魔法使い、双子の悪魔を飼う

yondo

文字の大きさ
76 / 99
第六部 魔法使い、双子の悪魔との別れ

72

しおりを挟む
「ずっと精神操作魔法を掛けられて長らく魔法を使っていなかっただろう。振り解く力も無い筈だ」

やってみせろと言わんばかりに片方の手首をグッと押さえつけられる。
反論する代わりに黙って下から力を込めようとするが、彼の言う通り抵抗する気力が残っていない。そもそも以前より体力が無さ過ぎるんだ。
ここ最近の記憶が無かったのは彼の言う精神操作魔法を掛けられていたからなのだろう。僕の脳は覚えていなくても体が彼に世話されていた事を覚えている。二人の触れた感触が今になってじわじわと感じられる。

「.....僕は此処には残らないよ。君がどういうつもりでそんな事を言っているのか分からないけれど、僕の居場所は此処じゃないから」

彼の手の甲に指先で触れながら続ける。
カミラ様に事情を何とか説明して二人に早く会いたい。セルとヨルが僕に何度も「好き」と「愛している」を囁く声がまだ耳に残っていて、まるで早く帰ってきてと呼ばれているみたい。

「だからベッセル、早く此処から出し──、」

視界が、真っ暗になる。
冷気が肌に当たるのを覚えた直後、目の前に睫毛を伏せて口付ける彼の顔があった。ベッセルが僕の口を塞いでいる。

「.....?!やめっ.....!んっ」

背中に腕を回され、逃げられない様に抱擁される。セルとヨルにキスされた時は初めての時も嫌だなんて思わなかったのに、胸の内に真っ黒な感情が押し寄せ一気に不快になる。彼の胸を押し返せない代わりに、更に深いキスをしようと唇の角度を変えてきたタイミングでガリッと歯を立てる。

スッと離れた彼の唇に残った僕の小さな噛み跡からじんわりと血の玉が浮かび上がる。こんなにも嫌悪感を示している筈なのに、目の前の彼の様子が落ち着く事は無い。それどころか、うっとりとした表情で僕を見つめたまま舌を舐めて微笑む。

「可哀想なリュシー。悪魔に誑かされてしまったんだな」
「誑かされたって.....、ちょっと待って、今悪魔って言った?」

彼の口から出た「悪魔」という言葉──それは紛れもなくセルとヨルの事だ。彼が怖いのをすっかり忘れて詰め寄る。笑顔から一瞬で怪訝そうな表情になった彼は聞こえないくらい小さな舌打ちの後に返す。

「リュシー。何故そこ迄悪魔を庇うんだ。俺達宮廷魔法使いが今迄彼等に情けを掛けて生かした事なんてあったか」
「今はそんな事どうでもいい!二人に何をしたんだ?僕が眠っている間に何を、っ」

夢中になってしまったせいで、いつの間にか彼に手を取られていた事に気付くのが遅くなってしまう。ビクッと手を引っ込めようとするが彼がそれを許さない。僕の手をギュッと握り口を開く。そして.....

「リュシー。俺はずっとお前の事が好きだった」
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

俺の好きな人は誰にでも優しい。

u
BL
「好きなタイプは?」と聞かれて世界で一番多く答えられているのは間違いなく「優しい人」だろう。 相手の優しいところに惹かれ、気づいた時には引き返せないところまで恋に落ちている。 でも次第に気付くのだ。誰だってみんな「優しい人」ではなく「"自分だけに"優しい人」が好きなのだと。 ロランは、"誰にでも優しい男"、フィリオンに恋をしてしまい、地獄のような日々に身を焼かれていた。 そんなとある日「この恋、捨てたいな…」と溢したら「それ、捨てようとすんの、やめてくんね?オレ、あんたがアイツを見る視線に興奮すっからさ」と遊び人で有名な男、ヒューゴに言われる。 彼は、自分を好きな人間には興味がなく、別の誰かに恋い焦がれている人間の目が好きな変態らしい。 そんな身勝手な遊び人とちょくちょく話すようになってからというもの、フィリオンの様子はどんどんおかしくなっていく。 恋を捨てたい男と、恋を捨てるなと言う男と、優しさが狂い始めていく男の話。 ※作者の意思ではなくキャラの意思で結末が決まります。ご要望は受け付けられませんのでどちらとくっついても美味しいと思う方のみお読みください。 ※中世ヨーロッパ風学園ものです。 ※短編(10万文字以内)予定ですが長くなる可能性もあります。 ※完結までノンストップで毎日2話ずつ更新。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

【完結】奪われて、愛でられて、愛してしまいました

  *  ゆるゆ
BL
王太子のお飾りの伴侶となるところを、侵攻してきた帝王に奪われて、やさしい指に、あまいくちびるに、名を呼んでくれる声に、惹かれる気持ちは止められなくて……奪われて、愛でられて、愛してしまいました。 だいすきなのに、口にだして言えないふたりの、両片思いなお話です。 本編完結、本編のつづきのお話も完結済み、おまけのお話を時々更新したりしています。 本編のつづきのお話があるのも、おまけのお話を更新するのもアルファポリスさまだけです! レーシァとゼドの動画をつくりました!(笑) もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから飛べます! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

処理中です...