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ロミオの純情

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 コウは一階の薄暗いロビーの来客用応接スペースに足を踏み入れる。

 その時、古ぼけた応接ソファーに座っていた人物の姿を目にした瞬間、ギクリとした。

 今一番、会いたくない人間だった。

「コウ!」

 応接ソファーに座っていた鷹司は、コウの姿を見ると、慌てて立ち上がる。

「鷹司先輩…… どうしてここに……」

「ちょっと話したい事があって」

「俺は話なんて無いんで、帰ってもらえますか」

 コウは素っ気なく言い放つと、クルリと踵を返して、部屋に戻ろうとする。

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!コウ!話を聞いてくれ!」

 立ち去ろうとしているコウの肩を慌てて掴もうとした、その時、

 ぬうっ と大きな巨体が、鷹司とコウの間に立ちはだかる。

「コウが嫌がってるんで、やめてもらえますか?」 

「だ、誰だお前」

「コウのルームメイトです」

 (る、ルームメイトだって?!ルームメイトって、ひょろひょろのガリ勉君じゃないのかよ?!)

 “秀才”と聞いて、勝手に青白い顔をした眼鏡君を想像していた鷹司は、突如目の前に現れた、屈強な男に驚く。

「俺はコウに話がある。そこをどいてくれないか?」

 動揺を見せないようにしながら、鷹司が声を出すと、

「コウは話がしたくないようなんで、これで失礼します」

 そう言って、佑司はコウの体を庇うようにして、鷹司を遮る。

 コウは鷹司に背を向けたままで、何も言わなかった。

「コウ!」

 鷹司が強く呼びかけると、コウは思わず振り向きそうになったが、それを制止するようにして、佑司はコウの肩を抱きかかえ、「さぁ、コウ、部屋に戻ろう」と言って歩き出す。

「コウ、待ってくれ!」

 鷹司の声に、コウではなくて、佑司が振り返る。

 その目は明らかに、“俺のコウに手出しはさせない” と言わんばかりの敵意の炎に燃えていた。

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