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最終話 相武ミオの春
⑳
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「ここ二、三年で体を壊していまして、しばらくはカフェも休業中でした。去年亡くなったのをきっかけに、サロンに改装させたのです」
「サロンに? どうしてカフェにしなかったのですか?」
「母が、生前言っていました。現代はストレス社会だから、人を癒せるような立場になってほしいと。母のカフェは、地域の人から愛されるような店でした。ですが、直接的な癒しにはなっていなかった」
きっとお母様は、カフェでの飲食サービス以外に、人を癒せるような何かを身につけてほしいと願っていたのだ。だから、息子である元井さんが、手に職を身につけて、このサロンをオープンさせた。
すぐに、そこまでのいきさつを理解することができて、知ったようなリアクションを取ってしまった。
「相武様が想像している通り、このサロンは母の願いを詰め込んだサロンです。母が淹れた自慢のコーヒーで、人々の心に寄り添ったように、自分はこの技術で人々を救っていきたい。そう思って、このサロンを開きました」
立派な親孝行……何か、彼氏と別れたくらいでくよくよしている自分が、恥ずかしくなってきた。
元井さんは、世のため人のために、何ができるかを考えている。私は、どうやってこの孤独を埋めようか考えている。しかもこんなの瞬間的な問題で、どうせすぐ忘れてまたその時の日常を楽しめるはずなのに。
自分の小ささが際立ったみたいで、恥ずかしくなった。
「どうして、リフレクソロジーを選択したのですか? 人に癒しを与えるサービスなら、他にもいっぱいあるのに」
良い質問だ、というように、元井さんの眉がピクッと上に上がった。
私はその返答が楽しみになって、首を起こして元井さんの話を聞こうとする。
「この坂の上で店をやるとなると、足がお疲れの方が多いじゃないですか? 坂道の上でやるなら、足専門のサロンにしようと考えたのです」
「なるほど。だからリフレクソロジーを選んだのか」
「はい。相武様も、坂道だから、疲れたでしょう? ここに店を開くメリットは、足裏から疲れた体を癒すことだと気づいたのです」
函館は坂が多い街だ。それでも、函館山から見える百万ドルの夜景や、教会などの西洋文化溢れる観光名所を見に、坂を上ることが多い。
元井さんは立派に、人のためになる活動をしているのだ。
「サロンに? どうしてカフェにしなかったのですか?」
「母が、生前言っていました。現代はストレス社会だから、人を癒せるような立場になってほしいと。母のカフェは、地域の人から愛されるような店でした。ですが、直接的な癒しにはなっていなかった」
きっとお母様は、カフェでの飲食サービス以外に、人を癒せるような何かを身につけてほしいと願っていたのだ。だから、息子である元井さんが、手に職を身につけて、このサロンをオープンさせた。
すぐに、そこまでのいきさつを理解することができて、知ったようなリアクションを取ってしまった。
「相武様が想像している通り、このサロンは母の願いを詰め込んだサロンです。母が淹れた自慢のコーヒーで、人々の心に寄り添ったように、自分はこの技術で人々を救っていきたい。そう思って、このサロンを開きました」
立派な親孝行……何か、彼氏と別れたくらいでくよくよしている自分が、恥ずかしくなってきた。
元井さんは、世のため人のために、何ができるかを考えている。私は、どうやってこの孤独を埋めようか考えている。しかもこんなの瞬間的な問題で、どうせすぐ忘れてまたその時の日常を楽しめるはずなのに。
自分の小ささが際立ったみたいで、恥ずかしくなった。
「どうして、リフレクソロジーを選択したのですか? 人に癒しを与えるサービスなら、他にもいっぱいあるのに」
良い質問だ、というように、元井さんの眉がピクッと上に上がった。
私はその返答が楽しみになって、首を起こして元井さんの話を聞こうとする。
「この坂の上で店をやるとなると、足がお疲れの方が多いじゃないですか? 坂道の上でやるなら、足専門のサロンにしようと考えたのです」
「なるほど。だからリフレクソロジーを選んだのか」
「はい。相武様も、坂道だから、疲れたでしょう? ここに店を開くメリットは、足裏から疲れた体を癒すことだと気づいたのです」
函館は坂が多い街だ。それでも、函館山から見える百万ドルの夜景や、教会などの西洋文化溢れる観光名所を見に、坂を上ることが多い。
元井さんは立派に、人のためになる活動をしているのだ。
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