ある復讐とその後の人生

来栖瑠樺

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第2章

4人の学校生活

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 次の日も昨日と同じように、大学に通う。
講義する教室に足を踏み入れ、修のことを捜す。辺りを見回せば、見つけた。昨日と同じ窓際に座っている。
「おはよう。修」
隣の席に座りながら声をかければ、修が振り向いて、笑顔で答えてくれる。
「おはよう。紅音。昨日は、無事に帰れた?」
「帰れたよ。そういえば、修は、昨日も窓際の席に座ってたね。窓際の席が好きなの?」
「そうだよ。講義つまらないときもあるからさ。そう言うときの気分転換みたいなものだよ」
「そっか。そう言うメリットあるよね。私も窓際の席好き」
「え!マジ!?変わる?」
「いいよ、このままで。ここからでも見えるから」
修と何気ない話をして、少しでも、親交を深めていこうとした。多少は、自分から話しかけていかないと。次は、どんな話題にしようか。そんなことを考えていると、横から声をかけられ、その方向に視線を向ける。
 そこには、真理奈と琉斗。
「おはよう。紅音と修。ほら、琉斗も挨拶して」
真理奈に促され、そのときに琉斗と目が合う。
「・・・おはよう」
琉斗は挨拶をして、すぐに視線を、他の方向に向けた。
その態度を見て、無理して話しかけてこなくてもいいのになと思ってしまう。
そしたら、左側から修の声が聞こえる。
「おー!真理奈と琉斗じゃん。珍しい。どうしたんだよ」
「どうしたって。紅音が心配だから。隣に座ろうと思って」
「俺は、真理奈が行くって言うから」
2人はそう言いながら、私の横に真理奈、その隣に琉斗が椅子に座る。
「おい、心配ってなんだよ」
修が、真理奈の言葉に反応している。隣から伝わるが、苛ついているようだ。
「そのままの意味だけど。修って女好きじゃない。紅音に、悪さするのは嫌なの」
「紅音に、悪さするわけないだろ!」
「とにかく、昨日、紅音に言ったの!講義が被ってるときは、近くに座るって!」
その言葉を聞いて、修が私を見る。それまでは、他人事のように聞いていた。このままだと、任務がやりづらくなるので、しかたなく仲裁に入る。
「修が、悪い人だとは思ってないよ。ほら、私は昨日編入したばかりでしょ。知り合いは修しかいないし、真理奈と琉斗は、他の人達と向ける視線が違ったから。昨日、真理奈から話しかけてくれたんだよ。それが、嬉しかったんだ。だから、修以外にも知り合いがいると、大学生活楽しそうだなって思ったんだよ。だから、3人と、できれば、仲良くしたいなと思っている」
「「もちろん」」
「・・・」
修と真理奈の言葉が被る。とりあえず、2人からは、承諾をもらえたが、琉斗は、無言。きっと嫌なんだろうな。昨日から思ってたが、私は、琉斗にとって印象が良くない。
婚約者の真理奈が、仲良くしてくれるなら、くっ付いて、その場にいるだろうな。まあ、琉斗は、任務に関係ないし、無理して仲良くなる必要ないから、今は放置するか。なんて、呑気なことを考えていると、またもや反論の声。
「ちょっと、琉斗!無言じゃなくて、ちゃんと答えてよ!」
「そうだぞ!俺は、まだ1日しか一緒にいたことないけど、紅音は、悪い奴じゃないぞ。お前、まさか、紅音が無表情だからとか、そんな理由じゃないよな?お前が、見た目で判断する奴じゃないって分かってるけど、ちょっと態度が冷たいんじゃないか」
婚約者と修から責め立てられ、しかたない様子で、こっちを見て話してくる。
「昨日も言ったが、俺は、紅音のことをよく知らない。そんな相手に、良い態度とれないだけだ。それに、女だし」
「昨日は、校門前で愛想笑いしてたじゃない!」
「あのときは、そんなに絡むことはないと思ってたんだよ。話も、校門前で終わると思ってた。そしたら、真理奈が講義が被るときは、近くにいるとか言い出すから」
真理奈と琉斗の会話を、聞きながら思った。
よく知らない相手には、良い態度とれない気持ちは、分かる。さっき、女だしとか言ってたけど、女嫌いなんだな。
「ごめんな、紅音。アイツ悪い奴じゃないんだけど、女嫌いなんだよ。なんで、そうなったかは分からない。でも、真理奈は紅音のこと、気にかけてるみたいだから。真理奈と仲良くしてれば、今より仲良くなれると思うから」
隣に座っている修が、私にだけ聞こえるように、琉斗をフォローする。
やっぱり女嫌い。女嫌いでも、あまり関わらないなら、愛想笑いは、できるのか。
琉斗、女嫌いなのに、真理奈のことは、受け入れたんだな。しかも、婚約者か。琉斗は、謎の人物。
 こうして、メインは、修と一緒。講義が被ったり、昼食のときは、真理奈と琉斗も一緒に過ごす学校生活が、始まった。
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