魔法使い、双子の悪魔を飼う

よんど

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第六部 魔法使い、双子の悪魔との別れ

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『リュシーが好きだ』『愛している』──二人が僕にくれる大好きな言葉。この言葉で嫌に感じる事があるんだと、僕は静かに絶望していた。聞いてもいないのにベッセルは構う事なく続ける。

「最初は嫉妬からだった。どんなに鍛錬に励んでも一生お前に追いつけない事が苦痛で仕方なかった。お前の魔力量を、才能を、間近で見る度に悔しくて思ってしまう自分が嫌だった」

今思えば.....確かに、昔試験の結果を確認する度に僕のすぐ後ろに彼の名前があった気がする。あの頃からベッセルは僕に話し掛けてくれた心優しい青年だった様に思える。僕は孤独に慣れていたし、あの頃は今以上に日々を淡々と生きていたから特に気に留めなかったけれど。.....そんな風に思っていたのは知らなかった。

「けれど.....無邪気に魔法を使うお前を見た時、そんな感情がどうでもよくなった。リュシーが俺の目の届く範囲にいてくれるなら、リュシーと話せる唯一の同期としてずっと近くにいられたら何も変わらずに済んだのに.....」

表情が再び暗くなった彼を見て、彼の下で後退りする。ベッセルの半透明な魔力が少しずつ黒に侵食されている。まだ.....は残っていると思っていたけどこれは.....

「.....ベッセル。いつからをしていたの」

躊躇いがちに口を挟むと、ベッセルは悪びれもなく「つい最近だよ」と自分の手を握ったり閉じたりするのを繰り返す。

「君はもう宮廷魔法使いじゃないよ。違法薬物に手を出して黒魔法所持者になったんだから」

ベッセルは確かに人間だった。
でもこの独特な匂い.....過去に人間が面白半分で体内に取り込み悪魔と化して人間を襲ったあの違法薬物のものと一緒だ。その時の調査で僕も駆り出されていて、毒が効かない僕は直に匂いを吸い込んだ。

「お前の魔力もお前自身も、全て取り込んで自分のものにしたい。リュシーを手に入れられるならって契約したんだ。自分の命を投げ捨てて悪魔になってでもお前と結ばれたい──これが『好き』という感情なんだろう」
「.....違う、全然違う。君はただ僕の事が憎いだけだ。それはじゃない」

僕の知っているは、彼等が向ける慈しむ様な柔らかい眼差しや触れる手から伝わる熱から感じられる.....尊いものだ。セルとヨルは強引な所はあったけれど、心から僕を大切にし触れていた。こんな.....自分勝手なじゃない。

「.....信じてくれないのか。俺はその悪魔達よりもずっと前からリュシーの事を見つけていたのに」

ポツリと、ふと寂しそうに吐いた彼の表情は突然人間味を帯びて悪魔になった彼を殺す事を躊躇ってしまう。しかし、そんな僕の一瞬の迷いにつけ込んできた彼は次の瞬間背後からビュッと触手を噴き出し、僕の首を絞める様に巻きついてきた。
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