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海洞都市シムロ、海だ!修行だ!スリラーだ!編
修行と勉強2
しおりを挟むそんなわけで、早速俺はペコリア達と一緒に修業を始めたのだが――……。
「クゥックゥクゥッ」
「くきゅー」
「クゥー!」
これがまたなんというか、ペコリア達の活躍っぷりと言ったら凄かったのだ。
とてもとてもモコモコで可愛くて、本来なら森の中に隠れているという臆病なペコリアは、一見して見れば、この海洞ダンジョンの弱くて可愛いモンスター達と一緒に見えるのだが――彼らのポテンシャルは、俺達の想像をはるかに超えていた。
というのも、ペコリア達は凄く強かったのだ。
しかもただ強いという訳では無く、野生であるがゆえに手加減や駆け引きを知っているのか、三匹でコンビネーションを駆使して絶妙に敵を泳がせてくれる。
基本的に草食……という話だったような気がするのだが、それなのにかなり戦闘に慣れているような戦いっぷりだった。
うん、まあ、俺の仲間になってくれたペコリア達は結構死線を潜り抜けているので、そのおかげで経験値が溜まっているのかもしれないが……それにしたって、今回の戦いっぷりはカーデ師匠も舌を巻くほどだった。
――――さっきも言ったが、基本的にペコリアは臆病でよわよわだ。
だから、他のモンスターに簡単に捕食されるし、それが怖いので集団で移動したり森の中でひっそり隠れていたりするのである。
それが一般常識なのに、俺が召喚したペコリア三匹がまるで“戦いの玄人”みたいな動きをするもんだから、カーデ師匠は顎を外してしまったらしい。
でも、ペコリア達の多彩な動きのお蔭で、俺も植物を操る木の曜術……【レイン】を多少臨機応変に動かせるようになって来たので、師匠はわりと上機嫌だった。
俺はと言うと、ペコリア達が怪我をしないかハラハラしていたけど、その心配が杞憂と言わんばかりに三匹は華麗に攻撃を避けまくっていたので、まあよし。
これなら明日も修行が進むだろうという事で、今日のところは撤退となった。
「しかし……こやつら妙に強いのう……まあ“鏖兎族”であるからして、鍛えれば結果的に強くなるという事なのかも知れんが……ふぅむ……」
海洞ダンジョンから抜けて、旧治療院に帰る途中、師匠は俺の腕の中や肩や頭上にモフついているペコリア達を見て白髭を扱く。
いろんな所がモフモフして俺的には天にも昇る気持ちなのだが、師匠の顔は「解せない」と言わんばかりの表情だ。
俺達と冒険を続けた結果レベルアップして強くなった、と言うのなら何もおかしい事なんて無いと思うんだが……師匠が言うには、レベルアップ的なことで解決できるほどペコリアの弱さは甘くないのだという。
しかし、ペコリアを守護獣にした人間はほとんどいないらしいので、それはないと断定出来ずに考えあぐねているらしい。
なにをそこまで悩む事が有るのかと俺は不思議で仕方がなかったが、この調子だと……最弱モンスターと呼ばれていた【ダハ】から進化したロクショウの話をしたら、師匠は卒倒しちまうかもしれんな……。
今のロクは、黒いヘビトカゲな体にコウモリの羽をつけた緑青色の瞳のモンスターなので、元々がダハだって師匠は解ってないみたいだけど……それを知ったら余計に気絶しそうでなあ。師匠は何故かヘビっぽいモノが嫌いみたいだから、ロクショウと一緒にダンジョンにも入れなかったし。
まあでも、そんなに難しい理由じゃないと思うんだけどな。
ホントにレベルアップして強くなっただけだろうし……そうでないと説明つかん。
そもそも“鏖兎族”って、名の通りに「みなごろしうさぎ」と言うだけあるほど凶暴で恐れられている種族らしいから、ペコリア達も修行すれば強いんだよきっと。
「クゥ~?」
「クゥックゥッ」
「クフー」
俺達の悩みを余所に、ペコリア達はモフモフしながら周囲をキョロキョロ見回して、小さな鼻を動かしている。潮風が吹くような街は滅多に来ないし、ペコリア達も森の中で暮らしているから、この空気がひたすら珍しいようだ。
「……まあええわい。とにかく、そやつらがおればお前の修行も上手く捗りそうじゃ。明日も同じ修行をするから、準備しとるんじゃぞ」
「はい!」
分かれ道の広場に辿り着くと、師匠は再び酒場……兼冒険者ギルド出張所へ戻って行った。なんというか、毎度のことながら飲みに行ったようにしか見えん。
まあそれはそれとして、今日は久しぶりにペコリア達と会えたんだし、美味しい物を作ってあげよう。ロクショウもペコリアに会いたかっただろうしな。
◆
夕食も済んで夜も更けて、今日も一日が終わった。
ご飯をたくさん食べて腹いっぱいになったペコリアとロクショウは、一緒の籠の中でスヤスヤと眠っている。その微笑ましさと言ったら、一晩中見ていたいほどの神的可愛さだったが、俺は勉強が有るのでそうはいかない。
少しだけ体力に余裕が出て来たし、今日はボコボコにされなかったので、筋肉痛になるのは免れたのだが……だからと言って休めるワケでは無いのだ。
それはクロウも解っているようで、今日も今日とてパンツ一丁の姿で俺とブラックと快く見送ってくれた。……正直思う所は有ったが、まあいい。
寝る時はパンツ一丁なのが普通なのだ。メイド服とどっちが良いのかと深く考えてはいけない。というかまだ届かないのかラッタディアで頼んだ服は。頼むから早い所届いてくれ……。
結局考えてしまったが、俺はこれからもっと考えなければいけないのだ。気持ちを切り替えて勉強を頑張ろう。そう思いながら廊下を歩いているのだが……なんというか、歩きにくい。いや、これは筋肉痛のせいではないぞ。
何故歩きにくいのかと言うと、それはもう隣にいる中年のせいに他ならなかった。
「えへへ……ツカサ君、今日もたくさん勉強しようねえ」
「ひ、ひっつくなってば……歩きにくい……」
俺の肩を抱いて廊下を歩くブラックは、かなり上機嫌だ。
今日はカーデ師匠に怒られまくっていたので不機嫌だとばかり思っていたのだが、俺と二人で勉強する段になるとコロッと変わってしまった。
……ま、まあ……俺と勉強するからって機嫌を直すところは、嬉しくないかどうかと言われたら……嫌な気はしないけど……で、でもなんか自惚れてるみたいで自分が恥ずかしくてイヤなんだよ。
そら、機嫌が良いにこしたことはないけど、でもなんていうか……その……。
「今日もツカサ君の国の言葉、たくさん教えてねっ」
「わっも、もうっ、バカ、こんなところでキスすんな!」
「廊下じゃダメって事は、部屋なら良いの? あは……ツカサ君たら大胆だなぁ……部屋だと何してもイイだなんて……」
ばか!
そんな意味で言ったんじゃねーよ何を広大解釈してんだばかー!!
「ああもうやめるぞ、勉強やめるからな!?」
引き剥がそうと距離を取る俺に、ブラックはあからさまに悲しんだ顔をして、更に俺に引っ付いて来ようとする。たった数メートルの廊下だというのに、ブラックが一々絡んでくるもんだから、いつまで経っても目的の部屋に辿り着けない。
しかし相手はそれをまるで悪いとは思っていないようで、ついには俺を強引に抱え上げてしまった。おいっ、足が地面に着かないんですけど、おい!
「さ~僕と一緒にお勉強しようねえ~」
「はーなーせー!!」
いや、離したってどうせ同じ部屋に行くんだから無駄かもしれないけど、それでも何かヤなんだよっ。こんなの子供みたいだし、最近こんなんされてばっかだし……。
俺は普通の男なのに、なんでこんな風に抱っこされなきゃなんないんだよ。
自分が背が高いからって、ガキ扱いしやがって……俺だってこっちの世界じゃ成人扱いなんだぞ。本当なら、こんなこと人前でやるのなんて恥ずかしい行為以外の何物でもないんだからな!?
なのに、こんな風に毎回毎回……。
シムロに来てから余計にこんなのが増えた気がするぞ……。
なんなんだ、スキンシップが足りないのか?
いや、昨日だってその……狭い部屋でひっついて一緒に勉強したってのに、なんでそれでスキンシップが足りないってなるんだよ。
これからだって、その……。
「あはっ、ツカサ君顔真っ赤だ~! 照れちゃって可愛いなぁ~」
「っ……ま、真っ赤になんてなってな……」
「んもう、ほんと可愛くてたまんないよ……」
低い声で囁くようにそう言われて、頬に口付けられる。
抱き締められて身動きできないまま、何度も何度も目元や額にキスをされて、照れているワケじゃないのに体がカッカしてしまう。
これじゃ否定してもバカにされるだけだ。
そうは思っても、吐息を感じるぐらいの近さでキスされると、情けないことに俺の頭は茹ってしまってどうしようもなくなっちまう。
……なんか凄く納得いかないが、でも、実際そうなっちまうわけで。
「離せってば、ばか……っ」
「ふふ……はいはい、早く部屋に行こうね~。そしたらツカサ君も、こうやって密着してても恥ずかしくないでしょ?」
「ぅう……」
「勉強するんでしょ? ヤじゃないよね。しなきゃ駄目なんだから……」
なにが「勉強しなきゃ駄目」だよ。お前は別にやんなくていいはずだろ。
それに、嫌だって拒否したってどうせ連れて行く癖に。
既に部屋に向かって歩き始めているブラックを睨むと、相手はニッコリと笑った。
「今日も、一緒にお勉強しようね。ツカサ君」
心底嬉しそうに笑うオッサン。
……正直、色々と言いたい事はあったし、このまま部屋に入ったら絶対にロクな事にならないだろうなとは思ったんだけど……そんな風に笑われると、出てくる言葉も引っ込んでしまって。
「…………勉強するだけだぞ、スケベな事なんて絶対しないからな」
震えそうになる喉をなんとか抑えて小声で言うと、ブラックは笑いながら頷いた。
→
※短めになっちゃいましたが次イチャイチャするので許してくだしあ
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