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第1章:Eランク
12.サラの申し出
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一郎「お、おいミーナ! もっとちゃんと持てよ!!」
宙に投げ出される寸前だった俺は、いまだに全身がびりびりと痺れていた。落下の恐怖が残っていて、浮遊魔法で助かったとはいえ、心臓の鼓動は止まらない。
ミーナ「ご、ごめんって! ちょっと手が滑っちゃっただけ……」
ミーナは手のひらで俺を包み直しながら、気まずそうに視線を逸らす。
一郎「いや、それが一番アウトなんだよ! 俺の扱いは“壊れ物注意”だって、何度言ったらわかんだよ!!」
ミーナ「うぅぅ……」
しょげるミーナ。だが次の瞬間には、またいつものように調子を取り戻す。
ミーナ「でもさ、一郎くんって落ちても平気でしょ? 耐久力Sランクなんだし」
一郎「……痛いのは普通に痛いんだよ!! 耐久力があるってだけで、無敵ってわけじゃねぇの!」
そんなやり取りを聞いていたサラが、ふわりとした笑みを浮かべながら静かに口を開いた。
サラ「まあまあ、お二人とも。ミーナさんも、悪気があったわけではないのでしょう?」
その声は優しく、心をなだめるような柔らかさがあった。
一郎「……いや、それでも怖かったんだけど」
だがそのとき、脳内にあの声が響いた。
シエラ『ちょっと! あの女、絶対わざと落としたって! あの手の動き、不自然だったもん!』
一郎『うるせぇな……お前が言うなよ。俺をこんなサイズにしたくせに』
シエラ『でも今回は本気でヤバいって! 目が完全にヤる側の目してたもん!』
一郎『信用ならねぇわ……こんな優しそうな人なのに』
シエラ『今すぐ距離取って! ほんとお願い!』
一郎『黙れ。俺の命が危ないのは、お前がそばにいるときだ』
俺とシエラの脳内ディベートが白熱している間、現実ではサラがミーナに向き直って話しかけていた。
サラ「それにしても、お二人での冒険生活、大変ではありませんか?」
ミーナはぽかんとしつつも、すぐに明るい笑顔で胸を張る。
ミーナ「んー? 楽しいよ! でも、正直、大変なこともあるかな~?」
(お前、道に迷って薬草しおれさせたのもう三回目な……)
サラは微笑を絶やさず頷く。姿勢も所作も美しく、控えめな修道服姿なのにどこか上品な雰囲気が漂っていた。
サラ「そうでしょうね。街の中でも、冒険者という職業は非常に過酷だと聞いています。通常は四人から五人でパーティーを組むのが一般的なのに、お二人だけでこなしているなんて、本当に立派です」
言葉は穏やかだが、ミーナをしっかり評価するような誠意が込められていた。
ミーナは照れたように笑い、肩をすくめる。
ミーナ「一郎くんがいなかったら、私、何度も危なかったと思う……」
(実際、何度か死にかけたな……)
サラ「お互いを支え合っているのですね。素晴らしいことです」
そう言って、サラはミーナの隣にそっと膝をつき、俺の目線とほぼ同じ高さまで顔を近づけてきた。
サラ「もしよろしければ、私の非番の日に、少しお手伝いできたらと思いまして」
その一言で、ミーナの顔がぱっと明るくなる。
ミーナ「ほんとに!? サラさん、手伝ってくれるの!? ありがたい~~!」
一郎「えっ、マジで? いや、でも……いいのか……?」
サラはその問いに、まるで聖女のように穏やかに微笑む。
サラ「ええ、もちろんです。お二人の頑張りを、ずっと陰ながら見ていて……力になれたらと」
(この人……本当に聖女なんじゃ……?)
だが——
シエラ『ストーップ!! 完全に危険信号出てるってば!! その申し出、裏あるって! 裏!!陰ながらみてたとか絶っっっっ対嘘だから!』
一郎『だからお前のそのセンサー、信用ゼロだって言ってんだろ……』
シエラ『本能が警告してんの!! サラ=地雷、間違いないって!』
一郎『もう黙っててくれ……』
頭の中ではシエラの叫びが止まらない。
だが、目の前のサラの笑顔を見ると、どうしても疑えなかった。
こうして、サラの申し出により、俺たちの冒険生活は新たな局面を迎えようとしていた——
まさかその「手伝い」が、のちに俺の尊厳を脅かす一歩となるとは、まだ知る由もなかったのである。
宙に投げ出される寸前だった俺は、いまだに全身がびりびりと痺れていた。落下の恐怖が残っていて、浮遊魔法で助かったとはいえ、心臓の鼓動は止まらない。
ミーナ「ご、ごめんって! ちょっと手が滑っちゃっただけ……」
ミーナは手のひらで俺を包み直しながら、気まずそうに視線を逸らす。
一郎「いや、それが一番アウトなんだよ! 俺の扱いは“壊れ物注意”だって、何度言ったらわかんだよ!!」
ミーナ「うぅぅ……」
しょげるミーナ。だが次の瞬間には、またいつものように調子を取り戻す。
ミーナ「でもさ、一郎くんって落ちても平気でしょ? 耐久力Sランクなんだし」
一郎「……痛いのは普通に痛いんだよ!! 耐久力があるってだけで、無敵ってわけじゃねぇの!」
そんなやり取りを聞いていたサラが、ふわりとした笑みを浮かべながら静かに口を開いた。
サラ「まあまあ、お二人とも。ミーナさんも、悪気があったわけではないのでしょう?」
その声は優しく、心をなだめるような柔らかさがあった。
一郎「……いや、それでも怖かったんだけど」
だがそのとき、脳内にあの声が響いた。
シエラ『ちょっと! あの女、絶対わざと落としたって! あの手の動き、不自然だったもん!』
一郎『うるせぇな……お前が言うなよ。俺をこんなサイズにしたくせに』
シエラ『でも今回は本気でヤバいって! 目が完全にヤる側の目してたもん!』
一郎『信用ならねぇわ……こんな優しそうな人なのに』
シエラ『今すぐ距離取って! ほんとお願い!』
一郎『黙れ。俺の命が危ないのは、お前がそばにいるときだ』
俺とシエラの脳内ディベートが白熱している間、現実ではサラがミーナに向き直って話しかけていた。
サラ「それにしても、お二人での冒険生活、大変ではありませんか?」
ミーナはぽかんとしつつも、すぐに明るい笑顔で胸を張る。
ミーナ「んー? 楽しいよ! でも、正直、大変なこともあるかな~?」
(お前、道に迷って薬草しおれさせたのもう三回目な……)
サラは微笑を絶やさず頷く。姿勢も所作も美しく、控えめな修道服姿なのにどこか上品な雰囲気が漂っていた。
サラ「そうでしょうね。街の中でも、冒険者という職業は非常に過酷だと聞いています。通常は四人から五人でパーティーを組むのが一般的なのに、お二人だけでこなしているなんて、本当に立派です」
言葉は穏やかだが、ミーナをしっかり評価するような誠意が込められていた。
ミーナは照れたように笑い、肩をすくめる。
ミーナ「一郎くんがいなかったら、私、何度も危なかったと思う……」
(実際、何度か死にかけたな……)
サラ「お互いを支え合っているのですね。素晴らしいことです」
そう言って、サラはミーナの隣にそっと膝をつき、俺の目線とほぼ同じ高さまで顔を近づけてきた。
サラ「もしよろしければ、私の非番の日に、少しお手伝いできたらと思いまして」
その一言で、ミーナの顔がぱっと明るくなる。
ミーナ「ほんとに!? サラさん、手伝ってくれるの!? ありがたい~~!」
一郎「えっ、マジで? いや、でも……いいのか……?」
サラはその問いに、まるで聖女のように穏やかに微笑む。
サラ「ええ、もちろんです。お二人の頑張りを、ずっと陰ながら見ていて……力になれたらと」
(この人……本当に聖女なんじゃ……?)
だが——
シエラ『ストーップ!! 完全に危険信号出てるってば!! その申し出、裏あるって! 裏!!陰ながらみてたとか絶っっっっ対嘘だから!』
一郎『だからお前のそのセンサー、信用ゼロだって言ってんだろ……』
シエラ『本能が警告してんの!! サラ=地雷、間違いないって!』
一郎『もう黙っててくれ……』
頭の中ではシエラの叫びが止まらない。
だが、目の前のサラの笑顔を見ると、どうしても疑えなかった。
こうして、サラの申し出により、俺たちの冒険生活は新たな局面を迎えようとしていた——
まさかその「手伝い」が、のちに俺の尊厳を脅かす一歩となるとは、まだ知る由もなかったのである。
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