ある復讐とその後の人生

来栖瑠樺

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エピローグ

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 翼と両想いになり、5年経った。その間に、結婚をし娘が生まれた。髪は私譲りの金髪、目を翼譲りの青だ。
娘の名前は、優花。
 今、公園で優花が翼と翔と一緒に遊んでいるのを、ベンチに座って眺めている。
無邪気に笑う優花。小さな体で、頑張って動いているのを見て、私、翼、翔が微笑む。

 じつは、この5年の間に、もう1つ出来事がある。
それは、アクセサリーブランドの立ち上げだ。
本当は働かなくても、お金には困らない。
ただ、何かしたくて思いついたのが、アクセサリーブランドだった。それを翼に伝えたら、理由を聞かれたから、こう答えた。
「アクセサリーなら身につけることが多い」
「ペアとかにも使えるし、自分達もそうだった」
「アクセサリーで自信や幸せを感じる人が1人でも増えてほしい。そんなアクセサリーを作りたい」
そしたら、翼は同意してくれた。
私は創業者。翼はデザイナー、翔は経理。
翔にも言ったら、自分もそこで働きたいと言ったからだ。
経営経験はなかったが、翔が詳しいので、教えてもらい企業した。
 都内で土地を買い、店舗を建設し、従業員も雇っている。今もSNSの発信も続けている。そのおかげで、若いお客様も来店される。もちろん、その年代だけではなく、年齢層の幅は広い。
商品は、オーダーメイドも受け付けている。オーダーメイドでも、既製品でも、お客様のを予算に合わせて、満足してもらえる品物を提案する。
お客様の笑顔はもちろん、スタッフがお客様から褒められ、嬉しそうにしていると、私も同じ気持ちになる。
 HPの変更やSNSで人物が写るとき、スタッフの要望だが、モデルを私と翼で行う。
2人が、モデルをした方がお客様から好評らしい。
私は育児で、時間は限られるが、店舗に顔を出す。スタッフからは、もちろん声をかけられるが、お客様からも声をかけられる。目の前まで行くと、黄色の悲鳴をあげられる。その反応に首を傾げて居たら、お客様から理由を教えてくれた。
「写真でも思ってましたが、彩葉さんも翼さんも美形で直視できません。お似合いの夫婦です」
と言われ、素直に嬉しく、笑みを深めると赤面されてしまった。
 お客様と話せば、商品やこだわりなど の、生の声が聞けるいい機会だ。この声を活かしていこうと思える。

   「ママ~」
愛おしい我が子に呼ばれ、3人のところに向かう。
「優花。遊んでもらえて良かったね」
「うん。みんな、なかよし」
「それは良いことだから、続けていこうな」
優花が翼の言葉に頷く。
「あ、パパとママは、まいにちチューしていて、わたしには、ほっぺにちゅーしてくれるの。あとは、パパがママにあいしてるっていうと、ママがリンゴみたいに、かおがあかいね。そのあとに、パパとおなじことば、いっている」
「ゆ、優花!そんなことは言わなくていいの!」
優花は、なぜダメなのか分からず、首を傾げている。
「そんなこととは、なんだ。事実だろ」
「私は、それを、外で言わなくていいって言いたいの!」
翼は、私が言った【そんなこと】が、気に入らないようで不満な表情をする。
そんな私達を、優花は不思議そうな顔をして、翔はニヤニヤしながら見ている。
「よし。優花。先に翔おじさんと一緒に、おやつ買ってから帰ろう。パパとママは、痴話喧嘩するから。あ、痴話喧嘩分からないか。とにかく、パパとママは、イチャイチャしてるから、先に帰ろう」
優花を抱き上げてから言った。
「翔!余計なことを教えるな!」
「おお~。ママが怖いね~」
そのまま去ってしまった。
 取り残された私と翼。私は立ち上がる。
「そんなに、不機嫌にならなくていいじゃない」
「俺にとっては、重要なんだ」
「私は、時と場所によるって言いたいの」
「・・・分かったよ」
「じゃあ、帰ろう」
渋々な感じだが、気づかないふりをした。
翼は私の手を握る。
「翼」
名前を呼べば、私を見てくれる。
そんな翼のほっぺにキスをする。
翼は驚いたように、キスをされたほっぺに、手を添えた。
「これは、時と場所に入らないのか」
「・・・・・知らない!帰るよ!」
「なに怒ってるんだよ。ほっぺにキスをしたくせに」
翼は、可笑しそうに笑っている。
「分かってるくせに」
「分からないな~」
「・・・元はと言えば、翼が不機嫌になるのが、いけないんだから!そんな状態で帰りたくないから、だから!その先は、分かってるの知ってるから言わない!」
「最後まで彩葉の言葉で聞きたかったけど、しかたないか。頑張った彩葉には、優花が寝た後に、ご褒美あげる」
ご褒美の意味を理解した私は、顔が真っ赤だ。
そんな翼はご機嫌な様子で、頭を撫でてくる。
「今度こそ、俺達の家に帰るか」
「うん」
私達は、自分達の家に向かって歩き始めた。

   『お父さん、お母さん。私、幸せな道に進んでいるよ』
空を見上げ、両親にメッセージを送る。言い終わると、優しい風が吹いた。まるで返事をしてくれたように。

   『私は、掴んだ幸せを絶対に離さない』
心の中で強く誓った。

【完】
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