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慈雨泉山アーグネス、雨音に啼く石の唄編
1.普通が一番尊いこと
じわじわと聞こえていたはずのセミの声も、今日は雨の音にかき消されている。
きっと、虫もこの長雨を恐れて隠れているんだろう。
暑い空気を冷やしてくれる雨はありがたいけど、でも学校の壁は長い間雨が続くと嫌な湿り気を帯びる部分が有るので、雨の日の学校はあんまり好きじゃ無かった。
いや、まあ、ただ単にカサ持って帰るのが面倒臭いとか、制服汚すと母さんに凄く怒られるとかってのもあるけど、それはともかく。
何をするにも何だか憂鬱で、俺は窓の外のどんよりした風景を見ながら、物憂げにポツッと呟いたりしてみてしまった。
「梅雨なんてきらいだ」
「お前が嫌いなのはテストだろバカモノ」
…………すぐに罵倒が帰って来るのはどうかと思います正直。
でも痛い所を突かれたので反論できず、俺はせめてもの抵抗とばかりにさっきの声の主――――尾井川を分かりやすく睨んだ。
しかし、俺の机の周囲に集まった悪友どもは、俺に対して全く遠慮しない。
固太りで柔道茶帯の大柄な尾井川はともかく、俺と一緒でコメディ枠のイタリアンな血が流れるクーちゃん(本名はクアドラトゥーラ・セミナーティーという。とても長い)も、赤点仲間のくせして俺を茶化してくるのはいただけない。
昨年の冬、転校してきた俺の幼馴染の野蕗千尋……こと、ヒロは優しいので、俺を気遣ってくれるのだが、口下手なので実質俺は二対一の不利な状況だ。
このうえ“シベ”というもう一人の悪友が居たら、最早俺に勝ち目はないのだが……あいつは別クラスなのでそこは良かった。
「おい、話聞いてんのかお前は」
「はいはいっ、ちゃんと聞いてますっ」
「ツカサはホントにテンキナシだネー。クーちゃんでも試験対策バッチシだヨ? そんなんじゃツカサだけニコゴリ決定だヨー」
「能天気で居残りな。……ともかく、お前本当に期末は大丈夫なんだろうな?」
テストの点は俺とどっこいどっこいの赤点常習犯仲間なクーちゃんに侮られつつ、尾井川に心配される。まあ、普段の俺ならそうだろう。というか、ここ最近の忙しい俺を見ている尾井川としては本気で心配なのかも知れない。
まあ、つい最近起こったでっかい事件が連日ニュースで流れているおかげで、俺の“神隠し事件”が薄れて教室にも戻れるようになって、ようやく元の生活が戻ってきたんだけど……相変わらず周囲からチラチラ見られてるし、先生たちにも心配が故の監視をされてる状態だし、異世界との日帰りだけじゃなく色々大変だからなぁ。
事件が起こって喜ぶなんて不謹慎だけど、でもこういう事にでもならないとずっと俺も保健室通いだったろうからな。申し訳なさはあるが、許して欲しいとは思う。
まあともかく。
そんな状況では、俺が更にバカになるんじゃないかと心配する気持ちも解かる。
だが、今回の俺は一味違うのだ。
「まあ待たれよ師匠尾井川。今回の俺は一味違うのだ」
「と言うと?」
「なんと……試験範囲はほぼ網羅しているのだ!わっはっはっは」
そんな事を言いつつ、ばばーんとノートを広げて見せてやる。
すると、すぐにヒロから素直な感嘆の声があがった。
「すっ、すごいよっ、つーちゃんっ」
「おうヒロありがとう! もっと俺を褒めてくれ」
「えっ、えへ……つ、つっ、つーちゃん凄いっ、偉いよぉ」
本当にヒロは良い奴だなあ。
吃音癖と大柄なのに猫背で縮こまっている所が凄く勿体ないくらい、良い奴だ。目を隠しがちなちょっと長い前髪とか整えたら、もっと個性派イケメンな感じで男らしく格好良くなるのになあ……まあ、今も充分イケメンだしそうなると嫉妬してしまうが。
閑話休題。
ともかく俺はやってやったのだ。このノートが証拠なので、今回は尾井川も舌を巻くしかないだろう。ふふふ、キュウマに手伝って貰ってよかった。
あっちの時間で千年以上生きていたキュウマは、今は異世界の神様になっているけど元々は俺と同じ高校生だったんだもんな。でも、そんだけ生きてて勉強したことを忘れてなかったのは凄い。何か秀才だったらしいけど、そのせいだろうか。
キュウマは数年前の高校二年生だったらしいけど、俺はキュウマみたいな忍耐力も知力もなさそうなので、もしキュウマと同じ境遇になったら勉強どころか何もかも忘却してしまいそうで怖いな……。いや、まあ、そんなこと今話しても仕方ないんだけど。
ともかく、俺は異世界の神様に助けて貰って試験対策はバッチリなのだ。
今回は赤点を楽々回避できそう! 満点は絶対無理だけど!!
「……お前これ、誰にやって貰ったんだ?」
「はへ?」
尾井川の言葉に我に返って男らしいニキビ頬の顔を見やると、相手は訝しげな顔で俺をじぃっと見やって来る。
おやおや、どうしてそんな顔をしてるのかな。
「俺なんかやっちゃいました?」
「異世界テンプレやめんか! つーかお前の場合、やらかしが普通にダメなやらかしなんだよこのダメチート野郎がっ」
「イデデデデ頭グリグリはやめてぇええ! すんませんすんません知り合いにちょっと手伝って貰いましたあああああ」
思わずノートを離すと、クーちゃんとヒロが紙面を覗き込んでくる。
わっ、そんなマジマジ見ないで。字ぃ汚いんだって俺、恥ずかしいいい。
「……うーん、確かにシベや師匠のとは違う字あるネ」
「………………つーちゃん、これ……誰にしてもらったの……?」
「えっあのっし、知り合いのお兄さんに……」
やだなんかいつもよりクーちゃんが聡いぞ。それに何かヒロの様子も変だ。
でもそれ以上説明すると異世界の事をポロッと喋りそう。ヤバい。クーちゃんもヒロも良い奴だから、気が緩んで全部正直に語ってしまう。
つーかそもそも嘘を吐くとして整合性のある嘘が思いつかないんですけど!
どうしよう、ヒロが思いつめた顔してるし、嘘を言える雰囲気じゃないぞ。
こんな事で変な雰囲気になるとは思わなかった、と、青ざめていると――俺の事情を把握している尾井川が、助け舟を出してくれた。
「あー……俺の兄貴だろう、多分。コイツ昨日は俺の家で勉強合宿してたからな」
「そうナノ? いいな~、クーちゃんもお泊り会したかったヨ!」
「ふ、ふたりで……ふたりっきりで…………」
「いや家族居たからな。兄貴も居るって言ってるからな? 野蕗」
尾井川は、何故かヒロに対してだけ一歩退いたツッコミするんだよなあ。
まあでも付き合いが短いとそんなモンかもしれない。
俺は小学生の頃まで婆ちゃんの住んでる田舎で毎年ヒロや田舎の友達と遊んでたので、ヒロは幼馴染とも言えるし、引っ越してしまったヒロと昨年の冬に再会した時も昔の友情の炎は消えていなかったのですぐ打ち解けたのだが……俺以外の人だと完全に初対面だもんな。
でも数か月もこの状態なのは、好感度が上がるのが遅すぎる。
尾井川は気難しいところもあるオールドタイプのオタクだから仕方ないのかね。
「おい、なんだその目は。もう二度と助けてやらんぞ」
「アーッ、違います違いますっ、ご説明感謝します尾井川どのーっ」
「ともかく、これ尾井川のオニーさんの字なんだねえ。いいなぁー、クーちゃんも勉強お手伝いして貰いたいヨ」
「兄……年上の……年上…………」
「どの道もう時間ねえよ。勉強を教えてほしいんなら、俺とシベが別荘で零れる隙も無いくらいみっちり知識を詰め込んでやるから安心しろ」
「遠慮致します」
クーちゃん急に流暢な日本語を話すのやめて。
なんか会話がゴチャゴチャして来たが、とりあえずノートの件はうやむやになりそうでホッとしたよ。なんかホッとしたらションベンに行きたくなってきた。
休み時間は少ないし、さっさと行っとかないとな!
「ちょっと俺しょんべん」
「はいはい行って来い。漏らすなよ」
「ないわ!!」
お前俺のことどんだけガキだと思ってんだ。
思わずキイッとヒステリックになってしまったが、尿意は急げだ。
言うが早いか教室を出てトイレに向かう。その途中で、何故か嬉しくなって、笑みがこぼれて来た。よく解らないけど、俺はさっき散々イジられたというのに、妙に気分が良いらしい。そう思う理由は……なんとなく、自分でも解っていた。
――――たぶん、俺の「いつもの」が戻って来て嬉しいんだ。
だって、今まで俺は自分に降りかかるとも思ってなかった災難で、病室に軟禁されたり警察にやんわり取り調べられたりして「普通」じゃなかったし、学校に行けるようになっても危険だから他の生徒が騒いでるからと保健室送りになってしまった。
俺も周囲の変化が不安で、妙な目で見られるのが無意識にストレスになっていて、金持ちのシベに登下校するための車を使わせて貰ったりしたっけな。
だから……ずっと、今まで「いつもの」じゃなかったんだ。
でも、今日は違う。教室で普通に勉強が出来て、勉強に飽きて落書きとか妄想に耽ることも出来て、自由に廊下も教室も歩き回れる。
休み時間だって、もうたくさんの知らない視線にチクチクいたぶられる事も無い。
友達と楽しく喋れる時間が、どこへでも自由に遊びに行けるようやく戻ってきたんだと思うと、俺は本当に嬉しかったんだ。
なんたって……こうやって一人でトイレに行く事すら、今まで無理だったからな。
ああ、お帰り俺の日常。やっぱしダチと楽しくやれるのが一番だよ。
そんな事を思いつつトイレに入ろうとしたのだが……。
「ゲッ、いっぱい……」
そういや俺の教室が在る階のトイレは全室個室だったっけか……。
やたら古い校舎が有ったりする俺の高校は、伝統がナントカっていう話でお金持ちの卒業者とか在学生も混じってて、どうも所々豪華で最新設備だったりするイビツな学校なのだが……そのイビツさのおかげで用を足す場所が限られてんだよな。
そりゃまあ個室だと色々安心出来るけど、しょんべんだけしたい時にトイレが全部入室済みだと嘆きたくもなる。
しかし怒っている暇など無い。俺は涙を呑んで、絶対に空いているであろう、特別教室が多い旧校舎へ向かう渡り廊下に走った。グッバイ俺の休み時間。
「チクショー、どーせあいつら絶対中でスマホやってんだ!! 数少ないのにどんどこ占領しやがって……スマホ取り上げられちまえーっ!」
とは言うが、もちろん小声である。
今日は雨でジメジメしてるので、廊下に出てる奴も少なくて良かった。
そう思いながら窓も無いコンクリートの渡り廊下を雨音を聞きつつ渡り、旧校舎へとやっとの事で辿り着いた。普段人気が無い古めの旧校舎……なんだけど、家庭科や科学系の授業だとこっちに移動になったりするんだよな。
なので、今日もまばらに人が廊下に立っている。
俺には上級生か下級生か見分けがつかんが、まあ人がいないよりマシだ。
ささっとトイレに入って、人がいない素晴らしさを感じつつやっと用を足す……――と……不意に集団が入って来た。おや、連れションですか。数が足りないぞ。
スッキリした後で良かった、と思いつつ手洗い場に移動すると、彼らも俺と同じように用を足す……のだが、何故かこちらをチラチラ見て来る。
なんだろうか。もしかして俺寝癖でもついてる?
気になって鏡の中の自分を睨むと、横から聞き覚えのない声が飛んできた。
「あの……君さ、もしかして二年のクグルギって子?」
「えっ? おれ? あっ、はいそうです」
やべえ、良く見たら胸の校章の刺繍が上級生の色だ。この人達三年じゃん。
やけに大人っぽいと思ったけど、三年でも連れションするんだな……。
「そうか、やっぱり君がねえ」
「クグルギくん、だっけ? 結構……まあその、成長期って感じなんだな」
「お前があの奉祈師部のダチ、ねえ……」
あっ、なんかこの感じ「普通じゃない」時に嫌な視線を投げかけられたヤツだ。
好奇心とかでジロジロ見てくる感じの……うわ、そういう感じの先輩たちか。イヤな人達と出会っちゃったな……。
手を洗いつつ、四人ほどの連れション先輩ズをチラッと見てみたのだが、彼らは俺が想像するチャラ男に金持ち要素を足したような感じで、脱毛とか嗜んでそうだなと言うイケメン枠の奴らだった。個人的にお近づきになりたくない奴らだ。
俺にとって親しくないイケメンは不倶戴天の敵なので、さっさとここを出なければ。
興味本位で話しかけて来るヤツなんてロクなのがいない。
視線だけでもかなりキツかったのに、喋ったら何が起こるやら。
そう思い、手を洗った後ハンカチを取り出したら何故かドッと笑われた。
「なにそのハンカチ、かわいーねー」
「キャラもの? マジ似合うじゃん」
「いやー……もう完全に顔にピッタシ」
「これは笑えますなあ」
笑いながら近付いて来られて、ちょっと引いてしまう。
なに。俺の白く清潔な「ど根性大根ハンカチ」が何かしましたか。似合うってのは、褒め言葉と受け取って良いんだろうか。こういう人達は本気か冗談かわからん。
しかし、天気のせいもあって少し湿っぽくて暗い雰囲気のある狭いトイレで四人もの背の高い奴らに囲まれるとちょっと怖い。なんでこんな事になってんの。
うわでもこのタイプの金持ちっぽい人達って、どう考えてもシベと一緒で、本来なら下々のモノが関わっちゃいけない枠の人達だろうし……振り払って戻ったら、絶対に何かヤな事が起こりそうだよな……。ど、どうしよう。
「あ、あの……俺、授業があるので……」
「クグルギくん、つーかツカサ君? ねえ、きみ神隠しに遭ったんでしょ。犯人とかに何かされたの? ねえねえ、俺らに教えてくんない?」
「え、えぇ……いや、あの……」
ちょ、あ、あの、距離を詰めて来ないで。なんで狭い場所を更に狭い場所にしようとするんですかアンタら。何か怖い、なんか怖いんですけどリンチは勘弁して!
うわどうしよう、旧校舎に一人で来るんじゃなかった。そういや上級生って別の階にいるから、どうなってるのか俺全然知らなかったんだっけ。そりゃこういう風に興味を持ってる人もまだ居るかも知れないよな!
ううう、だったらもうこの人達完全にデバガメじゃん。
俺のことで暇つぶししようとしてる人達じゃん。心配してるんなら、こんな風にズケズケと近付いて来て問い詰めようなんてしないしぃい!
も、もうこうなったらどうにかして逃げなくちゃ。
そうは思うが、後ろは手洗い場だし他は四人に囲まれていて逃げられない。
焦る俺を余所に、流行りのアイドルみたいな長めの髪型をした先輩が、腰を屈めて俺の方に顔を近付けて来る。思わず緊張してしまったが、相手は至近距離で俺の顔を見つめ、少し鼻を動かすと眉を上げた。
「……ふーん、生意気に香水かけてんの? 女子受け狙うとこ違くね?」
そう言うと、他の三人が軽く腰を屈めて近付いて来る。
ぐええ勘弁して俺は男に近付かれて喜ぶ趣味はねえ。つーか、なんでこの人達、距離めっちゃ詰めてくんだよ! お前らと俺の世界は違うだろー!?
オタクの世界に入って来ないで下さい!!
「は? ……うわマジだ。っはは、菓子好きアピ? マジでDCじゃんおもろ」
「駄目だな~。ホントダメ。クグルギくん俺らがモテる方法教えてやろっか?」
「それ名案! クグルギくんかわいーから話めっちゃ聞きてーわー。クグルギくんも、センパイの俺らにモテる方法教わりたいよなー?」
「ほげっ」
ぐ、ぐぬぬ、近付かれるだけにとどまらず指でめっちゃ強くほっぺ押された。
なんで俺が男に顔をつつかれにゃならんのだ。強すぎて爪が食い込んだぞ。
遠慮のないヤカラってマジで突くにしても遠慮が無くて痛てーんだよ。ブラックに頬をつんつんされるのと全然違うぞ。アイツも他人の話を聞かないタイプだけど、経験豊富なだけあってこういうのは流石と思えるくらい自然なんだ。
だから全然痛くないし、むしろくすぐったくてその……じゃなくて。
ともかくブラックと比べたら…………って、あれ?
な、なんで四人とも俺を凝視してんの。
「…………やわらかっ……」
「え、マジ?」
「うわー、ホントなんだあのウワサ」
「なるほどねえ」
……なに、この目。
なんかいやだ。イヤな目で見られている気がする。喉が詰まって、怖くなる。
好奇心で見られてたのと違う。静かで、なにか怖いものに呑まれてしまうような目。本能で危険だと理解出来るレベルの視線が自分に集まっているのを感じて、俺は体が震えそうになるのを堪えた。
だめだ。
これ以上、この人達と一緒に居たらいけない。何も肯定しちゃいけない。
何故か分からないけど、でも、逃げなきゃ。このままだと、いけない。
そう思ったと、同時――――――授業の始まりを告げる鐘が鳴った。
「――――!」
「あっ、おい!」
「待てクグルギ!」
鐘の音に一瞬気が逸れた先輩達を見て、俺は咄嗟にしゃがむと手洗い場の下から潜って彼らの檻を脱出する。もうここには居られないとトイレを飛び出すと、背後から、先輩達が少し怒ったような声を上げているのが聞こえた。
だけど、振り返る事すらもう難しい。
俺は必死に渡り廊下を渡ると、そのまま全速力で走って教室に飛び込んだ。
「うわっ、ど、どうしたぐー太」
「つーちゃん?!」
息を切らせて自分の机に戻ってきた俺に、尾井川とヒロが慌てる。
だけど、さっきの事を言うのもなんだか憚られて……俺は息を整えながら、自然な笑みに見えるように一生懸命繕って笑うと、何でもないと手を振った。
「だ、だって……ハァッ、は……鐘、鳴ったから……っ」
「おま……生物のタネセンが来るのは大体鐘から五分後って解ってるだろ。急いで戻って来るなんて、ホントにボケてんなあ」
「あ、あはっ、はは……そ、そうだった……」
息が切れているおかげで、普段は聡い尾井川も気付いていないようだ。
その事に心底ほっとした俺は、ばかだなと心地の良い笑顔で笑ってくれる悪友達の様子に、やっと自然な笑みを浮かべた。
なんだかよく解らないけど、とにかく……上級生には近付かないようにしよう。
あの先輩達はシベの名前を出してたし、もしかしたらシベに何か関わりが在るかも知れないから、出来るだけ口を固くして自衛しておかないと。
あいつも何か……良く知らないけど相当な金持ちの家らしいし、金持ち同士ってのも変な確執が有ったりするらしいからな。
せっかく俺を心配してダチと一緒に別荘に誘ってくれたんだから、楽しい夏休みの前に迷惑を掛けたくない。……出来る事は、自分で考えてやっておかないとな。
「おっと、タネセンのおでましだ」
尾井川がそう言うのを合図にしたように、今までダラダラと席を立っていたクラスメート達も席に戻る。俺も自分の机に生物の教科書やノートを出しながら、気持ちを整える為に一度だけ長く息を吐いた。
もう、面倒事はごめんだ。「いつもの」日常を壊したくない。
……俺が異世界とこちらの世界を行き来する限り、もう以前の何も考えずに楽しく居られる日常は戻って来ないことは知っているが……それでも。
それでも俺は、やっと戻って来てくれた友達との気兼ねない休み時間をもう二度と奪われたくは無かった。
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