冷酷な王の過剰な純愛

魚谷

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終章※

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 王都内の庭園に設けられた簡易寝台に横たわるジクムントの身体に、マリアが新しい包帯を巻いていた。

「痛くない?」

「俺はそんな柔じゃない。だがお前にこうして甲斐甲斐《かいがい》しく世話をしてもらえるなら、傷など一生癒《い》えなくとも構わないな」

「何言ってるのよ」

「怒るなよ」

 ジクムントは嬉しそうに微笑んだ。

 彼は今上半身は裸に包帯、下衣という姿である。

 うららかな日射しが降り注ぐ。

 ついこの間、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされたことが嘘のよう。

 しかしあれは紛れもなく事実だ。

 ダートマスは現在幽閉され、今はこれまで侵し続けてきた罪状(マリアの父のメンデス殺害を含む)について洗っているところだ。

「陛下」

 ヨハンが姿を見せた。

 後ろには左腕を包帯で吊ったゲオルグが控えている。

 マリアは去ろうとしたが、「ここにいろ」とジクムントが言ったので留《とど》まった。

ジクムントは口を開く。

「ゲオルグ。傷の具合はどうだ?」

「はい、陛下のお陰で……」

「ダートマスの話は聞いたか。お前の父親を」

「はい。愚かでした。父を財政的に追い込んで手駒にしていた主犯がダートマスだったとは……」

「傷が癒《い》えればすぐに職務に復帰しろ。ヨハンが一人で困って愚痴るのがうるさい」

 ゲオルグははっとして顔を上げる。

「よろしいのですか」

「この国の改革は道半ばだ。使える人間はどんな奴でも使う。申し訳ないと思うのであれば働け。これは命令だ」

「陛下……はっ」

 ゲオルグは跪《ひざまず》き、額《ひたい》を床へ擦りつけた。

 ゲオルグはヨハンと共に去って行く。

「ジーク、ありがとう」

 自然とそんな言葉が漏れた。

「別にお前が礼を言うことじゃないだろ」

「それでも」

「あいつはこの国に必要だ。それだけのことだ。――そして、俺にはお前が必要だ。王ではなく、ただのジクムントに、な」

「きゃっ」

 いきなり抱き寄せられれば、首筋に唇を押しつけられる。くすぐったさにかすかに身動《みじろ》いだ。

「あ、危ないわ。まだ傷は完全に癒えてないんだから……。お医者様が、激しく動くのはいけないって……」

 マリアは仰け反り、切なげに喘いでしまう。

「なあ、服を脱いでくれ」

「ど、どうして」

「俺は病人なんだ。無理をさせたいのか?」

「ジーク、あなたって人は……ずるいわ」

「駄目か?」

「でもここは誰が来るかも分からないから……せめて、部屋で」

「いや、今すぐお前が欲しい」

 本当に我が儘《まま》な駄々っ子だ。

 しかしこんな所も、マリアが愛した人の一部なのだ――そう考えれば愛おしい。

 マリアはジクムントの腰に跨がると、周囲を窺《うかが》いつつ、服に手をかけた。

 そうして一枚一枚脱ぎ捨てる。

 ジクムントの舐めるような視線を強く意識すれば、身体がカアッと火照った。

 鼓動が痛いくらい胸を叩いた。

 マリアは胸を腕で隠した格好のまま、一糸まとわぬ姿になる。

 差し込んだ日射しを受け止めている背中が熱い。

「お前の身体はやはり綺麗だな」

ジクムントは胸に顔を埋め、突起を甘噛みしてくる。

「ここは反応してるな。期待してたのか」

「そんなことっ……ぁんっ!」

「それにここも、十分過ぎる程に潤んでいるな。どうしてだ。あんなに拒絶しておいて、本当は待ち遠しかったか?」

 嗜虐《しぎゃく》を呟きながら、秘処を探られる。

「わ、分からないわ。そんなの……ああん」

 マリアは喘ぎ混じりに呟く。

 しかしそれは本当のことだ。

 ジクムントの視線を感じただけ。彼の気配を感じただけ。

 それだけで気付けば悩ましい炎に炙《あぶ》られていた。

 蕩《とろ》けた膣内に潜り込んだ指先が優しくヒダを捏《こ》ね、壁を擦る。

「は、激しいわ、ジークっ」

 マリアは腰に甘い痺れを覚え、ジクムントにしなだれかかってしまう。

 しかし秘裂をこじ開ける魔指の蠢動《しゅんどう》はやまず、マリアはほとんど無意識のうちに物欲しげな動きで腰を揺らめかせる。

 それは蜜肉も同様で、はしたなく蜜を垂らしながら指を咥《くわ》えこむのだ。

 自分の身体の浅ましい反応が恥ずかしい。それでもどうしようもなく蕩けることを止められない。

指の動きをさらに加速させながら、ジクムントはマリアの快感に紅潮する顔を穴が空くほどじっと見つめる。

「いや、ジーク、み、見ないでっ」

「どうしてお前はこんなに綺麗なんだ。もっと乱れさせてやりたくなる」

「そんなの、い、嫌ぁっ」

「俺の指を締め付けながら腰を振っておいてそんなことを言うなよ」

 乳首を痛いくらい抓まれ、さらに秘芽を指先で圧迫される。

 加虐的な愛撫でも、マリアは愉悦を覚え、全身で歓喜を示してしまう。

 ジクムントによって、すっかりマリアは彼好みの敏感な身体にされていた。

 高揚感が身体を包み、もっとジクムントに貪られたいと強く求めてしまう。

 と、指が抜かれ、マリアは「ひゃん」と思わず声を漏らす。

「マリア。お前が欲しい。お前を深くで感じさせてくれ」

 ジクムントの下衣は張り詰めていた。

 マリアはそれを解放すれば、痛いくらいにそれは漲っていた。

「本当に大丈夫なの……。傷が開いたら」

「そうなったらまた縫えば良い。だが今この気持ちを持て余す方がずっと辛いっ」

「……でも」

「お前は俺を求めてはくれないのか?」

 ジクムントは拗ねたようなことを呟けば、肉棒を花唇へ押し当て擦りつけてくる。

「ん!」

 そうして自らの分身に、マリアの愛液を絡めていく。

「ジーク! 私だって、あなたのことが欲しいわ」

 マリアはこらえることが出来ず逸物を跨ぎ、腰を下ろす。

「んんっ!」

 砲身をゆっくり受け容《い》れていく。

「あああ……深いっ……」

 奥の奥まで貫かれ、マリアは髪を乱れさせた。

「やはりお前の中は良いな」

 マリアは少しでもジクムントの負担を減らそうと自ら動く。

 前にしたことがあるからと思ったが、存在感のある隆起に壁を擦られてしまうと、それだけで腰がビクンッと震え、強い刺激に引けてしまう。

「マリア」

 ジクムントの手が腰に回される。

「駄目。動いたら……」

 しかしマリアの危惧を無視してジクムントは構わず突き上げてきた。

 ジクムントの眼差しには切ない程の欲望が燃える。

「お前のそんな健気な姿を見せられたら、どんな男もおかしくなるっ」

「ああ、いやあ、激しっ……ジーク!」

 マリアは仰け反る。

逞《たくま》しい長竿で体内を掻き混ぜられてしまえば鳥肌が立ち、行き止まりを突かれるたび、淫らな火花が目の奥で爆ぜた。

 官能がますます高められ、身も心も蕩けていく。

 マリアは身悶えながら、腰を前後に使う。

 くちゅくちゅと卑猥な水音が立つが、マリアは構わず奥へ奥へとジクムントを受け容れる。

「積極的なのも、悪くないな」

 ジクムントの手が胸を揉みしだく、彼の指の痕《あと》が柔肌に残る。

「ジーク……」

 唇を激しく吸いあう。下唇を噛み、舌を吸い、唾液を混ぜ合う。

(ジークの全てが好き。全てが愛おしい。もっともっと深く愛したい……欲しいっ)

 マリアは彼の顔を撫で、首筋をさすり、逞しい胸板に密着する。

 貪るように互いの湿った呼気を交わし、汗だくになりながら身体を打ち付け合った。

 こぼれる体液で水音が跳ねた。

「ジーク、やめて。そんなに動いたら」

「こんなところで止まれというのか。冗談じゃない。このままやめるくらいならば死んだ方がましだ」

 そうしてさらに強い力でマリアを抱くと半身を躍動させた。

「あああっ!」

 先程まであったはずの誰が人が来たら……という不安さえ今は昂奮を煽る要素になって、マリアをさらにはしたなくさせる。

 このままいつまでも一つになっていたかった。

 それでもマリアの昂ぶりは全身に広がり、陶酔を招く。

 ギュッと入り口が狭まり、ジクムントを締め上げてしまう。

 ジクムントの腕に力がこもる。

 呼気は戦慄《わなな》き、身体が今にも火傷してしまいそうなくらい火照った。

(ジーク、もう出るのね)

「一緒に、このままっ……」

 マリアは涙目で懇願する。

 ジクムントの鮮やかな双眸が、宝石のようにきらめいた。 

「マリア……マリアぁっ……」

 グツグツに滾《たぎ》った子種が最奥めがけ放たれた。

「ああっ」

 熱く溢れるほどにそれはマリアの内を満たし、恍惚とした世界へと昇り詰めさせる。

「イクッ……あっ、あっ、お、おかしくなっちゃう……ジーク……ッ!」

 マリアは身も世もなく乱れ、果てた。

行為を終えてもマリアはジクムントと一つになったまま彼の熱気をたたえている身体に頬を寄せていた。

 彼の駈《か》け足気味な鼓動が染みた。

 ジクムントの指が、マリアの髪を弄ぶ。

「マリア、愛している。誰よりもお前を、想う……」

「私だって。……あなたが私を想ってくれるよりもずっと」

 ジクムントはふっと笑うと、マリアの唇を奪う。

 マリアは彼の首に回した腕に力をより一層込めた。
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みんなの感想(1件)

貴腐人
2023.11.20 貴腐人

いつも楽しく拝読しております。
ただ…王の妃は(5)は、一部ル-プ?被ってますよ。
変わらず応援してますよ。

解除

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