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昼休み、弁当を片手に校舎裏に行ったが彼の姿は無かった。
もしかしたら……。景は校舎に戻ると、賑わう声を聞き流しながら、屋上へ続く扉の前に立った。
ドアノブを握ると、鍵が閉められているそこのノブが回ったのだ。
ゆっくりと押せば、ギィィ……と鉄の重たい扉が鈍い音をたてて開く。
初めて足を踏み入れる場所だ。
階段室の上に、給水塔が設置されていて、あとはしんと静まりかえっている。
ただ運動場を一望出来て、とても良い感じだ。
(いない)
うろうろして、覗いて見たが涼介の姿はどこにもなかった。
景はやや気落ちしながら踵を返そうとしたが、「おい、景」と呼びかけられた。その声は紛れもなく涼介の声だった。
顔を上げると、階段室の上に胡座を掻いた涼介がいた。
目が合うと、「よっ」と声をかけられた。
「お前、本当に物好きだよなぁ」
「あ、ごめん」
「冗談だよ。ほらっ、手出せ」
涼介は腕を伸ばしてくる。その手を前に、景が躊躇うと「ほらっ」と言われる。景が恐る恐る手を伸ばすと、ガシッと掴まれた。
景の細く小さな手を、がっちりとして大きな手で握りしめられると、片腕で景の身体を持ち上げたのだ。
「うわっ!?」
階段室の上に引き上げられると、景は情けない声を上げてその場に蹲る。
「おい、大丈夫か?」
「う、うん」
そうして一緒に食事を取ることになった。
包みを広げ、弁当箱のフタを取る。
涼介は覗き込むなり、昂奮の声を上げた。
「おぉ!」
「ど、どうかした?」
涼介のリアクションにびっくりしてしまう。
「このからあげ、一つ良いか。俺の焼きそばパン半分と交換だ」
「別に交換じゃ無くても良いよ」
「マジか。サンキュ」
涼介が笑うと、まるで子どものような無邪気だった。
からあげを咀嚼して飲み込むと、相好を緩める。
「お前の親、料理うまいんだなぁ。羨ましいぜ。うちの親、家事はさっぱりなんだ」
「それ 生姜醤油を味付けにつかうのがミソなんだ」
「詳しいんだな」
「僕が作ってるから」
「まじかっ。すげえじゃんっ」
涼介はぺろりと親指を舐めると、また笑う。
トクン……。鼓動が跳ね、景は目を伏せてしまう。「あ、ありがとう」
頬が熱くなる。
「どうしたんだ」
「褒めて貰ったの初めてだから、どう反応して良いか……」
「ふうん。ま、自信もって良いと思うぜ。いつでも嫁にいけるぜ」
「え」
「冗談だよ」
軽く腕を小突かれる。
「ほら。焼きそばパン」
半分に千切ったパンを渡してくる。
「大丈夫だよ」
「俺が大丈夫じゃないんだって。もらってばっかりは不公平だろ」
無理矢理押しつけられたパンを、景は「ありがとう」と食べた。
もしかしたら……。景は校舎に戻ると、賑わう声を聞き流しながら、屋上へ続く扉の前に立った。
ドアノブを握ると、鍵が閉められているそこのノブが回ったのだ。
ゆっくりと押せば、ギィィ……と鉄の重たい扉が鈍い音をたてて開く。
初めて足を踏み入れる場所だ。
階段室の上に、給水塔が設置されていて、あとはしんと静まりかえっている。
ただ運動場を一望出来て、とても良い感じだ。
(いない)
うろうろして、覗いて見たが涼介の姿はどこにもなかった。
景はやや気落ちしながら踵を返そうとしたが、「おい、景」と呼びかけられた。その声は紛れもなく涼介の声だった。
顔を上げると、階段室の上に胡座を掻いた涼介がいた。
目が合うと、「よっ」と声をかけられた。
「お前、本当に物好きだよなぁ」
「あ、ごめん」
「冗談だよ。ほらっ、手出せ」
涼介は腕を伸ばしてくる。その手を前に、景が躊躇うと「ほらっ」と言われる。景が恐る恐る手を伸ばすと、ガシッと掴まれた。
景の細く小さな手を、がっちりとして大きな手で握りしめられると、片腕で景の身体を持ち上げたのだ。
「うわっ!?」
階段室の上に引き上げられると、景は情けない声を上げてその場に蹲る。
「おい、大丈夫か?」
「う、うん」
そうして一緒に食事を取ることになった。
包みを広げ、弁当箱のフタを取る。
涼介は覗き込むなり、昂奮の声を上げた。
「おぉ!」
「ど、どうかした?」
涼介のリアクションにびっくりしてしまう。
「このからあげ、一つ良いか。俺の焼きそばパン半分と交換だ」
「別に交換じゃ無くても良いよ」
「マジか。サンキュ」
涼介が笑うと、まるで子どものような無邪気だった。
からあげを咀嚼して飲み込むと、相好を緩める。
「お前の親、料理うまいんだなぁ。羨ましいぜ。うちの親、家事はさっぱりなんだ」
「それ 生姜醤油を味付けにつかうのがミソなんだ」
「詳しいんだな」
「僕が作ってるから」
「まじかっ。すげえじゃんっ」
涼介はぺろりと親指を舐めると、また笑う。
トクン……。鼓動が跳ね、景は目を伏せてしまう。「あ、ありがとう」
頬が熱くなる。
「どうしたんだ」
「褒めて貰ったの初めてだから、どう反応して良いか……」
「ふうん。ま、自信もって良いと思うぜ。いつでも嫁にいけるぜ」
「え」
「冗談だよ」
軽く腕を小突かれる。
「ほら。焼きそばパン」
半分に千切ったパンを渡してくる。
「大丈夫だよ」
「俺が大丈夫じゃないんだって。もらってばっかりは不公平だろ」
無理矢理押しつけられたパンを、景は「ありがとう」と食べた。
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