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第六部 魔法使い、双子の悪魔との別れ
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「ずっと精神操作魔法を掛けられて長らく魔法を使っていなかっただろう。振り解く力も無い筈だ」
やってみせろと言わんばかりに片方の手首をグッと押さえつけられる。
反論する代わりに黙って下から力を込めようとするが、彼の言う通り抵抗する気力が残っていない。そもそも以前より体力が無さ過ぎるんだ。
ここ最近の記憶が無かったのは彼の言う精神操作魔法を掛けられていたからなのだろう。僕の脳は覚えていなくても体が彼に世話されていた事を覚えている。二人の触れた感触が今になってじわじわと感じられる。
「.....僕は此処には残らないよ。君がどういうつもりでそんな事を言っているのか分からないけれど、僕の居場所は此処じゃないから」
彼の手の甲に指先で触れながら続ける。
カミラ様に事情を何とか説明して二人に早く会いたい。セルとヨルが僕に何度も「好き」と「愛している」を囁く声がまだ耳に残っていて、まるで早く帰ってきてと呼ばれているみたい。
「だからベッセル、早く此処から出し──、」
視界が、真っ暗になる。
冷気が肌に当たるのを覚えた直後、目の前に睫毛を伏せて口付ける彼の顔があった。ベッセルが僕の口を塞いでいる。
「.....?!やめっ.....!んっ」
背中に腕を回され、逃げられない様に抱擁される。セルとヨルにキスされた時は初めての時も嫌だなんて思わなかったのに、胸の内に真っ黒な感情が押し寄せ一気に不快になる。彼の胸を押し返せない代わりに、更に深いキスをしようと唇の角度を変えてきたタイミングでガリッと歯を立てる。
スッと離れた彼の唇に残った僕の小さな噛み跡からじんわりと血の玉が浮かび上がる。こんなにも嫌悪感を示している筈なのに、目の前の彼の様子が落ち着く事は無い。それどころか、うっとりとした表情で僕を見つめたまま舌を舐めて微笑む。
「可哀想なリュシー。悪魔に誑かされてしまったんだな」
「誑かされたって.....、ちょっと待って、今悪魔って言った?」
彼の口から出た「悪魔」という言葉──それは紛れもなくセルとヨルの事だ。彼が怖いのをすっかり忘れて詰め寄る。笑顔から一瞬で怪訝そうな表情になった彼は聞こえないくらい小さな舌打ちの後に返す。
「リュシー。何故そこ迄悪魔を庇うんだ。俺達宮廷魔法使いが今迄彼等に情けを掛けて生かした事なんてあったか」
「今はそんな事どうでもいい!二人に何をしたんだ?僕が眠っている間に何を、っ」
夢中になってしまったせいで、いつの間にか彼に手を取られていた事に気付くのが遅くなってしまう。ビクッと手を引っ込めようとするが彼がそれを許さない。僕の手をギュッと握り口を開く。そして.....
「リュシー。俺はずっとお前の事が好きだった」
やってみせろと言わんばかりに片方の手首をグッと押さえつけられる。
反論する代わりに黙って下から力を込めようとするが、彼の言う通り抵抗する気力が残っていない。そもそも以前より体力が無さ過ぎるんだ。
ここ最近の記憶が無かったのは彼の言う精神操作魔法を掛けられていたからなのだろう。僕の脳は覚えていなくても体が彼に世話されていた事を覚えている。二人の触れた感触が今になってじわじわと感じられる。
「.....僕は此処には残らないよ。君がどういうつもりでそんな事を言っているのか分からないけれど、僕の居場所は此処じゃないから」
彼の手の甲に指先で触れながら続ける。
カミラ様に事情を何とか説明して二人に早く会いたい。セルとヨルが僕に何度も「好き」と「愛している」を囁く声がまだ耳に残っていて、まるで早く帰ってきてと呼ばれているみたい。
「だからベッセル、早く此処から出し──、」
視界が、真っ暗になる。
冷気が肌に当たるのを覚えた直後、目の前に睫毛を伏せて口付ける彼の顔があった。ベッセルが僕の口を塞いでいる。
「.....?!やめっ.....!んっ」
背中に腕を回され、逃げられない様に抱擁される。セルとヨルにキスされた時は初めての時も嫌だなんて思わなかったのに、胸の内に真っ黒な感情が押し寄せ一気に不快になる。彼の胸を押し返せない代わりに、更に深いキスをしようと唇の角度を変えてきたタイミングでガリッと歯を立てる。
スッと離れた彼の唇に残った僕の小さな噛み跡からじんわりと血の玉が浮かび上がる。こんなにも嫌悪感を示している筈なのに、目の前の彼の様子が落ち着く事は無い。それどころか、うっとりとした表情で僕を見つめたまま舌を舐めて微笑む。
「可哀想なリュシー。悪魔に誑かされてしまったんだな」
「誑かされたって.....、ちょっと待って、今悪魔って言った?」
彼の口から出た「悪魔」という言葉──それは紛れもなくセルとヨルの事だ。彼が怖いのをすっかり忘れて詰め寄る。笑顔から一瞬で怪訝そうな表情になった彼は聞こえないくらい小さな舌打ちの後に返す。
「リュシー。何故そこ迄悪魔を庇うんだ。俺達宮廷魔法使いが今迄彼等に情けを掛けて生かした事なんてあったか」
「今はそんな事どうでもいい!二人に何をしたんだ?僕が眠っている間に何を、っ」
夢中になってしまったせいで、いつの間にか彼に手を取られていた事に気付くのが遅くなってしまう。ビクッと手を引っ込めようとするが彼がそれを許さない。僕の手をギュッと握り口を開く。そして.....
「リュシー。俺はずっとお前の事が好きだった」
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