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21 訓練
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「おらぁ! 少しでも遅れたら、その場で腕立て伏せ百回だ! 連帯責任だからなぁ!」
「はいっ!」
アリッサは訓練着に身を包み、他の団員たちと一緒に寮の周囲を走っていた。
臨時の団員となってから一週間。
こうして他の団員たちと同じような訓練をしている。
もちろん呪紋が疼くたび、シュヴァルツと体を重ねる日々は今も続いていた。
彼のたくましい体に包まれ、激しく突かれる。
彼はアリッサを抱くたびに、傷痕の残る体を慈しみ、何度もアリッサを絶頂させた。
情熱的に抱かれるたび、彼への思慕は募っていく。
隠すべき傷跡を知られながらも包み込み、常に気遣ってくれる。
日頃接するシュヴァルツとのギャップも、惹かれる一因かもしれない。
鉄面皮のごとく常に表情を変えることのないシュヴァルツが、アリッサを抱くときに見せる切なげな表情、そして果てる時の柳眉をひそめ、こぼれる呻きを必死に食いしばってやり過ごそうとしている表情のいちいちに、胸が高鳴る。
しかしアリッサの感情はやり場がないまま、胸の中をさまよい続ける。
こうして訓練に自主的に参加することで、これ以上シュヴァルツに関して余計なことを考えまいとしたのだ。実際、クタクタに疲れる訓練はそれに最適だった。
「よし、そこまで! 各人しっかり汗を流すように!」
訓練教官の団員に頭を下げ、水をがぶ飲みして、一足お先に風呂に入って汗を流す。
タオルでしっかり体を拭き、団員服に袖を通して脱衣場を出た。
「アリッサちゃん、だいぶ頑張ってるなぁ!」
シュヴァルツと、カーティスが廊下の向こうからやってくる。
「はい。どうにか」
シュヴァルツは腕を組む。
「ここまで訓練に付き合う必要はないんだぞ。お前の役割はあくまで後方要員。実際に魔獣と戦うのは俺たちだ」
「分かっていますけど……私も団員の一人です。シュヴァルツ様も団員は体力勝負だって仰ったじゃないですか」
「いやあ、アリッサちゃんの存在、周りにもだいぶいい影響が与えてるんだぜ。アリッサちゃんには負けてられないって周りの奴らもいつも以上に訓練に身を入れてるみたいだし。臨時とはいわず、正式な団員になったらどうだ?」
「そうですね。呪紋が消えたら、いいかもしれません」
それは冗談ではなかった。そもそ解呪に成功したところで、アリッサにはもう帰るべき国も家族もない。実の父もあてにはできない。天涯孤独だ。
――呪紋を解除したあとのことも考えないと。
「カーティス、あんまり調子にのらせるな」
「なんだよ。頑張ってる新人を褒めるのはいいことだろ?」
「体力だけあっても、剣の腕はまだまだだ」
「まったく。厳しいねぇ」
「お前はもう少し厳しくなれ」
「お前が厳しすぎる分、俺はソフトに接する役なんだよ。適材適所」
「もっと頑張りますね!」
アリッサは気合いを入れて言った。
※
夕飯を終えたあと、アリッサは一人稽古場に移動して木剣を手に練習に励んでいた。
臨時とはいえ、団員になったからには剣くらいちゃんと使いこなしたい。
そのためにはまず、剣を振るうことになれる必要がある。
腕の筋力がまだ足りないせいで、木剣を振るうだけでもバランスを崩し、道具相手に振り回されるという情けない状況ではあるが。
「姿勢が悪いと、力がしっかり剣先に伝わらないぞ」
背中を掌で押され、背筋を半ば無理矢理、伸ばさせられた。
はっとして振り返ると、シュヴァルツだった。
「シュヴァルツ様!?」
声が上擦ってしまう。
「姿勢を意識して、振ってみろ」
「は、はい」
シュヴァルツに言われた通り、姿勢に気を付けて振るうと、先程より安定して振るうことができた。
「まずは木剣での練習より、腕力をつけるところからだな。それからしっかり木剣を振るうイメージを体に刻みこませろ」
シュヴァルツはアリッサの後ろに回ったかと思えば、木剣を握る手に、その大きな手を重ねた。
「!」
後ろから支えつつ、木剣を大上段に構えさせ、振り下ろすという一連の動作を手伝ってくれる。
――シュヴァルツ様がすごく近い……!
頭に昇る恥ずかしさの熱でクラクラしながらも、なけなしの理性をかき集めて木剣に集中する。
その時、掌にズキッと鈍痛がはしる。
「イタッ……」
「どうした?」
「何でもな……」
しかしシュヴァルツに手の平を見られる。手の皮がすり抜け、血が滲んでいた。
「稽古はここまでだ」
「まだやれます。これくらいの怪我、治癒魔法でどうにでも……」
「これは副団長としての命令だ。逆らうなら、懲罰房に入れるぞ」
かすかな怒気を孕んだ声に、アリッサははっとする。
「無理をしても上達はしない。魔法で怪我は治せても、疲労まではどうにもできないだろう。無理はするな」
言葉とは裏腹に、シュヴァルツの眼差しはとても優しかった。
「……分かりました」
「それから初任務が決まったぞ」
「本当ですか!」
「俺が隊長で、カーティスが副隊長の討伐隊だ」
「しっかり役目を果たせるように頑張ります……というのはダメですよね。怪我人が出ないのが一番ですから」
「いや、それくらいやる気があると、こっちも助かる」
「シュヴァルツ様、あらためてよろしくお願いしますっ」
「今みたいな無茶はせず、俺の指示に従え」
「分かりました!」
アリッサは大きく頷いた。
――シュヴァルツ様たちの足を引っ張らないようにしなくちゃ。
「はいっ!」
アリッサは訓練着に身を包み、他の団員たちと一緒に寮の周囲を走っていた。
臨時の団員となってから一週間。
こうして他の団員たちと同じような訓練をしている。
もちろん呪紋が疼くたび、シュヴァルツと体を重ねる日々は今も続いていた。
彼のたくましい体に包まれ、激しく突かれる。
彼はアリッサを抱くたびに、傷痕の残る体を慈しみ、何度もアリッサを絶頂させた。
情熱的に抱かれるたび、彼への思慕は募っていく。
隠すべき傷跡を知られながらも包み込み、常に気遣ってくれる。
日頃接するシュヴァルツとのギャップも、惹かれる一因かもしれない。
鉄面皮のごとく常に表情を変えることのないシュヴァルツが、アリッサを抱くときに見せる切なげな表情、そして果てる時の柳眉をひそめ、こぼれる呻きを必死に食いしばってやり過ごそうとしている表情のいちいちに、胸が高鳴る。
しかしアリッサの感情はやり場がないまま、胸の中をさまよい続ける。
こうして訓練に自主的に参加することで、これ以上シュヴァルツに関して余計なことを考えまいとしたのだ。実際、クタクタに疲れる訓練はそれに最適だった。
「よし、そこまで! 各人しっかり汗を流すように!」
訓練教官の団員に頭を下げ、水をがぶ飲みして、一足お先に風呂に入って汗を流す。
タオルでしっかり体を拭き、団員服に袖を通して脱衣場を出た。
「アリッサちゃん、だいぶ頑張ってるなぁ!」
シュヴァルツと、カーティスが廊下の向こうからやってくる。
「はい。どうにか」
シュヴァルツは腕を組む。
「ここまで訓練に付き合う必要はないんだぞ。お前の役割はあくまで後方要員。実際に魔獣と戦うのは俺たちだ」
「分かっていますけど……私も団員の一人です。シュヴァルツ様も団員は体力勝負だって仰ったじゃないですか」
「いやあ、アリッサちゃんの存在、周りにもだいぶいい影響が与えてるんだぜ。アリッサちゃんには負けてられないって周りの奴らもいつも以上に訓練に身を入れてるみたいだし。臨時とはいわず、正式な団員になったらどうだ?」
「そうですね。呪紋が消えたら、いいかもしれません」
それは冗談ではなかった。そもそ解呪に成功したところで、アリッサにはもう帰るべき国も家族もない。実の父もあてにはできない。天涯孤独だ。
――呪紋を解除したあとのことも考えないと。
「カーティス、あんまり調子にのらせるな」
「なんだよ。頑張ってる新人を褒めるのはいいことだろ?」
「体力だけあっても、剣の腕はまだまだだ」
「まったく。厳しいねぇ」
「お前はもう少し厳しくなれ」
「お前が厳しすぎる分、俺はソフトに接する役なんだよ。適材適所」
「もっと頑張りますね!」
アリッサは気合いを入れて言った。
※
夕飯を終えたあと、アリッサは一人稽古場に移動して木剣を手に練習に励んでいた。
臨時とはいえ、団員になったからには剣くらいちゃんと使いこなしたい。
そのためにはまず、剣を振るうことになれる必要がある。
腕の筋力がまだ足りないせいで、木剣を振るうだけでもバランスを崩し、道具相手に振り回されるという情けない状況ではあるが。
「姿勢が悪いと、力がしっかり剣先に伝わらないぞ」
背中を掌で押され、背筋を半ば無理矢理、伸ばさせられた。
はっとして振り返ると、シュヴァルツだった。
「シュヴァルツ様!?」
声が上擦ってしまう。
「姿勢を意識して、振ってみろ」
「は、はい」
シュヴァルツに言われた通り、姿勢に気を付けて振るうと、先程より安定して振るうことができた。
「まずは木剣での練習より、腕力をつけるところからだな。それからしっかり木剣を振るうイメージを体に刻みこませろ」
シュヴァルツはアリッサの後ろに回ったかと思えば、木剣を握る手に、その大きな手を重ねた。
「!」
後ろから支えつつ、木剣を大上段に構えさせ、振り下ろすという一連の動作を手伝ってくれる。
――シュヴァルツ様がすごく近い……!
頭に昇る恥ずかしさの熱でクラクラしながらも、なけなしの理性をかき集めて木剣に集中する。
その時、掌にズキッと鈍痛がはしる。
「イタッ……」
「どうした?」
「何でもな……」
しかしシュヴァルツに手の平を見られる。手の皮がすり抜け、血が滲んでいた。
「稽古はここまでだ」
「まだやれます。これくらいの怪我、治癒魔法でどうにでも……」
「これは副団長としての命令だ。逆らうなら、懲罰房に入れるぞ」
かすかな怒気を孕んだ声に、アリッサははっとする。
「無理をしても上達はしない。魔法で怪我は治せても、疲労まではどうにもできないだろう。無理はするな」
言葉とは裏腹に、シュヴァルツの眼差しはとても優しかった。
「……分かりました」
「それから初任務が決まったぞ」
「本当ですか!」
「俺が隊長で、カーティスが副隊長の討伐隊だ」
「しっかり役目を果たせるように頑張ります……というのはダメですよね。怪我人が出ないのが一番ですから」
「いや、それくらいやる気があると、こっちも助かる」
「シュヴァルツ様、あらためてよろしくお願いしますっ」
「今みたいな無茶はせず、俺の指示に従え」
「分かりました!」
アリッサは大きく頷いた。
――シュヴァルツ様たちの足を引っ張らないようにしなくちゃ。
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