坂の上のサロン ~英国式リフレクソロジー~

成木沢 遥

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第二話 多和田佑介の秋

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「おいおい、俺が絶望のグループでもがいていたっていうのに、お前はこんな可愛い子と同じチームだったのか。許せねぇ」
「しょうがないだろ。俺だって森岡と同じチームが良かったよ」
「多和田を責めても仕方ないけどさ。それにしても地獄だったなぁ。いや、でもあり得ないよな! 班くらいこっちの都合に合わせてくれって感じだわ」
 俺と森岡は今日の愚痴を言い合った。美優も同調気味に頷いてくれる。
 森岡は泉のようにこの授業の悪口が出てくる状態になっており、途中その言葉数が増してきたのを機に、俺の顔は苦笑いに変わっていった。
 そろそろ帰りたいなぁと思っていたところで、ちょうど良く美優が森岡のマシンガントークの中にカットインしてくれた。
「ところで森岡君! 佑介君がもうこの講義来る気ないみたいだけど、何か言ってあげてくれない?」
「え? ああ! 多和田、頼むから一緒に通ってくれ。今後もグループワークあるみたいだし!」
「ほら、森岡君も来てほしいって! 来週からもおいでよ」
「ま、待ってよ! 別に俺はこの授業の単位を落としても余裕があるわけで……」
 二人の強い視線に立ち向かうことができずに、力ない声で答えるしかなかった。
 美優の瞳はどうしてこんなにキラキラしているのか。森岡も美優の隣で頭を下げている。
「わ、わかったよ。別に頑張らなくてもいい講義だし。来るだけなら」
「お、マジか! やった、ありがとう美優ちゃん!」
「良かったね! 私も仲間が増えて嬉しいよ!」
 森岡は別として、美優のお願いは断れる気がしなかった。初めて抱くこの感情。
 その日から俺は、風呂に入っている時も、眠りにつく時も、美優のことが頭から離れなくなった。

「多和田、今日も来たぞ」
「おお、森岡。珍しいな、今日は金曜日なのに」
 いつもは水曜日しか来ないはずの森岡が、店内がやや騒がしい華の金曜日に店にやってきた。昨日授業で会ったばっかりなのに、何か話でもあるのか。
「今日もジントニックか?」
「ん? ああ、頼むよ」
 あれ? 何か浮かない顔をしている。昨日はあんなにテンションが高かったのに、目線が下を向いて何だか暗い。
 俺はおかしいなと思いつつも、ライムを多めに絞ったいつも通りのジントニックを森岡に提供した。
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