異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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遠日幻望ユグドラシル、崩壊兆す瀑流の寇盗編

30.帰還を望むは誰か我か

 
 
   ◆



「なんつうか……ちょっと放置してるうちにお前ら色々ありすぎじゃねえか……?」

 エネさんがお帰りになってしまったすぐ後、いきなり空間を割って俺達の所に分身体を送り込んできたこの世界の神様……ことキュウマが、事のあらましを聞いて顔を歪める。

 なんだかずいぶん久しぶりに会ったような気がするが、色んな街を忙しなく移動していたし、色々あったし、それを考えると当然かもしれない。
 突然現れた時はビックリして変な声を出してしまったが、しかしこの外国人風の容姿の人ばかりの世界では、俺と同じ日本人顔はやっぱり見るとホッとしてしまう。

 ……まあ、俺と違って主人公的イケメン眼鏡だからムカつきはするんだがな。

 って、それは置いといて。

 ともかく、今回はかなり長居してしまったので、キュウマがいつものように迎えに来てくれたらしいのだが……帰る前に色々と話しておくべき事がある。
 ってなワケで、さきほどエネさんに説明したことを、更に詳しく説明したのだが。

「見守ってるだのなんだの言うワリには、何も知らな過ぎだなこのへっぽこ駄眼鏡神」
「うるっせえな! 俺だって色々この世界の管理の仕事してんだよ殺すぞ!! お前らの事はオート追尾で録画してちゃんと逐一確認しとるわボケが!」
「嘔吐追尾……? 気持ち悪い造語作らないでくれる……?」
「てめえが勘違いしてんだよクソがああ」
「なんでアンタ達もそう喧嘩っぱやいんだよ!」

 もうやめっ、やめなさい! こらっ!
 テーブルを挟んで睨み合う二人の前に手を出してブンブン振り回し場の空気を散らしつつ、俺は二人の間に強引に前回作ったババロアを差し出した。
 こうなったら、美味しいおやつで気を散らそう作戦だ。

 が、オッサンと眼鏡はそれぞれババロアをスプーンで頬張りながら睨み合っている。
 なんだこの光景は。ロクちゃんが怯えてるからやめろ。

「と、ともかく……それで、一応はそのセレストってヤツが【藍瑞らんずいのアルスノートリア】だろうと推定して、シアンさんを守ることにしたんだけど……これで良かったと思う?」

 決めたは良いけど、実際の所アレは最後までセレストの能力を見続けた俺の予想だ。
 ブラックとアドニスは「そうだろう」と納得してくれたけど、実際本当にアイツが【藍瑞らんずい】なのかは判らないし、ただ単に「水の曜術師の“限定解除級”は、あのレベルの術を出せる」と言う可能性もある。

 俺は、普通の“限定解除級”の水の曜術師に出会った事が無いんだ。

 攻撃に転用できるほどの術の威力を持つ水の曜術師というと、【碧水へきすいのグリモア】であるシアンさんの術しか見た事が無いし……そもそもシアンさんはエルフ神族なのだ。

 普通の人族と比べてどれほどの力を持っているのか、また、グリモアがない場合のシアンさんの能力はどれほどなのか――俺は、そのあたりを全く知らない。

 “限定解除級”とは、最高クラスである一級の曜術師の中でも、その枠に収まらないほどに力が逸脱した人を言う。ブラックがソレだけど、本来なら滅多に見かけない級らしい。
 だから……もしアイツが“限定解除級”ってだけだとしたら、それでも納得出来ちゃうんだよな……。いくらみんなが「そうだろう」と言ってくれたからって、それが真実とは限らないのだ。

 なんせ、相手は未知の敵。
 だからこそ、戦うとなればしっかりした認識を持っておきたかった。

 そんな俺に対し、キュウマはババロアを食べる手を止めて数秒考えるように沈黙した。

「……もっと証拠が在れば断定してやれるが、今は『ほぼ確定だろう』としか言えんな」
「確定でいいの?」
「うん。……まあ、世界樹を切り倒したり無詠唱で無数の水球を槍のように動かせる時点で、この世界ではあり得ない水の使い方だ。“限定解除級”や“法術”を会得した人間でも、そのレベルの攻撃を行うのは不可能だろうな。グリモアのようなデタラメな存在があってこその力だと、俺も思う。……だから、ソイツは【藍瑞らんずい】と言ってもいいだろう」

 キュウマでもやっぱりそう思うのか。
 全員の見解が一致しているとなると、これはもう誤認であっても仕方ないよな。こういうのは、ハタから見て「そうだろう」と思うのが大事なんだ。

 そうでないと、俺が【世界協定】に呼ばれた時みたいに、痛くも無い腹をチクチク突かれる事にもなるし……言い逃れするには、こういうことはキチンと当事者以外の意見も聞いて話をでっちあげないとな。うん。

「まあ万が一違っていても、相手は【アルスノートリア】の協力者には違いないからな。誤認も已む無しになるだろう。そもそも、向こうの素性が割れてない時点でこっちが捏造し放題なんだ。曖昧な報告ではないなら、聴取する側も無暗に疑う事は出来んだろうさ」

 キュウマのその意見はブラックも概ね同意なのか、難しい顔をしつつもババロアを食べている。俺もロクちゃんに食べさせてあげながら、二人が言うならいいかと納得した。
 まあ、俺が色々考えるより、頭のいい二人の意見を聞いた方が良いだろうしな。

 話を聞いただけのキュウマでも問題ないというのなら、とりあえずはそう言う事にしておく方が良いだろう。

「それにしても世界樹ってのは大丈夫なのか? 【緑樹】とお前が応急処置をしたって話だったが……まだ知識を移送してもいないだろうに、本体は生きてるのか」
「あ、うん。あの後、切り株から幾つかの若い枝が生えて来たから、その枝をアドニスが徐々に統合させたり中心に寄せて新しい芯を作ってくれるんだって」

 アドニスから始めて聞いた時には「そんなデタラメな」と俺も驚いたんだけど、実際に可能な方法なのだそうだ。

 こういうのはやっぱり異世界だよな……。
 どんな手段で枝を合わせたり移動させたりするんだよと混乱してしまったが、まあアドニスはグリモアだし、しかも自然と仲良しの妖精の血も入っていて植物に関する知識も半端ない研究者でもあるから、やってやれないことはないのだろう。

 その過程を見てみたかったが、時間と言うなら帰るしかないのが悲しいところだ。

「はぁ~……まあそうか、ここは異世界だしそういうもんか……。それなら、ちょっと思いついた事をやってもいいかもな」
「ん?」

 思いついた事?
 なんだろうと目を瞬かせていると、キュウマが俺に片手を差し出した。

「お前、携帯百科事典と……あと【緑樹】から虫眼鏡貰ってたよな? あれを俺に貸して……いや、改造させてくれないか。合成つったほうがいいかな」
「か、改造……ってか合成!?」

 どういうことだろうと目を瞬かせると、キュウマは何か面白いたくらみを思いついたような悪戯っぽい笑みをにやりと浮かべ、俺から件の道具を受け取る。

「過去の知識を持つ世界樹が無事なら、少なくとも水晶に変わる端末が必要だろう? なら、世界樹が再び稼働可能になった時に、持ち運びできる端末を取り付けるのもイイかと思ってな。その方が、お前の冒険生活にも役立つだろうし」
「よく分かんないけど、大切に扱ってくれるならまあ……」

 キュウマがヘンな事をするとは思わないので素直に渡したけど、いまいちピンとこない。
 もしや、二つを使って水晶の代わりの検索システムを作ってくれるんだろうか?

 だとしたら、まさに虫眼鏡で検索って感じでちょっと面白いけど……それより、水晶の代わりが見つかったらモグさんが元気になってくれるかもしれないし、だったらお願いしても良いかもな。

 そういう頼みごとに使うんだったら、携帯百科事典をくれたラスターも、高級なルーペを俺にくれたアドニスも、快諾してくれるだろう。
 二人とも、なんだかんだ困ってる人を放って置けないタチだからな!

「ねえツカサ君、その他人を良い方に評価するのやめない? アイツらツカサ君の事普通に触ったり襲ったりしてるからね? 僕一回あのクソ眼鏡に殺されかけてるからね?」
「ぐ……そ、それはまあ、色々事情が……ってかまた心の声を読むなってば!」
「まあまあ……ともかく安心しろって。今度こっちに来るときに渡してやるからよ」

 そう言いながらキュウマはウキウキしつつ二つの道具を懐にしまった。
 ……もしかして、キュウマって案外合成とか火事とかが好きなのかな?

 俺もゲームの時は楽しくやっちゃうけど、やっぱ異世界で元気に冒険できるタイプって、俺も含めてそういうクラフト要素が好きな人種なんだろうな……。
 まあ色々出来ないと七人もお嫁さんとか貰えないか。
 ケッ……これだからチート主人公は……。

「あーあ、これでまたツカサ君と離れ離れかぁ……。ツカサ君、早く帰って来てね?」
「キュウ~……」

 話が一段落ついたと悟ってか、ブラックとロクちゃんがしょげたように肩を落とす。
 いやロクの場合は首だけど、もちろん可愛くてキュンとなってしまう。そのせいでしょげたオッサンにまでキュンしてしまったが、その理不尽な鼓動を振り払い俺は約束した。

「出来るだけ時間を作るよ。まあもうすぐ夏休み……いや、長い休みがとれるからさ! そうしたら、長くいられると思うぜ!」

 だからもうちょっと我慢してくれ、と二人を見つめると、ブラックは「ホント?!」と子供のように顔を輝かせ、ロクちゃんは喜びの空中二回転を披露してくれた。

 う゛っ……種類の違う可愛いをそう無邪気に打ち込まないで下さい……っ。

 というかブラックにまで「可愛い」とか思っちゃう自分が末期だ……いかん、いかんぞこれは。でも、実際二人に寂しい思いをさせてるのは事実だし、一緒に居られるって喜んでくれるのは、誰だって嬉しいだろうし……だからこれは仕方ない。仕方のないキュンなのだ。

 にしても、二人には普段から頑張って貰ってるんだよなあ。

 ブラックとロクショウには、俺が居ない間移動して貰ったりして苦労させてる部分もあるし、なにより今は二人旅も同然なのだ。クロウが【銹地しょうちのグリモア】をちゃんとした曜術で使えるようになるために修行中の今、ブラック達の移動中はかなり退屈なのだろう。
 だから、俺に「早く帰ってきて」というのだ。

 それもこれも、やっぱりクロウがいないからのような気もするんだよなあ。

 ……いつものパーティーから一人でも抜ければ、なんだか穴が開いた感じになってしまうだろうし、ブラックも折角できた親友がいないのは寂しいと無意識に思っているんだろう。
 ロクショウだって、ペコリア達と遊べないのは寂しいはずだ。

 だから、俺も出来るだけ早くこっち側に来たいとは思うんだが……高校生の身分、しかも俺の周囲では今色々と問題があって、迂闊に行動できないからなぁ……。

 いっそ早く夏休みに入ってくれれば安心なんだが、終業式は、まだもう少し先だ。

「ところでお前達、次はどこに向かうんだ。一応こっちにも教えといてくれ。大まかな座標を知らんと、離れた場所にコイツを出しかねないしな」
「む……。まあ、そういうことなら仕方ないか……」

 不満げだが渋々とキュウマに次の目的地を話し始めるブラックの顔を見ながら、俺は次にどうやって「こちらの世界」に来ようかと考えを巡らせるのだった。










※2026年明けました!
 今年一年が、皆さまにとってより良い一年になりますように!
 そして今年も「異世界日帰り漫遊記」を楽しんで頂けたらと思っております!
 (*´ω`*)

 今年はいよいよ話も動き始めたということで
 更に無理しない程度に頑張って参りますので、今後とも応援
 していただけたらメチャハッピーです!\\└('ω')┘//

 長らく留守にしてたり見かけなかったキャラも出てまいりますので
 今年一年もご愛顧いただけますと幸いです♡(〃ʘ▿ʘ〃)

 
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