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プロローグ

職がない!?

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出口につくと受付に人がいたので話しかけることにした。

男「すいません、国民身分証が欲しいんですけど……。」

受付嬢「はい、かしこまりました。それではこちらに手をかざしてください。」

そう言われたので水晶に手をかざすと、文字が浮かび上がった。そこには名前や年齢などの個人情報が書かれていた。受付はそれをカードに写すと俺に手渡した。

受付嬢「これがあなたの国民身分証になります。無くさないように気をつけてください。もしなくした場合は再発行できますが、手数料として100Gかかりますのでご注意ください。」

男「ありがとうございます。ところで質問なんですけど、この国の通貨って何ですか?」

受付嬢「この国には統一貨幣であるゴールドが存在しています。あなたの世界で例えるならレートとしては1ゴールド=1円と考えていただいて結構です。また、他の国でも基本的には同じですので覚えておくといいかもしれません。」

なるほど、つまり今の所持金は0ってことか。まあ一文無しな時点でなんとなく察していたが。

男「あの、お金って貰えたりしますかね……?」

受付嬢「残念ながら無理です。N、Rの方には一銭たりとも渡すことはできませんので悪しからず。それでは次の方どうぞー!」

くそったれ、なんてブラックなんだここは。これじゃ何もできないじゃないか。

仕方ない、まずは職探しだな。どこかに求人情報とか無いかな? そう思って歩いていると、掲示板のようなものを見つけた。見てみると、そこに貼られている紙にはそれぞれの仕事の内容、報酬、仕事内容などが書かれているようだった。

試しに、一番下のランクのFランクの紙を見てみることにする。

『仕事の募集 雑用係(下水掃除)

1日あたり150G 詳細は就職支援施設にて』Fランクてこれかよ……と思いながらも一応確認してみることにして、俺は施設の場所を尋ねた。どうやらこの道をまっすぐ行って右に曲がるとあるらしい。早速行ってみることにしよう。

しばらく歩くと目的地が見えてきた。そこは3階建ての大きな建物だった。看板にはこう書いてある。

"ウェルディア王国労働支援センター"てかこんなメルヘンな世界にもハローワークみたいなところがあるんだなと思って少し笑ってしまった。

中に入ると沢山の人で賑わっていた。いや、賑わいすぎていて心配になってくる。この国はこんなに失業者が多いのだろうか?それともみんなニートなのだろうか?どちらにせよ、俺には関係ないことだが。

職員「こんにちは!どのようなご用件でしょうか?」

突然話しかけられたのでびっくりしたが、平静を装って対応する。

男「えっと、仕事を探そうと思いまして……」

職員「では国民身分証をお見せください!」

言われるままに見せたら、なぜか驚かれた。

職員「えっ!?あ、あなたはRの方なんですね……!ということは、例の召喚に巻き込まれたんですね……可哀想に……。」

なんか同情されてしまったのだが、俺ってそんなにやばい奴なんだろうか……?

男「あの、何か問題でもあるのでしょうか……?」

恐る恐る尋ねてみると、とんでもない答えが返ってきた。

職員「いえ、問題があるというか……エレス教の勇者召喚に巻き込まれたNやRの移民の方がここを訪ねてこられるケースはとても多くて……」

最初に会ったシスターの女と比べるとかなり丁寧だが、やはりどこか見下しているような態度だ。

職員「それで、お仕事を探していらっしゃるということでしたね?少しステータスを見ながら面談させてもらっても良いですか?」

え、なにそれ怖いんだけど……と思いつつも仕方なく従うことにした。

男「わ、わかりました。」

職員「それでは失礼しますね。まずお名前から教えていただけますか?」

男「名前は佐藤悠太といいます。」

職員「サトウ・ユウタさんですね。年齢は?」

男「24歳です。」

職員「職業は何をされていますか?」

ユウタ「会社員をしていました。」

職員「学歴についてですが、初等教育のみを卒業という扱いになりますがよろしいですか?」

ユウタ「……え?初等教育って……小卒ってことですか!?」

思わず聞き返してしまった。一応日本で大学まで卒業した身としては納得いかないからだ。

職員「ええ、そうですけど……。」

ユウタ「そんなはずありません!!俺は大卒で企業に勤めてたんですよ!?それがいきなり小卒だなんておかしいじゃないですか!!」

職員「中等教育以上はこの世界の学校を出ないと認めていないのです。ですから仕方がありません。」

クソっ、なんてことだ……!!まさかここまでとは思わなかったぞ……!! 俺が愕然としていると、職員さんが続けた。

職員「まあそれはいいとして、次に魔法能力ですが……魔力はあるが習熟に関し皆無ということですね。身体能力についても平均以下といったところでしょうか。」

なんだよそれ、めちゃくちゃじゃないか……!!こんなのやっていけるわけないだろう!!!しかし、俺の意思に反して話は進んでいくのだった……
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