転生召喚者は異世界で陰謀を暴く～神獣を従えた白き魔女～

⋆☾┈羽月┈☽⋆

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第2章：王都編

第8話　極秘任務

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謁見の間での騒動から数時間後――。

日が沈み、夜の帳が城内を覆う中、蝋燭の炎が壁に怪しげな影を映し出している。
その揺らぎは不気味な静寂を、より際立たせていた。

静まり返った夜の王城に、真っ黒なローブで姿を隠した人物が足音を立てずに長い廊下を歩いている。
その姿は、まるで闇そのものが動き出したかのように、物陰を縫いながら音もなく進んでいく――。

いくつもの扉を通り過ぎ、1つの扉の前でようやく立ち止まる。

――コンコン。

静かな空間に扉をノックする音だけが響き渡る。

「入れ」

扉の向こうから許可が下り、中に入る。

「お呼びでしょうか……国王陛下」

この部屋の主である国王――グラディオラス・アヴァルディアは漆黒のローブを纏った人物を見つめ、重々しく口を開く。

「先程の一件は、其方も見ておったな？」

ローブの人物は静かに頷いた。

「はい。ストラウスが召喚者の暗殺を企てていたようです。目の前でその証拠を見せつけられました」

グラディオラス国王は深く頷き、ローブの人物に指示を出す。

「其方にはストラウスが誰と秘密保持の盟約を結んでおったのか、黒幕が召喚者を狙う理由は何なのかを調べてほしい」

ローブの人物は国王の指示に、静かにため息をついた。
それは、緊張の中で冷静さを保とうとする者特有の動きだった――。

「……この件に関しましては、わが国だけでは対処が難しいかと……」

そう言って口を閉ざした後、一呼吸おいてから再び口を開く。

「そこで、隣国のアストラルヴィエンに協力を申し出てみてはいかがでしょうか？」

「魔法と錬金術に長けた国か……」

国王がポツリと呟く。

「はい。魔法の術式に長けた彼らなら、ストラウスと黒幕の間で交わされた盟約の調査に適任でしょう。」

国王はしばらく考え込み、ゆっくりと口を開いた。

「……よいだろう。盟約の刻印を調査せよ――という名目で、召喚者とブラックウィングをアストラルヴィエン派遣しよう。」

国王は口を閉ざし、呼吸を整えてから再び告げた。

「其方には隣国の調査員と一行の監視を任せる。進展があれば報告せよ」

ローブの人物は跪き、国王直々の極秘任務を請け負った。

「承知いたしました。我が主君マイロード」

「それから……召喚者は恐らく、白き魔女の生まれ変わりである可能性が高い……」

国王の発言にローブの人物は驚く。

「あの伝説の大魔導士と呼ばれた白き魔女が、彼女だと……？」

――白き魔女。
それは500年前にアヴァルディアへ降りかかった魔族の大侵攻を、たった1人で押し返した伝説の大魔導士。
彼女は全属性を操り、聖なる裁きで魔王軍を焼き払い、神聖な結界で王国を守ったという。
魔王の封印を成功させた英雄として、アヴァルディア国内で語り継がれてきた偉大な存在だった――。

「其方も見たであろう……召喚者が、白き魔女と同じ特徴を持っているのは確かだ。しかし、それが転生なのか、偶然なのか……今はまだ分からぬ……。」

国王はいったん口を閉ざし、一呼吸おいてから静かに口を開いた。

「……それにちょうど魔王の封印が解ける頃合いでもある。」

「まさか……！召喚者が狙われたのは、再び魔王を封印させないために魔族が……？」

ローブの人物はアヴァルディア国内に魔族のスパイが潜んでいる可能性を考える。

「可能性は0では無かろう。もし彼女が本当に白き魔女の転生体だとすれば――再び魔王の封印を託された存在ということになる。明日から召喚者にはブラックウィングの護衛をつけ、単独行動は控えるよう伝令を出そう」

「それでしたら既にうちのボスが直々、護衛にあたっておりますゆえ、ご安心を。」

「ほう……あの冷徹で有名な騎士団長が直々に護衛とは……」

国王は驚いたように呟き、用が済んだ国王はローブの人物に退出を命じる。

「それなら安心であるな。其方はもう下がってよい。」

鋭く猛禽のような眼差しを向け、国王は静かに男の名を呼ぶ。

「期待しておるぞ――アムトール」

「はっ」

ローブの人物は国王の部屋を後にする。

蝋燭の灯りが揺れる廊下に、窓から差し込む月明かりが幻想的な雰囲気を醸し出していた。
月灯りに照らされ、黒い人影があらわになる。
ローブの奥に隠された金色の髪が月明りに照らされてキラキラと輝いている。

「召喚者が、白き魔女の生まれ変わり……ね。あの子が進む先は茨の道だけど……心強い護衛が2人もいるなら当面は安心かな……」

小さく呟いたローブの人物は、闇に溶け込むように薄暗い廊下の奥へと姿を消した――。

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