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第2章:王都編
第10話 王都探索
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王都の城下町は多くの人で賑わい、活気に満ちていた。
石畳の道の両脇には様々な屋台が並び、香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
「凄い賑やかな街なのね……」
商業地区を行き交う人々の多さに思わずため息がこぼれる。
「ここは王都の中でも1番人が集まる中央広場だからな。」
ノクターンは器用に人混みを避けながら進んでいく。
「そうなんだ。わわっ……!」
シエルは人混みに押し出されてバランスを崩した。
「……危ないだろ。全く、世話の焼ける……。」
転びそうになるシエルの腰に、ノクターンの手がそっと添えられる。
「あ、ありがとう……」
シエルは少し恥ずかしそうに視線をそらしながらお礼を言う。
「人が多いから、はぐれるなよ」
そう言ってノクターンはシエルの手をさりげなく握った。
「う、うん……」
(すごく、温かい……)
ノクターンの気遣いに触れ、シエルの心がじんわりと温かくなる。
(こういうのも、悪くない……かな)
シエルは繋いだ手を見つめて静かに微笑む。
その後の2人は様々な屋台を巡った。
角ウサギの串焼きを食べ、ウッドベリーの果実水を飲み、旅芸人の舞台を観覧して王都探索を満喫していた。
「はぁ~楽しかった……ちょっと休憩してもいい?」
「あぁ。」
散々歩いたシエルは中央広場にある大きな噴水の淵に腰を下ろす。
「ひっくり返って落ちるなよ」
悪戯な笑みを浮かべたノクターンが静かに告げる。
「……そんなドジ踏まないし」
すっと目を細めるシエルはため息をついた。
「分からないだろ」
『スリよー!誰か捕まえてー!』
突然、遠くから女性の叫び声が響いた。
シエルとノクターンは声のした方へ顔を向ける。
猛スピードでこちらに向かってくる男の姿があった。
「シエルはここで待機だ、いいな!?」
ノクターンは短く告げると、スリ犯のもとへ駆け出した。
「……王都って意外と治安悪いのね。まったく、邪魔しないでほしいわ。」
脚を組んで静かに呟いたシエルは頬を膨らませる。
短いため息をついたあと小さく囁く。
「……光輝の鎖」
どこからともなく表れた白い鎖がスリ犯の身体に絡みつき、犯人は顔面から派手に転んだ。
『うわっ!? 何だこれ、離れねぇ!?』
鎖に絡まれたスリ犯は、芋虫のようにのたうち回りながら必死に足をばたつかせた。
『ちょっ……誰か助けろよ!』
その様子を見た周囲の人々は、あまりの情けなさにクスクスと笑い始める。
ノクターンは勢いよくシエルの方を振り向いて、スリ犯を指さす。
――これ、お前がやったのか?
そう聞こえたような気がしたが、シエルは知らないフリをして顔をそむける。
(しーらないっ)
しばらくして常駐の黒鷹騎士団が到着し、団長を見つけて敬礼をする。
スリ犯の身柄を引き渡したところを確認したシエルはパチンと指を鳴らして魔法を解いた。
「事件解決っと」
アイテムボックスから取り出したベリー水で喉を潤す。
その時、ノクターンが戻ってきた。
「あの犯人、拘束したのシエルだろ」
「……さぁ?悪いことしたから天罰が下ったのよ、きっと。」
シエルはクスっと笑ってはぐらかす。
「まぁなんにせよ、無事に犯人を捕まえることができて良かったよ」
「団長さんは、護衛対象より街の安全が大事なのね?」
目と鼻の先とはいえ、1人で置き去りにした事を非難する。
「……あ、いや……申し訳ない……」
ノクターンはハッとしてシエルに謝る。
「冗談よ。気にしてないから謝らなくていいわ」
そういって静かに立ち上がる。
「じゃあそろそろ帰るか。家でフェリルが待っているぞ」
「そうだね。フェリルはお留守番だったから拗ねてるかも」
シエルは楽しそうに微笑む。
歩き出したその時、ある屋台の前で足を止めた。
「綺麗……」
漆黒の縁に大きな濃紺の宝石が施された繊細なデザインのブローチをじっと見つめる。
(団長さんの瞳と同じ、濃紺の宝石……)
次の瞬間――横からスッと伸びてきた手がブローチをさらった。
「あっ……」
「これください」
シエルが口を開くよりも早く、ノクターンが会計を済ませてブローチを手渡す。
「ほら」
「あ、ありがとう……でも、自分で買えたのに――」
戸惑いの表情を浮かべたシエルが恐る恐る告げる。
「シエルが自由になれた記念……ってことで贈らせてくれ」
鮮やかなオレンジ色に輝く夕陽が静かに2人を照らしている。
首に手をあて、そっぽを向いて告げるノクターンの顔は夕陽のせいか、わずかに赤く染まっているように見えた。
「……じゃあ、ありがたく頂戴するわ」
柔らかく微笑んでブローチを受け取った。
「さ、帰るぞ。これ以上長居すると夕餐に遅れるからな」
「分かったわ。フェリルも待っているし早く戻りましょう」
2人はフェリルの待つノクターンの個人邸宅へと帰って行った――。
石畳の道の両脇には様々な屋台が並び、香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
「凄い賑やかな街なのね……」
商業地区を行き交う人々の多さに思わずため息がこぼれる。
「ここは王都の中でも1番人が集まる中央広場だからな。」
ノクターンは器用に人混みを避けながら進んでいく。
「そうなんだ。わわっ……!」
シエルは人混みに押し出されてバランスを崩した。
「……危ないだろ。全く、世話の焼ける……。」
転びそうになるシエルの腰に、ノクターンの手がそっと添えられる。
「あ、ありがとう……」
シエルは少し恥ずかしそうに視線をそらしながらお礼を言う。
「人が多いから、はぐれるなよ」
そう言ってノクターンはシエルの手をさりげなく握った。
「う、うん……」
(すごく、温かい……)
ノクターンの気遣いに触れ、シエルの心がじんわりと温かくなる。
(こういうのも、悪くない……かな)
シエルは繋いだ手を見つめて静かに微笑む。
その後の2人は様々な屋台を巡った。
角ウサギの串焼きを食べ、ウッドベリーの果実水を飲み、旅芸人の舞台を観覧して王都探索を満喫していた。
「はぁ~楽しかった……ちょっと休憩してもいい?」
「あぁ。」
散々歩いたシエルは中央広場にある大きな噴水の淵に腰を下ろす。
「ひっくり返って落ちるなよ」
悪戯な笑みを浮かべたノクターンが静かに告げる。
「……そんなドジ踏まないし」
すっと目を細めるシエルはため息をついた。
「分からないだろ」
『スリよー!誰か捕まえてー!』
突然、遠くから女性の叫び声が響いた。
シエルとノクターンは声のした方へ顔を向ける。
猛スピードでこちらに向かってくる男の姿があった。
「シエルはここで待機だ、いいな!?」
ノクターンは短く告げると、スリ犯のもとへ駆け出した。
「……王都って意外と治安悪いのね。まったく、邪魔しないでほしいわ。」
脚を組んで静かに呟いたシエルは頬を膨らませる。
短いため息をついたあと小さく囁く。
「……光輝の鎖」
どこからともなく表れた白い鎖がスリ犯の身体に絡みつき、犯人は顔面から派手に転んだ。
『うわっ!? 何だこれ、離れねぇ!?』
鎖に絡まれたスリ犯は、芋虫のようにのたうち回りながら必死に足をばたつかせた。
『ちょっ……誰か助けろよ!』
その様子を見た周囲の人々は、あまりの情けなさにクスクスと笑い始める。
ノクターンは勢いよくシエルの方を振り向いて、スリ犯を指さす。
――これ、お前がやったのか?
そう聞こえたような気がしたが、シエルは知らないフリをして顔をそむける。
(しーらないっ)
しばらくして常駐の黒鷹騎士団が到着し、団長を見つけて敬礼をする。
スリ犯の身柄を引き渡したところを確認したシエルはパチンと指を鳴らして魔法を解いた。
「事件解決っと」
アイテムボックスから取り出したベリー水で喉を潤す。
その時、ノクターンが戻ってきた。
「あの犯人、拘束したのシエルだろ」
「……さぁ?悪いことしたから天罰が下ったのよ、きっと。」
シエルはクスっと笑ってはぐらかす。
「まぁなんにせよ、無事に犯人を捕まえることができて良かったよ」
「団長さんは、護衛対象より街の安全が大事なのね?」
目と鼻の先とはいえ、1人で置き去りにした事を非難する。
「……あ、いや……申し訳ない……」
ノクターンはハッとしてシエルに謝る。
「冗談よ。気にしてないから謝らなくていいわ」
そういって静かに立ち上がる。
「じゃあそろそろ帰るか。家でフェリルが待っているぞ」
「そうだね。フェリルはお留守番だったから拗ねてるかも」
シエルは楽しそうに微笑む。
歩き出したその時、ある屋台の前で足を止めた。
「綺麗……」
漆黒の縁に大きな濃紺の宝石が施された繊細なデザインのブローチをじっと見つめる。
(団長さんの瞳と同じ、濃紺の宝石……)
次の瞬間――横からスッと伸びてきた手がブローチをさらった。
「あっ……」
「これください」
シエルが口を開くよりも早く、ノクターンが会計を済ませてブローチを手渡す。
「ほら」
「あ、ありがとう……でも、自分で買えたのに――」
戸惑いの表情を浮かべたシエルが恐る恐る告げる。
「シエルが自由になれた記念……ってことで贈らせてくれ」
鮮やかなオレンジ色に輝く夕陽が静かに2人を照らしている。
首に手をあて、そっぽを向いて告げるノクターンの顔は夕陽のせいか、わずかに赤く染まっているように見えた。
「……じゃあ、ありがたく頂戴するわ」
柔らかく微笑んでブローチを受け取った。
「さ、帰るぞ。これ以上長居すると夕餐に遅れるからな」
「分かったわ。フェリルも待っているし早く戻りましょう」
2人はフェリルの待つノクターンの個人邸宅へと帰って行った――。
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