異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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亡国古都アルカドア、黒き守護者の動乱編

  心を近付けるなら2

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 まあともかく……今はどんな情報を手に入れたかを話すのが先決だな。

 というワケで、俺とブラックはそれぞれ相手から引き出した会話を話した。
 俺は「王族にクラウディアが大事にしていた誰かの命を奪われ、今のクロウの一族にもそういうヤツがいる。だから王国を滅ぼす」という話。そしてブラックは「強い存在が【役割】を行使せずに国に従う理不尽さ」を聞かせてくれた。

 ――正直、あの【教導様】という謎の男が、そんなテロリストみたいな過激思想を持ってるのは驚きだったが……黒い犬のクラウディアに協力しているんだから、まあそんな考え方を持っていても変じゃないのかも知れない。

 にしたって、なんというか考え方がとんでもないというか……。

「黒い犬のクラウディアが、どの王族に何の恨みを持ってるのかは知らないけど……こうやって理由を聞くと、なんとなく何がしたいのか分かるようになってきたよな」

 ベッドに腰掛けて、ブラックを見下ろす。
 すると、相手は俺の膝の上から小難しい顔で俺を見上げた。

「まあ、必要ないから王国を破壊する……なんていう薄っぺらい理由よりは、私怨の方がよっぽど納得できるけど、にしたってアイツが恨む王族ってのは誰なんだい。仮にアイツが君の中の“クラウディア”に関係する血筋だとしても、まさか古代の王族に恨みがあるワケじゃないだろうし」
「うーん……となると、やっぱ……クロウの血族に良くない人がいるのかな……」

 何百年、下手したら千年以上前かも知れない王朝への恨みだなんて、どう考えても壮大過ぎるし当事者の血族であろうと、そこまで大昔じゃ恨みもぼやけてそうだ。
 ソレを現代の王族に対する恨みへと転化できるだろうか……と考えると難しい。
 イヤだなぁくらいは思いそうだけど、滅亡した王国を見てるなら、長命が多い獣人族的には「まあ破滅するでしょ自業自得」で傍観しそうな気もする。

 ……っていうか、そこまで恨むなら、やっぱ王族は皆殺しにするよな。
 なのに、マハさん達は未だ殺されずに捕らわれているってコトは……やっぱクラウディアが恨みを持つ「王族」は過去の【アルカドビア】の王族なのかな。

 この【アルカドア】を奪取したのは自分の一族に因縁がある場所だからで、王国を壊すって言っても王族を皆殺しにする気は無かったのかも知れない。
 けど……【アルクーダ】の王族に「裏切り者がいる」みたいなニュアンスの話をしていたのが凄く気になるんだよな……。

「それもツカサ君に誤解させるための情報かも知れないよ? 敵を悪く言わないヤツなんて居ないだろ。国家転覆でもして獣人の大陸を混乱させるために、わざと熊公の血族が悪人だと匂わせたのかも知れない」
「確かに……。でも、かなり興奮してたのにそんなこと言えるものなのかな」

 俺だったら絶対ムリだ。
 そう言うと、ブラックは俺の膝の上で頭を緩く左右に動かして唸る。

「うーん……。そこが難しいとこなんだよなぁ。……あのクラウディアっていうヤツは、人族だろう【教導】に比べたら凄く分かりやすいし、言動からしても取り繕ってるような不自然さは感じない……ウソ、と決めつけるのも難しいかもね」

 相手も大集団の首領だ。それに【教導】という得体のしれない男が背後にいる以上何か入れ知恵されているかも知れない。
 ブラックはそう言うが、こうなるともう疑いの堂々巡りだ。

 とりあえず、俺が聞いた話は「とにかくアイツは王族に何か恨みがある」ということは留意し置いておくことにして、今度は【教導様】の話を精査する事にした。
 確か、相手は執拗に「強者が強者として振る舞わないこと」に対して不満が有るというような感じを醸し出していたようだが……なんか引っかかるんだよなぁ。

「……なあブラック、なんか……あの【教導】の言ってること、なんか聞き覚えない? なんていうか……すごい主張が聞き覚えあるんだけど……」

 俺の膝を思うがままに枕にしているオッサンに問うと、ブラックは少し驚いたような顔をした。なんだその顔は。どういう顔なんだ。
 まさかバカにした顔じゃないよな?

「ツカサ君って……案外記憶力あるんだね……」
「だーっ、バカにしてやがる!!」
「いやだってツカサ君わりと色々すぐ忘れるじゃない。てっきり、似たようなこともスグに忘れちゃってるもんだと……」
「しっ、失礼な! ちゃんと覚えてるよ。ええと……」

 ……うん。ええと……覚えてる。覚えてるんだが……どこで聞いたっけ。
 たしかそう昔の話じゃなくて、この世界で説明された気がするんだが……どうしよう、俺の頭の中には詳しい記憶よりも美しいシスターさんが二人思い浮かぶだけだ。

 もう全然思い浮かばん。むしろシスターさんに会いたい。
 二人の事はちゃんと覚えてるんだが……。

「やっぱ忘れてるじゃないか。んもー、リン教のこと全部忘れちゃったの?」

 あっ、そうだ!
 そうだよ、俺が美しいシスターさん二人とお近づきになれたのは、技術と強さを重んじる常冬の国【オーデル皇国】でのことだ。そこで、俺は【ナトラ教】のシスターさんと神父さんや子供達、そして【リン教】のシスターさんともお知り合いになったんだ。

 二人とも凄く美人だし可愛くて、それに……お互いを好き合ってたんだよな。
 この世界じゃ男女ともにオスメスの性別が有るから、俺達みたいなのだけじゃなく女性同士のカップルも珍しくはないのだ。っていうか、女性のか弱いオス(でも腕力は凄い)が男性のメスおじさんを妻と呼んだりもしてるんだよな……。

 もう色々凄くややこしいが……ってこの話は関係なかったな。

 ともかく、そこまで思い出せば俺だってもう分かるぞ。

「そうっ、そうだ! リン教の教義だ!!」
「……ツカサ君、先にシスターの方を思い出したでしょ」
「ギクッ、や、やだなあ、そんなワケないじゃないか……」
「ホントかなぁ? ……ま、今日はつつくのはやめとくけど……ツカサ君も思い当った通り、リン教の教義は『力ある者、能が有る者は、役割を全うしなければならない』と言うような――――獣人と似て非なる考え方を持っている。あの【教導】の話は、この教えに近いと思うんだよね。というか、そのものだと僕は思ったんだよ」

 ――そうだ。
 リン教を国境にしている【オーデル皇国】は、その教義に従って力をあるべきままに行使する義務があると考えている。簡単に言えば、パワーがある人は肉体労働とかその力を生かせる仕事に就き、手先が器用な人はその技術を存分に発揮できる職に就け……みたいな話だ。

 これだけ聞くと、適材適所で不満なく暮らせる良い国じゃんって感じだけど、実際は「能力が高くない人間は良い職に就けない」という欠点があり、博愛主義の【ナトラ教】だけでなく【リン教】のシスターもそれを憂えていた。

 今は、正気に戻ってくれた皇帝が、息子である皇子や忠義に厚い臣下と……世界最高の薬師であるアドニスも一緒に、国を変えようと頑張っている。
 だから、そこらへんは変わって来ていると思うんだけど。

 でも……根っこのところは、やっぱり弱肉強食だ。

 人族が言うソレは生温いかも知れないけど、それでも獣人達の思想と相性がいいというのは確かなはずだ。
 もし【教導様】が【リン教】の信徒だとすれば、ブラックをへこませた「強者が我慢する必要はない」という思想も納得はできる。けど……。

「だからって、どう関係あるんだ? 【リン教】の教徒だとしても、別にアレは危険思想でも何でもないだろ。寒い国で、モンスターの大反乱とかの歴史もあったから、ああいう風に強さを重視する教義になったんだろうし……。獣人族の“当たり前”に共感したから、こうして手伝ってるって理由づけにはなるけど……それだけだろ?」

 【教導様】がクラウディアに協力している理由としては納得だが……そんな思想を持ってるってダケだよな。別におかしいところは無いような気がするんだが。

 しかし、俺が思う以上にブラックは何だか納得がいかないようで。

「それだけだとしても……この状況は、やっぱりおかしいよ。わざわざ商船で人族を連れて来て、こんな回りくどい操り方までして肉の盾を大量に作ったってのに、未だに王都に侵攻もせずに城に籠っているんだよ? そんなの、いくら大量に兵糧を用意してても無駄にするだけだ。もし本当に国を崩すなら、もう進軍してるはずだよ」
「そう言われると……たしかに……普通なら、少しは動かすはずだよな」

 領地を一部支配したとは言え、まだまだ周囲には敵が多いはずだ。相手がこちらに手を出せない内に進軍して支配領域を増やすのは、戦の常套手段じゃないのか。
 なのに、そんな事もせず、ただ城に籠っているだけなんて。

 ……何か理由が有るんだろうか。進軍できないのか、それともしないのか。

 そう考えて――――俺は、ふと地下に居た緑耳の狼大男を思い出した。
 なんか「罰であそこにいる」とかそういう感じだったけど……そういや、罰ってなんの事なんだろう。俺達が来る前に、アイツは何かポカをやらかしたのかな。

 つーかそもそも、あの緑狼男って何の種族なんだろう。
 あんな緑色のケモミミ、みたことないぞ。

 しかもアイツ、なんか熊族に対してものすごくアタリが強くて、俺達の前でも「熊族を食い殺したい」とかイライラしてたよな。まるで、目の前のごはんを「おあずけ」されている犬みたいだった。……そこまでクロウ達に恨みを抱く狼族なんて珍しいよな。
 あの狼の総本山である山でも、怒りんぼ殿下は丁寧に扱われてたし。誰も、こちらを恨むような態度では無かった。あの山の狼達と関係ない種族なんだろうか。

 だとしたら、あの緑狼はどこの種族なんだろう。そう考えて――俺は、やっと“ある事”を思い出し、アッと声を漏らした。

「なに、ツカサ君どうしたの?」

 俺の表情の変化に気が付いたのか、ブラックはきょとんとしてこちらを見る。
 その顔を掴んで、俺は興奮混じりにまくしたてた。

「あいつっ、あの地下のアイツ、もしかして【嵐天角狼族】なんじゃないのか!? ほらクロウ達をずっと目の敵にしてるって話の! 怒りんぼ殿下が怪我した原因のこの前の戦もその狼達とのものだし、もしかして関係してるんじゃないのか!?」

 興奮のせいで、ついつい言葉がヘタクソになる。
 だがブラックは俺の気付きに目を見張り、何かに気付いたように眉根を寄せた。

「ツカサ君、それホント……?」
「俺達の前で爺ちゃんが言ってたじゃん!」
「ごめん熊どもの話に興味なくて……」
「お、お前なぁ! ……いやともかく、もしその【嵐天角狼族】が関係してたら、この城でアイツらが動かないのも、狼達に何かさせるつもりだからなのかも……!」

 あくまでも予想の域を出ないが、しかし充分可能性がある予想だ。
 ブラックもそう思ったのか体を起こし、俺の隣に座る。

「……あいつの名前、ウルーリャスだったね。…………もし、ツカサ君の予想が正解だったとすれば、状況は思ったより深刻かもしれない」
「そ、それどういうこと?」

 今度は見上げる形になって相手の横顔を見つめると、ブラックは俺の方を向いて、静かに目を細めた。

「僕達は、まんまと敵の“ハリボテ”に引っかかったってワケさ。……もしかしたらもう、王都には別の部隊が入り込んでいるかも知れない」
「ッ……!」

 なんだって、と思わず叫びそうになる口を手でおさえると、ブラックは頬をグッと引き締める。明らかに、深刻そうな表情だった。

 だが混乱する事も無く、ただ眉間に皺を寄せると思案するように口に拳を添える。

「けど、確証が無い。仮にあのウルーリャスが【嵐天角狼族】だとしても、そいつらが影で動いていると断定できなきゃ、それこそ危ない。……どうにかして、もう少し情報を引き出さないと……」

 そう言うなり、ブラックは立ち上がった。
 もう、先程までの甘えた人懐こい表情ではない。大人らしい、理知的な表情で先を考えるブラックの横顔が見えた。

「……ロクに頼んで、王都のドービエル爺ちゃんに情報を送って貰う?」

 問いかけると、ブラックは頷いた。

「そうだね。ロクショウ君なら夜素早く動ける。一刻二刻で返事も届くだろう。まずは、敵の事を調べて……それから、情報を引き出すほうがいいね」
「……またあの地下に行くのか?」

 それはいいけど、何か食事でも持って行かないと不自然ではないだろうか。
 相手はすぐに人を殺しそうな殺気を放っていたし、ちょっと危険だぞ。

 つい尻ごみをしてしまう俺だったが、ブラックは大丈夫と軽く頷いて見せた。

「まあ、あの手のヤツは【教導】よりずっと扱いやすいから。……だけど……アイツを籠絡するためには、ツカサ君の協力が必要かもしれない」
「と、言いますと……」

 俺にまた料理を作れと言うのだろうか。
 目を瞬かせると、ブラックは微妙な顔で片方の口端を緩めた。

「ホントに、色仕掛けをして貰うしかないかなぁと」
「…………」

 ああ、そう言えば……アンタ最初にそんなこと言ってましたね。
 てっきりもう忘れられた事かと思っていたが……。

「……あの、俺みたいなのでアイツが靡くと思う……?」
「まあ、その……やりようでは……。とにかく、すぐロクショウ君に飛んで貰おう。あの狼男の特徴が本当に【嵐天角狼族】と合致すれば、事態は深刻だ。それを報告するためにも、すぐに行動しなくちゃね」
「お、おう……」

 ここまで来たらやるしかない。それは俺も分かっているんだが……。
 あの殺気マシマシのデカい狼男が、この男らしい体に興奮するんだろうか。胸も尻もまるでメスっけがない俺で、本当に美人局みたいなことができるのかな……。

 そうは思ったが、今できることはそれくらいしかない。
 マハさん達も心配だし、もし俺達の予想が本当になら色々とヤバいし……不安だが、やってみるしかないのだ。

 にしても、色仕掛けってどうすりゃいいんだろう。
 ブラックが教えてくれるんだろうか。変な事やらされなきゃいいけど……。

 そんな一抹の不安を抱えながら、俺とブラックはロクショウが待つ部屋に戻り、すぐに用意を始めたのだった。









※まだ遅れております(;´Д`)まだ中々治りません…すまぬ…
 あとツカサには本当は【アナーキスト】と言わせたかったんですが
 絶対そんな言葉知らんだろうな(17DK)と思ったので
 泣く泣くテロリストにしました。今時言いませんもんね……
 
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