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最終日
浮遊霊が行き着く不思議な山カフェ⑤
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「ごめんな。二人に頼るしかないんだ」
藤沢から感謝されるなんてあんまりなかったから、恵那は頭を下げている藤沢に違和感を覚えた。
だけど、ここまで良くしてもらったのは恵那の方だし、いずれにせよ助けになりたいと思っていたので、お墓に行くくらいは訳ないことだと思えている。
恵那は、すでに食べ終えている恵那とリュウのお皿を台所に運びながら、前向きな口調で改めて了承した。
「わかりました。私たちに任せてください」
シンクの上に汚れた皿を置いて、水に浸けておく。
リュウもスイッチが入ったかのように立ち上がって、準備体操を始めた。
やる気になってくれたことが嬉しかったのか、藤沢の表情が自然と和らいでいくみたいだ。
連日同じ制服を着ているリュウに対して、藤沢は動きやすい服を貸してあげる。
恵那も寝巻から着替えて、二人共外を歩く準備が万端になった。
「じゃあ、行ってらっしゃい。気をつけてな」
藤沢に玄関前まで見送られて、山の中に躊躇なく入っていく。
太陽の日差しが燦燦と照りつける中、恵那とリュウは目的地に向かって、ガタガタな足場をものともせずに進んでいた。
恵那の右手には、しっかりと地図が握られている。
「おい、恵那。結構歩くのか?」
「うーんと、地図を見る限りでは、結構かかりそうだけど……でも、この地図じゃ距離感がわからないな」
「そうなのか。とりあえず目印まで歩くんだっけ?」
「そうだね。目印となる大きな木まで、真っ直ぐ歩けってさ」
雑に書かれたルートに沿って、ブツブツ言いながら進んで行く二人。
目印となる大きな木は、前に行ったハーブを育てているもう一つの小屋の近くにある。恵那は、大体の道筋がわかるとはいえ、その距離感については、掴めていない。
湿っている地面や草に細心の注意を払いながら進んでいると、リュウが藤沢の話をまた持ち出した。
「そういえば昨日さ……藤沢さん、泣いてたよな」
「え? あ……うん。女の人の写真を見ながらね」
「ミマって言ってたよな。もしかしてこれから向かうのって、その人のお墓なのかな」
「私も……そうじゃないかって思ってる。私たちが行ったら、その人に会えるのかな」
「……ミマっていう人の、浮遊霊にか?」
「うん。私たちには、浮遊霊を寄せ付ける能力があると、藤沢さんは思ったのかもしれないね」
恵那とリュウが揃ったと同時に、巴先輩の浮遊霊と会うことができた。
きっと藤沢は、それが偶然ではなく、特殊能力だと思ったのかもしれない。
単純に、恵那とリュウの巴先輩に会いたいという念の強さだけでは、浮遊霊には会えないはずだ。
そこにヒントを見出して、藤沢が会いたいと思っている浮遊霊を迎えるために、そのお墓に恵那とリュウを送った。
果たして、そのお墓の主である浮遊霊に、会うことができるのか……わからないけど、恵那の脈拍が高くなっているのは確かだった。
急勾配な山道を歩きながらでも、リュウはさらに深く推理するように話している。
藤沢から感謝されるなんてあんまりなかったから、恵那は頭を下げている藤沢に違和感を覚えた。
だけど、ここまで良くしてもらったのは恵那の方だし、いずれにせよ助けになりたいと思っていたので、お墓に行くくらいは訳ないことだと思えている。
恵那は、すでに食べ終えている恵那とリュウのお皿を台所に運びながら、前向きな口調で改めて了承した。
「わかりました。私たちに任せてください」
シンクの上に汚れた皿を置いて、水に浸けておく。
リュウもスイッチが入ったかのように立ち上がって、準備体操を始めた。
やる気になってくれたことが嬉しかったのか、藤沢の表情が自然と和らいでいくみたいだ。
連日同じ制服を着ているリュウに対して、藤沢は動きやすい服を貸してあげる。
恵那も寝巻から着替えて、二人共外を歩く準備が万端になった。
「じゃあ、行ってらっしゃい。気をつけてな」
藤沢に玄関前まで見送られて、山の中に躊躇なく入っていく。
太陽の日差しが燦燦と照りつける中、恵那とリュウは目的地に向かって、ガタガタな足場をものともせずに進んでいた。
恵那の右手には、しっかりと地図が握られている。
「おい、恵那。結構歩くのか?」
「うーんと、地図を見る限りでは、結構かかりそうだけど……でも、この地図じゃ距離感がわからないな」
「そうなのか。とりあえず目印まで歩くんだっけ?」
「そうだね。目印となる大きな木まで、真っ直ぐ歩けってさ」
雑に書かれたルートに沿って、ブツブツ言いながら進んで行く二人。
目印となる大きな木は、前に行ったハーブを育てているもう一つの小屋の近くにある。恵那は、大体の道筋がわかるとはいえ、その距離感については、掴めていない。
湿っている地面や草に細心の注意を払いながら進んでいると、リュウが藤沢の話をまた持ち出した。
「そういえば昨日さ……藤沢さん、泣いてたよな」
「え? あ……うん。女の人の写真を見ながらね」
「ミマって言ってたよな。もしかしてこれから向かうのって、その人のお墓なのかな」
「私も……そうじゃないかって思ってる。私たちが行ったら、その人に会えるのかな」
「……ミマっていう人の、浮遊霊にか?」
「うん。私たちには、浮遊霊を寄せ付ける能力があると、藤沢さんは思ったのかもしれないね」
恵那とリュウが揃ったと同時に、巴先輩の浮遊霊と会うことができた。
きっと藤沢は、それが偶然ではなく、特殊能力だと思ったのかもしれない。
単純に、恵那とリュウの巴先輩に会いたいという念の強さだけでは、浮遊霊には会えないはずだ。
そこにヒントを見出して、藤沢が会いたいと思っている浮遊霊を迎えるために、そのお墓に恵那とリュウを送った。
果たして、そのお墓の主である浮遊霊に、会うことができるのか……わからないけど、恵那の脈拍が高くなっているのは確かだった。
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