ある復讐とその後の人生

来栖瑠樺

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第3章

反省

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 目を覚ますと、見覚えのある天井が見えた。
ここは、自分の部屋でベッドの上だ。
そういえば、ボスの部屋で気を失ったんだ。
どれくらい寝てたんだろうか。上半身を起こし、枕元にあるスマホを手にしようとしたとき、1枚の紙を見つける。
【起きたら、連絡しなさい】
と一言だけ。名前は書いてないが、ボスだろう。
スマホで日付を確認すると、倒れてから3日経ってる。そんなに寝てたのか。自分に呆れながら、ボスに電話したら、すぐ出てくれた。
「起きたか!?今から行く!」
一方的に電話を切られた。
5分くらい経った頃、ドアがノックされる。
「どうぞ」
入室を許可すると、車椅子に座るowlと、それを後ろから押すボスの姿が、目に入る。

   「Bloody rose。体調はどうだ?」
「Bloody roseさん、俺のせいでこんな目に。申し訳ありません」
owlは、泣きそうな顔をしていた。そんなowlの頭に左手を乗せて、軽く頭を撫でた後、手を引っ込めた。
その様子を、近くで見ていたボスが、目を丸くしていた。
「なんですか」
「いや、以前、冷たい態度をやめろとは言ったが、そこまで優しいとは思わなかった」
「ボス。Bloody roseさん、本当は優しい人だなって思うことが何度かありますよ」
「2人が何を言ってるか、分かりません」
私は、2人の反対側に顔を背けた。それを見て、2人が【ツンデレ】と思ってるとは知らずに。

   「それで、本題だが、大体のことはowlから聞いた」
ボスは、声のトーンを落とし、真面目な表情に変わる。
「毒のことは、傷を負ったときに分かっただろう。きっとowlのために、言わなかった。しかし、すぐに報告してくれれば、解毒も早くできた。毒性が高いものだった。もう少し遅れてたら、死んでたかもしれない状態だ。Bloody roseは、しばらく耐えられたが、他の人だったら、ダメだったかもしれないな」
確かに、owlなら死んでたかもしれない。それに私には、まだ死ぬわけにはいかないから、そう簡単に殺られたりしない。
「今回の責任は、私にあるので、owlは罰しないで下さい」
「な!なんでですか!?Bloody roseさんは、責任ありません。ボス、俺が悪いんです。俺が、言うことを聞かなかったから。結局、捕まってしまい、ロクに相手も殺せず、役に立てませんでした。せっかく、特訓してもらったのに・・・」
「彼のことを、全て理解してるわけではありません。ただ、諦めが悪いのは知っていました。それを分かっていながら、彼の行動を止められませんでした。だから、悪いのは、私です」
「そこまで」
お互い譲らない私達を見て、ボスは溜め息をついた。
「責任なら2人ともある。まず、Bloody roseは、相手のためとはいえ、黙っていたこと。共同任務なら、ベアに隠し事をしない。owlは、Bloody roseの言うことを聞かずに、単独行動したこと。そして、 捕まり、せっかくの特訓の成果を、見せることができなかっただろう。だけど、得るものがあった。Bloody roseは、仲間と言うものが分かっただろう。実際、本調子じゃないowlを守った。owl以外の人物とペアなら、上手くやれるか分からないけどね。owlは、実戦はあまりできなかったけど、先輩の戦う姿を見れたし、学ぶことも多かっただろう。なんにせよ、1番は君達が、生きて帰ってくれて良かったよ」
私達は、お互いに顔を見合わせた。
正直、ただのペアにしか見てなかったんだが、他の人には、仲間に見えるのか・・・。
特訓してる間に、情が出たのか?正直分からない。今まで、仲間と思える人いないからな。
でも、threadに情報を急がせた。owlのために。
心のどこかでは、思ってるかもしれない。
   「しかし、今回のことで、何もないと言うわけにはいかない。まず、Bloody roseは、毒のことがあるから、1週間絶対安静だ」
「・・・暇だ」
「何か言ったか」
「何も言ってません」
ボスの命令なので、しかたないが、1週間どう過ごせばいいんだ。
「それと2人には、3週間任務なしだ」
「「え」」
「え、じゃないだろう。任務完了したが、お互いに責任は、とらないといけない」
「「・・・」」
それはそうだが、私にとっては、かなり暇な休暇だ。
「ボス、任務なしでも、Bloody roseさんには、会っていいんですよね」
「もちろんだ」
この2人は、何を言っているんだ。
「と言うことなので、これからもお邪魔しますね」
と笑顔で話を振ってくるowl。
「そんな暇があったら、別のことをしてろ」
「嫌です」
何が嫌なんだ。意味が分からない。
「お前、物好きだな」
「自分で言って、虚しくなりませんか」
「ならない」
その様子を見て、ボスは大声で笑った。
「君達は、本当に良いペアだと思うよ。見ていて飽きない」
そう言い残して、部屋を出て行った。
 owlは、毎日会いに来た。退屈しないようにと言って、雑誌やゲームなど持ち込んで、部屋を訪れる。
追い払っても、諦めの悪い性格だから、また現れる。私も、追い払うのに疲れて、そのままowlと過ごしてた。任務なしの3週間は、退屈だと思ってたが、案外楽しく過ごせた。owlのおかげで。
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