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第2章:王都編
第19話 騒がしい朝
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爽やかな風が窓から吹き込み、小鳥たちのさえずりが耳に届いてシエルは目が覚める。
「ん~……もう、朝なの?」
シエルはゆっくり起き上がると気だるげに深紅の瞳を擦った。
銀色の髪がさらさらと零れ落ち、視界の隅に四角い何かが映る。
「……何これ――封筒……?」
宛名も無い真っ白な封筒を見つめ、首をかしげる。
恐る恐る手に取って、中身を確認すると――。
「……これって……!」
「何だ、騒がしい……」
大きめのクッションを布団代わりにしているフェリルの耳がピクリと動いてゆっくりと片目をあける。
「枕元に封筒が置いてあったんだけど……」
そう言ってシエルはフェリルに封筒と手紙を見せる。
「……我は人間の文字が読めぬ」
(昨夜、あやつが投げてきたアレか……)
これ以上シエルを不安にさせないようフェリルは何も言わずに顔をそむける。
(直接言えば良かろうに……人間の考える事は分らぬな)
封筒を見つめるシエルよ横目に、フェリルは再びクッションへと顔をうずめる。
「……アストラルヴィエンには敵が潜んでいる。調査には気をつけよ。くれぐれも1人で行動するな――だって。」
(一体誰がこんな手紙を……?この部屋には、フェリルだっていたのに……)
シエルが不安げな表情でチラリとフェリルを見ると、のんきに大きなあくびをしていた。
(フェリルが気づかないわけない……けれど、あの子の仕草からは特に焦りも見えない。まさか、本当に何も知らないの?……それとも――)
考えがまとまらないシエルは頭を振って邪念を振り払う。
(ううん、違う。この文面からすると、おそらく手紙の主は味方である可能性が高い。だからフェリルも見過ごしたのかも……)
「……ひとまず団長殿に報告した方が良いのではないか?」
百面相しているシエルにフェリルが提案する。
「……そうだね。団長さんと、レイノルドさんにも見せに行こうか」
シエルはフェリルを連れ、客室から出てノクターンの寝室へと向かった。
――コンコン
「団長さん、いますか?」
しばらく待っても中からは返事がなかった。
「……寝てるのかな?」
「……いや、どうやら訓練場にいるようだ。あっちの方から強い匂いがするぞ」
フェリルの言葉にシエルはため息をつく。
「……最初からフェリルに探してもらえばよかった」
ノクターンの寝室をあとにして屋敷の東に設置されている個人訓練場へと向かった。
重たい木製の扉を開けると、ノクターンとレイノルドが剣を振っている姿が目に飛び込んできた。
剣と剣がぶつかり合う金属音が、静かな訓練場に響き渡っている。
(訓練してるとこ、初めて見た……)
ノクターンの剣は迷いなく一直線に振り下ろされ、レイノルドは軽やかに身をひねってかわす。
「甘いよ、ノクス――」
すかさずレイノルドはノクターンの隙ができた懐に詰め寄って反撃する。
「……お前もな、レイ」
上半身を逸らしながらレイノルドの剣を受け流したノクターンは体勢を整え、レイノルドに足をかける。
バランスを崩したレイノルドが背中をつき、ノクターンの剣先が首筋に迫る。
「……どうした?ここへ来るなんて珍しいな」
シエルの気配を感じ取ったノクターンが剣を収め、倒れているレイノルドに手を差し伸べる。
ゆっくりと振り返って問いかける。
「シエルさん、おはよ~」
ヒラヒラと手を振るレイノルドを黙って見つめるフェリル。
突き刺さるような視線を感じたレイノルドは肩をすくめると、おどけたようにウインクした。
「あ、邪魔しちゃったらごめんなさい。実は、朝起きたら枕元にこれが置いてあって……」
訓練を中断させたことを謝罪して今朝見つけた封筒をノクターンに見せる。
「……!一体、誰が……どうやって屋敷に侵入したというんだ……」
封筒を受け取ったノクターンは中身を確認して目を見開く。
背後からレイノルドも手紙を覗いて内容を確認する。
「ご丁寧に忠告してくれているあたり、味方っぽいけどねぇ。それより、王城に次ぐ要塞の個人邸宅がこうもあっさり攻略されちゃうなんて驚いたよ」
ニヤリといたずらな笑みを浮かべるレイノルドはノクターンの頬をつつく。
「敵か味方かはともかく、俺とフェリルの警戒網をくぐり抜けるほどの手練れだということはよく分かった。」
(しかし、一体誰がこの手紙を……)
それでも腑に落ちない様子のノクターンは手紙をじっと見つめている。
「シエル、あっちに着いたら俺とレイから絶対に離れるな。分かったか?」
「……えぇ、分かったわ」
不安げに揺れる深紅の瞳は、まっすぐノクターンとレイノルドを捉える。
「訓練はここまでだな。朝食をとったら王城へ向かうぞ」
ノクターンは静かに訓練所から出ていく。
シエルたちもノクターンのあとに続いて訓練所から出て小食堂へと向かっていった――。
「ん~……もう、朝なの?」
シエルはゆっくり起き上がると気だるげに深紅の瞳を擦った。
銀色の髪がさらさらと零れ落ち、視界の隅に四角い何かが映る。
「……何これ――封筒……?」
宛名も無い真っ白な封筒を見つめ、首をかしげる。
恐る恐る手に取って、中身を確認すると――。
「……これって……!」
「何だ、騒がしい……」
大きめのクッションを布団代わりにしているフェリルの耳がピクリと動いてゆっくりと片目をあける。
「枕元に封筒が置いてあったんだけど……」
そう言ってシエルはフェリルに封筒と手紙を見せる。
「……我は人間の文字が読めぬ」
(昨夜、あやつが投げてきたアレか……)
これ以上シエルを不安にさせないようフェリルは何も言わずに顔をそむける。
(直接言えば良かろうに……人間の考える事は分らぬな)
封筒を見つめるシエルよ横目に、フェリルは再びクッションへと顔をうずめる。
「……アストラルヴィエンには敵が潜んでいる。調査には気をつけよ。くれぐれも1人で行動するな――だって。」
(一体誰がこんな手紙を……?この部屋には、フェリルだっていたのに……)
シエルが不安げな表情でチラリとフェリルを見ると、のんきに大きなあくびをしていた。
(フェリルが気づかないわけない……けれど、あの子の仕草からは特に焦りも見えない。まさか、本当に何も知らないの?……それとも――)
考えがまとまらないシエルは頭を振って邪念を振り払う。
(ううん、違う。この文面からすると、おそらく手紙の主は味方である可能性が高い。だからフェリルも見過ごしたのかも……)
「……ひとまず団長殿に報告した方が良いのではないか?」
百面相しているシエルにフェリルが提案する。
「……そうだね。団長さんと、レイノルドさんにも見せに行こうか」
シエルはフェリルを連れ、客室から出てノクターンの寝室へと向かった。
――コンコン
「団長さん、いますか?」
しばらく待っても中からは返事がなかった。
「……寝てるのかな?」
「……いや、どうやら訓練場にいるようだ。あっちの方から強い匂いがするぞ」
フェリルの言葉にシエルはため息をつく。
「……最初からフェリルに探してもらえばよかった」
ノクターンの寝室をあとにして屋敷の東に設置されている個人訓練場へと向かった。
重たい木製の扉を開けると、ノクターンとレイノルドが剣を振っている姿が目に飛び込んできた。
剣と剣がぶつかり合う金属音が、静かな訓練場に響き渡っている。
(訓練してるとこ、初めて見た……)
ノクターンの剣は迷いなく一直線に振り下ろされ、レイノルドは軽やかに身をひねってかわす。
「甘いよ、ノクス――」
すかさずレイノルドはノクターンの隙ができた懐に詰め寄って反撃する。
「……お前もな、レイ」
上半身を逸らしながらレイノルドの剣を受け流したノクターンは体勢を整え、レイノルドに足をかける。
バランスを崩したレイノルドが背中をつき、ノクターンの剣先が首筋に迫る。
「……どうした?ここへ来るなんて珍しいな」
シエルの気配を感じ取ったノクターンが剣を収め、倒れているレイノルドに手を差し伸べる。
ゆっくりと振り返って問いかける。
「シエルさん、おはよ~」
ヒラヒラと手を振るレイノルドを黙って見つめるフェリル。
突き刺さるような視線を感じたレイノルドは肩をすくめると、おどけたようにウインクした。
「あ、邪魔しちゃったらごめんなさい。実は、朝起きたら枕元にこれが置いてあって……」
訓練を中断させたことを謝罪して今朝見つけた封筒をノクターンに見せる。
「……!一体、誰が……どうやって屋敷に侵入したというんだ……」
封筒を受け取ったノクターンは中身を確認して目を見開く。
背後からレイノルドも手紙を覗いて内容を確認する。
「ご丁寧に忠告してくれているあたり、味方っぽいけどねぇ。それより、王城に次ぐ要塞の個人邸宅がこうもあっさり攻略されちゃうなんて驚いたよ」
ニヤリといたずらな笑みを浮かべるレイノルドはノクターンの頬をつつく。
「敵か味方かはともかく、俺とフェリルの警戒網をくぐり抜けるほどの手練れだということはよく分かった。」
(しかし、一体誰がこの手紙を……)
それでも腑に落ちない様子のノクターンは手紙をじっと見つめている。
「シエル、あっちに着いたら俺とレイから絶対に離れるな。分かったか?」
「……えぇ、分かったわ」
不安げに揺れる深紅の瞳は、まっすぐノクターンとレイノルドを捉える。
「訓練はここまでだな。朝食をとったら王城へ向かうぞ」
ノクターンは静かに訓練所から出ていく。
シエルたちもノクターンのあとに続いて訓練所から出て小食堂へと向かっていった――。
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