βが番になる方法

叶希

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プロローグ ※受けと女性の行為あり

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「こんばんは~」
ほぼ毎日シフトを入れているバイト先のバーの従業員休憩室に入り、荷物を置く。
「こんばんは、深山くん。もう少しで一人休憩に入って貰うからそのタイミングで出て貰える?」
「分かりました、店長」

この世界にはαとβとΩという第二次性徴にて分かる男女以外の三つの性別がある。内訳としてはβが圧倒的に多く、両端に少数のαとΩがいる。
俺が働くこの店は、αとΩが出会う店だ。そして店員は全てどちらのフェロモンにも鈍く、感じることのないβだ。つまり俺、深山 優みやま すぐるもβである。

「木崎、休憩入れ」
「お、深山は今日も早いな。じゃあお言葉に甘えて~」
同僚の木崎と入れ替わりにホールに出る。
五つのテーブル席と七つのカウンター席はいつもより席が埋まっていた。

─カランカラン
「いらっしゃいませ。お席はカウンターとテーブルどちらがよろしいですか?」
入ってきたのはΩの女性だった。
入ってすぐに俺の側に来て、小声で
「……すみません、外の車の中に連れがいて……。その、ヒートで」
「分かりました。身分証はお持ちですか?……分かりました。少々こちらでお待ちください」

話を聞き、店長のいるカウンターの奥に向かう。
「すいません店長。今いいですか」
店長はこちらに目配せすると、
「少し、失礼しますね」
と言ってこちらに向かってきた。

「誰からですか?」
「あちらの女性のお連れ様です」
店長はそちらを見ると、
「大丈夫ですよ。深山くん行けますか?」
「分かりました」
そう承諾すると店長はカウンターの中へ、俺は先程のお客さんの方へと戻った。

「大丈夫です。お連れ様に隣のホテルに行くよう言って貰えますか?出来なさそうでしたら自分も手伝います」
「あ、それは大丈夫だと思います。ありがとうございます」
そう言って女性は店の外に出ていった。

その姿を見届けた後、俺も隣のホテルに向かう。
隣のホテルはこのバーと連携していて、あるサービスを行っている。それは、ヒートに入ったΩを主に、ラット化したαのような人の欲を従業員が収めるサービスだ。
このバーの従業員が全員βであることには、そのような理由もある。
俺はそこまで性欲がある方ではないが、給料が良くそういう相手をすることで多く給料が貰えるためここで働いている。
店長や一緒に働く仲間もいい人ばかりで、この店で働けるのならβも少しはいい物だと思えた。

今日相手にしているような女性以外の男性のΩの相手をすることもあるが、αの相手はほぼしない。
俺の体が決して華奢なわけでもなく、αから相手にしたいと言われるようなことも無い上、俺自身挿入されることに抵抗があったからだ。

だから俺がこれからαの相手をすることを、この時は思ってもみなかったんだ。
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