異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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会遇古港エスクレプ、偉大な術師の夢と痕編

  男らしくありたいのに2

※ツカサがちょっと感じ過ぎて一人相撲してるように見えます。ご注意ください。
 
 
   ◆



「ひ……ヒロ、大丈夫か……?」
「う、うん……」

 目の前で肩を狭めて窮屈そうにしているヒロを見上げ、俺も身をちぢめる。
 夕方の時間だし、満員電車になるって事は当然予想してたんだけども……まさか、こんなにもギュウギュウになるなんて思っても見なかったよ……。

 周囲の人がザワザワしながら話している声を聴いた所、どうやら数時間前に隣駅で何かのトラブルがあったらしく、そのしわ寄せで、電車を待っていた人達が今ドドッと入って来てしまったらしい。

 けど、こんな押し合いへし合いになるなんて……マジで聞いてないよ。
 俺はドア横のスペースに運良く体をめたから良いけど、ヒロは長身で大柄な体が災いしてか、後ろから押されて俺と密着まであと数センチって所まで追い詰められているのだ。これじゃ俺もヒロもつぶれちまうよ。

 目的地は次の駅だけど、これ、俺達降りられるんだろうか……。
 帰りのホームは、俺達が居るドアの反対側だ。こっちのドアは確か……三駅先まで開かなかったような記憶がある。万が一降りるタイミングを逃したら大損おおぞんだ。

 俺もヒロも怒られるに違いない。それを思うとゾッとする……うう……なんとか次の駅で降りられるように頑張らないと……。

「つ、つーちゃんこそ、へ、平気……?」

 悲壮ひそうな決心をしている俺に、ヒロが上の方から聞いてくる。
 相手が長身なせいで目線が合わないのだ。俺は胸辺りから視線を上へと移動させ俺を見つめている相手にうなずいた。

「お、おう。俺は何か……お前がたてになってくれて助かってるけど……。ヒロこそ、大丈夫なのかよ。後ろとか押されてない?」

 少しこちらにおおかぶさるような体勢たいせいで、片腕を俺が寄りかかっている壁につけている。この状態だと、横にある座席のにぎぼうを握っていてもつらいだろう。
 なのに、ヒロは俺のためにスペースを確保しようとしたのか、数十センチの隙間を開けてくれているのだ。おかげで、俺は壁に背を押し付けた状態だが結構余裕よゆうだ。

 でも、そのわずかな快適さをヒロに作って貰ってるのが申し訳ない。

 ごめんなと思いつつ相手を見返すが、ヒロは少しまぶしそうに笑って、熱いのか汗をらしながらエヘヘと小さく声をらした。

「だ、大丈夫……。ぼく、つ、つーちゃんより、おっきいんだもん……! い、今はぼくが、つーちゃんのこと、守らないと……。いつも、守って貰ってるから……っ」
「ヒロ……お前ってやつは……」

 なんという友達思いの心優しいヤツなんだろう。
 俺より大きい、という言及げんきゅうには少し心がねじけたが、しかしそのそねみをもってしても、ヒロへの感動は計り知れない。

 やっぱり持つべきものはイイ友達だよな……と思っていると、ようやく発車時刻になったのか電車が動き出した。
 ヒロの体が、目の前で大きく動く。その時に少しうめくような声を出したので、俺は心配になり問いかけた。

「ヒロ。もうちょっと、こっちめていいぞ?」
「だ、大丈夫……背中で押されただけ、だから……」
「でも……」
「そ、それよりつーちゃん、つーちゃん昔よりう、歌上手くなってたね」

 話の方向を逸らすように、ヒロは今の状況に関係のない事を持ち出す。
 誘導がヘタ過ぎるぞヒロ……とは思ったが、俺に意地が有るように、ヒロにだってゆずれない意地があるのだろう。そこを立ててやるのが男ってもんだ。

 俺はいたわりたい気持ちをぐっとこらえると、あえてヒロの話に乗ってやった。

「ヒロこそすげー上手かったじゃん! あの……あれ、どこの国の曲?」
「イギリス。ご、ごめんね、ぼくあんまり、さ、最近の歌、知らないから……」
「なるほど英語の……確かになんかちょっとクラシックだったもんな」

 あの、アレかな。いわゆる外国の古い歌だったんだろうか。
 すこしオペラっぽい感じがあったけど、まあともかく低い声がビリビリ効いてて、耳が何かちょっと幸せだった気がする。

 どっちかって言うとヒロの方が上手いよな。俺はああいう技巧派的な歌い方は出来そうにないし、英語の歌なんて流暢りゅうちょうに歌えないし……。
 まあ俺は音程おんていを外さず歌えるって程度ていどだろうが、楽しければいいのだ。

「今度はヒロも何か流行ってる曲歌う? 動画検索してアドレス送ってやるよ」
「ほ、ほんと?! わっ……あはっ、つ、つーちゃん、ありがと――――」

 と、ヒロが嬉しそうにお礼を言おうとした、刹那。
 ガタンと大きく電車が揺れて、俺の体は後ろに押し付けられる。だがそれだけでは終わらず、ヒロの体がぐっと接近してきたのだ。
 ていうか、それをける余裕が無い。大きく揺れたせいで俺もバランスを崩して、思わず足の置き場が……。

「うぐっ……!」
「んっ!?」

 ヒロがうめくのと同時に顔を上げると、電車が止まる。
 向こう側からプシューッと音がしたが、どうやらドアが開いたらしい。
 ……って、ここ、俺達が降りる駅じゃないのか。俺達が降りる予定の駅は、あの駅から乗ってすぐだったんだぞ!? 気が付けよ俺!!

 うわ、周りがあんまりにもガヤガヤしてるせいで、停車駅のアナウンスに気が付かなかったのかな。ヤバい、出ないと乗り過ごしちまうぞ!

「ひ、ヒロ、ここで降り……っ」
「うあっ!?」

 俺が言葉を言い切る前に、ヒロの悲鳴が聞こえて背後の壁に押し付けられる。
 も、もうヒロとの距離は無い。っていうか、体に押し潰された……っ。
 何だコレ、どうなってんだ。

 まさか、降りる人達の動きでさらに押されて、完全にココに押し付けられてしまったのか。待て待て、これじゃ降りられないじゃないか!
 し、しかも、ヒロの体と壁のサンドイッチで苦しい……。

「あっ、ああ、つ、つーちゃん扉しまっちゃう……!」
「えええ!! ちょ、ちょっと待って降りま……っ」

 す、とまで言えずに……扉が、閉じてしまった。
 …………ああ、あと三駅乗り過ごし決定だ……。

 確か、改札口の駅員さんに言わなきゃいけないんだっけか……アレ面倒臭めんどくさいんだよな……。でも、こうなったら仕方ない。このまま俺のすぐ横のドアが開くまで耐えるしかないのだ。し、しかし……。

「う、うう……」

 ヒロがうめくのも無理はない。
 だって、俺達はもう隙間ゼロで押し潰されて、壁に押し付けられているのだ。

 俺も壁とヒロの体にサンドイッチされて苦しい。
 再び最初のような空間を確保したいのだが、ヒロの体の向こう側に見える光景は、俺達のように苦しそうな顔をしてすしめになってる人達しか居なくて……どう考えても、これ以上動けそうになかった。

 でも、せめて体勢たいせいくらいは変えておかないと、次の振動か何かで転んでしまったりするかもしれない。他の人に迷惑を掛けないようにしないとな。
 そう思って、俺は無意識に開いて体重を制御していた足を閉じるために、姿勢を真っ直ぐ正そうとした。のだが。

 ――――むぎゅ。

「んっ?」
「あっ……!」

 ヒロが、情けない声を出す。
 対して俺も「ん?」とか言っちゃったが、それもそのはず。
 俺が足を開いてバランスを取っているうちに……ヒロは、その間に片方の足をはさんでしまっていたのだ。おいおいおい、なんちゅうアクシデントだよ。

「ご、ごめんヒロ……動けるか……?」

 もう顔も上げられず胸に顔を押し付けられていて、顔が見えない。
 そんな俺に、ヒロはビクリと体を震わせ、小さな声で答えた。

「う、うん……だっ、だ、だい、じょうぶ……」

 熱い吐息が掛かってくる。息が、あらい。
 ああ……ヒロにとっては車内は熱過ぎるんだろう。そもそも、電車にもあまり乗る事が無いお金持ちなのだ。この状況では息が上がっても仕方ないだろう。

 可哀相に……いや俺も今充分じゅうぶんに可哀相なんだけど。
 せめて、どこかにつかまらないと。そう思い、ドア横の手すりをにぎろうとした、と。

「――――っ!」

 ガタン、と、再び電車が揺れて――ヒロの体が、さらに俺の方へ押し付けられる。
 もう、隙間なんてない。だけどそれ以上にこまったことが起こって、俺はその状況に思わず息を飲んでしまった。

 だ、だって。
 だってこれ……っ。

「っ……ひ、ヒロ……」

 ヒロの、あ……足が……俺の、その……こ、股間のとこに……っ。
 足の間に偶然はさまったヒロの太腿ふとももんところが、なんか、お……押しつけられてるって、言うか……その、とにかくヤバい事になってるんだってば!

 これは流石さすがに黙ってはいられない。
 何とか早く足を移動させて貰わないと……!

「つ、つーちゃんっ……は、ハァッ、はっ、ご、ごめん……動けなくて、もう……っ」
「ッ……! う……も、もう、少しも動けないのか……?」

 会話が飛び交う電車の中、小声で会話するけど、それが後ろめたさを加速させる。
 ああ、イヤだ。ヒロの足が、ズボンの合わせ目にピッタリくっついてる。
 お互いそんなつもりないのに、意識しちまう。

 だ、ダチにこんなとこ、足とは言え触れられて……恥ずかしい、イヤだ、早くどうにかしないと。のがさないと。そうは思うけど、何もいい案が思い浮かばない。

 どうにかならないかと足の置き場を探ってみるが、ヒロの足はもう俺がまたがるような形で固定されていて、ひざが壁にくっついてしまっていた。
 それに、ヒロも俺と密着しているのだ。動かしようが無い。
 ああぁ……これが八方はっぽうふさがりってヤツか……。

「む、無理、みたい……。ごめんねつーちゃん……っ」

 ヒロの謝る声が、至近距離から聞こえる。
 密着した体から低い声の震えが伝わってきて、俺は思わずこの場に居ない存在を思い出し、それが“どんな時に感じられる事か”まで連想してしまって、つい体がカッと熱くなってしまった。

 こ、こんな風に、密着するのなんて……ブラック達としか、したことがない。
 家族は別だけど、ダチとなんてこんな……。

「っあ……!!」

 また、電車が揺れてヒロの体重が掛かってくる。
 だが今度は重みでは無くて、そ、その……偶然に、下からげるように動いてしまったヒロの足に、反射的にビクッと反応してしまったのだ。

 う、うぅうう……なに反応してんだよ俺えぇ!!

 相手はヒロだぞ、友達だぞ!
 それなのに、足がちょっと股間に当たってグイッてなっただけでビクっちまうなんて、お前は変態かよ、バカ、俺のバカ!!

 …………。
 でも、でもさ、仕方ないんだろ。
 男はられたらっちゃうんだよ。だから、偶然触れて反応しちゃうのも生理現象としては仕方なくて、だから……っ。

「ま、また……っ」
「~~~~ッ!?」

 ヒロの呟きと共に、また電車が揺れてヒロの体が強く押しつけられる。
 それとともに足が、で、電車の動きで、今度は左右にぶれて……っ……!

 う、ぁ……や、やだ……我慢しろ、感じるなって俺ぇ……っ!
 なんでこんな事で反応しちゃうんだよ、おかしいだろ相手は友達だぞ!?

 普段は絶対こんなことないのに、こんな……っ。
 い、いや、落ち着け。落ち着くんだ俺、これは仕方のない事だ。そもそも俺はつね日頃ひごろからブラックにセクハラされてるせいで、敏感になってて。

 だから、その気が無くても股間を触られたらこんな……。
 でも、だからってあえいでたらホントに俺は変態だし、何も知らないヒロにも申し訳ないだろ。そもそも、感じてしまう自分が嫌だ。あ、足が、左右にブレてこするみたいになったくらいで、股間に覚えのある感覚が走るなんて、そんな……。

「つーちゃん、ご、ごめん、立ちにくいよね……ぼっ、ぼくの足に、座ってくれてもいい、から……っ」
「っ……だ……だい、じょうぶ……っ。そこまでツラくは無い、から……!」

 そんな事したら、角度的にまた股間に足が押し付けられてしまうじゃないか。
 ヒロの足に体重をかけるわけにいかない。
 なのに。

『この先、電車が揺れますのでご注意ください』
「――――!?」

 無慈悲に、電車のアナウンスが耳に入ってくる。
 あ、ああ、ヤだ、自分が恥ずかしくて、誰にも見られたくないと思ってるせいで、周囲の声がヤケに聞こえるようになっちまってるんだ。

 そのうえ、あんな無慈悲なアナウンスが……――――

「つーちゃん……っ!」
「ひぐっ!?」

 あっ、あぁあっ!
 やだやだやだ、また足が押し付けられてる!
 ヒロの足が下から俺のを上に押し上げるみたいにして、こんな……っ!

「うっ……はっ、ハァッ、つ、つーちゃん、ゆ、揺れが……っ」
「っ、ぅ……~~~~ッ!!」

 ヒロの低い声とあら息遣いきづかいと共に、電車が激しく左右に揺れ出す。
 その度にヒロの硬い太腿ふとももが俺の足を割り開いて、ぐりぐりと押し付けられ、しかも左右に揺らして俺の股間を無意識に刺激してしまう。

 しかも、電車の振動に耐えているせいか、ヒロの足は小刻みに震えていて……。

「はぁっ……はぁ、ハァッ……はあっ……はぁ、っ……」

 ヒロの吐息が、別のものに聞こえてしまう。
 「そういう時の呼吸」じゃないのに、耳が勝手に勘違かんちがいして胸が痛くなる。そんな自分の浅ましい欲望と生々しい記憶に恥ずかしさが押し寄せてきて。

 あ、ああ、いや、いやだ。感じちゃいけないのに、体が熱くなってくる。
 ヒロは何もしてないのに、誰も悪くないのに、勝手に俺が感じて追い詰められて。
 なんつう状況だよ。俺、本当にどうしちまったんだ。発情してるのか?
 発情……?

 いや違う、そんなの絶対に違う。
 違う、違うのに……俺、これじゃ変態みたいじゃないか。

 そんなんじゃない、絶対に違う。
 俺は、普通なのに……っ。

 なんで、なんで電車の振動程度ていどで、ヒロの足がこんなに俺を追い詰めるんだ。

「っぅ……ん、く……っ、うぅ……~~っ……」

 もう、自分が恥ずかしくて情けなくて涙が出そうになる。
 ダチと密着したくらいですぐに発情してしまっている自分が、本当にいやしくて嫌いになりそうだった。……いや、もう、嫌いだ。
 出来るなら、こんな体捨ててしまいたかった。

 チクショウ。何で俺、こんな風になっちゃったんだろう。
 昔だったら、こうなっても絶対にこんな変な事にならなかったのに。
 敏感だったとしても、ここまではならなかったハズなのに……。

 ………………やっぱり……ブラックと、えっち……したから?
 いっぱい恥ずかしい事をされて、えっちなことして、か、体が……メスになった、から――――こんな、こんな程度ていどの事で……体が反応しちまうのかな……。

 でも、そんなの…………

「んぅっ!?」

 考えようとしてたのに、また思考が刺激で散らされる。
 駅に着いたんだ。でも、また大きく人の波が動いて押し潰されて。
 そして……また電車の振動がくる。

 今度は、大きく揺れて、俺の体が思いっきりずり落ちて――

「あっ、つ、つーちゃん!」

 荒い息のヒロが、咄嗟に片手で俺の体を抱き留める。
 けれど、それは。

「っ……!! ぁ……!」

 結果的に、ヒロの大きな足に股間を密着させて乗り上げるような、最悪の姿勢になってしまっていて……。

「はぁっ、ハァッ……ハァッ……」

 ヒロの、息が荒い。
 咄嗟とっさに抱き上げたものの、俺が重くてさらに呼吸が苦しくなったのかも知れない。
 だけど、その吐息を心配する前に次の信じられない振動と刺激が来て、俺は反射的に悲鳴を上げてしまいそうになってしまった。

 だって、こ、これ……っ!

「ひ、ヒロっ、大丈夫、もっ、おれ大丈夫だから……っ!」

 やだ、いやだこの姿勢やだ、一番ダメなやつ!!
 電車が動くせいでバランスが取れなくて、俺から押しつけちゃってるっ。ヒロも足で俺を支えるのがつらいのか、ブルブル震えてて、その振動が……っ!

「つーちゃ……っ、はぁっ、は、だ、大丈夫ッ、大丈夫だから……ッ!」

 満員電車の中、色んな人がうるさく喋っているのに、凄く小さいはずのヒロの声がヤケに大きく聞こえる。痛いほど熱くなってる耳に、焼けるような温度で入ってくる。
 だけど俺は言葉を返せずに、壁に押し付けられヒロの胸に密着したまま、ガクガクと震えるヒロの足に下半身の熱をあおられていて。

「んっ……く……! うぅ……うぅう……っ!」

 もう、くちを開けない。くちを開いたら、変な声が出ちまう……!

 なんで。なんでだよ……なんでこんな、足っ、し、振動するの……っ!
 ちんちんに当たってる、ブラックがいっつもいじに、ぶるぶるする足が押し付けられてて苦しい、変になる、変な感じになっちゃってるんだってば!

 こんなとこで勃起するのヤダ、やだよ、感じたくないぃ……! ヒロとは友達で、そんな関係じゃないのに。こんな風になりたくないのに……!

 やだ、やだ、やだやだやだもうヤダ、早く駅についてくれ、こっちの扉開いてくれよ。頼むから、俺が醜態しゅうたいさらす前に頼むから……!!

『――――、――――、右側の扉開きまぁす……――』
「……!!」

 天の声……いや、アナウンス、こっちの扉が開くアナウンスが聞こえた……!

 途端とたん、俺のすぐ横の扉が開いて、俺はあわてて体を乗り出そうとする。
 が、ヒロの足がさまたげて上手く動けない。
 そんな俺を抱えて、ヒロは不思議なほどスマートに電車から降ろしてくれた。

「あ、あはっ、はは……っ。つ、つ、つーちゃ……だ、大丈夫……?」
「う……うん……っ」

 つい、軽く姿勢を前屈まえかがみにしてしまう。
 もし勃起していたらと思うと怖くて、仕方なかったからだ。
 そんな俺に、ヒロはハァハァとあらい息をらしながら気弱な笑みを見せた。

 ああ、いつものヒロだ。でも、満員電車で熱されたせいか顔が真っ赤で。
 俺みたいに、熱で体が火照っているみたいだった。
 ……でも、その赤面は、絶対に俺と同じ理由の赤面ではないだろう。

 本当に、申し訳ない。俺は自分が恥ずかしい。
 自己嫌悪で憤死してしまいそうだったが、しかし今は……自分を責めているヒマはない。というか、もう、今は……ヒロの顔を見てたら、落ち着けない……。
 俺が悪いのに、どうしてヒロに迷惑かけなきゃいけないんだろう。

 でも、今はそうするしかないんだ。
 だって、そうしないと……申し訳なさや自分が感じていた恥ずかしさで、たまれなくなって、叫び出してしまいそうになるから。

 流石さすがに人がごった返す駅の中でそんな事は許されない。

 だから、とにかく今は……。

「と……とりあえず……トイレ、行って良い……?」
「う、うん……! ぼ、ぼくも……ちょうど、行きたいと思ってたから……」

 照れたように頭を掻きながら言うヒロに、俺はホッとしてうなずく。

 けど今は、相手の顔が見れない。
 ……今ヒロの顔をみたら……その切れ長の三白眼が、何もかも知っていると言っているような錯覚を覚えて……逃げ出したくなりそうだったから。

「…………」

 実際、ヒロは今も変わらず俺の事を凝視していて……顔を、上げられない。

 …………ヒロがどんな顔をしているのか、分からないけど。

 でも、今は……何も考えたくなかった。











 
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