところなんだけど……そんな凶悪な顔で萎えてれば、こんな事になってない訳で。
……ああ、俺、やっぱコイツの事好きなんだなあ。
そう思うと何だかもう抵抗する気も起きなくなって、俺はブラックに完全に体を預けることにした。
冷たいシーツに火照った頬を押し付けながら、俺は自分の中に入ってくる異物に身を縮めて耐える。
次に押し入って来るだろう相手の欲望を考えて、無意識のうちに震えていたのは……きっと、怖さのせいではないだろう。それが、何故だか嬉しかった。
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