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3章 人気の合わせ味噌 ~焼きネギと舞茸入り贅沢豚汁~
⑭
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生きるか死ぬか選べる店なんて……改めて聞くとなんて残酷なのだろう。
どん底人生を歩いている者には需要があるように思えるけど、大抵の人は死なんて選べない。
でもここを訪れてきたミサ、倉持、そしてアキ……全員が本気で迷うほど、決断に戸惑う。
むしろそういう、本気な人しか、ここに来ることはできないのではないか……アキはそう思えた。
「痛い思いをしなくても死ねるなんて、良いお店じゃない」
あっけらかんと言いのけるミサは、相当意思が固いようだった。
それほど、大切な人を失ったダメージは消えないみたいだ。
改めて考えるという余地がないミサを見ると、もう何を言っても答えは一緒なのだと理解できる。
アキは言葉を挟むことをやめて、この後の動向を黙って見届けることにした。
「それじゃあ、もうこの世に未練はないのね?」
「……ええ。もしこのお店が私をあの世へ送ってくれるなら、さっさとそうしてちょうだい」
サリは目を瞑る。そしてミサの前にある汁椀を持ち上げて、鍋の中の豚汁を追加で足した。
ミサの豚汁に、再び湯気が宿る。
「これには、あなたの良い時の映像が映る」
味噌が溶けた汁の中に、ミサの記憶が映る。それは小さい時の記憶。順也の家でご飯をご馳走になっていた時のこと。
順也のお母さんが豚汁を作ってくれた。ミサにとって、その豚汁は自分の家の豚汁よりも濃くて、甘くて、それ以来豚汁が大好きになった。
『順也のお母さん、私もこんな豚汁作れるようになりたい!」
『あらま、すぐ作れるようになるわよ。もうちょっと大人になってから、教えてあげるわね』
『うん! そしたら私が順也に作ってあげる!』
順也のお母さんは、順也の頭を撫でて良かったわねと嬉しそうに笑っていた。
順也も照れ笑いを隠しながら、コクッと頷いている。
ミサは自分の生きる価値というものを、その時に見出した気がしたのだ。
そんな大切な関係は、もう築くことができない。
「この時が、私の全てだった……」
瞳から溢れ出る雫は留まることを知らない。
ミサは過去の自分の微笑ましい瞬間を思い返し、大きく涙した。
「一口飲めば、あの世に逝けるわ」
どん底人生を歩いている者には需要があるように思えるけど、大抵の人は死なんて選べない。
でもここを訪れてきたミサ、倉持、そしてアキ……全員が本気で迷うほど、決断に戸惑う。
むしろそういう、本気な人しか、ここに来ることはできないのではないか……アキはそう思えた。
「痛い思いをしなくても死ねるなんて、良いお店じゃない」
あっけらかんと言いのけるミサは、相当意思が固いようだった。
それほど、大切な人を失ったダメージは消えないみたいだ。
改めて考えるという余地がないミサを見ると、もう何を言っても答えは一緒なのだと理解できる。
アキは言葉を挟むことをやめて、この後の動向を黙って見届けることにした。
「それじゃあ、もうこの世に未練はないのね?」
「……ええ。もしこのお店が私をあの世へ送ってくれるなら、さっさとそうしてちょうだい」
サリは目を瞑る。そしてミサの前にある汁椀を持ち上げて、鍋の中の豚汁を追加で足した。
ミサの豚汁に、再び湯気が宿る。
「これには、あなたの良い時の映像が映る」
味噌が溶けた汁の中に、ミサの記憶が映る。それは小さい時の記憶。順也の家でご飯をご馳走になっていた時のこと。
順也のお母さんが豚汁を作ってくれた。ミサにとって、その豚汁は自分の家の豚汁よりも濃くて、甘くて、それ以来豚汁が大好きになった。
『順也のお母さん、私もこんな豚汁作れるようになりたい!」
『あらま、すぐ作れるようになるわよ。もうちょっと大人になってから、教えてあげるわね』
『うん! そしたら私が順也に作ってあげる!』
順也のお母さんは、順也の頭を撫でて良かったわねと嬉しそうに笑っていた。
順也も照れ笑いを隠しながら、コクッと頷いている。
ミサは自分の生きる価値というものを、その時に見出した気がしたのだ。
そんな大切な関係は、もう築くことができない。
「この時が、私の全てだった……」
瞳から溢れ出る雫は留まることを知らない。
ミサは過去の自分の微笑ましい瞬間を思い返し、大きく涙した。
「一口飲めば、あの世に逝けるわ」
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