異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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麗憶高原イデラゴエリ、賢者が遺すは虚像の糸編

  誘引※

 
 
「っはっ……はぁっ、ぁ……あ、ぅう……」
「んんっ、ぅ……あぁ……ツカサ君のナカ、熱くて蕩けてるから……ぁ……もう、すぐに射精しちゃった……まだまだらそうと思ってたのになぁ……」

 荒い息を漏らしながら見つめるのは、自分が今尻をつかんでいる小さな肢体。
 シャツをまくり上げた所から見える、硬さが見えないやわらかそうな背中。その背筋の線を辿たどって自分の方へ視線を流せば、そこにはブラックのペニスを限界まで銜え込んでヒクついている雌穴が見えた。

 その収縮に必死に追いつくかのように、ツカサのナカもブラックのペニスに吸い付くようにきゅうきゅうと締め付け、まだ冷めやらぬ快楽に痙攣けいれんしている。
 その快楽に支配されきった肉壁が心地よすぎて、萎えたはずのペニスが再びむくりと反応してしまった。

(あっ……あぁ~……これ、気持ち良過ぎるぅ……っ! ツカサ君たらもう、本当に僕のペニス大好きなんだからっ!)

 石畳の上に突っ伏し、ブラックの手によって腰を高くあげられているツカサは、肩を動かし荒い息をらすばかりだが、体が確かに物語っているのだ。

 ツカサの絶頂による動きの全てが、ブラックに直接的な快楽をもたらし下腹部の奥まで重い熱を伝えてくる。ツカサ本人にその気が無いことは解っていても、その意志とは裏腹に屈服してオスに媚びる雌穴がペニスを刺激すると、たまらなくなるのだ。

 しかも、ツカサがこうして媚びる対象はブラックしかいない。
 ブラックが何度も何度も丹念に教え込んだ「オスに組み敷かれる快楽」は、恋人である自分だけが与えてやれる。ツカサの雌穴を自由に犯すことが出来るのも、恋人であるブラックだけが許された特権だった。

 その事実が、更にブラックに深い快楽を味わわせる。

 精神的な充足感と、肉体的な絶頂。何回味わっても慣れることの無い凄まじい快楽は、今回もブラックの際限ない欲望を簡単に沸き立たせた。

「んっ……ま、また勃起しちゃった……。ツカサ君、もう一回……っ、あは、ぬ、抜いてないからもう一回良いよね、入っちゃってるんだからツカサ君のナカに僕の濃厚精液二回目出しても良いよねぇっ!」
「ひあ゛っ……ぁ゛……! ぃ、い、あ……も……らぇ……っ、ぃ……いっか、ぃ、だけって……言った、のにぃ……!」

 涙ぐんで、鼻水をらしながら首を振って拒否しようとするツカサ。
 だがブラックが卑猥ひわいな言葉を投げかけるたび、ツカサの体は彼の心と反対に雌穴をきゅうきゅうと締め付け、腰を震わせている。

 最早自重じじゅうを支えるちからすらない足は絶頂の余韻よいんでがくがくと揺れ、ブラックがつかむ腰の動きについて行くしかない。
 いくら「嫌だ」と言っても、ツカサの抵抗など高が知れていた。

 けれどツカサは、快楽におぼれる感覚が怖いのか、飽きもせず毎回「許して」と懇願する。顔を真っ赤にして丸い尻を揺らしながらそんな事を言っても、ブラックをあおるだけだというのに……それでもツカサは抵抗せずにはいられないのだろう。

 おのれの体は最早もはやメスであると認識しているだろうに、それでも自分が「オスである」と言う認識を捨てきれていないようだった。
 だが、そのいじらしい無駄な抵抗が、オスの征服欲をそそるのだ。

 ……もっと。
 もっとその、可愛らしい顔が見たい。泣きじゃくる顔も、快楽におぼれきった顔も、何もかもが愛おしくて欲をあおってたまらない。

 ツカサに触れているだけで、ブラックは何度も射精が出来そうだった。

(でもっ、勿体もったいいもんね……っ。ツカサ君との濃厚な恋人セックス、いっぱいしたい。ツカサ君の恋人は、あっちの世界でも僕だけだ。僕しかいない、それをもっと、もっと実感したいからぁ……っ)

 どんなに賢い友人だろうと、どれほど頼りになろうと、ツカサが自分を「男である」と認識している限り、彼の恋愛対象には成り得ない。
 ツカサが無駄な自尊心を失くせないからこそ、誰も容易には近付けないのだ。

 だが、その中で唯一……ブラックだけが、常に「オス」だと認識して貰える。
 あの駄熊ですら、普段は「仲間」でしかなく、一々欲望をさらさなければツカサにオスとメスの関係であることを自覚して貰えない。

 けれど、自分だけは……――――
 抱きしめ、睦言むつごとささやくまでもなく……ツカサが、意識してくれる。

 こちらが思ってもみないことに赤面して恥じらい、触れると細やかに意識し、少しの淫らな誘いですらツカサは反応して困った顔をしてくるのだ。
 そして……甘えれば甘えるほど、ツカサは震えながら股を開いてくれる。

 淫らで甘く、やさしい。
 だが、そんなことまで許してくれるのは……恋人である、自分だけ。

 強引に抱いて雌穴を征服するたびにその事実が実感できて、どうしようもなく体が興奮する。一度や二度では収まらない欲望があふしてしまう。
 元々、ツカサと一日中セックスをしてドロドロに愛し合いたいと思っているブラックにとって、その事実の確認はたがを簡単にゆるめてしまう万能の鍵だった。

(い……今だってっ、ほら、もう……っ。ツカサ君の反応が可愛すぎて、もう勢い取り戻しちゃったよ……! ああ、でも我慢っ、今度は完勃起したペニスで奥の奥まで、愛してあげたいからぁ……っ)

 心の中で二度目の絶頂を思い浮かべ、ブラックはたくましい腰を震わせる。
 この柔らかく、幼さが色濃く残る体の最奥まで征服した時の快楽を思い出しつつ、ブラックは熱い息を吐いて、ゆっくりペニスを引き抜いた。

「っあ゛っ……あぁっあ……ぐっ、ぅう……っ」
「我慢してねぇ……い、いまぁっ、抜いてあげてるから……っ!」

 その言葉を、ツカサは「もうやめてくれる」と解釈したのか、必死に深く息を吐いて、体の熱を逃そうとしている。
 まだほんの少し理性が残っているからか、どうにかして熱をしずめようと、無駄な努力をしているようだった。その必死な姿が、本当にいじらしい。

 ブラックは亀頭の根元部分までギリギリ引き抜いて、すぼまりの裏側をわざと抑えるようにすると――――外で完全に怒張したそれを、一気に根元まで押し込んだ。

「ッ゛~~~~――ッ!? あ゛っ、がっ……あ゛ぁあっ、あ゛……!!」

 ずりゅん、と、音が立ちそうなほどの勢いで一気につらぬかれたツカサは、限界まで体をらせてビクビクと痙攣けいれんする。あまりの衝撃と快楽に言葉が出ないのか、それとも頭が真っ白になっているのか、喘ぎ声すらままならないようだった。

 だが、そこで終わってやるつもりはない。
 ブラックはツカサの体を抱え上げると、立ったまま背後から抱きしめるような姿勢を取り……そのまま、ツカサ自身の重さを借りて、結腸までのあとわずかの距離を楽しもうと体を揺さぶった。

「ひぎっ、ぃ゛!? い゛っぃあ゛っあぁあっ!! はい゛っじゃ、ぅ、お゛っお゛ぐまぇっえ゛あぁあ! やら゛っ、あっ、あぁああ゛あ゛!!」

 奥まで入っちゃう、と泣きながら起伏のないのどさらすツカサ。
 どこもかしこも、男としての成長を迎え損ねたような稀有な魅力に満ちている。十七歳にもなって男性としての機能すら与えて貰えなかった体は、その未熟でぷるんとした子供おちんちんも相まって、いっそ哀れな気すらした。

 そんなオスを誘うような体のままでいるから、こうして簡単に犯されてしまうのだ。
 本人にその気が無くても、オスというものは性欲が強く簡単に誤解してしまう。
 彼の優しさや無防備さは、この世界では「淫らな獲物の仕草」でしかなかった。

 だが、ツカサは、そんな自分のあやうさに一生気付けないのだろう。
 自分自身を「立派な男である」と思いたいせいで、ツカサは自分がどれほどオスを誘引する存在であるか自覚していない。

 その明るい笑顔と純粋さを汚したい者など、ごまんといる。
 征服して自分専用の淫らな肉穴として調教したいと思うオスは、ブラックを含めて数えきれないくらいいるだろう。

 今の悲鳴を上げて泣き叫ぶツカサは、それほどまでにいやらしい。
 普段からしてオスの股間を刺激するのに……これで「友人に頼った」と聞き、何を安心できるというのだろうか。
 少なくともブラックは安心できなかった。

「ん゛っ、ぅ……つ、ツカサ君がっ、ツカサくんがこんなにやらしい体してるから悪いんだからねっ!? いつもいつも、恥ずかしくってっ……っく……泣いちゃうの、とかっ、全部っ、全部、オスをあおってるのに気付かなきゃ……!」
「ひっ、ぃ゛っいっあっあぁっあああっ! や゛っ、い゛っいっぱっあ゛っらぇっ、あ゛っあ゛ぁあああ! お゛ぐっ、お、お゛ぐにっ、ひっぅ゛、うあぁっ、おぐっぎじゃうぅうっ!」
「結腸責めするんだから、奥に届いて当然だっ……! ほらっ、あ゛っ、いっ行くよぉっツカサ君の雌穴の奥まで精液いっぱいそそいであげるぅっ」
「ん゛ぁああっ、や゛らっやっ……あ゛っ……ぁあ゛あああぁ!!」

 ごちゅっ、と、先端が一気に届いて――――突破する。
 その刹那、ブラックに抱えられ足が地面に届かぬまま抱きすくめられていたツカサの子供おちんちんから、いきおいよく精液が噴射された。

 あまりの衝撃と快楽に、その小柄な体が思い切りかえ一際ひときわ大きく震える。
 間近に見える顔は目を見開いて涙を流し、必死に息をする魚のように大きな口を開けて、ぱくぱくと空気を求めていた。

 涙も鼻水もよだれながした、無様ぶざまで最高に興奮するイキ顔だ。
 可愛いツカサのこんな顔を見られるオスなど、自分以外にいない。

 何度も何度も下から突き上げて絶頂させ、もういやだ勘弁かんべんしてと必死に泣きじゃくる彼の屈服した顔を見られるのも、恋人であるブラックだけだろう。
 これよりさらに先の、白目をくギリギリまで瞳が収縮し、快楽に脳を焼かれて理性が吹き飛んだ下品で淫らな絶頂顔も、自分しか知らない。

 ツカサをここまでメスに出来るのは、ブラックだけ。
 その興奮が、結腸の締め付けと共に襲ってきて耐え切れなくなる。

「あ゛っ、あ゛ぁっ、つっ、つかしゃくっの、ナカっ、き、気持ちよすぎて出るっ、あぁあっ、久しぶりに結腸に射精しちゃうっ、いいよねっツカサ君いいよねぇえっ!」
「あぁあ゛ぁっ! ぃ゛ぎっ、ひっ、ひぐっ、ぃああっ、も゛っ、い゛ぐぅう……っ!!」

 結腸を擦り上げられ、雌穴をペニスでぎちぎちに満たされ擦られ続けて、ツカサの理性はすでに吹き飛んでしまったようだ。
 泣きながら素直に「イク」と叫ぶ可愛い恋人の姿に、ブラックはいとも簡単に耐えきれなくなり――――思い切り、二発目の精液を最奥にぶちまけてしまった。

「っ……ぐぅう……! っ、はっ、はぁっ、はぁあ……っ、い、いっぱい出るぅう……っ! つっ、ツカサ君のナカ、気持ちよすぎ……っ」

 何度体験しても飽きることの無い、ツカサの雌穴での絶頂。
 小さくせまい雌穴は、強引にひらかれたせいで、今もブラックの規格外のペニスを強く締め付け押し出そうとし……それでいて、熱くとろけながらブラックのペニスを欲しがり淫らにうごめいてくる。

 今までにない拒絶感と貪欲さをあわつその淫乱な雌穴は、記憶の中を探しても似たものなど見つけられない。ツカサだけがもたらしてくれる快楽だ。

 自分を「男である」と認識する彼が、どんな娼姫やメスよりもブラックをとりこにする穴を持っているなんて、皮肉と言えば皮肉だった。

「っ……ぁ゛……あぁあ゛……っ」
「ふぅ~……。ああ、本っ当に最高……っ。……っと、いけないいけない、流石さすがにもう抜かないとね……このままだと三回戦に突入しちゃう。頑張ったねツカサ君!」

 ツカサの耳にそのねぎらいは届いていないだろうが、これもいつもの事だ。
 ブラックはおのれを刺激しないようにゆっくりペニスを抜くと、ツカサを抱いたまま川べりに移動し、外套がいとうの上に寝かせ――――しばらく、ぽっかり空いた雌穴から大量の精液が出てくる様子を見て自慰をしつつ――――ツカサの体を綺麗にしてやった。

「は~……たまんないなぁ……。後始末する時まで僕のことあおっちゃうんだから……。ツカサ君ったらホントやらしい体してるよねっ」

 失神して人形のようになったツカサの体を綺麗にする行為は、いつも楽しい。だが、こうして無自覚にブラックを煽ってくるのはいただけないのだ。
 おかげで、つい再びツカサを犯して二度手間になってしまう。

 ――――自分の性欲過多を棚に上げつつ、ブラックは「洗うだから」と自慰で出した白濁をツカサの尻の谷間に押し付け汚し、それから粛々と身を清めた。

 ある程度ていど出してしまえば、それなりにブラックも冷静になる。
 冷たい水を炎の術で温めて、ツカサが寒さで起きないようにつかいつつ、汗と様々な愛液で汚れた体を丁寧ていねいいてやり、服を着せた。

 そうして、一旦いったん休もうと“おてら”の中へ入る。
 ツカサが板張りの部分で靴を脱げと言っていたので、渋々その通りにして、不可解な感触の床にツカサを寝かせた。

(たしかタタミとか言ってたけ。ツカサ君が言うには、イグサという草をんで作る床の一種らしいけど……草だってのに、しっかりしてるのが不思議だ)

 特殊なかたをしているのか、それとも中に板をはさむことで補強しているのか。
 むしって確かめてみたいとは思ったが、ここも一応は遺跡なのでやめておく。

「……まあ、寝心地は良さそうかな」

 しっかりしているとはいえ、不思議と硬い印象は無く心地がいい。
 寝転ぶと石の床とは比べ物にならない快適さを強く感じた。

 ツカサはどうだろうかと目をやると、彼は馴染みがあるらしいタタミの感触にとても安堵あんどしているらしく、すやすや眠っている。
 こうしてみると、やはりこの床は異世界の物なのだなと言う実感がわいた。

「…………あっちの世界、かぁ」

 真横で寝息を立てている可愛らしい恋人の姿を見つめ、呟く。
 ……欲目だと理解してはいるし、ツカサ自身「モテない」となげいていたので、ツカサの顔立ちは万人受けしない物だと理解してはいるのだが……しかし、ツカサの顔が童顔で愛らしいのは事実だろうとブラックは思う。

 恐らくは、そのコロコロ変わる表情で損をしているのだ。
 だが、親しくなればなるほど、周囲の者もツカサの魅力に気付くはず。

 実際、そうなって執拗しつようにちょっかいを掛けてくる厄介なオスどもを知っている。
 だからこそ、ブラックは気が気ではなかった。

 ――――あちらの世界でも、ツカサは変わらないはず。
 ならば……やはり、ツカサにかれているオスがいるのではないか、と。

(あっちの世界だと、それでも大丈夫なのかな? 本当に誰も誘惑されてないのか? そのシベってヤツは本当にツカサ君に下心は無いの。こんなにいやらしくて、普段もオスを誘うような仕草ばっかりしてくる子なのに。本当に……?)

 考えれば考えるほど、心配になってくる。
 そもそもツカサは無防備すぎるのだ。

 「これがあちらの世界では普通だ」と言われても、ブラックからすればツカサの警戒心のなさは異常だとしか思えない。
 いくらあちらではメスではないと言っても……「純粋な男」という存在がいるのなら、こちらの世界と違い同性に好意を抱く者が出てもおかしくなかった。

 男のオスが男のメスにれても何の問題も無いこちらの世界と違い、あちらは男女だけの世界であり、同性で恋人に成ることはあまりないらしいが――――ツカサの態度からすると「るけど、自分には起こりない」程度ていどの希少さのはずだ。

 同性にれる、という事象がほぼ存在しないこちらでは理解しがたいものの、それでも「男が男に惚れる」というのは、こちらの世界と同じような感覚のはず。
 ならば、少数派であるにしろ、ツカサの魅力を「メス」……つまり「女の魅力」として認識してしまうやからがいるのは確実だろう。

 性別の幅がせばまったとはいえ、ヒトというものの欲望は、異世界だろうと大きな違いは無いように思える。ツカサのスケベ度合からもそれは確信していた。

 ……それに、ツカサは不運な事に「希少な性癖」を引き寄せやすい体質だ。
 そのうえ、その中でも最悪の部類にれられてしまう。

 ツカサがあちらの世界の「オス」こと「男」に言い寄られたとしても、なんらおかしい事は無かった。……特に、メスとして開発されてしまった、今のツカサでは。

「……ぐう……やっぱり心配だ……」
「ぐぅ……」

 ブラックがうなると同時に、ツカサも可愛らしい寝息を立てる。
 この無防備でぜん極まりない少年の、どこを信用すればいいのだろうか。

 お人好しですぐに誰にでも心を開いてしまうような性格なのだ。きっと、勘違かんちがいした青い童貞野郎が恋心をいだいてもおかしくはない。
 そう思うと居ても立ってもいられずブラックは起き上がり、そして――――数秒考え込んだものの、意を決して空に叫んだ。

「……ゴホン。おいクソ眼鏡神! また覗きやってんだろ、出てこい!」

 こちらからの呼びかけに、虚空こくうからの返答はない。
 が……そう思ったと同時、反論するかのような激しい口調が飛んで来た。

「誰が覗きだっ、俺はお前らの記録を取ってやってんだよ! つーか観測するこっちの身にもなれ!! 所構わずダチをひでえ喘がせ方しやがって……!」

 “ブツゾウ”とやらが鎮座している部分の空気がゆらりと歪み、白い穴が開く。その穴から、歯をぎりぎりと噛み締めた眼鏡の男が顔を出した。
 ……実に、ごく普通の容姿の男だ。

 これが、残念ながらこの世界の神である。

 今までブラックが見聞きしてきたきらびやかで壮大な神々とは全く違う、そこらへんにでも座っていそうな青年の姿。ツカサの世界の住人という事で、年よりも若そうな姿ではあったが、しかしブラックからすれば親しみなど微塵みじんも感じなかった。

 同じ異世界人でも、こうも違うとは。

「おい、そこのちんちくりんと俺を比較すんなクソオヤジ」
「僕より何千歳も年上のクセしてよくいう。若作り駄眼鏡神が」
「うるせえ天罰落とすぞクソが。……で、何なんだよ。わざわざツカサを“わざと”失神させてまで俺を呼びだしたのはどういう了見りょうけんだ?」
「…………」

 やはり、この男はツカサと違う。
 このキュウマという異世界人の神は、甘く“やさしい”純粋なツカサよりも、こちらに近い冷静さと頭の回転の速さを持っている。
 その代わり、感情面で要望を訴えることは難しそうな印象を覚えた。

 まあ、話が早くて助かりはするが……やはり、こうして会話をすると、異世界の同じ人種と言えど性質が全く違うのだという事を思い知らされる。
 やはり、ツカサの方が珍しい存在なのだろう。

「……なんだ、アッチの世界のことか?」
「いや、それもそうだが……ツカサ君の事に関して、聞きたいことが有るんだ」
「ほう……今か?」

 意味ありげに問いかけてくる眼鏡神に、ブラックは顔を不機嫌に歪める。

「ツカサ君がいないと、お前は出てこられない。……だから、今じゃないとダメだったんだよ。……そのくらいは分かるさ」

 そう。これまでの出現の仕方からして、その可能性が高いと思っていた。
 ツカサのために異空間から現れて帰路をしめす神。

 最初から何もかもが万能で、降臨することも簡単に出来るのなら、事前に降りて待機していれば済む話だ。
 なのに、この眼鏡神は分身を降ろす時も姿を現す時も、一人ではない。必ずツカサがこの世界に存在している時にしか出てこなかったのである。

 何度もその光景を見ていれば、ある程度ていど推測すいそくはつく。

 そんなブラックの答えに、眼鏡神は「ほう」と感心したように声をらした。

「異世界人ってのは頭が固いと思ってたが……やっぱり逸脱者いつだつしゃだな」
「うるさい。その名称で呼ぶな、殺すぞ」
「はいはい、生き返ってまた神殺しされるのはごめんですよ……っと。……んで、俺に聞きたいことってのはなんだ」

 分身体を作ったのか、眼鏡神はこちらの世界に降りてきてタタミの上に胡坐あぐらをかく。そうしていると普通のヒトと変わらないが、この男はまごうことなき神なのだ。
 ……宗教的な施設に神が降臨するというのは、シャレにならない。

 しかし、この男に限っては、そこに何の意味も無いのだろう。

 そんな夢も希望も無い話にブラックは溜息をつきそうになったが、深く眠るツカサの体を引き寄せつつ、本題を切り出した。

「じゃあ、この際だからいくつか聞かせろ。……どうせお前も、僕がこうしてただしに来るのを待ってたんだろう? 洗いざらい話して貰うぞ」

 低い声でおどすように言うと、相手は眉を上げて肩をすくめる。
 そうして、余裕のある笑顔でニッと口角こうかくを引き上げた。

「おっと、洗いざらいってのは神様的にはNG……いや確約できない言葉だな。……だが、俺はツカサを“半身”として認めた。だからこそ……その“半神”の伴侶であるお前さんには、ある程度ていどのところまで話す義務がある」
「……それは、納得のできる範囲までの話なのか?」
「どうかな。お前の理解力次第しだいだ」

 取って付けたような事を言う。
 ブラックは胡散臭うさんくさい相手に嫌悪の表情を浮かべたが、しかしツカサの頭を撫でる事で表情をやわらげると、再び眼鏡神――キュウマの顔を見た。

「じゃあ、質問させてもらう」

 今までの旅で疑問に思った、いくつかのことを。












 
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