別に弱くはない

ぷんすけ

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1章 シーム村

#23 賑やか

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 目を覚ますとそこは知らない家のベットの上だった。
 身体の傷と魔力が回復していた。
 俺っていつも気を失うな。
 ワンパターンてのもどうなんだか。

 ここはどこだろうか?
 森で倒れたはず。近くの村も酷い有様だった。

 身体を起こし毛布をめくる。
「ん!?…………へっ?」
 隣には知らない女の子が。
 女の子と言っても俺よりも小さい女の子の姿が。

 しかも猫耳?の裸の女の子が。
 ただ、俺はまだ11歳だし隣の子も幼過ぎてやらしい感情もわいてこない。
 ペケもこれくらい大きくなって居るだろうか?
 丁度俺がペケと別れた位の、7・8歳だろうか?
 そんな事を考えていると隣の子が目を覚ます。

「おはよう。君誰?何?えっ?へっ?」
「おはよう」

「「………………」」

「おはよう」
「おはよう」

「誰?」
「ヒユウ」

「いや誰だよ!」
 何度も同じ事を繰り返してしまう。
 だって誰?

「みゃ~」
「いや!だr…………みゃーなの!?」
「みゃ~」
 1回だけの返事をする。

「え?嘘!なんで?すっごい!いつの間にか違う服に着替えさせられてる!?」
 嘔吐して服が汚れていたからか俺は新しい服に着替えて居た。
 みゃーが女の子になった事より服に驚いてしまった。
 なんでみゃーは裸なの!?

「魔物の中にはアンスロ化と言って獣人になれる者が居る」
「アンスロ化?獣人……じゃあみゃーは獣人になったんだ!凄ね」

「私の名前はヒユウ。獣人の姿には何時でもなれる」
「えっ?獣人て姿変えられるの?」
 まともに獣人に会った事が無い為知らなかった。
 俺が会った事をあるのは他の3人は魔族なのだろうか?獣人なのだろうか?
 獣耳と獣尻尾の黒髪と金髪の女性と獣耳とは違った尻尾をしていた女性の3人だけだ。

「アンスロ化した魔物だけ。アンスロ化した獣人の子供は獣人としてうまれて人型の姿しか無い」
「えっ?珍しい~凄いね。何時から出来るようになったの?」

「3年前に貴方に会って私とお母さんはアンスロ化慣れるようになった」
 あの日以来?俺がしたのは傷を治した事。
 アイツは魔物と戦った。
 そのどっちかが理由でアンスロ化とやらはするのかもしれない。

「人間の言葉はその日からお母さんに教わった。お母さんと違って元の姿では喋る事はできない」
 確かあれは魔法で喋ってるって言ってたな。
 喉の形が違うのだから当たり前かもしれない。

「あ!み、ヒユウのお母さんは何処に居るのか分かんないんだよね?」
「………お母さんは居なくなった」

「えっ?」
 話が長くなりそうなので俺の服をヒユウに着させる。
 いくら魔物でも今は人間の姿だ風邪を引いてしまう。

「突然あの森の魔物は全て居なくなった。お母さんは貴方を頼る様に言った」
「……なんで?」

「わからない」
 終わってしまった。
 長話になると思った話は終わってしまった。

「居なくなったのは昨日……一昨日?居なくなったその日に俺と再会したのかな?」
 気を失いすぎて盗賊に襲われてから何日経ったのか分からない。
「ん、昨日……一昨日?居なくなったその日にあなたに会えた」
 多分、あの火事が原因かもしれない。
 または盗賊団そのものが原因で。

 でもなんでこの子は一緒に連れて行かなかった?
 そういえばあの2人の盗賊が殺されてた。
 微かな魔力も残ってた。

 助けてくれた3人の魔族。
 もしかしたら3人の誰かがヒユウのお母さんなのか?
 それとも別の何処かに……。

 そしてヒユウを俺に頼んだ。
 『貴方は心配しなくて大丈夫』あの時の言葉。

 魔物達が盗賊団を撃退しに?
 人間の為に?いや、森を守る為か。
 それでも自警団には伝えた方が良いだろ。

「とりあえず子猫の姿になってくれる?」
 ヒユウは頷きすぐに姿を変える。
 すげぇ~。
 やはり魔法の様なモノなんだろう。
 アンスロ化できるようになると使える魔法なのかもしれない。

 とりあえず俺に出来ることは自警団に報告するだけだ。
「皆は?」
「みゃ~」
 外へ案内してくれるヒユウ。
 この姿では喋れないんだった。

 外では3人が出迎えてくれていた。
「もう、起きて大丈夫なのか?何とも無いか?」
 心配してくれるイェン。
「んーお腹空いてるかな?」
 魔力がすっからかんだ。

「うぉいうぉい!バカ言ってんじゃねぇぞぉ?」
 朝からバルに怒鳴られる、正確には夕方だった。
 数時間気を失っていたらしい。

「森の奴らが沢山持って来てくれてんだぁ!俺らだけじゃ食いきれねぇだろうがぁあ!ああ゛ん?」
 バルが果物をいっぱい渡してくる。
「だったらもっと優しく言って欲しい」
 ちなみに食べやすい様に切り分けられていた。

「んだとぉ?俺の何処が優しくねぇってんだよぉ?」
「言葉使いとボリューム?」

「そうか……」
 素直ではあるらしいが如何せん態度が……。

「アンタがビリビかぁ?私を助けてくれたんだってなぁ?……その、あれだ。助けてくれたんだよな?あぁ、助けてくれたよ……それだよ」
 また何とも個性的な新しい子が現れた。
「どれだぁよぉ!てめぇ礼ぐらい言えねぇのかタマァ!」
 バルと言い合っているのが先程怪我を治したタマ。

「助けてくれたって言ってんだろうが!聞こえねぇのかてめぇは」
 助けてくれたというのは助かったという意味なのだろうか?
 バルとタマは少し言葉使いが悪い様だ。

「なんで2人が言い合うんだよ!」
「言い合ってねぇだろうがぁ!てめぇは黙って食事してろぉ!」
「言い合ってんだろが!自覚ねぇのかお前はよ!」
 何なんだろうか?この2人は決して仲が悪い訳では無い様子。

「怒鳴るなと言われたばかりだろう。タマも普通にありがとうだろ?」
 2人を制するのはイェンの役目なのだろう。
 2人は兄妹で双子の妹のタマと兄のバルは似た者同士の様だ。

「それなんだよ!イェンの言う通りだよ」
「何で恥ずがしがってんだぁ?普段からお礼言わねぇからだろうがよぉ!」

「いや!別に恥ずく無いし!言えるし!言えてるし」
「言えてねぇだろぉ!そういうの人としてどうなんだぁあ?」

「うっさいなぁ!アンタは言えるってのぉ?」
 2人はいつもこう?とイェンに聞くと黙って頷く。

「さっきまでの俺やコイツの失礼な態度悪かったぁ!そしてコイツを助けてくれてマジありがとうございました」
 土下座をしながら非礼と感謝を述べるバル。
「すみませんでしたぁ!!そしてありがとうございましたぁ!」
 バルに続いてタマも土下座をする。
 極端だな2人共。

「別にそこまでしなくても良いよ」
「あぁ?そこまでの事だろうがぁ!タマの命を助けてもらったんだぁぞぉ?俺の命差し出しても良いくれぇだぁ」

「うっさいわ!アンタの命にそこまでの価値無いわ!無駄に掛かる税金の無駄だから捨てて来い!」
「んだとてめぇ!そこは止めろよぉ!妹だろぉお!てか俺の命に税金掛かんのかぁよぉ?」
 ん~止めてると思うけど。

「誰が?止めるか!喜んで手伝うわよ!」
 止めてると思うけど。

「賑やかだね」
「賑やか過ぎだ」
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