異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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幻実混処ユーダイモ、かつて祈りを唱えし者編

  本質が求めるのならば2*

 
 
 相手はブラックだとわかってるけど、でもやはり肌をつたってくる感覚は少し怖い。

 うう、どうすりゃいいんだろう。
 何が欲しいかハッキリすればどうにかなるのか。っていうか、そもそもこれはどういう状態なの。ヤバいってのはわかるが、対処していいのかどうか判断が付かないぞ。

 もし下手なことしてブラックの魂とか傷付けちゃったらどうしよう。
 そんなの嫌だ。取り返しがつかないことに成りそうじゃないか。

 でも、黙っているだけじゃブラックの体がどんどん流れ出して森がブラックでおおわれてしまう……っていやもうどういう状況だよそれ。
 なまじ相手がいつも見てるオッサンだと思ってるだけに、みょうまらない。

 一大事のはずなのに、一々いちいち字面で想像して「そりゃどういう状況だ」とかツッコミを入れてしまうのだ。チクショウ、なんでこう俺は余計な事を考えちまうんだ。

 でも、恐怖で強張るよりはきっと良いはず。
 ともかく、この状況をどうにかしないと……。

「ブラックっ、おい、ブラックってば! 何が欲しいんだよ、なんなんだ!?」

 ずるずると、スライムのようになった影の手が腕から肩に登り、体の方へと歩みを進めてくる。温度が無いので何だかプラスチックをぺたぺた当てられているみたいだが、実際にそれが動くとなると、正直ちょっと異物感が凄い。

 いっそ、少しくらい冷たい方がハッキリ怖いと言えるかもしれないな。
 それに……なんていうか、相手がブラックだってわかってるせいか、こんな風になってもあんまり怖くないんだよなぁ……。

 ホントにワケ分かんない存在だったら俺もおしっこちびって叫びまくってただろうが、相手は俺に散々ご無体を働いてきたのだ。
 多少姿が変わったからと言って、触れられて怖がることは無い。

 ただ、ブラックがこのまま元に戻れなかったり、責められたりするのは嫌だ。

 俺はアンタの過去を知らないけど、
 アンタは今まで散々苦しんできたんだろ?

 だからもう、せめて俺と一緒に居る間だけは苦しめたくない。
 俺に出来る事でアンタを救えるなら、本当になんだってやれる気でいるんだ。

 なのに――――いざとなったら、動けないなんて。

「ブラック……っ」

 呼びかけるが、ギラギラと輝く菫色すみれいろの瞳は反応してくれない。
 ただ、俺を見つめながら黒いスライムと化した腕を俺の素肌に沿わせてくる。

 やがて、肩まで流れてきていた影は、ついに鎖骨をつたって俺の体の方へとゆっくり流れ始めた。……相変わらず、体温を感じない。ただ、体に伝わってくると溶けた手の感触がヤケに粘着質なのに気が付いた。

 体に直接スライムを張り付けた事はないけど、手で触った時の感触に似てるな。
 あの、あれだ。学校の理科の授業で作った手作りスライムみたい。

 ガチャガチャで出てくるみたいなスライムと違って、ちょっと水っぽくて、ねちゃついているような感じのヤツだ。……ブラックの魂って水気が多いのか……。

 いや、たぶんそんな事は無いんだろうけど……。

「ん……っ……」

 固体に近い液体が、ゆっくり胸の部分にまで侵食してくる。
 ……さっきは顔を触ってたはずなのに、ヤケに体の方へ向いて行くな。

 そんなことを思っていたら、液状の影はとうとう右胸に辿たどいた。
 まさかとは思うが、そのまま心臓をズン!とかしたりしないよな。

「あ……あの……」

 さすがに急所にまで至られると少々不安になってしまい、つい問いかけてしまう。
 だが、相手は気にすることなく手を伸ばし続け胸の真ん中にまで到達した。
 そこには……俺が首から下げていた指輪が有る。……もしかしたら、ソレに触れて何か思い出してくれるかもしれない。

 あわい期待を抱きながら、液状の影が素肌と共に指輪に触れたのを確認する。

 ……と、一瞬ブラックの手……らしき影が止まった。

「…………」
「ブラック……?」

 ぶるり、と、影が震える。
 だが何事も無かったかのように、再び手を動かし始めると――その一部が、急にみょうな動きを見せ始めた。

「えっ……なっ、ちょっ、ちょっとおいっ!?」

 俺の胸をおおった影の一部が、少しふくらんだ部分に興味を持ったかのようにムニッとつかんでくる。っていうか、なんか、そ……そこだけんでる……っ。

 なにしてんだアンタ、い、いや、相手は未だに自分を取り戻せていないはず。
 だとしたらただ単に気になってるだけであって……ってもう、頼むから乳首ばっかモニモニ揉むなってば……!

「ぶ、ブラッ、ク……っ! やだ、そこやだってば……!」

 熱も冷たさも無い物体が、執拗しつように乳首だけをむ。
 スライムみたいな物体になってるせいか、的確にその部分だけに吸い付いて来て、真ん中の突起の部分に吸い付くように、何度も何度もタップして……っ。

 う、ううう、ヘタにヒトっぽくないせいか、まるで吸盤型の機械にムリヤリ乳首を勃起させられようとしてるみたいで、ひどく恥ずかしくなってくる。
 こんなので勃起してたら、ホントに俺がスキモノみたいじゃないか。

 っていうか今はこんな事してる場合じゃないのに、なんでこうなってんだよ!

 もう、さすがにこれはやめさせないと……!

「こら、ブラックダメだって、だめっ……ぁ! ぅあぁっ、ば、バカぁあっ!」

 きゅっ、急に、乳首を締め上げて先っぽを舐めるようにくすぐってきた。
 そのせいで変な声が出ちまったじゃねーかバカ、変態!!

 なんで乳首を触ったらそんな急にスケベなことをし始めたんだよ、やっぱりお前、絶対にブラックだろ。絶対そうだろ!
 俺の胸なんかにこんなに執着するのなんて、オッサン二人ぐらいしか……っ、う、ううっ、両方とも……すっ……吸うみたいにされてる……っ!

 なんでこんな時ばっかり「ちゅっちゅっ」て音がするんだよ、今まで影の体が動く時なんて無音の方が多かったじゃん、変な音させなかったじゃんかあ!
 それなのに……ひっ、ぅ、ち、乳首、吸う時だけ、こんな……っ。

「や、だ……やっ、あぁ……! 吸うなっ……吸うな、ってばぁ……!」

 ああ、嫌だ、お腹の奥が、また変な感じになってくる。
 覚えのある感覚と熱が、下半身にじわじわとせまってくる。

 こんな時に感じちゃいけないのに、こんなので感じるなんて、おかしいのに。
 なのに、両方の乳首を弄られながらくちで吸うみたいに吸引されたら、もうブラックのせいで開発されちまった体が、勝手に熱くなっていってしまう。

 ち、違うのに。俺は感じたくなんてないのに。
 なのに……っ、ぅ、うう……どんどん、体が変に……っ。

「…………」
「あっ、や……胸全部むのやだっ、ばか、いやだってばぁ!」

 胸に張り付いていた影が、全部動き始める。
 乳首への吸引は続けたまま、今度は胸全体をマッサージするようにうごめき始め、俺の平らな胸をまるでふくらませようとするようにみしだいてきた。

 まるで、女の子にするみたいな動き。
 俺の胸じゃ普段なら絶対に出来ないのに、影は容易たやすく俺の胸をんでくる。

 ……ブラック達のせいで、メスのようにあつかわれて感じやすくなってしまった。
 それも密かに気にしてるのに、これ以上揉まれて女の子みたいな胸になったらどうしよう。普通じゃ出来ないことなのに、こんな、吸い上げるようにされて……。

 これじゃおっぱい出来ちゃうじゃないか、そんなのいやだ。
 太るならともかく、いくらなんでも流石さすがにそこまで男を捨てたくないんだってば!

「バカばかばか! いま胸なんか欲しがったってしょうがないだろ!? ブラックのばかっ、ぁっあぅっ……くっ、うぅ……! やっ、もうやだ……胸も乳首もしないでぇ……っ!」

 影がヤケに粘着質なせいか、一際ひときわ吸われて「ぢゅっ」と卑猥ひわいな音がする。
 それが森の中に響いたみたいで恥ずかしくて、俺は思わず情けない声で懇願こんがんしてしまった。ああ、もう、知らない内に目が涙でにじんでやがる。

 でも仕方ないじゃないか、こんなの、こんなことされたら誰だってそうなるよ。
 こんな事してる場合じゃないのにえっちな事をされて、それなのに自分はブラックをいさめるどころかすがままにされて、結局感じちゃって……。

 そ、そんなの、恥ずかしいし情けないに決まってるじゃないか。

 なのに、ブラックの影だから、結局本気で抵抗も出来なくて……ああもう、俺って奴は何故こんなに格好つかないんだ。
 ち、乳首と胸を、変に触られたくらいで、こんな……クソ……。でもくやしいけど、姿形が違ってもブラックが触れているんだと思うと、お腹の奥が変になってきて。我慢がまんしたいのに、太腿ふとももわせると熱がこもっているのが分かってしまって。

 そんな自分が恥ずかしくて、本当に自分は変態になってしまったんじゃいかと考えてしまって、怖くて仕方がない。

 ……メスみたいにされちゃったから、こんな風になるのか。
 それとも、俺が、ブラックのこと好きだから、こんな恥ずかしい事になるの……?

「う、うぅ……」

 考えるだけで、顔が痛いくらいに熱くなる。
 なんだかもう刺激と恥ずかしさで感情がよく分からなくなって……気が付けば、ほおに涙が落ちてしまっていた。

「…………」

 いまだに俺の胸を熱心にいじっている、影となったブラック。その一部に、俺の情けない涙がポタリと落ちる。すると。

「オ……」
「っ……な、なに……」
「ホシ、い……ホシイ……」

 え……涙が、影に染みこんでいく。
 っていうか、その場所がうっすら金色に光ってるじゃないか。

 …………待てよ?

 この世界で言うと、金色の光は“大地の気”だ。
 そして俺は……その気を無尽蔵むじんぞうに創り出すことができる【黒曜の使者】で……その曜気や“大地の気”を好き勝手に取り出せるのが【グリモア】なんだよな?

 で、その“大地の気”や各種曜気は、この世界の人族にとっては体を構築する大事な要素の一つなのだ。

 だとしたら……このブラックが欲しがってるのは……俺の“気”ってこと?

「…………涙が、欲しいのか……?」

 問いかけると、影の一部が今度は俺の顔の方に向かってきた。
 やっぱりそうだ。ブラックの影は、俺に触れた事で生命力……“気”を感じて、それを欲しがっていたんだ。

 もしかしたら、大地の気をそそめばブラックは戻ってくれるかもしれない。
 あと、この乳首吸い付きもやめてくれるかも。

「ホシイ……」
「わ、わかった、分かったから止まって! ストップ! 今からあげるから……」

 ブラックをたしなめつつ、俺は金色の光が影の体へと流れ込むようにイメージする。
 すると、すぐ俺の周囲に光の粒子が沸き立ち始めた。
 こうなったらもう後は、ブラックにあげるだけだ。

「たんと食えよ……!」

 満足するまでそそむので、頼むからもう胸を吸うのをやめてくれ。
 まらない願いを抱きながら、俺はブラックの姿が戻るように願いつつ“大地の気”を大きくなったその体にそそぎ続けた。

 すると――――森へと大量に流れていた影が、消えていき。

 その中心にいたブラックの体が、徐々に巨人から元のサイズに戻り始めた。
 俺の体に吸い付いた影は相変わらずだったけど……それでも、数分そそぎ続けた気のおかげなのか、ブラックの形はほとんど“元の姿”に近くなっていた。

 ……ただ、やっぱり……ちょっと若い頃の姿っぽかったけど……。

「ブラック……?」

 恐る恐る、問いかける。
 髪型すら再現されたその姿の顔をうかがうように覗き込むと、再び見知った位置にまれた菫色すみれいろの瞳が、しっかりと俺を見た。

「………………ツカサ、くん……?」

 その声だけで、俺はわかってしまった。
 もう不安にならなくてもいいのだと。












 
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