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酔現嫌夢サプロアリコン、束の間揺蕩う憩いの村編
もう口調と言動が地獄すぎる2
尾井川の家の台所は、俺がよく思い出す父方の婆ちゃんの家の台所に似ている。
いかにも昭和な作りで、柔らかくて細かいタイル模様が入った不思議な床に所々木製な古めかしい調理台、それに窓とキッチンの間には物を置くためのタイルの細長い段が作られており、そこには食器の水きりラックや調理器具、戸棚などが置いてあって、俺の家の少し近代的なキッチンとはかなり違った感じだった。
婆ちゃんの家もこんな感じだったんだけど、尾井川の所はもう少しリッチなデザインだな。
とはいえ、ここに来るといつも懐かしい気持ちになる。
台所が一つの部屋として区切られている所も、その台所に食卓があって、昔はここで食事もしていたんだろうなって分かるところも、なんだかノスタルジーだ。
尾井川達も今は流石にダイニング、いやお茶の間でご飯を食べているらしいが、それでもテーブルを残しているあたり、きっとこのテーブルも思い出の一部なんだろう。
そう思うとついノスタルジーにキュンとしてしまったが、今は料理をしなければ。
大容量の冷蔵庫を開けると、そこには食べ盛りの高校生を養うためなのか大量の食糧が入っている。尾井川は「なんでも使って良い」と言っていたが、圧巻の冷蔵庫だな。
っていうか常にアイスとかプリンとか常備してあるの羨ましいんだが。
俺の家、わりと買ってきたらすぐに食べちゃうから冷蔵庫の中身が空っぽな時とか普通にあるんだよな……俺の母さんは時々変に凝り性になるのに、わりとズボラだ。
よその優しそうだったり美人だったりするお母さんが羨ましいと思うのは、きっと俺だけじゃないに違いない。まあ、だからって嫌いなワケじゃないんだけども。
「よし、とりあえず材料を準備するか」
そんな独り言を呟きつつ、しゃがんでコンロの下にある収納から調味料を取り出していると、背後から尾井川が話しかけてきた。
「おいぐー太、お前用の宿泊セット出しといたから、風呂に行く前に取りに来いよ」
「サンキュー!」
この前久しぶりに泊まった時に、尾井川のお母さんに新しくお泊りセット用意して貰ったんだよな。アレな事件もあったせいで最近は尾井川の家に泊まる事も少なかったが、昔から尾井川の家には俺のお泊りセットが置いてあるのだ。
そのくらい尾井川の家には信用が有るので、俺も急な泊まりを許可して貰えたんだよな。これがヒロの家だったら「お邪魔になるでしょ!」て迎えに来られてたかもだし……。
あの時は何とかなったけど、ヒロのお母さんも忙しいし二度目が通じる保証もない。
だから、尾井川の家に泊めて貰えてよかったよ。
「……手伝わなくて大丈夫か?」
尾井川が、なんだかちょっと心配そうに問いかけてくる。
俺がヘタな料理をするんじゃなかろうかというからかい……と言うよりも、これは素直に俺の心配をしているような声音だ。
ああ、たぶん怪我の事を心配してくれてるんだろうな。
すぐに理解して、俺は大丈夫だと手当てが済んだ両手を見せた。
「もう痛みも全然ないからへーき! それより肉とか野菜とかガッツリ使っていーのか?」
「ああ、むしろカーチャンは『なんで自分で作って食べないの』って呆れるからな。気にせずガンガン使えよ。……でも、あんまり失敗すんなよ?」
「たっ、食べ物を無駄にするようなレベルじゃねーって!」
こんにゃろ尾井川め、俺が自分と同じレベルだと思ってやがるな。
とことんまで俺が何も出来ないと考えているようだが、そうは問屋が卸さないぞ。こちとら幼稚園の頃から婆ちゃんとおやつ作りしてんだ、手伝いとはいえ侮るなよ!
「ホントに大丈夫かぁ……?」
「もー良いから座って待ってろってば! もう航生帰ってくるんだろ!? 一緒にテレビ見て待ってりゃいーから!!」
横も縦もデカい尾井川をなんとか押して台所から追放し、俺は調理台に目星を付けた材料を並べ始めた。まったく、信用しないんだからもう。
……ま、まあ……確かに今までは少し不安な所もあったとは思う。
でも、俺だってそう思ったから、ネットで素人でも作れるレシピを検索してみたり、イメトレをしてみたり色々と頑張ったんだからな。
なんせ婆ちゃんのお手伝いの記憶はお菓子が圧倒的に多いし、ごはんもの関係は正直簡単に手伝った程度だ。しかも……それだって、和食や洋食と言った「異世界では見た事が無い調味料」を使うものがほとんどだし。
だから、今の所、醤油やソースを使った料理はあちらでは難しくてレパートリーがなくて、ブラック達が飽きちゃわないかなって考えたから、真面目に頭に詰め込んでたのだ。
…………もっと、美味しく食べて貰えるといいなって思って。
「……な、ナシナシ今のナシ。さっさと始めるか!」
頭の上に浮かんでるだろう変なピンクのモヤを手で散らして、俺は並べた材料の中から豚のばら肉をボウルに入れる。
今日は、レシピを検索したばかりの肉料理だ。
「えーと……酒とにんにくを加えて揉みこんで、片栗粉をまぶす……」
今日作りたいのは、野菜もたっぷりの肉野菜炒めだ。
ブラックとクロウも肉が好きだから、肉料理だけは結構調べておいたのである。食べ盛りの俺の何杯も肉を喰うので、そっち方面の料理を勉強して備えていたのだ。
調味料は未だにあちらの世界で見た事が無いものばっかだけど、覚えておいて損は無いだろうし、代替えの調味料が見つかればそれで作ってやれるからな。
そう思いつつ、キャベツや野菜を刻み、豚肉を色が変わるまで炒めて野菜を投入する。
尾井川の家の冷蔵庫には、調味料が合わさった便利なチューブが置いてあったんだが、アッチではそんなものが無いので出来るだけ「これくらい」という分量を覚えておきたい。
なので、俺は合わせみそや醤油、みりんやら砂糖を覚えた分量投入し、野菜にしっかりと火が通るまで焦がさないように箸を動かし続けた。
よしよし、味噌が軽く焦げて甘辛い良い匂いがしてきたぞ。
味もしっかり染みこんだし、肉が多めの野菜炒めだから、きっと尾井川達もブラックも満足してくれるだろう。まずは基本から、一歩一歩作って覚えていかないとな!
というワケで、事前に炊いておいた炊飯器の「炊けました」メロディーを聞きつつ、大皿に肉マシマシの野菜炒めを盛りつけると、俺は炊飯器をおひつに移しておぼんに食器から何から乗せてお茶の間へと持って行った。
「わっ、ぐー兄ちゃんマジ!? 料理作れたんだ!?」
「……案外美味そうだな」
「んはー久しぶりの温かい手料理でござるっ! ここからでも凄まじい威力を感じてしまうでござるぅう!」
俺が料理をしている間に帰って来ていたのか、尾井川家の三男である航生が、尾井川とお兄さんの間に座って目を輝かせている。
この前泊まりに来た時もちょっと遊んだけど、相変わらず爽やかだなあ。
尾井川と違ってモテを意識している航生は、幼い頃からモテそうな髪型にしてサッカー部に入り、只今学校一のモテ男になろうとしている野望強き中学生だ。
尾井川や尾井川の親父さんと一緒で顔が昭和の雄々しい感じだが、髪型を変えるだけでもモテそうに思えるから不思議なものである。
実際、航生には彼女が居るらしい。しぬほど羨ましい。
だが親友の弟を呪い殺すワケにもいかないので、俺はニコニコと微笑みながら卓袱台に食器と今日の夕飯を並べた。
「うんまそ……!」
「はぁあ~……甘辛タレが食欲をそそりますなぁ~」
「おいっ、良いから自分でメシよそえよ! 今日カーチャンいないんだから!」
興奮する上と下に、尾井川が注意する。
これじゃどっちが長男か分からないなと苦笑しつつ、俺もおひつを開けた。
「おれ大盛りっ、大盛りな! わっ、にーちゃんサンキューいっただきまー!」
「だからぐー太にやらせんなっつってんだろうが!!」
ゴッと痛そうな音がして航生の頭が沈む。
おお……なんと現代にそぐわない鉄拳制裁……しかし航生も全く気にしていないのか、兄である尾井川にブーブー言いつつむくれた顔を見せる。
そんな兄弟の言い合いを見ながら、俺は尾井川以外のメシをよそって、ご相伴に与る事にした。さて、味見はしたけど上手くできてるかな。
「むっ……!? ば、バカな……ぐー太が料理を作れるだと……」
「うんまっ、先にポテチ食わなくて良かった~!」
「ハムッ、ハフハフッ、ハフッ!!」
良かった、三人とも満足してくれたみたいだな。ブラック達と違って尾井川の三兄弟は忖度もしないだろうから、これは間違いなく嘘のない評価だろう。いや、ブラックとクロウが俺に気を使ってくれるのは嬉しいんだけど、美味しくないものを無理して食べさせたくないからな。
図らずともいい練習になって良かったぜ。
「よーし、俺も……」
しんなりして鮮やかな色になったキャベツと肉を、口に放り込み咀嚼する。
と、途端に味噌の風味と醤油の焼けた香ばしさが広がり、その鋭さをまろやかにする甘みが味の濃さとなって肉の旨味を引き出す。その味にたまらず白米を掻き込むと、コメの素朴な甘さが混然一体となって、更に食欲を刺激した。
ううーっ、やっぱこういう味ってずるいよなぁ……!
こんなんメシと合わないわけないじゃん、醤油に慣らされた人間が抗えるわけがない!
ああ美味い。美味すぎる。俺も豚肉と白米のコンボでメシが止まらん。今日は異世界から帰って来たばかりで白米が恋しい状態だったし、こっちに帰ってきてからも逃げたり生命の危機を感じたりで忙しかったのだ。
ホッとしたら腹も減るってもんだよ。
「ぐー兄ちゃん、母さんが留守の時にメシ作りに来てよ~! 頼むよ五百円上げるから~」
「お前な、最低賃金舐めんなよ」
「そうでござるよコー君、最低賃金が許されるのはAVの家政婦モノくらいでござるよ」
食事中になんつう話をしてるんだよと思いつつも、まあお兄さんと尾井川はディープ過ぎるオタクなので、親が居ないとこういう会話も平気でやるから仕方ないか。
ともあれ、今日も美味しくご飯が食べられてよかった。
今回は幸運だったなと改めて尾井川や勧請伺さん、そしてお巡りさんに感謝しつつ、俺は静かに肉と白米を噛み締めるのだった。
――――そんなこんなで、だいたい二時間後。
お風呂も頂きすっかり緊張もほぐれた俺は、尾井川や航生とレトロゲームでの対決に熱くなっていた。無論、大乱闘できる面白いゲームではなく、ドット絵で描かれた変なキャラ達の格闘ゲームだ。
饅頭みたいな形の、丸い頭や手足が浮いた不思議なロボが格闘するゲームで、動きなどが凄く奇妙ではあるがデザインが可愛いので俺は気に入っている。
この格闘ゲームだと勝っても負けても怒る気が起きないので、尾井川とたまにやるのだ。
そんな俺達を、航生が横で漫画を見ながら眺めているのがいつもの光景だ。
小学校の頃からこんな感じなんだが、久しぶりだから何だか懐かしい気持ちがするなあ。容赦ない尾井川にクソみたいにボロ負けするのも懐かしい。
いや懐かしいけどムカつくな。本当コイツ手加減しないんだからよ。
「だーっ、また負けた!! ずるいっ、お前マジで接待ぐらいしろよー!!」
「ははははクソザコなのが悪いのだよ」
「ぐー兄ちゃん全然変わんねーなぁ。俺がガキの頃から兄貴に狩られまくってんじゃん」
「これでもちょっとは上手くなったんだよっ! 格ゲー!! ああもうっ、トイレ!」
「座ってやれよー」
「言われんでもエチケットはわきまえとるわいっ」
昔と変わらない軽口の応酬を三人で繰り広げつつ、俺は腰を上げる。
決して負け続けてイヤになったわけではない。俺はさっきからジュースをガブガブ飲んだので、ちょっとトイレが近くなっただけなのだ。
そんな言い訳を心の中で行いつつ、少し遠いトイレへ歩いて行こうとすると――わりと長い廊下の先、昔から変わらないお兄さんの部屋から、そこの主がにゅっと出てきた。
「あ、お兄さん」
「ホワッ! ぐー太ちゃ、でなくぐー太君っ。楽しくゲームしてるでござるか?」
「いや、さっきめちゃめちゃ意地悪されましたよ」
「あは……ユー君は全てにおいて容赦しない子でござるからなぁ……。兄として謝罪するでござる……ぐー太君はユー君とこんなに仲良くしてくれているというのに」
口調と言動は凄く怪しいが、こういう所は真っ当なお兄さんなのだ。
……尾井川のこういう仲のいい兄弟の様子を昔から見てたから、俺は兄や弟がいるのが羨ましいなあって思ったんだよな。まあ、オタ口調はちょっと勘弁してほしいが。
「ところでお兄さんもトイレっすか?」
「あ、いや、ちょっとエナドリをとりに……」
エナドリ。俺とは縁遠いものだが、お兄さんは何か仕事をしているんだろうか。
不思議に思っていると、相手は何故かハッとして、それから少し悩むようなそぶりを見せたが――意を決したかのようにキリッと表情を変えると俺に近付いてきた。
「ぐー太君、ちょっと頼まれて欲しいことがあるんでござる……決してやましくないし、多少のお小遣いもあげるから、制作を手伝ってほしいんでござるぅ……!」
この通り、と合掌して頭を下げてくるお兄さんに、俺は目を丸くする。
制作を手伝ってくれって、なんだろ。もしかして……アレか?
「それって……アレのことですか? でも俺、パソコンなんてマウス動かすくらいしか……」
「難しい事は無いでござる! ただちょっと、どうしてもポーズの参考になるようなフリー素材が見つからなくて……っ。このままでは原稿を落してしまうでござるっ、ぐー太君どうか拙者を助けると思って協力してほしいでござるぅうう……!」
だばだばと泣きながら、お兄さんは頭を何度も下げてくる。
あまりにも必死な物だから、俺はつい相手が可哀相になってしまった。
「ま、まあポーズくらいなら……」
「ほんとにござるか!? あああ……ありがたき幸せ、これぞまさに僥倖ッ!! さ、ささ、そうと決まれば善は急げでござるっ」
俺が了承した途端、顔をパアッと輝かせてお兄さんは興奮を露わにする。まるで地獄に仏って感じだなと苦笑してしまったが、そんな事をしている間に腕を引かれて、お兄さんの部屋に連れ込まれてしまった。
うーん、この強引さは兄弟揃って似た者同士だな。
コレでオタク気質が出なければモテるんだろうけどなあ……と思いつつ、俺は数年ぶりに入ったお兄さんの部屋を見渡した。
相変わらず……ゴリッゴリのオタク部屋だな……。
棚にはフィギュアとレトロなアニメ番組などの玩具が並べられており、大きな棚は漫画やゲームの攻略本がぎゅうぎゅうに詰まっている。小説や俺には読めなさそうな小難しい本も別の棚にぎっちり収まっていて、古いゲームソフトも鍵付きの棚に数えきれないほど整然とコレクションされていた。
そしてそんなお宝を守るため、部屋は常に分厚いカーテンで光を遮断している。
……ガキの頃は、お兄さんの部屋に入り浸る事も多かったなぁ。漫画やゲームが図書館かってくらいに置いてあるのが本当に羨ましくて、尾井川と読み漁ったものだ。
今思えばお兄さんの大事なコレクションなのに……と恥ずかしくなってくるが、お兄さんは快く俺達を招いてくれて、いつもオススメを教えてくれたり今日みたいに死にそうな顔をしながら机に向かって原稿をやってたっけ。
……そう、原稿。
お兄さんは、ゴリッゴリのオタクな上に、なんとコミケ常連のエロ同人作家なのだ。
昔は健全だった気がするが、成人した今はもう遠慮なくエロを描いてるんだよな。
尾井川によると、ジャンルの中ではわりと人気な方らしい。俺は知らない作品なのだが、まあお兄さんが楽しく活動してるなら何も言う事は無い。というか漫画が描けるって羨ましいスキルだよなぁ。
俺も一芸があったなら、オタク女子にモテてたかもしれないのに。
「あわわ、ゆ、床にエナドリ缶の海が……散らかってて申し訳ないでござる」
「あ、お、おかまいなく」
今気付いたけど、確かに何本飲んだんだよってくらいエナドリと目覚ましドリンクの缶や瓶が転がりまくってるな。いつから家に帰ってたのかは俺には判らんが、今お兄さんは修羅場というヤツらしい。原稿が進まず相当焦ってたんだろうな……。
俺には漫画も小説も書けそうにないので素直に凄いなと思うのだが、何故こう同人誌とかを作る人は、毎回原稿になると修羅場になってるイメージしかないんだろう。
俺がネットに毒されているせいなのか……いやまあともかく、俺はポーズをとればいいんだよな。それくらいなら手伝えるし、早速やってあげよう。
そんなことを思っていると、何故かお兄さんは床を綺麗にした後、自分が持って来た荷物の中をゴソゴソと漁り出した。何をするかと思ったら、畳んだ服を俺に手渡してくる。
「いやあ、本当に助かったでござる……! ユー君だとガタイが良過ぎて服が入らないし、コー君は絶対着てくれないから本当に困ってたでござるよ……。ではぐー太君、この戦士の衣を纏いて、幾つかポージングをお願いするでござる!」
「こ、ころも?」
なんだかヤケに気合いの入った服だが、もしかしてコスプレ衣装だろうか。
そう思いとりあえず広げて見て――――俺は絶句した。
ちょっ……こ、これ……ネットで見たことある、最近話題のソシャゲのキャラの衣装……。
「いやあ、衣装の参考にと借りてきて良かったでござる! さ、ささ、着てくだされ!」
「き、着てって、これ女の子の服なんですけどお!? しかもロリっ子!!」
ネットで見られるものが制限されていても、話題のアニメやソシャゲの情報はそれなりに俺の所にも流れてくる。SNSをやっていない俺でも分かるこの衣装は、今大流行のソシャゲの中でもかなり人気と言う、小悪魔ロリっ子キャラのコスプレ衣装だったのだ。
いやいやいや俺が着るもんじゃない……っていうかちょっと待て、お兄さんコレを尾井川や航生に着てもらおうとしてたのか!?
そりゃ断固拒否するわけだわ! 俺だって無茶だよこんな服!!
「う……や、やっぱりだめでござるか……?」
俺が分かりやすく難色を示すと、お兄さんは情けなく眉を歪めて目を潤ませる。
ぐっ……そ、そんな顔したって……いや、でも、やると言っちゃったのは俺だし、ぬか喜びをさせるのは悪いことだし……ぐ、ぐぬぬ……。
「…………絶対似合わないし、写真とかダメですからね……」
「んあーっ、感謝、圧倒的感謝でござるううう!! お小遣い弾むでござるよ!」
ああもう、あんなしょげた顔をされると断れないよチクショウ。
ブラックと「そういう仲」になってから、あのテの顔をされるとどうにも弱くなっちまうな……多分、ブラックの顔を思い出しちゃうからなんだろうけど……。
にしても、それで女装オッケーって、俺も相当ヤバめのチョロさになってないか。
でも相手は気心知れた尾井川の兄貴だし、なんかこの……全くブラックには似てないんだけど、どっかブラックを思い出させる振る舞いのせいで甘くなっちまうと言うか……。
…………はあ、まあでも頷いてしまったモンは仕方ない。
恐らく、物凄く情けない格好になるだろうがお兄さんの為なのだ。
恥を忍んで手伝ってあげよう。お兄さんの原稿が間に合わなかったら、悲しむ人達がいるワケだしな……。
そんな事を思いながら自分を納得させ、俺は衣装を着るため服を脱ぎ始めたのだった。
→
※朝になっちまった…寒すぎて寝落ちしてしまいました…
夜中2度は九州人にはつらすぎる…(´;ω;`)
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