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第九章
splash 82
しおりを挟む満面の笑みで告げると、困った様に肩を下ろす怜。手を引かれたまま「今日は特別に邪魔しないであげますよ」と言う彼は、何だかんだで、いつだって手を貸してくれる。
今日は、お付き合いを始めた…いや、シユン君と再会してから練っていた計画を実践する日だ。何故なら今日はーー・・・
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「シユンっ、誕生日おめでとーっ!」
楽屋に入ると、賑やかな声と共に、「はいっ、どーぞ!」と紙袋を手渡してくるリン。同時に、パンパンッと二連発、両隣からクラッカーが弾かれる音がする。目を丸くして、今日が自分の誕生日だったという事を思い出す。
「有難う……ビックリした。サプライズ?」
嬉しい、とプレゼントを受け取りながら問う。
「うん!ギリギリまでシユンにこの事言わなかったから、サプライズだよ!」
にひひ、と悪戯っ子の様に笑うリンの頭を撫で撫でする。
すると、空になったクラッカーを振り回したまま、レイが片手で「ん」とコンパクトなプレゼント箱を手渡してくる。
「俺のリスペクトしている店のアクセサリーだから、多分気に入る筈だぞ。」
「はは、お洒落なレイが言うなら間違い無いな。有難う。」
ドヤ顔で渡され、思わず微笑を浮かべていたら、背後から「シユン」と名前を呼ばれ、少しだけ肩が跳ねる。振り返ると、暫く二人きりにならない様に避けていたソウが目を細めて此方を見下ろしていた。手には中くらいの紙袋が。
「有難う、ソウ。中には何が入っているんだ?」
自然な感じを装いながら紙袋を受け取ると、彼はニコッと大人のオーラを見せながら「帰ってからの秘密」と人差し指を立てる。一体何が入っているんだろう、と思いながら紙袋を覗く。
「そういえば、青春症候群の映画上映まで、後もう少しだな。」
思い出した様に告げるレイの言葉に顔を上げる。
そうか、もう直ぐクランクアップか。
彼の必死な、縋る様な顔に根負けて、お試しお付き合いを正式に開始したのがつい最近。それまでは多忙な仕事で、お互い怒涛の毎日だった為、ノーカウントとなった。つまり、あの出来事から二ヶ月程経っているという訳だ。
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