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幼児編

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「…ふぅ」
僕はベッドの上で軽く息を吐いた。
やっと体調も回復したのに父さん達は僕がベッドから出るのをまだ許してくれない。
「…ひま」
暇つぶしのものは本とスマホしかないし。
…夏が言ってたゲームやってみようかな。
僕は記憶を頼りにいくつかゲームを入れてみた。
「…えっと…これを押せばいいの?」


「…ゆず?」
「な…なつぅ!!これどうすればいいの!?」
扉から顔をのぞかせた夏に僕は泣きながら抱きついた。
「げ…げーむやってたらね…しらないひとに…はなしかけられて…」
「え?みせて?」
夏は僕のスマホを見ると…
「なんだ。ほかのプレイヤーか」
「…どうすればいいの?」
「ともだちになるか、ならないかってだけだよ?」
…友達?
ゲームの中なのに?
「てかこれなつのやってるゲーム?…ゆず…もしかしてきょうみあるの?」
「ううん。ひまだったから」
「そか」
夏はベッドに上がり、僕と一緒に大きな枕にもたれ、自分のスマホを出した。
「じゃあなつとフレンドとうろくしよ?」
「ふれんどとーろく?」
「ともだちになってたすけあってゲームするの」
「…する」
わかんないし。
夏がいれば怖くない。


「…ひっ!!」
僕は急に怖くなってスマホを投げ出した。
「ゆず?」
「こ…こわい!!」
僕は夏にぎゅーっと抱きついた。
「…夏。柚はどうしたんだい?」
「わかんないけど…きゅうにこわいって」
「夏。何があったのか母さんに話してくれる?」
「かぁしゃん!!」
僕は母さんの胸に顔を擦り寄せた。
「なつと…げーむしてたの」
「うん」
「そしたらね…しらないひとがはなしかけてきて…」
「それで?」
「『いくつ?』ってきかれたから…さんさいってこたえたの…そしたらね『いいなぁ。おじさんとともだちにならない?』って…」
「…怖いところはないと思うけど…」
「そのあとにね…いっぱいぷれぜんとくれたの。『リアルでもあおうね』って…りあるって…げんじつってことでしょ?しらないひとこわいの…」
「…夏。そのゲームのプレイヤー調べられる?」
「わかんない。けどゆずのスマホここにあるよ?」
夏は僕の捨てたスマホを取り上げた。
「ちょっと貸して」
「はい」
父さんはいくつか操作をして…
「…ちっ。逃げたか」
「なんとか出来ないの?」
「出来ない。…けどプレイヤー名は知れたからね。通報くらいは出来るんじゃないかな。夏、近づいてきたら教えて」
「わかった!!」
母さんはその間もずっと僕を抱きしめて背中を撫でてくれた。
「大丈夫よ。…そんな人なんて消えてしまえばいいのに」
「…かぁしゃんもこわい…」
「ごめんなさいね。ちょっと本音が表に出ちゃったわ」
「…雫が柚に怖がられてどうするの」
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