別に弱くはない

ぷんすけ

文字の大きさ
上 下
22 / 28
1章 シーム村

#21 森の負傷者

しおりを挟む
 森の少し広々とした場所ではそれぞれ剣と拳を構える2人の男の子と対する1人の3m以上の大きな魔物。
 少し離れた所には怪我をして動けないで居る女の子の姿が。
「バル!待て無茶をするな!」
「うるせぇ!早くしなきゃタマがぁ!マリィやホオウだって追わn──!」
 拳のみで立ち向かって居た少年はセリフを言い切る前に魔物が持つ2m程の棍棒に叩き付けられる。

 抱えていた子猫を下に下ろし村へ戻る様伝える。
 巨大な魔物の大きな棍棒を受けても尚、少年の息はまだある。
 ピンピンしているのは剣を構えてる少年のみだ。

 肩の剣に手を当てる。すると魔物はこちらに気付いたらしく棍棒を振り下ろして来る。
 魔物も足を中心的に狙われたらしく動きが鈍い。
 それでも距離の離れたこちらまで棍棒が届いた。
 なんとか攻撃を避け子供達の方へ。
 子供と言っても同い年位の年齢だろう。

「大丈夫?とりあえず反撃は考えないで森を出て村の方に逃げて」
 2人の少年に対して告げる。
 こんな場所では女の子を治せるかは微妙だ。

「っんだてめぇぇ!ぐはっ、俺ァに指図すんじゃねぇよぉ!俺達ゃあこの森を抜けなきゃなんねぇんだぶはぼふはばぶぼろぉ!」
「バル!辞めろ。タマが重傷だ。どっちにしろこのままじゃキツイ一旦引いた方が得策だ」

「はぁぁぁぁあ゛?あと少しなんだぁ!ここでぶばがばぶろばりびばがでぼぶらびん!」
 なんて?
「だからこそだ!早くタマを手当しないと」
「伝わってる!?」「ぶはばっでぶぼろぶれすぅ!?」
 今のは分かった。文字数違うけど俺と同じで『伝わってる』だ。

 俺は肩の剣を下ろす。
「何してる!?」
「この森を出ます。だから攻撃を辞めて下さい」
「うるするぶるべでぇどるまげどぉん!」
 少年の顔がボロボロ過ぎて聞き取れない。
 魔物は構わず棍棒を振り下ろす。

 少年の言葉を無視して倒れてる女の子の身体を抱き抱える。
 すると少し魔力が減っていくのに気付く。
「いいから!そういうのいいから!まずこの子の命でしょ!」

「ぼらぶぼ」
「バル!引くぞ!」
「話の通じる剣士さんはその人をお願いします」
 話の通じないボロボロの人を顔で指して支持する。

「分かった」
「ブォロロロォァアオ!」
 指示に従ってくれる剣士はモンスターの様に叫ぶ少年を抱き抱え着いてくる。

 すぐに森を抜ける。
 どうやら追っては来ない様子。
 魔力が減ったのも気のせいなのか、減った気がしたのもいつの間にか無くなっていた。

 一緒に村に戻り子猫と合流し安全を確認して女の子を降ろす。
 とりあえず女の子の身体の手当を。
 女の子の肌に触れ、女の子の魔力を使い回復魔法ヒールで治療する。

 傷の損傷が酷かったのと元のピンピンした時の身体が分からなかった為に普通の回復魔法を使った為10分程かかってしまった。
 けど怪我は治ってもまだ、意識を失ってる。

 俺は人に対して回復魔法を使えない。
 だが、それは自分の魔力で不可能というだけで相手の魔力を使えば相手に干渉できる。

「後は君を……」
「グォロオロオロオロオログァァァア!」
 暴れて近付けない。
「タマが治って居るならそいつはほっといて大丈夫だ」

「怪我は治ってるけど意識はまだ」
「本当にありがとう。助かったよ」
「ブルォォオヌァァタァ!!」

「いい加減にしろ!タマの命の恩人だ」
「グルァァァァグォォオー!!」

「確かに。同年代で回復魔法とは凄い」
「大丈夫ちゃんと傷は治ってる。ただ俺から質問なんだけど、どうして森で襲われて居るのかどうして森へ行こうとしたのか聞いても?」
 あの魔物が怒ってる理由を知りたい。

「森へ入って行ったら襲われたんだ。森へは隣街へ向う途中だった。村が盗賊に襲われその報告を騎士団に伝える為に」
 村に関してはやはり俺と同じか。
 ただ、襲われた理由が分からない。

「本当に襲われた心当たりは無いの?」
「あぁ、すまない」
 森へ入って襲われた……。
 確かに俺も同じ理由で襲われたのは確かだ。

「ありがとう。君は怪我大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ」

「俺はビリビで君はバル君ね」
 さっきそう呼ばれているのを聞いた。
「ガルルルルルル」
 助けたつもりなんだが嫌われている様だ。

「俺はイェン。でさっき治してもらったのがタマ」
「宜しくね。この子は……みゃ~ちゃん宜しくね」
 咄嗟に名前を着けて子猫の事も紹介する。

「みゃ~みゃ~」
 2回鳴くのはいいえの意味。
「この子の名前はみゃ~ちゃんじゃありません」

「みゃ~」
「君も言語の加護を?」
「へ?言語の加護?」
 加護とはなんだろうか?

「いや、分からないなら良いんだ。
 でも、この子は魔物なんじゃ?」
 魔力を感じたのだろうか?
「そそ、ウチの村の森の所にすんでて、この子のお母さんを探してるんだけど
 俺も同じように村が襲われて街に行きたいんだけど」
「なんだ黒猫って不吉だなコイツのせいで俺らぁ襲われたんじゃねぇの?」
 少しずつ回復したのか喋れる様になると直ぐに突っかかって来る。
 物凄い回復力だ。

「おい!ちょっと!この子のせいにはしないでくれるかな?アンタらの声が聞こえて駆けつけたんだから!」
 俺は子猫を抱き抱え守る。
「ったく、他の村も襲われるわぁ!魔物の親探すだぁ!何なんだてめぇ?」
「だが、この森を抜けるのは厳しいだろう。あの化け物が居たんじゃまともに通れない」

「うぉぉぉぉい!無視かぁ!俺の質問無視かぁ!」
「そりゃ通してもらうしかないよね」
「どうするつもりだ?俺達は何をすれば良い?」

「うぉい!待てよ。何で俺がコイツと協力しなきいけねぇんだよぉ!」
「別に良いよ協力なんて」

「うぉぉぉぉぉぉぉい!なんでテメェ1人に頼らなきゃなんねぇんだよぉ!あぁん?」
 どっちなんだよ。
「なんだよ!その目は!!2人ともだぞぉ!」
「すまない。面倒くさい奴なんだ」
 皆も大変そうだな。
 ウチの村にはこういう子は居なかったな。

「じゃあ手伝ってくれる?」
「誰が手伝うか!」

「分かったじゃあここに居て」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉおい!!!もっと頼み込めよ俺が居たら邪魔なのかぁあ?わざと逆の事言ったんだろぉ?ホントは助けて欲しいんだろぉ?」

「めんどくさいな!本当にお願いしたら聞いてくれるの!」
「聞くわぁ!タマァ助けてもらってんだコッチはぁよぉ!」
 どっちだよ!全く。

「じゃあこの子の事を護っててくれる?」
 俺は子猫の事をお願いする。
「結局残れってかぁぁあ?ふざけんじゃねぇ!!」
「えぇぇ!?何で?聞いてくれるんじゃ無いの?」
「だから聞くって言ってんだろうがぁ!」
 この子めんどくさい。

「慣れるまでは大変だ」
 ポンと軽くイェンに肩を叩かれる。
「俺は着いて行くからな」

 ……あれ?

 この子もちょっとめんどくさい?
しおりを挟む

処理中です...