とある使用人の日記

かーにゅ

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34日目

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「わーい!!収穫だー!!」
「柚琉様!!帽子!!帽子被ってください!!」
樹さんは走っていこうとする柚琉様を捕まえ、帽子を被せた。
きっちりゴム付きのやつだった。
「柚琉様。籠に載せられる分だけ取ったらこっち渡してくださいね」
「うん!!」
旦那様、いつの間にか川作ってたし。
いいけどね。
野菜冷やせるし。
柚琉様と夏羽様の水遊びのいい場所にもなるし。
俺は川を跨るように棒を設置してそこから籠を吊り下げた。
ちょっとだけ水に浸かるようにして…。
「何それ~」
「野菜をここで冷やそうと思って。…お?トマトですか。いい色ですね」
「うんっ!!赤いの取ってきた!!」
俺はトマトを籠に入れ、1つだけ手に持った。
「柚琉様。ここの裏の白い線があるでしょう?」
「うん。お星様みたい」
「この線は甘いものを示しているんですよ」
「えぇ!?僕の取ってきたのにある?甘いトマトある?」
「ありますから。落ち着いてください。…まぁたまに甘くないのもありますけど」
よし、もういいか。
俺はトマトを傍の台に置いていた布で軽く拭いて柚琉様に渡した。
「俺特製採れたて新鮮冷やしトマトです」
「わぁい!!いただきまーす!!」
俺は他の野菜の収穫でもしてるか。
まぁ立派なのは出来ないだろうな。
土作りだって去年から始めたばかりだし肥料の分量も今はまだ手探りだからな。
「きゅうりとナスとトマトか…夏野菜カレーでもやりたくなるな」
よく作ったんだよなぁ…。
料理は母さんの担当だったけどカレーの時は俺も手伝ったっけ。
作ってる最中にカレーの匂いでお腹すいて鳴らすと母さんが笑いながらちょっとだけカレーの味見させてくれたからな。
「…ナス嫌い…ぶよぶよ」
「えぇ!?」
「柚琉様。好き嫌いしていては大きくなれませんよ?」
「…だって嫌なんだもん」
「じゃあカレーに入れますか」
ナス嫌いの末の弟も食べたし。
「…カレーに?」
「夏野菜カレーです。厨房にお願いしてきますね」
俺はいくつか野菜を籠に入れるとそれを持って厨房へ向かった。
「すいませーん」
「はいはい。配達ですかって屋敷の使用人ですか。一体何の用ですか?」
「この野菜使って夏野菜カレー作ってもらえませんか?柚琉様のナス嫌いも多分これならいけると思うんで」
「カレーに?」
「あぁ…もしかして都会の人ってあんまりそういうのやらない?いややるよな。カレーだし。金持ちだからやらないだけか」
俺は泥汚れを落とすと厨房へ入った。
「カレーはスープカレーのようにして鶏肉を細かくして入れます。うちはササミ入れてましたね。まぁツナでもいいですけど」
「…なるほど」
「あとは具材を適当に刻んでぶち込むだけです。ナスだけは小さなさいの目切りにして玉ねぎと一緒に鍋でトロトロになるまで煮込むんです。あんまり時間かかりませんよ」
…確か昼飯の1時間前ぐらいから作ってたし。
「じゃあ今日のお昼には間に合いそうですね…分かりました。作りましょう」
「よろしくお願いします!!」
さて俺は畑に戻るか。

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