ある復讐とその後の人生

来栖瑠樺

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第4章

思わぬ再会

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 今回の目当ての買い物が終わった。
「そろそろお昼だな。ご飯食べに行こう。紅音は何食べたい?」
買い終わった荷物を、翼が持ってくれた。
重くないし、自分の買い物だから持つと言ったが、拒否されてしまった。
「翼は何食べたい?」
「俺か?俺は洋食」
「じゃあ、イタリアンで」
「それ、俺に合わせてないか」
「別に。これと言って、食べたいものがないから」
「特に食べたいものがないから、イタリアンに行くか」
おすすめのイタリアン料理店があるらしく、案内してもらう。
「いらっしゃいませ~。何名様ですか?」
「2名です」
翼が答えてくれ、ウエイトレスによって、案内された席に着くと、冷や汗が流れた。

   「あれ?紅音!」
「見たことない人と一緒にいる」
通路を挟んで、隣の席に真理奈と琉斗がいたからだ。
「学校の友達?」
「そう。翼との関係を絶対に聞かれる。前に飲食店でバイトしてたときの同僚で、偶然会ったことにしよう。お前は、ウエイター。私は、厨房で働いてたことにするから。お互い上手く話を合わせよう」
「分かった」
   「なに、2人でコソコソしているんだよ」
「そうそう。2人の関係性が気になる。お昼一緒に食べようよ。紅音達が案内された席が、ちょうど4人席じゃん」
ウエイトレスに席を移動することを伝え、私は、カルボナーラ。翼は、チキングラタンを注文した。
ウエイトレスがいなくなると、予想通り質問攻め。
「まず、紅音の隣の方は誰?紅音とは、どう言う関係?」
休日に誰かと遊ぶ話をしたことないし、真理奈の休日の誘いを断ってるから、疑問がいっぱいなんだろうな。
「俺は、酒井翼と言います。紅音とは、前にバイトしてた場所で出会ったんですよ。入ったのが同じ時期で同僚ですね。さっき、偶然会ったんですよ」
翼は、真理奈の質問に笑顔で答えたが、私に見せていたときとは違う。今の翼は、愛想笑いをしている。
「紅音が、バイトとか意外」
「確かに。今もバイトしているのか?」
真理奈と琉斗は、心底意外って感じだ。無理もない。私に、バイトのイメージないからな。
「うん。そのときは、短期バイトを募集していたんだよ。ずっとは無理だけど、短期ならできそうかなって思ったから。今はバイトしてないよ」
「そうなんだ。それで、偶然会ったからお昼食べに来たって感じ?」
「うん」
「ふーん」
真理奈と琉斗は、私と翼を交互に見たが、それ以上は追求してこなかった。
琉斗は、何度かさっき雑貨屋で買った写真立ての袋を見たが、聞いてくることはなかった。
こちらとしては、ありがたい。
ちなみに、歳も同じなため、お互い呼び捨て、タメ語で話すことになった。

 私と翼の料理が、テーブルに並べられた。
あまり、こちらに話を振られたくないため、会話を真理奈達に振った。
「真理奈達は、今日何してたの?」
「この間、真理奈が言ってた、映画を観に行ってきた」
「あの映画良かったわね」
「俺には、よく分からない」
その映画と言うのは、今、大ヒットしている恋愛映画だ。真理奈は、楽しみにしてことを、学校にいるとき話してた。対象的に琉斗は、そのときから乗り気じゃなかった。たぶん、同じ映画を観たら、私も琉斗と同じ反応だろう。
料理を皆が食べ終えたときに、尋ねられた。
「紅音と翼は、この後予定あるのか?」
私は、翼を一瞥してから答えた。
「一緒に買い物とか行くことになってる」
「え?そうなの?偶然会って、ご飯だけじゃなくて?」
「うん。お昼食べる前に、そう言う話になっているから」
「そうなんだ。それなら、あたし達も買い物する予定あるから、良かったら一緒に「悪いけど、紅音と2人でいたいから。これ2人分のお代」
真理奈の言葉を遮り、翼は、自分と私の分のお代をテーブルに置いた後、私の手を握って店内を出た。
 
 そのまま歩き続ける翼の手を、振り払った。すると、翼は振り返った。
「翼、怒ってない?」
「怒ってないよ」
「じゃあ、なんで私の目を見ないの?」
「・・・紅音が、友達の方に行くと思ったから・・・。最初は、俺と買い物をすることに、最終的には何も言わなかった。友達に誘われたら、紅音は優しいから、一緒に行動するのを許すのかと思って・・・。気づいたら、ここまで来てる」
翼は、チラチラ私の目を見ながら言った。いつもみたいな、ふざけた態度が一欠片もない。
「・・・ハハッ」
気づいたら笑い声が漏れ、しばらく笑っていた。
「笑いすぎ」
不貞腐れる翼。
「・・・ごめん。翼が、そんなに不安がるとは思わなくて。いつも話しかけるとき、ふざけた態度に見えるから」
「それ、フォローになってない」
「あ~そうだったね。まあ、新鮮だったから。それに、買い物とか行くことになってるし・・・貴重な時間を延ばしたいんでしょ?
「それ、ちゃんと覚えてくれて「違うなら、もう帰る」
「行く!違くないから!」
からかうように、言葉を遮って真逆のことを言えば、即答で反発の言葉が帰ってきた。
 それからは、お互いの服やアクセサリーを選んだりしてから、夕食を食べて帰った。
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