触れたくて触れられない

よんど

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番外編3 関係

poison 1

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⚠︎splash 119以降⚠︎

江花瑠璃の突然の休止活動に、何処のニュース会社も暫く注目していた。彼女の失態に関して詳しく知っているのは、splashのメンバーと、彼女の標的にされた早坂伊織、そして彼女の事務所のみ。表向きでは休止する理由などは一切明らかにされなかった。


「まさか本当にヘマをするとは」


小さく呟きながらスマホの画面をメガネ越しに見据える。画面に表示された『×××のバーにいる』というメッセージを見ながら、俺、高木李たかぎり そうは溜息を吐く。指定された場所へ足を向けながら、俺は掛ける言葉を考えていた。




「すみません、アイツ、居ますか」


バーに入るなり、キョロキョロ窺いながらマスターに尋ねる。
直ぐ様気付いた彼は、苦笑しながら「端っこの席で呑んでるよ」と顎で指す。名前を呼ぶ必要が無いのは、彼女が此処の常連客だから。言われた通り視線を向けると、確かに橋の方でちびちび呑んでいる人物が居た。「有難う」と軽く会釈をし、そのまま近づいて行く。


「ちょっと」

「!」


肩を軽く叩き、指摘する。フードを深く被っていた目の前の奴は俺を見るなり、パアッと顔を明るくし「ソウ!」と抱きついてくる……が、ひょいと見事にかわし、空振りに終わる。半べそを掻いた表情で「酷い」と此方を見てくる。


「皆を見守る優しいお姉さんみたいなアイドルが、そんな冷たくていいの」

「皆が大事だからこそだ。そんなに男が欲しいなら、なんかやめて、として働けば良いんじゃないの」

「ふはっ、ソウってば凄い毒舌……アイドルとは思えないくらい」


俺、高木李 蒼の表向きの仕事はアイドルである。ここまで来たら分かると思うが、『splash』グループの一人のソウだ。そして、目の前で酒を飲んで酔った様子を見せている彼女……いや、彼は、問題を起こして暫く活動休止が決まった江花瑠璃本人だ。
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