転生召喚者は異世界で陰謀を暴く~神獣を従えた白き魔女~

*⋆☾┈羽月┈☽⋆*

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プロローグ

動き出す歯車

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漆黒の夜空に浮かぶ紅い月は異様な輝きを放ち、王都の街並みを不気味に照らしていた。

巨大なドラゴンが翼を羽ばたかせ、闇夜に溶け込み音もなく滑空した。
この世の終わりを告げるようなその姿は、まさに厄災そのもの。

ドラゴンが大きく咆哮するとビリビリと空気が震え、緊張感が漂い始めた。
そして大口を開けると――紅蓮の炎を吐き散らした。

業火に焼き尽くされた王都の街並みは廃墟と化し、魔族や魔獣の大軍が攻め入っていた。
人々は絶望に染まった顔で悲鳴を上げ、逃げ惑う。

崩壊した王都の中心に、ひとりの少女が立っていた。
銀色の髪が風に揺れ、深紅の瞳が魔族の王を鋭く睨みつけ、小さく呟いた。

「どうして、こんな事を……」

王都屈指の騎士たちですら、魔族の圧倒的な力の前では敵わず、次々と討ち倒された。
少女はたった一人で、大軍を迎え撃つ。

神聖審判サグラード・ヴァーディクト!」

少女が短い呪文と共に杖を振りかざすと、轟音と共に天地が激しく揺れた。
漆黒の夜空から降り注ぐ、眩い神聖な光。
白き光に包まれた無数の魔族が、悲鳴を上げる間もなく塵と化して消えていった……。

――グワァァァァッ!

同時に、魔王の咆哮が王都中に響き渡った。
身体からは黒紫色の瘴気があがり、ゆっくりと崩れ落ちて静かに呟いた。

「なぜ……貴様はそこまでして、人間を守る……?お前は、奴らと相容れぬ……異質な存在だろう?」

少女は静かに目を伏せ、ただ一言だけ告げた。

「……ここは、私の大切な場所だから。」

杖を高く掲げ、力強く叫んだ。

悠久の柩セルクイユ・アヴァディ!」

眩い神聖な光と共に、黄金の鎖が魔王の身体に絡みつき、王都全体が真っ白に染まっていった——。

——ピピピピッ

無機質なアラーム音が静かな部屋に響き渡る。

「ん~……」

しなやかな白い手が伸びてアラームを止め、少女がゆっくりと身体を起こした。

銀糸のように美しい銀髪がサラサラと零れ落ち、ぼんやりと虚空を彷徨う深紅の瞳を気だるげに擦る少女——白銀葵しろがねあおい

「……また、この夢……」

ファンタジーの世界で、自分とそっくりな魔法使いが、たった一人で魔族の大侵攻を食い止め、魔王を封印する——。
いつもその場面になると必ず目が覚める不思議な夢。

しかし、目が覚めた後も微かに魔力の感覚が手に残っている感じがする。

「……神聖審判サグラード・ヴァーディクト

夢の中の魔法使いが使っていた呪文を試しに唱えてみる。
もちろん魔術が発動することは無かった。

「何をやっているんだろ……恥ずかしい。」

自嘲的な笑みを浮かべてため息をつく。

「……でも、何かを伝えようとしている……のかな?」

そう思ったのは、これが初めてではない。

彼女は3年前に事故で両親を亡くして以来、叔父夫婦のもとに引き取られて暮らしている。
しかし叔父夫婦は彼女を「不幸が伝染る死神」と罵り、部屋に軟禁して冷遇していた。

この奇妙な夢を見るようになったのも、ちょうどその頃だった。

「そんなわけ、ないよね……」

寝ぼけている頭を軽く振って、静かに階下へと降りて行った——。
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