碧に溶かして

よんど

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碧に溶かして 番外編

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※本編読了後をオススメします
※過激表現有りです

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様々な衝突や新事実が発覚したあの日から数ヶ月。
俺とヨウはあれから追っ手から隠れる様にひっそりと再び生活を共にしていた。ヨウは大学に通う事をやめて、極力外へ出ない様にさせた。買い物などは殆ど自分がして、調達したモノをヨウが使うというサイクルだ。そう、彼は所謂ヒモになっていた。


「夕ー、おかえり!ご飯にする?お風呂にする?それとも俺…」

「何処で覚えたんだ、そのテンプレを」


玄関に足を踏み入れるなり、おちゃらけた調子で言う彼の頭を軽く叩く。ヨウはあれからスッキリした様な面持ちで過ごしている。ずっと胸の中に引っ掛かっていたモヤモヤが無くなった様な、清々しい表情に内心安堵する。かく言う自分も、ヨウに対する想いを自覚し、彼と再びこうして過ごせる事に喜びを感じている。「ただいま」と、そのまま頭を撫でてやりながら続ける。


「変な奴は来なかったか?」

「うん。鍵は掛けてあるし、茜に聞いた所、最近はこの辺りを諦めて隣の街で調査を始めているらしいよ」


いつの間に彼と連絡先を交換したのか、不思議に思いながら「油断は禁物だから気を付けよう」と肩に手を置き、リビングに向かう。「結局どれにするの?」と楽しげに聞いてくる彼に、顔を真っ赤にした俺は「勿論ご飯!」とソッポを向いた。ヨウは吹き出す様に笑った。


「体調の方はどうなんだ?」


頂きます、と手を合わせて美味しそうなクリームシチューに手を伸ばす。ピタッと動きを止めた彼は困った様に笑いながら「多分大丈夫だと思うんだけどね」と返す。キメラである事が発覚した以上、気安く病院に出向けない彼にとって市販の発情抑制剤は効果が薄いに違いない。発情期が迫っている今、彼曰く以前より暴走する可能性が高いと不安に感じているらしい。


「まぁ…そこ迄重荷になるなよ。この家にはお前と俺しか居ないんだしさ」

「………それがダメなのに」


ボソッと呟いた彼の一言が聞こえなくて「えっ?」と首を傾げる。ハッとしたヨウは慌ててかぶりを振り「何でもない」と告げ、ご飯を口にし始める。こうやって、何か言いたい事があっても隠す素振りを見せて結局言わない所はあの頃と変わらない。まぁ大丈夫だろ、と引き続きご飯を口にする。この時の俺は事を安易に考え過ぎていたんだ。


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