ある復讐とその後の人生

来栖瑠樺

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第3章

緊急事態発生

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 私は、owlの電話を切った後、すぐに、ある場所に向かった。
闇の情報屋と言われている。コードネームは、thread。
「依頼した件について、今晩中に調べ終えて」
「はあ?今晩中?なるべく早くとは言われたが、無理に決まってるだろ」
「そうか。threadなら可能だと思ったんだが・・・買い被りすぎたな。もっと優秀な奴のところに行く」
「ちょ!ちょっと待て!俺より優秀なら奴だって!?いるわけねえだろ!」
「できないんだろ」
「できる!その代わり、急なことだからな。用意できてるだろ?」
「ああ。1000万入ってる。情報が合っていれば、追加で1000万とお前の生まれ年のワインも用意する」
私は、お金の入ったアタッシュケースを渡す。
「やる気が出た!このthread様に、できないことはない!」
threadはPCに向かい、素早くキーボードを打つ。threadには、ターゲットの専属の殺し屋を調べてもらっている。
殺し屋の本部に登録されてる殺し屋は、所属の組織が登録されてる。しかし、殺し屋を辞めた奴や、本部から辞めた奴は、その後は、どうしてるか分からない。
おそらく、ターゲットの資産家は、その辺の殺し屋を所属にしたんだろう。しかし、どの殺し屋かは簡単に分からないので、任務を聞いたときから、threadに依頼した。絞り込みまではできているが、まだ決定的ではなかった。
owlのことだから、無理をするかもしれない。だから、一刻も早く情報が必要だ。
   「調べ終えたぞ」
「見せろ」
私は、threadの後ろからPCを覗き込む。
資産家の専属の殺し屋の人数は、15人。
顔と名前を把握していく。
「本当に、苦労したんだぜ。情報は、ほとんどないところからスタートだったからな。しかし、この資産家、人身販売も数え切れないほど行ってる。その受け渡しで、同行してた人物から割り出した。商品に死なれたり、傷つかれたら困るからな。見張り役と護衛も兼ねてたんだろ」
「このデータを、私のスタホに送ってくれ」
「は?それもかよ」
「それくらい大したことないだろ」
「人使いが荒い」
threadは、ブツブツと文句を言いながら、データを転送してくれた。
「それにしても、なんで急がせたんだよ」
「嫌な予感がする。追加報酬は、後で送らせる」
 私は、店を出ると、データをowlに転送して、電話をかけた。
「もしもし」
「owl、さっき、屋敷の専属の殺し屋の顔写真と名前のデータを送った。すぐ覚えて、データを消せ。それと余計なことはするな。襲撃は今夜だ。準備できたら、合図しろ。それで、私も屋敷に入る。分かったな」
「・・・分かりました」
「任務終了するまで、気を抜くなよ」
「はい」
そこでowlの電話は、終わった。

***
 俺は、Bloody roseさんの電話を切った後、データに目を通し、そのデータを消した。
その中には、護衛で付いている人が、5人。あとは、3階の奥の部屋と地下室か。
それにしても、Bloody roseさん、焦っている感じがする。俺の考えはお見通しのような気がした。
確かに潜入は長引くと危険だが、今のところ疑われてないから、大丈夫なのに。
余計なことはするなと言われたが、俺は諦めが悪いから、できる限り情報を集めて、少しでも役に立ちたい。
俺は、ちゃんとBloody roseさんの言うことを聞けば良かったと、後悔することを、このときは知らなかった。

 俺は、3階の奥の部屋に向かった。カメラに映らない死角を通りながら、そっと奥の部屋を覗き込む。何人か見張りがいるが、殺し屋は5人か。人数を把握して、戻ろうと思ったとき、後ろから誰かに頭を殴られ、意識を失った。
 次に、目覚めたときには、見たことがない場所。椅子に座らされ、手足の自由がない状態だった。
ここは、どこだ?
「ああ。やっとお目覚めかい」
声のした方を見ると、ターゲットの1人の主人。周りを見回すと、3階にいなかった、他の殺し屋がいた。
「レミ。君は、なんで、あそこにいたんだ?近づかないように、言われていたはずなのに」
主人が、俺の頬を触る。気持ち悪い。
「私は、好奇心旺盛のところがあって、近づいてはいけないと分かってたのに・・・。申し訳ありません。もう行かないので、許して下さい」
「まあ、許してもいいが。レミには、別の仕事を与えるよ」
「え?」
ここにいる男達は、ニヤニヤして舐め回すように見てくる。
「君には、商品になってもらうよ。君を見たときから、考えていたが、この屋敷で働きたいと言われたときには、好都合だったな。高く売れそうに見えるが、どの程度か確認しよう」
そう言うと、周りの男の1人が、近づいてきて、俺の服を掴む。俺は、その男の手に噛み付く。
「イッテ!」
噛まれた男は顔を顰めて、主人を見た。
主人は溜め息をついて、別の男を見た。見られた男の近くに、何かの装置が置いてある。男がレバーを少し下げると、体中に痛みが走る。
「・・・クッ」
痛みで、一時的に抵抗ができなくなった間に、殺し屋の男が、俺の服を破る。
 すると、周りは静寂が訪れた。
「男だ」
誰かが呟いたが、静寂されている空間には、十分な声量。
「騙したな!!誰の差し金だ!」
主人は激怒し、俺の顎を掴む。近づいた顔に俺は笑い、唾をかけた。
さらに、主人を怒らせた俺は、殴られたり、電流を流される。
スマホのデータを消しといて良かった。絶対に口を割らない。
今、何時だろうか。ここは、おそらく地下室だな。
Bloody roseさん大丈夫だろうか。手練た殺し屋が15人。俺も戦いたいのに、動けない。情けない。足を引っ張ってる。
ちゃんと言うことを聞いてれば、こんなことには・・・。
なんだが、意識が遠くなってきた・・・。


 私は、ターゲットが、住む屋敷の近くまで来ている。
owlから、何もない。こっちから電話も考えてたが、逆に危ないと思いやめた。
代わりに、別の人物に電話をかける。
「どうした」
相手は、すぐに電話に出てくれた。
「ボス、これから襲撃します。owlと連絡が取れません。危ない状況なので、1人で乗り込みます。代わりに、帰るための車の用意をお願いします」
「待ちなさい!応援をよこすから!そこで、待機してなさい!」
「申し訳ありません。待てません。それでは、失礼致します」
一方的に電話を切った。
 私は、フードを目深に被り、ターゲットの屋敷の門を乗り越えた。
その後、3階を見上げた。owlが、どこにいるかは不明だが、乗り込めば分かるだろう。
3階のまで木を登り、バルコニーに降り立つ。鍵のかかってる窓を開け、室内に入り込む。
まずは、奥の部屋。その場所に行くと、殺し屋と他の使用人もいた。
全員殺せたら簡単なのに。ターゲットは、屋敷の主人と専属の殺し屋だけ。
「誰だ?!」
「・・・」
答えない私に向かって、使用人が近づいてくる。その人を気絶させた。その様子を見て、他の使用人も来たが、同じように気絶してもらった。
「お前、ただ者じゃないな。何者だ?今日捕まえた奴の仲間か?」
やっぱりowlは捕まっている。1人だけ生かして、道案内してもらおう。
私が銃を取り出すと、相手も取り出し、撃ち合いになった。さすが手練た殺し屋。相手も、それなりに強い。銃弾を躱し、一瞬の隙に殺していく。残りは1人。
その人物に視線を向ければ、廊下を走り出した。
ちなみに、先程の攻防戦で、殺し屋以外の使用人は、逃げ出した。

 殺し屋の男が向かった先は、地下室だ。
「ボス、襲撃です!」
「なに?!」
「他の奴らは、皆、殺され・・・」
道案内してくれた男は、そこで息が絶えた。
道案内ご苦労様。
私は、新しい銃弾に換え、階段を降り、ターゲット達の前に現れた。
「誰だ?!お前は?!」
「・・・」
主人の言葉を無視して、椅子に座らされている人物を見た。顔は見えないが、owlだ。あれは、電気椅子か。それを壊しても、owlは、戦えないかもしれないな。
   「この男の仲間か?」
1人の男が、俯いていたowlの髪を鷲掴みにして、前を向かせる。
「・・な・・・んで」
まだ、薄ら意識のあるowlが、小さな声で呟いた。やっぱり、1人で殺るしかない。
「あーやっぱ仲間か。でも、下手な真似はしない方がいいぞ。仲間が、死んでほしくないだろ。もう、ボロボロだけどな」
owlの様子を見て、笑う男達。
「ついでに、お前の顔も見せろ」
ターゲットの主人に言われた。
私は、無言でフードを取る。現れたのは、冷たい雰囲気の私。その状態で、辺りを見回す。そのときに、電気椅子の電流を流す装置を見つけた。
皆、一瞬怯んでいるようだ。その隙に、電流の装置を撃ち壊した。装置が壊れると、owlの拘束してた器具も同時に外れる。
 私は、owlの周りの男達を、銃やナイフを使い殺してから、素早くowlに駆け寄った。何か喋ろうとしてたみたいだが、無視した。
「戦いに参加しなくていい。その代わり、自分の身は自分で守れ」
そして、そのまま、部屋の奥に投げ飛ばした。
守れとは言ったが、余力は、あまりないだろう。さっさと決着をつける。
そこから、3階のときと同じように、攻防戦が始まる。owlに向けられた、銃弾も弾き飛ばした。残りは3人。
そのとき、横から声がした。
「俺も参加します」
そう言ってowlが1人殺した。
「そんな体では危ない」
「もう十分守ってもらいました。少しくらい役に立ちたいんです」
そのとき、残り2人が攻撃してくる。私は、owlを注意しながらも相手と攻防戦になる。owlの方は、相手はナイフだ。だけど、本調子じゃないowlは、体がフラついてるため、攻撃を躱すのがやっとだ。早く加勢しないと。
そのとき、owlが足がもつれて転倒。相手は馬乗りになり、笑いながらナイフを振り下ろす。
私は、自分の対戦相手を殺した後、owlの相手に銃弾を放ったつもりだが、弾切れ。ナイフも使い切ってしまった。
舌打ちして、owlのところまで全力疾走し、寸前でナイフを掴んだ。ナイフの刃先から私の血が流れる。そのナイフを奪い、最後のターゲットを刺し殺した。

   「無事か?」
owlに問いかけると、答えることなく、焦ったようにメイド服を破る。そして、先程怪我したところに、布を巻き止血の応急処置をしてくれた。
そして、やっと答えてくれた。
「無事です。それより、俺のせいで、怪我を。申し訳ありません。俺が、ちゃんと言うことを聞いてれば、こんなことには。せっかく、特訓してもらったのに」
先程の怪我が、痛みで疼くが同時に痺れる。毒が塗られている。
多少、耐性はあるので、すぐには死なないが、早く解毒しないといけない。
「その話はあとだ。帰りの車が来てるはずだから、今から向かう」
「はい」
フードを目深に被り、屋敷を出ると、車が停まっていた。2人で車に乗ると、車は闇の中に消えていった。

 組織に向かう車内は、ずっと沈黙だ。
私的にはありがたいから、このままでいい。
私は、owlから顔を隠すように、窓の方を見ている。
怪我した右手も、ドアと自分の体で隠すようにしている。チラッと怪我した手を見れば、変色してきてるし、痺れてほとんど動かせないが、なんとかポケットに手を入れる。
左手も軽く痺れてきている。心拍数も上がってきているし、顔色も悪いだろう。
「Bloody roseさん。どうして、ずっと窓の方を見てるんですか」
「関係ないだろ」
「関係あります。何か隠してませんか」
こっちを、向かせようとしてきているのが気配で分かり、owlを見ないまま、腕を左手で掴んだ。
「なんで震えてるんですか!?まさか、さっきのナイフに毒が!」
「着いたから行くぞ」
組織に着き、私はowlを置いて、さっさとボスのいるところまで向かう。その後を追うowl。
 部屋をノックして、ボスの部屋に入る。
「おお!帰ってきたか!」
椅子から立ち上がったボス。
「任務完了です。詳細は、owlから聞いて下さい。私は、これで失礼致します」
部屋にowlを残して、出て行こうとした。早く解毒しないと。目眩もしてきて、意識が朦朧としかけている。
「待ちなさい。Bloody rose。フードを取って、手を見せなさい」
「・・・お見せ・・することは・・・でき・・ません」
「しかたない。強制的に」
ボスによって、フードを取られ、ポケットから手を出される。
「「これは・・・」」
2人の心配そうな顔が見えたが、何も言うことができず、意識を手放した。
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