ほしとうつひと

五月四日。

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 光のシルエットをくぐり、ワザオサは進んできた通路をゆっくりと歩き、再びいくつかの通路へ繋がる広い場所へ戻った。通路に掲げられている白い照明が、ジリジリと音を立てて、点滅を繰り返していた。
「左に進むと出口だから、今度はそっちへ向かってもらえるかな。」
空間から言葉が響く。ワザオサは来た通路の左にある、もう一方の通路へ入っていく。
「出口まではちょっと距離があって、近づくにつれて、少しずつ外の環境と近くなっていくから、何か自分の身体に変化があったら、教えて欲しい。ここまできて君に死んで欲しくはないから。それと、そのケープは決して脱いではいけない。必要に応じて君の生体維持に必要なサポートをしてくれる。壊れにくいものだけど、絶対に壊れないということでもないから、取り扱いには気をつけて。」
ワザオサが通路を出口へ向かうにつれ、ケープは形を変えていく。ワザオサはそれまでのサラサラとしたケープの感触が、次第にゴワゴワした感触へ変わっていくのを感じていた。表面も変化してきている。
「うん、正常に働いているようだね。そのケープの厚みが、どれくらい外の環境が困難か示していると思っていい。最初に君がいた部屋は、研究所の中でも最も安全な部屋だったんだ。君がケープなしで寝ていたくらいだからね。研究所のその部屋を出た通路は少し危ないくらい、広間と通路はそれほど変わらないかな。僕の部屋もそこまで変わらない。分かりにくいかもしれないけど、この出口へ向かう通路は少し上へ傾斜していて、徐々に地表に近くなっている。この研究所は深さにして200メートルは地表から離れているんだ。君は今、地表へ向かっている。地表に近づくにつれて、外の影響が出てくるから、これからそのケープはもっと形を変えていくと思うよ。」
10分ほど通路を進んだところで、通路は行き止まりとなった。正面の壁面にはしごが架けられ、その手前に段差がつくられていた。はしごの上部の天井部分に大型のレバーが設置されている。
「ここが外へつながる出口だよ。ちょっと待って、外の様子を確認するから。」
ワザオサはそれを待つ間、すっかり姿を変えたケープの感触を確かめていた。ケープはワザオサの全身を覆うまでにその様相を変えていた。ワザオサはそれを自らの手で触り、感触を確かめていく。両手を覆う部分は少しだけ他の部分よりも薄いようだ。微かながら感触が手の平に伝わってくる。顔は全面を薄い膜のようなもので覆われていた。色や形は分からないが、その膜は顔に密着しているように感じる。胸部や腹部を覆う上半身の部分は見る限り、細身のボディスーツのようだ。これといった装飾はないが、色は白く、堅い。その中でも特に左胸の部分は身体の他の部分より厚く、より強度を持っているようだ。腕を触ってみると、顔を覆っている膜よりは少し厚いように感じるが、これも膜で覆われている。腰回りより下は一定の厚みを持った衣服のようになっていて、上半身よりはゆとりのあるつくりになっている。身体を動かしてみる。重さは特に感じない。動きに合わせて、それぞれの部位が伸縮しているようだ。
「待たせたね。」
周囲の空間から声が聞こえた。
「ケープも随分馴染んだみたいだね。見た目からは充分外の環境に適応できるように見える。外はここよりもずっと過酷な環境だから、それに合わせてまたケープが姿を変えるようだったら、それは任せておいていい。外も今は普段よりずっと状況がいい、初めてではないけど、久しぶりに外の環境に出るわけだから、危険は少しでも少ないに越したことはない。ただ、出口の扉を中心として半径2キロくらいまで、僕は状況を把握することができるけど、それ以上離れると、把握が曖昧になる。あまり遠くまでは行かないように…そうだな、まずは30分もしたら、またここへ戻ってくること、いいね。」
その言葉が終わると、ワザオサは正面のはしごに手をかけ、一段一段上っていった。天井の大型レバーに手をかけ、それをゆっくりとスライドさせていく。ケープ越しでも目を焼くような光が、研究所の中へ足を伸ばし、周囲を焼いた。ワザオサは目がその焼けるような明るさに馴染んでいくのを静かに待っていた。やがて明るさに目が適応を始めると、ケープが静かに形を変えた。全身を覆うケープはまた少し厚みを増したようだ。ワザオサは扉を横へ動かし、その先へ向かってはしごを一歩一歩上り、外へと身体を滑り出していった。
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